真空管CDプレイヤー

TU−876製作記

最初に

真空管式のCDプレイヤーキットがイーケイジャパンから発売されたのを知ったのは昨年末に大阪のニノミヤエレホビーで店員さんがなにやら陳列準備しているのを見かけた時でした。

「これ、新発売なんですが、まだ、テスト販売の段階です。」と言う事で真空管式のCDプレイヤーキットが発売になった事を驚きを持ってしったのでした。現在、家で使用しているCDプレイヤーは、初代のSONYのポータブルやディスクマン、NECのCD−509(もう動かない)、それとSONYのCDP−M95と最近、購入したパイオニアのDV575(DVDプレイヤー)。パイオニアのDVDのアナログ出力のCDの音は最悪で、ピアノの高音がffで必ず、高音の倍音に特有の歪みと濁りを生じます。デジタル出力をTEACのMDのDAC経由で聴くとその様な音はしなくなり、なんとか聞けます。アナログ出力では、CDP−95が旧型の普及製品ですが、通常の音楽鑑賞に耐える音で鳴っているのでそれ程不自由は感じていなかったのですが、高音部の輪郭がハッキリしすぎる傾向があるのと、最新録音では、かなり低音が豊かに聞こえるのですが、それでも不満足なので自作プリアンプのトーンコントロールをいじって満足していました。

「アナログ部に真空管を使用したCDプレイヤーの音はきっと良いだろう。」と言う事でこのELEKITのTU−876に興味を持ちました。NIFTYのFAVにもこの話題が出た事で購入してみたくなり、金欠にも関わらずクレジットカードでニノミヤで2000年2月4日に購入しました。

TU−876の概要

製品カタログの説明によると、TU−876は、「デジタルなイメージを抱かせない、アナログ風のCDプレイヤー」、「真空管アンプTU870等にベストマッチングなデザイン」、「CDユニットは既に完成済み品として独立」、「電源部には、低リーケージフラックスのRコアトランスを使用」、「CDユニットに供給される電源用には、ゴールドチューブコンデンサ(ニチコン製)を使用」

仕様 ・使用真空管 /6189W(12AU7の高性能型)1本使用、・出力 /190mVmrs、・周波数特性 ・20Hz〜20KHz、・消費電力 ・5W、・外形寸法 W135XH125XD290、・重量 ・約3キロ

つまりは、アナログ部に12AU7を使用しているのを除けば、スペック的には通常のCDプレイヤーと変わらないです。しかし、キット品のCDプレイヤーとして独創的なデザインがされています。イーケイから発売されている6BM8ssアンプキット、300Bss、KT−88ssやプリアンプ等と同じ様に縦型のデザインで筐体は真空管アンプのものを流用した様なデザインですが、大きさなどは微妙に異なります。

CDを載せるトレーは着脱式でアナログディスクの様にターンテーブルの中央部に固定します。(ポータブルと同じ方法)、しかし、蓋は固定されておらず着脱式(安全装置により蓋が載せられている間だけ電源が入る様になっている。)この蓋は、サイズさえ合えば自作品を乗せる事も可能なので楽しいお遊びも出来そうです。

出力はアナログのみでヘッドフォン端子も無し、操作系は、通常再生、一時停止、早送り、早戻し、トラック移動、停止、リピートの機能のみでプログラム再生は出来ません。全部のLCD表示には、再生中のトラックがインジケートされます。このLCDは、軽く照明されていますが、あまり効果はありません。

肝心の6189W真空管は、Rコアトランスが入っているのと同じボックスに収められており、赤い強烈なLEDで照明されています。真空かそのものには外から手を触れられない仕組みとなっています。真空管交換はトランスカバーを外して交換する様になってます。また、ヒューズもミニタイプ1Aが使用されていますが、これも基板に直接ソケットで止められているので裏蓋を外して交換します。

電源コードは直付けです。

使用感と音質

操作は、やはりCDをいちいちターンテーブルに固定する操作がやっかいでこういった意味ではアナログディスクと同じ儀式が必要です。リモコンも無いので手操作になるので私の様なクラシックの長い曲が好きな人にはいいですが、小曲を選んで再生するのは不便です。トラック移動は、ポータブルプレイヤー並みの速度です。トラッキングの際の雑音はやや聞こえますが気になる程でない。通常再生では静かな方です。

この大きさで3キロと言うのは重い方だと思います。質量密度が高いので、音飛びも起こりにくく、音質面にも影響しており、インシュレータが上等なものがついているのも活きているようです。

デジタルアウトがないのでアナログダビングしか出来ません。(当然ですが)

音質は、完成直後から丸一日聞き込んでいたらかなり、円やかな音に変わってきました。ハイエンドに堅さが感じられたのが無くなってきました。真空管が暖まるにつれてさらに円やかさが増す様になりました。今後のエージングでどの様な音に変わるのかが楽しみです。

円やかでですが、高音部には独特の艶があります。こまかく分解して音を出すのでは無く、流れる様に音が出てきます。朝比奈隆のベートーヴェン全集(キャニオン盤)の第2番の第2楽章の弦がこれ程、自然に再生されたのを初めて聴きました。音のバランスは、1キロヘルツから2キロヘルツ当たりに若干ピークがあり、中高音域にまとまった感じがあります。コントラバス等の音は、やや軽い目ですが、今まで聴いていた機種に比べると十分に聞こえます。

この真空管CDプレイヤーを聴く限りでは、プリアンプでトーンコントロールの必要は無く、アルテックの20センチフルレンジからは、たかだか3万円程度の機種とは思えない、また、外形の大きさからは想像出来ない豊かな音で6BQ5プッシュプルアンプを通して聴くことが出来ました。

今後の楽しみとしては、6189W(12AU7)を交換したりする事で音質がどの様に変わるかです。また、マニアの人々であれば、アナログ回路に使用されているコンデンサを高品質なものに交換したり、乾電池点火・駆動等等の工夫も比較的簡単に出来ると思われます。

キットの製作記録

 梱包を開けた所。いよいよ組立開始!

