借地上の建物が競売された場合、地主に差し入れた敷金に対する権利の行方は
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相談:不動産
9年前に定期借地権の土地に家を建て住んでいましたが、税金の滞納で建物が競売で落札される事になってしまいました。地主に対して50年の借地権契約の際に敷金1000万円を納めました(償却なし)。
今回の裁判所の競売価格が900万円とのことです。これは、
定期借地権の敷金も含まれている価格なのでしょうか。敷金は、現金で支払っています。建物は公庫からの借入で建てました。
競売価格が、預けている敷金を下回ることが納得できません。敷金はどうなりますか。
疲れきった様子の旧借地人(相談者)は、弁護士会 を訪れ、相談しました。
回答
担当した弁護士は、判例を調べ、次のように教えてくれました:
賃貸人に敷金を交付していた場合に、賃借権が旧賃借人から新賃借人に移転しても、敷金に関する旧賃借人の権利義務関係は、特段の事情のない限り、新賃借人に承継されるものではありません(最高裁昭和53年12月22日判決)。
そうすると、敷金は、滞納地代などを差引き、残額が旧借地人である相談者に帰ってくることになります。心配はいらないわけです。
借地権譲渡許可に際し、裁判所は、付随的裁判として新借地人に対し敷金1000万円の支払いを命じます。
- 最高裁判所昭和53年12月22日判決(出典:金融法務事情892号4頁)
土地賃貸借における敷金契約は、賃借人又は第三者が賃貸人に交付した敷金をもつて、賃料債務、賃貸借終了後土地明渡義務履行までに生ずる賃料額相当の損害金債務、その他賃貸借契約により賃借人が賃貸人に対して負担することとなる一切の債務を
担保することを目的とするものであつて、賃貸借に従たる契約ではあるが、賃貸借とは別個の契約である。
そして、賃借権が旧
賃借人から新賃借人に移転され賃貸人がこれを承諾したことにより旧賃借人が賃貸借関係から離脱した場合においては、敷金交
付者が、賃貸人との間で敷金をもつて新賃借人の債務不履行の担保とすることを約し、又は新賃借人に対して敷金返還請求権を
譲渡するなど特段の事情のない限り、右敷金をもつて将来新賃借人が新たに負担することとなる債務についてまでこれを担保し
なければならないものと解することは、敷金交付者にその予期に反して不利益を被らせる結果となつて相当でなく、敷金に関す
る敷金交付者の権利義務関係は新賃借人に承継されるものではないと解すべきである。
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最高裁判所平成13年11月21日決定(出典:判例タイムズ1079号175頁)
土地の賃貸借における敷金は、賃料債務、賃貸借終了後土地明渡義務履行までに生ずる賃料額相当の損害金債務、その他賃貸借契約により賃借人が賃貸人に対して負担
することとなる一切の債務を担保することを目的とするものである。
しかし、土地の賃借人が賃貸人に敷金を交付していた場合に、賃借権が賃貸人の承諾を得て旧賃借人
から新賃借人に移転しても、敷金に関する旧賃借人の権利義務関係は、特段の事情のない限り、新賃借人に承継されるものではない(最高裁昭和52年(オ)第844号
同53年12月22日第二小法廷判決・民集32巻9号1768頁参照)。
したがって、この場合に、賃借権の目的である土地の上の建物を競売によって取得した第三者
が土地の賃借権を取得すると、特段の事情のない限り、賃貸人は敷金による担保を失うことになる。
そこで、裁判所は、上記第三者に対して法20条(注 借地借家法)に基づく賃借権の譲受けの承諾に代わる許可の裁判をする場合には、賃貸人が上記の担保を失うことになることをも考
慮して、法20条1項後段の付随的裁判の内容を検討する必要がある。その場合、付随的裁判が当事者間の利益の衡平を図るものであることや、紛争の防止という賃借権
の譲渡の許可の制度の目的からすると、裁判所は、旧賃借人が交付していた敷金の額、第三者の経済的信用、敷金に関する地域的な相場等の一切の事情を考慮した上で、
法20条1項後段の付随的裁判の一つとして、当該事案に応じた相当な額の敷金を差し入れるべき旨を定め 第三者に、してその交付を命ずることができるものとするの
が相当である。
2006.11.11
港区虎ノ門3丁目18-12-301(神谷町駅1分)河原崎法律事務所 弁護士河原崎弘 03-3431-7161