300Bキット製作記

この間、6BM8の真空管を使用したキットTU-870を製作したばかりなのに、性懲りもなく今度は、名高い真空管300Bを使用したキットが同じ会社から販売されているので、誘惑に負けて製作してみました。

300Bとは1930年代の終わりにアメリカで開発された真空管で映画館のオーディオシステムに採用されたものです。1983年までアメリカでは製作されたようですが、様々なバージョンがあります。300B Worldのページに詳しくその辺りの事は解説されています。

300Bと言う真空管は、オーディオファンの中では垂涎の的ととも言うべき名球のようですが、開発元のウェスタンエレクトリック社のオリジナル製品の入手はかなり困難で、価格も高いのが現状です。私が製作したTU873では、中国製の300Bが使用されています。(中国製でもバラで買うと1本1万2,000円以上するようで、球が切れてしまったらどうしようかと今から悩んでいます。)

また、300Bを使用したメーカー製のアンプでは、ピンからキリまであるようですが、中国製の300Bを使用したたとえばイギリスのアレマ社の製品でも30万円以上します。TU873にデザインはそっくりです。もっともこちらは、モノラルプッシュブルなのでステレオでは、60万円必要です。私が購入したのは、ある家電屋さんで、5万円強でディスカウント販売されていたので、この値段で300Bがと考えて飛びついた訳です。

開封したところの写真 

お店から帰って段ボールを開けた所。段ボール蜜柑箱位の大きさでなんとか片手で持って帰れる程の重さ。想像したよりは軽かったです。

基盤1

パソコンであればマザーボードと言うべき基盤です。真空管アンプなのにプリント基板なんてと言う人もいます。しかし、このお陰で配線関係は非常に簡単でしかもかなり複雑な回路もくむことが出来ます。基盤は、1枚入っていますが、A,B,C,D,E,Fに割って使用します。上のは、一番大きいA基盤です。部品をいくつか取り付けた所です。抵抗の組立は終わってフィルムコンデンサを取り付け終わった所です。

基盤2

ほぼ、組立完了したA基盤です。ここまででほぼ2〜3時間位です。プリント基板の上の白いのは、300Bと6SN7GTのソケットです。基盤に直接半田付け固定します。これは、TU870の時と同様で、前回は、反対側に誤って取り付けてしまいました。今回は、順調に4個のソケットを固定出来ました。ソケットの足が浮かない様に半田付けするのがこつです。

基盤3

真空管ソケットの拡大写真

基盤4

同じA基盤を反対側から見た所

基盤5

電源部分が中心のD基盤の完成写真。コンデンサとかFETとかブリッジダイオードとか取り付け方向を間違えると致命傷になるので注意。ここで私は、ヒューズソケットの取り付け方向を間違えてしまいました。これを取り外して装着しなおすのでに20〜30分程度のロス。ここまでの作業時間はほぼ5時間位でした。銀色に光っているのはジャンパピンに半田もりした状態で、これに後で半田メッキしたリード線を溶かしてつけます。この部分は面倒でも念入りにやっておいた方が作業が後で楽です。

基盤6

D基盤を反対側から見た所。四角いのはブリッジダイオード。右端にFETが見える。

基盤7

基盤の完成した所。右下の左がB基盤でボリューム部分、右下右は、E基盤でピンジャックが実装されてます。基盤の完成まで6時間程度かかりました。

組立1

部品の配線作業です。基盤が完成するとケーブルの配線作業を行います。リード線の長さを正確に切る事、端末のよじりとか半田メッキと丁寧な作業が成功の秘訣です。写真は、入力側の基盤にケーブルコネクタを接続した所。この辺は、パソコンの部品の様です。

組立2

部品の配線を完了し、筐体に納めた所。この前にケースの組立工程があるのですが、電源トランスのネジを間違ったネジを使用してしまい。やりなおし。更に基盤を固定する為のスペーサ(パソコンのマザーボード固定用のネジの様なもの)固定作業もあり、面倒です。基盤をすべて取り付け、おおよその組立完了までに8時間かかりました。

組立3

部品の取り付け、基盤、配線のチェックが終わり、300Bと6SN7GTを取り付けた所。いよいよ音出し!

動作試験

CDとスピーカーを接続し、各入力ジャックからの音声をチェックする。まさに300Bアンプ誕生の瞬間です。

完成1

一発で音出し試験に合格したので、キラキラ輝く鏡面パネルを装着した所。鏡面パネルに300Bが反射して輝いている。

完成2

完成した300BアンプTU873と前作のTU870を並べた所。こんなに大きさが違う。

キットの難易度

TU870を既に組み立てた経験があるので比較的簡単だったと思います。半田付け箇所は、TU870の2〜3倍位あるので半田が1本使い切ってしまいました。配線は、870の様なシールド線はなく、通常の線でしたので、半田メッキを丁寧にやった事もあり、簡単でした。出力トランスの取り付けスペースに余裕が無い事、ネジ止めに裏からなので苦労しましたが、慎重にやれば出来るでしょう。TU870の場合は基盤はすぐに完成しましたが、なにぶん小型な筐体だけに配線作業が難航しましたが、今回はそれもなく、前回は、音だし時点で片チャンネルから音が出ないなどのアクシデントがありましたが、今回は、全くその様な事はなく、2カ所の早合点による間違いの修正等のロスがありましたが、非常に順調で、300Bだからと言って特に難しい所はありませんでした。説明書をよく読み、丁寧に作業を行えば、時間をかければ組み上げる事が出来ると思います。

試聴した第一印象

現在、エージング作業中ですが、870に比べると音の量感、質感が全く異なり300Bはいかにも真空管らしい自然で豊かで暖かい音色がします。アナログ的なトーンです。特に低音の量感、質感ともに優れています。

ヤーノシュ・シュタルケルの演奏、ピーター・バルトークが録音した歴史的名盤コダーイの「無伴奏チェロソナタ」のアナログLPを試聴しましたが、弓づかい、松ヤニの音、指盤をタッチする音、楽器の大きさを感じさせる胴鳴り、演奏者の呼吸、譜めくりの音等、今まで聞こえなかった生々しい音が聞こえます。

音の肌理、定位や透明感、レスポンスの速さは、TU870の方が気に入ってますが、総合的な評価は、TU873の方が300Bだけあって、上だと思いました。ヴォーカルや低音楽器の音の再現性には関心しました。

 

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