 

 

 

 

 

 

 

1枚の基板をA,B,C,D,Eに切り取って分解した後に、A基板から組立を開始する。抵抗、ベースピン、ジャンパー、ダイオード、トランジスター、ヒューズ、コンデンサ、ピンジャック、IC、真空管ソケットと順番に半田付けして行く。A基板には、電源から増幅回路が1枚に収められている。B基板はコントロール系統、C基板は検出スイッチ、D基板は電源スイッチ、E基板にはゴールドコンデンサが載せられる。写真は、A基板組立中であるが、抵抗の数が多いので間違えない様に注意する。A基板さえ完成すれば、後は簡単だ。抵抗が付け終わった。

 

 

 

 

完成したA基板の表と裏から見た所、真空管ソケットが通常の部品とは反対向きについている。この取り付け側を前回のTU870の時に間違えて往生した。基板が完成した段階で、抵抗の値等、取り付けミスがないかどうかをチェックした方が良いでしょう。

 

 

 

 

完成したB基板、このスイッチは後の操作にも重要ですから、しっかりとまっすぐ取りつける事が大切です。裏のLED2個は、LCDのインジケータを照明する為のものです。他の部品と逆の方向についているで注意と十分内側に向くように取りつける必要があります。

 

 

 

 

完成したA,B,C,D,E基板です。ここまでで製作時間は約3時間でした。それほど難しくは無いですが、部品の取り付けミスが一回あったので、幾分時間をロスしました。それと撮影しながら組み立てたので、余計に時間がかかりました。

 

 

 

 

 

 

 

 

これが心臓部のCDモジュールで、この中に制御回路とDAC等必要な回路が全て含まれています。頑丈な鉄製の筐体に収まっています。

 

 

 

 

 

                           

 

 

 

モジュールを開いた所。(勝手に開くと壊れる可能性があり、サポートが受けられなくなる可能性もあるので絶対に真似しない事。)

手前に、ヘッドフォン端子、真ん中にライン端子、右にDC6Vジャックがある。サイズに収める為に先端を切断されている。これから、このモジュールはポータブルプレイヤーの流用品である事が判る。

丈夫の駆動モーターには中国製との表記があった。内側のコネクタを外すと上下に分解出来るが壊れると怖いのでこれで止めました。

 

 

 

 

 

 

いよいよ筐体に出来上がったA,B,C,D,E基板を順番に組み付けて行く。写真は、トランスとE基板、D基板が取り付け終わった。CDモジュールには、C基板、LCD部にはLCD用金具を取りつけてから、スペーサを取り付け、全ての部品を装着して行く。特に注意したいのはスペーサのサイズを間違えない事、無理に押し込まない事。

 

 

 

 

 

 

 

 

無事に全ての基板を組み込んだ所。これから配線作業に入るが、コンデンサをつけたままで裏返しにする。部品を傷つけない様にコンデンサ周りを保護する等の気配りが必要だ。また、CDモジュールのレンズの部分には手を触れない様に。

 

 

 

 

 

 

 

 

各コードを基板に配線している所、コードは正確に切断し、端末は、半田メッキで処理しておくと簡単に配線が出来る。この作業は、TU870の様なスイッチ配線が無く簡単。EKキットもかなりノウハウが蓄積されたと見えて、新製品ほど、組み立てやすくなっている。

 

但し、マニュアルに書いてなくて注意したいのは、電源スイッチから延びているコードの扱い。これは基板の中をかなりの長さで交流電源が流れており、残留雑音の原因にもなりかねない。私の場合は、スイッチから延びている線をよじる事で対処した。また、左側の線についてもバラバラなのでこれも結束した。(結束する場合、くれぐれも交流電源のラインと結束しない事。)

特に電源からのライン、トランスからの高圧線が間違えなく配線されているかチェックする。

 

 

 

チェック作業も完了し、6189Wをソケットに差して投入テスト直前の状態。右側は、上蓋である。上蓋の形状もアクリル板が上に来るタイプとシボ入り鉄板が上に来るタイプとお好みで選択出来る様になっている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

煙りも出ず、1発でテスト合格、裏蓋とトランスカバーをつければ完成です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 トランスカバーをつけると真空管が見えなくなるので、しばらく開けたままで動かしてました。トランスカバーだけを自作して、コンデンサと真空管が見える様な風に改造したい気もします。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

6BM8を使用したTU870アンプに直結して音だしをしている所、音質はこの時点では若干堅かったですが、徐々にこなれて行き、真空管特有の暖かい音質に変わって行きました。真空管を使用したライン部からの雑音は全く聞こえず、この点でも感心しました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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