6C6GC管球アンプキット製作記

 

 

 

 三栄無線の6L6GCのUL接続シングルパワーアンプキットを組み立てました。完全自作を目指していたのに今更何故キットと言う事ですが、三栄無線のSA-5300Uは、今まで組み立てたキットとは異なり手配線で組み立てる方式で、これを組み立てる事で手配線のノウハウを取得できます。完全自作の場合では、これまで裏は基盤を中心に組み立ててきたので、手配線を経験しておく必要があると思ったからです。

 

 キットの価格は、塗装シャーシーで\32,000ですが、折角ですのでステンレスを特注したので\5,000円余分にかかりました。通信販売ですので、送料が\1,800と手数料がかかります。実は、この会社から同じ回路を使用したSA-5300Vが発売されています。こちらは、CR類については基盤化されており製作が容易ですが、私の場合は、300B、6BM8と基盤キットはいろいろやっているので、あえて旧タイプを注文しました。お店に問い合わせてみましたが、旧タイプの在庫はいろいろある様です。余談ですが、同社の通販カタログにはこれ以外にいろいろな機種がありますが、品切れとなっているのも多いので通販で申し込まれる方は在庫を確認された方が良いでしょう。

 宅配便で届きました。箱の大きさは、前に作ったTU873よりもやや小型ですが、重さは案外あります。梱包は厳重にしてあり、幾重にも包装されたシャーシーの中に6L6GC、12AU7等の真空管、その他のパーツが収めてあります。下にはトランス類とチョークが包装されてありました。説明書は、ありますが、簡単な手順を書いたものと、回路図、カラーで線別で色分けされた実体配線図が入っています。

 最初に部品類を総てとりつけます。小さなものから大きいものへの順番です。特に注意したいのは、真空管ソケットの向きです。これは、説明書に今少し詳しくかいて欲しかったです。実体図でも判りづらく、「管球王国12号」の製作記事にシャーシーを裏から見た写真があるので参考にしました。回路図と使用されている真空管のPINナンバーとの関連、配線の流れから経験者は向きは判りますが、初心者には少しつらいと思います。他に注しなければならないのは350V47マイクロファラッドのブロックコンデンサの取り付け向き、特にアースの向きを実体図を元に合わせて置く必要があります。私の場合は、ラグ板を取りつけるのを忘れてしまってトランス類の後にしたのですが、やはり、重いトランスの後の取り付けは、大変です。小物から忘れない様に取りつけましょう。トランス類は、傷つけないように取りつけ後にビニールでくるみ、輪ゴムで止めました。

次に配線ですが、まず、コンセントから電源スイッチ、電源トランス周り、その後、ヒーター、アースライン、チョークから平滑コンデンサの回路、アウトプットトランスから真空管ソケットの凡その流れ取りつけました。結線後に固定するのですが、実体図を頼りに仕上がりの形を思い浮かべながら長すぎない様に線を切断し配線して活きます。特にポイントになるのは、ラグ板に配線する場合は、後で部品を取りつける事を考えて下の方に取りつけなければならないです。配線の色も実体回路図に忠実に取りつけていきます。 

次にCR類の取り付けですが、これは、配線の際にラグ板の端子に部品を取りつけるスペースをキチンと確保してあれば極めて簡単に出来るはずです。そうでない場合は倍の時間かかります。12AU7ソケット周りは配線と部品が混み合うので難所です。隣の線は、真空管ソケットに接触ショートにならない様に注意して取りつけます。1.8Kオーム抵抗とセラミックコンデンサの配線足にはチューブで保護し、ショート対策をします。部品が取りついたら、いよいよ完成です。シャーシー内部の写真は、配線を完了し、通電試験を行う前に撮影しました。 通電試験で煙りがでるとかトラブルがなければ、真空管を取りつけて、3箇所のテストポイントの電圧をDCレンジで測定します。私の場合は、Rチャンネル12AU7の22KΩの75Vが出ませんでした。ソケットの1本が線に触れてショートしていたのが原因と判り、修正したら、OKでした。 

現在、エージングの最中ですが、雑音は、チョークの効果か300Bアンプよりも小さいです。ハム音は聞こえません。出力4.5W+4.5Wにしては、音にスケール感があり能率の高いスピーカーで鳴らす限りは、不足感は無いです。中低音の音は分厚く6L6GCの威力かダイナミックさでは、300Bに匹敵か場合によっては凌ぎます。フォーレのレクイエムのCDでバリトンの歌手の声がこれだけ充実した太く響いたのを初めて聞きました。口の形もなかなか明瞭です。特に中低音の表現力は優れています。全体に暖かく蕩々とスケールの大きな音が響きます。高音もレンジはそれなりに伸びており、弦楽器の音も自然に聞こえます。アナログレコードでカラヤン指揮ベルリンフィル、ハウザーのピアノ演奏のブラームスの第2コンチェルト第2楽章のピアノのキータッチ音が明瞭に聞こえます。しかし、冷ややかな透明感とかそう言った表現はやや苦手の様です。エージングが進めば判りませんが、透明度の点では今一歩、デュリフレのレクイエム(オルガン版)でオルガン演奏をバックにしたコーラスの遠近感は難しいです。(300Bのアンプでもこの部分は苦手だった。)ソニーロリンズのアナログディスクでは、テナーサックスがパワフルに響きます。この値段では、満足出来る水準です。

 

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