【山域山名】 南アルプス南部
【山行形態】 縦走
【山行日程】 1997年10月19日(日)[N]〜25日(土)
【メンバー】 住吉 匡

 この山域はその大きさと、不便なアプローチのため、多くの山行日数が必要になる。仕事をしていると、この山域の縦走は難しい。あこがれの対象になってしまう。仕事を離れ時間のある今がチャンスなので、夏に実行するつもりで6月頃山行計画を作成したが、諸処の事情(公務員試験)で延期していた。そして、雪が着く前の10月、この時期がラストチャンス。当初の山行計画では当日の朝発であったが、夏のシーズンが終わりバスの経路、時間共に変更になったため、前日の夜発に変更した。   【食糧計画】※時間は登山地図のコースタイム

【朝】【昼】【夜】
1日目【6:50】
パンカレー
2日目【5:50】ラーメンパンマカロニ
3日目【9:10】マッシュポテトパンカレー
4日目【8:30】雑炊パンマカロニ
5日目【9:40】マッシュポテトパンラーメン
6日目【9:40】雑炊パン
予備日1ラーメン
雑炊
予備日2ラーメン
雑炊
10月19日(日) 快晴
 16:30頃家を出て新宿経由であずさに乗り岡谷へ。自由席は新宿を出る時点で満席だったので、八王子経由で行かなくて良かった。岡谷から終電で伊那大島に23:30着。バス停を確認し、ホームの待合い室で寝る。空は満点の星。


10月20日(月) 快晴

鹿塩──■塩川小屋(1,385m)──■三伏峠(2,645m) 【6:40】
8:00
10:20
14:40

 朝一番のバスに乗り、8:00鹿塩(かじお)にて下車。バスの運転手さんに塩川までの道を聞くと、「本当にここから歩くの?」など随分同情された。ここから前半アスファルト、後半砂利道の林道歩き。2:20程で林道歩きを終了。
 10:20塩川小屋着、登山計画書を箱の中に提出。ここから川沿いに歩くが、7年前に休んだ場所などを覚えていて懐かしい景色がいくつかある。1:00程歩くと樹林帯の急登なる。ここがきついきつい。ちなみにこの辺の景色はまったく覚えていない。とにかく急で重荷がこたえる。途中で下りのためにと持ってきていたストックを取り出しダブルストックで登る。こんな所で使うとは思わなかった。気が遠くなってきた頃、鳥倉林道からの道と合流。  14:40、三伏峠着。地図にはここから近くに水場が在るようだが、標識が出ていないので一張りあったテントの夫婦に水場を聞くと、ここから30分掛かると言われた。水場の近くにテントを張ろうかどうか迷ったが、その場合明日ここから降りた分がそのまま登り返しになるのでやめ、解放されている小屋を使う。早速用意をして、水を汲みに行く。この途中ガサッと音がしたのでびっくりすると、カモシカ(たぶん)がいた。でも、最初熊かと思って後ずさりした。色が黒くて首の所の毛も短い。前に八ヶ岳で見たカモシカとは随分違う。念のため石を拾い、気を取り直して目を合わせながら道をそおっと進んだ。沢で水を汲み、顔を洗ったりして、小屋に戻るまで50分掛かった。今日はもう本当に疲れて飯を食べて直ぐに寝た。夜は結構冷えて耳が痛くなる程。21:00頃の気温が3度。


10月21日(火) 快晴

■三伏峠(2,645m)──烏帽子岳(2,726m)──小河内岳(2,801m)──高山裏小屋(2,360m) 【5:20】
5:30
6:15
7:40
10:50

