EL846BQ5シングルアンプ製作記

先日、組み立てた6L6GCシングルは、手配線で色々と勉強になりましたので、今回は、手配線のオリジナルアンプを組み立てて見たくなりました。そこで、6BQ5シングルが手軽に出来て、音も良いとの事を聞いていたのでこれに決めました。

 

 

キット以上のコストパフォーマンスに挑戦!

材料代は、

真空管  6BQ5  2本   ¥2000

12X7A11本    ¥780

 

トランス ノグチトランス

品名

数量

単価

金額

PMC-100M

1

\4,700

\4,700

PMC518H

1

\2,600

\2,600

PMF-6W

2

\3,500

\7,000

合計

\14,300

 

シャーシー タカチ製  TK−20

¥1980

その他CR類及びパーツ代  約 ¥6000

合計           約 ¥25000

 

以上で収まりました。これでもキットよりは若干安い位です。PMC100Mはパワートランスで、前回の6BQ8の自作にも使用した240V100miriアンペアの出力が可能で手頃な価格なので、また、これを購入しました。また、PMC518Hはチョークです。キットにはチョークは使用されていないですが、少しでもピュアな音をという事で採用しました。チョークがなければ、更にコストを抑える事が出来ます。PMF6Wはシングル用のアウトプットトランスで3K、5K、7Kのインピーダンスが選択可能です。周波数レンジが60〜90Kと低音が出ないのと6Wと小出力用ですが、キットよりも低価格で製作する目的の予算の関係もあり、この程度の性能で妥協と言う事にしました。

回路は、トライオードキットのVP−MINI84が管球王国に紹介されていた記事を参考にしましたが、B電源回路については、チョークが入るので一部で変更されています。

電源コンデンサの240Vはキットとは変わりないですが、6BQ5プレート電流は実測の結果、250V、112AX7は約70Vとキットと実測値は異なっています。NFBは、アウトプットトランスの8Ω側から10Kの抵抗を介して12AX7のカソードに接続されてます。

シャーシーの構造で苦労、やはりちゃんとしたものをつかいたい

シャーシーの構造は、出来上がり写真を見れば判りますが、土台の部分は前後に黒色のアルミ板(1ミリ位)、上部の銀色の部分は左右に被さる構造となっており、トランス類、真空管類、B電源、ヒーター回路、増幅回路は、全て上部の裏側に、電源ソケット(私は必ず差し込み式のコネクタにしており、電源コードを変更出来る様にしています。)、ヒューズ、電源スイッチ、パイロットランプ、RCAコネクタ、出力プラグ類はは、黒色の下側の部分に別に配線します。全て完成した時点で、100V電源コードをトランスに、入力コネクタ、出力コネクタの配線を行います。(非常に面倒くさくて、やはり、シャーシー代をケチった罰が当たったと思いました。)

 

 

B電源回路は、シャーシーの厚さが薄すぎてそのままでは、47μf450Vの電解コンデンサが入らず、横にした形で作りました。

回路図では、47μと10μと別になっていますが、同じ基盤上にまとめました。電源回路のみは、使用しているブリッジダイオード等の都合から基盤上に作り、チョードチョークトランスの裏側に4本足のスペーサで止めてあります。

他の回路は、手配線です。今回は、アース母線とラグ端子を真空管ソケットのネジから取りつけてあります。スペース的にはCR類の点数が少ないのでこれで十分で、シャーシの上側がまるまる外れて上下も広々とあいてますので作業は楽でした。また、完成後の3極管接続に変更したりしましたが、やはり手配線ではこうした配線のやり直しも楽ですね。

 

製作時間は、シャーシの穴開け加工と合計で1日はかかりました。キットだと簡単に完成しますが、完全自作となるとシャーシー加工の力仕事、配置の見当、配線の段階で思わぬハプニングがあったりして、結構、その対策の検討に時間がかかります。下の完成写真では、右側の手前がチョークですが、電源トランスのリーケージフラックスの影響が出やすい配置となっているのでスペースがあれば、アウトプットトランスの横に並べた方が良いです。また、スイッチとパイロットランプの位置が左に極端に寄ってますが、これは、その上に被さる形で乗っているシャーシー上の電源回路基盤との干渉をさける為です。この場所でなければ、中央部につければ良かったのですが、そうすると増幅回路への交流雑音の影響が心配されるので、結局、この位置にしました。

 

完成後の音出しは、順調にといいたい所ですが、先ほどの上下に分かれたシャーシからの配線に一部不手際がある等のトラブルが起こったり、ヒータ電源の片方をアースに落とすのを忘れる初歩的ミスで大きな雑音が出たりしたりして、少し難産でした。また、先ほどの電圧計測がなかなか計算通りの数値がでないので配線を検討したりするのにも時間がかかりました。

 

試聴の印象・音の立ち上がりが良好でギター音楽に向いている

やはりギターアンプに使用されているだけの事はある。

その後は、アース関係を見直した結果、雑音もほぼ収まり、試聴となりました。音の傾向は、同じ5極管の6BM8と似た様な傾向ですが、こちらの方がずうずうしい音がします。最初は、音が固かったのですが、聞き進んで行く内になめらかになりました。音量は、300Bシングル(7W)、6L6GC(4.5W)、6BM8(2.8W)の中間位までは歪みなく出せます。音質の傾向は、中高域に重心が偏っている音で低音はあまり出ません。しかし、レンジ感は自然で不自然な誇張はなく、6L6GCよりも自然な音がします。アウトプットトランスをワイドレンジのものに変更するとやや調子は変わるかもしれません。ギターやリュートの音が他のどのアンプよりも自然に再生されます。ギター等の音の立ち上がりの速い楽器によく追随します。この辺、ダンピングファクターが良好である6BQ5の特性が発揮されているようですね。この玉がギターアンプに使用されている訳もよく判ります。音場は、あまり広がらずスピーカーの奥の方に広がるタイプです。前回自作した6BM8アンプはTANGOトランスを使用しているのでその分やはり分厚い音がします。オーケストラの最強音の時や合唱のフォルテッシモの時に歪み感を感じたので、3極管接続に変更しました。6BQ5の9ピンに伸びる配線を外し、変わりに7ピンに接続しますと3極管接続になります。この場合の負荷抵抗は、3Kになるので5Kから接続も換える必要があります。(私は面倒だから省力した)真空管ガイドブックには、3極管接続の場合は、内部抵抗も減少でダンピングファクターの改善されるのでNFBは必要ないとありましたが、実際に外しますと音量はあがりますが、むしろ歪み感が増える様でしたので、NFBはかけたままにしました。3極管接続の場合は当然、出力は下がりますが、聴感上の音量はそれ程変わらず、素直で滑らかな音がしました。まぁ、価格面と音質のバランスを考えるとなかなか良い結果が得られたと思ってます。

 

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