 4:00起床。5:30出発。今日も最初からダブルストック。これ、癖になりそうというより、もう癖になってしまった。結局この山行を通してほとんどダブルストックで歩いた。去年、佐藤さん(名古屋白稜会)と登った烏帽子岳に6:15着。眺めも一緒。7:40小河内岳着。眺めは烏帽子とそう変わりない。この後は東斜面の樹林帯を歩く。とても、暑い。展望もなく、もう暑くて暑くて嫌になる。
 10:50に高山裏避難小屋着。ここまで、誰にも会わなかった。まだ時間は早いが、その割に疲れてやる気なし、気力なし。小屋は小さいがとてもきれいである。早速水を汲みに行くがかなり下まで下っていく。水場はちょろちょろしか出てないので、汲むのに時間がかかった。
 この小屋からは前岳、中岳がとてもよく見えるが、それにしてもここから高度差600mあると思うとぞっとする。明日の行動時間は長いため、今日みたいに暑ければとてもきついだろう。暗いうちに出て気温の低い時に登ってしまおうかと思う。
 午後は小屋のノートを読んだりして、のんびりと休養。小屋のノートの10日前の日付で「小屋近くの樹林帯の中で小熊に出会う。」との記述があり、怖くなった。午後、荒川小屋から来た単独のおじさんがテントを張り少し話をした。この日、寝袋に入っていると暑くて寝られないので、上からかけて寝た。最初やはり暗いうちに出発しようと思って3:30にセットしていたアラームを、夜中寒くなって起きた時怖くなって4:00に直した。


10月22日(水) 快晴

■高山裏小屋──▲中岳──荒川小屋──大聖寺平──赤石岳──■百間洞露営地 【10:10】
(2,360m)
(3,083m)
(2,780m)
(2,720m)
(3,120m)
(2,500m)
5:40


10:25


13:15
15:50

 4:00起床。5:40出発。熊が怖いので、結局少し明るくなってから小屋を出た。樹林帯を抜け、カールに入る。カールの中は、気温も低く、風もあり涼しい。また、心配していた日差しも、ここは西斜面なので午前中は当たらないのでした。ちゃん、ちゃん。とにかく冬山のような空気がとても気持ち良い。この名前の付いていないカールを半分くらい登り、下を見る。とても美しい曲線。上を見ても同じく実に美しい曲線。この美しいカールの中に自分一人、心地よい寒気の中をぐんぐん登る。本当に気持ちが良い。この山行を通して最高の幸せを感じた時であった。実に良い気分でこのカールを登り切り、上部で荒沢大崩壊地の縁を通る。風か何かで小さな崩壊が続いていて、目の前で嫌な音を立てる。ちょっと不気味。
 前岳に8:40着。荷物を置き中岳を往復。9:20分岐よりせっかく登ったのにガレ場を下り始める。10:25荒川小屋着。ここにおじさんが一人休んでいた。ここから斜面を少しトラーバース。ここが直射日光をまともに受けて暑い。たまらず帽子を被る。トラバースが終わると、赤石岳へのまたしてもきつーい登りである。1時間くらい登ると下の方に赤いヤッケを着た登山者が登っていた。この急登、実にきつい。何度も休憩を取る。赤石岳上部北面は積もっているわけではないが雪が薄く付いていて、雪と岩による白と黒のコントラストは少々不気味である。
 13:15赤石岳着。写真を撮ると、赤いヤッケを着たおじさん(50歳位)が登ってきた。聞くともう一人単独のおじさんが登ってきていると言う。この日は二人とも千枚小屋から来たそうだ。このおじさんは赤石小屋に下りるそうだが、もう一人のおじさんは自分と同じく百間洞露営地へ行くとのこと。13:30下山に移る。30分程でおじさんが追いついてきた。少し話をする。百間平で地平線に4つ足の大きなシルエットが見える。熊かと思ってザックを置きおじさんを待つ。すると、「大きなカモシカがいたねー」と言った。そして「熊はこんなに高いところには来ないよ」と言った。この後の下りで更にバテて、15:50百間洞露営地着。
 小屋に泊まろうとしたら人が入っているので金を取る(なんと素泊まり4500円)と言うので、おじさんと仲良く並べてテントを張った(テントはただ)。ここは水場が近いのが良い。せっかくなので小屋でビール(700円)を買った。


10月23日(木) 快晴

■百間洞露営地── 中盛丸山── 兎岳── ▲前聖岳── 聖平小屋 【7:35】
(2,500m)
(2,807m)
(2,818m)
(3,013m)
(2,300m)
5:40
7:25
9:00
11:15
13:15

 3:30起床。5:40出発。大沢岳を登らない方が時間が短縮できるのでパスすることにし、旧小屋経由の道を歩くことにする。本日もまた急な登り返しで始まる。コルに7:00。7:25中盛丸岳。9:00兎岳着。
 聖岳が目の前にドカンとそびえている。しかし、この中盛丸岳と聖岳の間に稜線が延びているわけではなく、大きく切れ落ちているではないか。せっかく登ったのに、またしてもこの高度をすぐさま捨てなければならない。そして、聖岳への更なる登りが待っているのである。まったく、理不尽極まりない。おじさんとグチる。ここから急な岩稜帯を下る。日があたり実に暑い。思わずコルの日陰で休憩した。ここからの登りがまた急である。下部は岩場。
 11:15に聖岳山頂。赤石岳がよく見える。おじさんはこの日茶臼小屋まで行きたいらしく先に下った。ここからまたものすごい高度差を下ることになる。本当にこれは縦走なのだろうか。昨日に引き続き下りはバテ気味で、聖平小屋に13:15着。
 旧小屋が解放されているので、これを使う。早速水を汲みに行くが、沢はずいぶん枯れていて5分以上下っても、水がなく少し不安になる。そのうちちょろちょろと水が出始め、流れのある所まで更に下って水を汲んだ。小屋でのんびりしていると、3人パーティーが2組来てこの日7人が小屋に泊まった。しかし、単独は自分一人なので少し寂しかった。


10月24日(金) 快晴

聖平小屋── 茶臼岳── 易老岳──■光小屋── 光岳── 光小屋 【10:30】
(2,300m)
(2,604m)
(2,354m)
(2,510m)
(2,591m)
(2,510m)
5:30
9:10
11:25
13:40〜15:30


16:00

 3:50起床。5:30出発。出発早々ストックを忘れ小屋に取りに戻る。前半は樹林帯の登り。途中からガレ場を登る。登山道左のカールに鹿が3頭いた。上河内岳手前で雷鳥が登山道の脇から現れる。ザックを降ろしカメラを取り出す。全然逃げようとしない。もう一羽出てきた。かなり近寄り何枚も写真を撮った。上河内岳山頂への分岐(2715m)に7:40。山頂はパスして先を急ぐ。ここから先は初めて縦走っぽくなり、緩やかな稜線を歩く。
 9:10茶臼岳着。とても雰囲気の良い山頂である。気に入った。ここから易老岳までの稜線は樹林帯の中で主に東斜面を歩く。とても暑い。暑いとどうしてこんなにバテてしまうのだろうか。力がでない。急に消耗してしまう。9:55仁田岳への分岐を通過し、11:25易老岳着。この途中でリスを見た。山頂は樹林帯の中で展望は全くない。ここから更に下り最後に光岳への登り返しが待っている。腹がへるが我慢してがんばる。
 13:40光小屋に到着。今日も一日誰にも会わなかった。小屋を覗くとなんと真っ暗で気味が悪く、テントにしようかと思う。しかし、小屋の周囲を調べてみると窓に被さっている雨戸のようなものは、つっかえ棒をすれば上に開いて小屋の中に光が入ることが解る。さっそくすべての雨戸をつっかえ棒で上げる。これで、小屋に入れる。荷物を置き早速水汲みに行く。この水場までの道は今までで一番急だがよく整備されていて、水もきちんと出ていてほっとした。小屋に戻り、ラーメンを作り食べる。
 その後15:30光岳山頂に向かう。山頂は樹林帯の中で展望はなし。写真を撮り16:00小屋に戻る。この後小屋のノートを読んだり、書いたりして過ごす。暗くなってきたので、夜飯にまたラーメンを作り食べる。今回の山行も明日で終わり。そう思うと精神的にゆとりができ、その後もローソクとヘッドランプの明かりでノートを読んだりしてゆっくり過ごす。18:30頃小屋の外で人の足音。「お願いしまーす。」とおじさん(50歳位)が一人入ってきたのにはびっくりした。車で来たのだが道を間違え10:00に易老渡を出てきたとのこと。明日は加加森山を通って池田岳付近にテントを張り、??岳をピストンして池田岳から下山。そこに自転車を置いてきたのでこれで車を回収するのだそうだ。おじさんもキリマンジャロに行ったことがあるそうで、この話で盛り上がり21:00頃まで他にも色々な話をした。


10月25日(土) 曇りのち快晴

■光小屋(2,510m)──▲易老岳(2,354m)──面平易(1,480m)──易老渡(860m)──[車]──(バス停) 【9:20】
5:40
7:20
9:20
10:30




 3:50起床。5:40出発。ガスがかかり、風がある。7:20易老岳着。面平(つらだいら)に9:20。易老渡に10:30。  下りはいつもながらかなり疲れたが、早く着いたのでバスの時間には間に合うだろうと思い、林道を歩く。いきなり道を間違え15分ほどロス。その後もフルパワーで歩く。途中からこの林道は登りはじめなんと1100mまで高度を上げた。林道でこんなに登るなんて、もうホントにきつい、疲れる、かったるい。また、直射日光が当たる所では、暑くて暑くて仕方がない。一生懸命歩いたが4時間以上歩いてもバス停は現れない。
 バスの時間が近づき、少し焦ってくる。途中でおじさんに聞くと「あと1時間もみれば行くよ。」というので、気合いを入れ直し歩く。あと1時間でバスの時間なのだ。しかし、歩いても歩いてもバス停の気配はない、まだ高度が高いのだ。30分歩いてもうダメなんじゃないかと思っていたら、午前中にすれ違った車に拾ってもらった。この人は去年、面平で3kgの舞茸を採って、今日も探しに行ったのだが林床が乾いていて全然ダメだったそうだ。バス停はまだかなり下であった。しかし、ガイドブックの4時間というのは嘘だ。5時間は絶対かかる。6時間コースと言って良いだろう。和田のバス停まで送ってもらいこれでバスの乗り継ぎの1時間得した。
 ここから平岡行きのバスに乗った。ここからどうやって帰ろうか迷うが、新幹線を使わない限り今日中に帰ることが出来ないので、少し遠回りになるようだが豊橋経由で帰る事にする。23:30頃無事帰宅。


【反省・感想】
□肩が必要以上に痛いときは、腰ベルトが緩んでいる(教訓)。
 ザックにおける各種ベルトの調整にもっと気を使いたい。
 この件に関し今後研究が必要。
□今回の山行ではダブルストックを多用してしまったが、なるべく用いるべきではない。
□天気図用のラジオの周波数は予め調べておくべき。
 その場でなかなか見つからない。
□行動食は塩気のある物が食べたくなる事がある。
 「するめ」が応用も利くし、塩気も強すぎず、良いと思う。
 次回携帯の事。
□「乾燥えび」はラーメン、雑炊と、何に入れてもまーまーの味であり応用が効く。
 なんと言っても、安いのが良い。
□マッシュポテト(朝食)の余りを行動食のパンに挟んだが、とても旨かった。
□マッシュポテト用には、250gのマヨネーズは少々多かった。150gで良かった。
 塩・こしょうがあればマヨネーズは思ったより使わない。
 油代わりにも使うのなら別。
□マカロニは9分ゆでを持っていったが、キャンプ地の高度を考え3分ゆで位の方が良かった。
□ローソク消費 5泊で3本
□電池消費   5泊目の就寝直前にアルカリ電池切れる。
□燃料消費   5泊6日でEPIガス1缶ちょうど(マカロニは9分ゆで)
        満タンガス缶=380g、空ガス缶=150g、よってガス=230g
□沢に行った時、制作したまな板はテント生活でも大変有効であった。必携。
□水汲み用、折り畳みポリタン(5L)は大変有効。水場が近い場合も便利。必携。
□特急あずさ自由席利用の場合、満席になるので新宿から乗ること。
□ザック重量 行き(水含む)27.5kg、帰り(水抜き)20.0kg
□電車、バス運賃
北浦和駅─新宿駅─(あずさ)─岡谷駅─伊那大島駅電車(運賃7,250円)
伊那大島駅─鹿塩バス(運賃1,000円、荷物料金500円)
和田─平岡駅バス(運賃620円、荷物料金310円)
平岡駅─豊橋駅─(新幹線)─東京駅─北浦和駅電車(運賃10,080円)
19,760円

□水汲み記録
20日15:10〜16:00【0:50】三伏峠
21日11:25〜12:10【0:45】高山裏小屋
22日幕場近接【---】百間洞露営地
23日
【0:20】聖平小屋
24日14:00〜14:30【0:30】光小屋



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