UIVERSITY 学習 / 大地と人間
 

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            ここでは、テキストを読み、講義を聴いた私が、私自身の見解をまとめて行きます。 

 

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 No.1 <T> 文明史の中の農業・農村/ 日本の食料安全保障  1999.10.21
 No.2 <U>日本の食生活と農業の変容過程 有機農業の展開  1999.11. 9
 No.3 <V>国際化時代の食と農/ GUR以降の農産物貿易の概略  1999.11.23

 

                                                      (1999.10.21)

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   ええ、放送大学を担当せよといわれた、堀内秀男です。ひとつ、よろしくお願いしま

す。

 

 <T> 文明史の中の農業・農村

                  

日本の食料安全保障          

 

  さっそく内容に入るわけですが、日本の食料の自給率が40%台というのには、あ

らためて慄然とする思いです。1992年の大不作の年には、それがさらに30%台に

まで落ち込んでいるわけであり、事態はきわめて深刻です。もし、食糧の輸入先の国

々もこうした不作だった場合、日本には全く食料が回ってこなくなるわけです。しか

も、世界的な異常気象が多発する時代になり、日本の食料政策はきわめて危うい状

況になってきているのではないでしょうか。しかも、今年の夏の原子力の臨界事故

暴露されたように、日本という国家機構の危機管理や危機意識は劣悪な状況に陥っ

ています。ここはどうあっても、この国の食料の安全保証というものを真剣に考えなく

てはなりません。

 

 

                                                       (1999.11.9)

 <U> 日本の食生活と農業の変容過程

 

有機農業の展開               

 

  近代農業は、様々な矛盾をはらみつつ、また様々な試行錯誤をしながら現在に

至っています。科学肥料、農薬、灌漑設備、単一作物等に代表される“緑の革命”

の矛盾が噴出し、その反動が世界各地で有機農業運動の展開へとつながってきま

した。また、一方では、農業の技術革新は日進月歩の勢いであり、遺伝子操作によ

る品種改良から、宇宙空間という特殊環境での対応まで様々です。

 

  やがて私たちは、宇宙での人工生態系の確立という方向へ流れて行く可能性が

あります。また、人類文明の版図は、こうした宇宙コロニーを展開しつつ、しだいに太

陽系空間へ拡大して行くのでしょうか...いずれにせよ、人類文明が本格的に太陽

系空間へ拡大して行く段階が到来すれば、宇宙文明としてかなり大きな安定期に入

ると考えます。いわゆる文明の拡大期であり、太陽系空間はそれに答える十分な広

さを持っています。ただしこれは、食糧問題、人口問題、環境問題、資源問題等で、

最も苦しいと思われる21世紀前半を乗り切ればの話です。

(このあたりの風景は、ボスの書いた小説、“超越の領域”、“人間原理空間”をご覧下さい。

                                              第2ホームページにあります。)

  さあ...それとも、大きな安定期は22世紀に入ってからでしょうか...しかし、

いずれにしても、これから21世紀初頭の、人類にとっての最大の試練の時代に突入

して行きます。21世紀の半ばには、総人口が100億人とも推計されています。いっ

たい、そもそもこの地球生態系で、100億人もの生活がまかなえるのでしょうか。そ

れとも、パンクしてしまうのでしょうか。うーん...まともな形では、とうてい不可能で

す。では、とりあえず、どのようなことになるのでしょうか...

  先進国においては“飽食の時代”と言われ、“肥満への警告”が叫ばれている現在

でも、すでに世界各地で飢餓が発生しています。したがって、今後こうした風景がさ

らに助長されて行くのかもしれません。もっとも、こうした地域では、政治が弱体化し

ているという別の要因もあります。しかし、何はともあれ、彼ら自身が食糧を自給自

足できないというのも事実なのです。

                           (ここでは、話を農業問題だけにとどめておきます。)

 

  さて、この農業に関する二つの流れは、当分の間は強力に続いていくものと思わ

れます。何故かというと、この“有機農業運動”“農業の技術革新の流れ”の背後

には、それぞれ大きな文明思想的なバックグラウンドがあるからです。単純に割り切

れるものではありませんが、あえて端的に言えば、有機農業運動は大自然への回

帰。一方、技術革新の流れは、宇宙開発につながって行く科学技術文明の推進で

す。

 

  さて、これはどちらがいいとも、現段階では言えません。というのも、いま急に技術

革新による農産物の増産をストップしたら、60億人の人類を養っていくことが出来な

くなります。むろん私も、環境問題の観点から、また人類文明のスタンスの問題か

ら、大自然への回帰である有機農業の展開には大賛成です。しかし、60億の人口

を飢えさせるわけにもいきません。さあ、この二つの流れを、どの様に調整していっ

たらいいのでしょうか。これは、今後の人類文明の進路の取り方とも関連し、重要な

意味を持ってきます。いずれにしても、この二つの流れが対立するのではなく、バラ

ンスを取りながら、未曾有の人類文明の危機を乗り越えていってほしいものです。

 

  日本の政府は、年金や福祉の問題、産業構造の問題等から、それを支える日本

人の出生率の減少傾向に懸念を示しています。しかし、これは問題の本質が違うの

ではないでしょうか。地球生態系はすでにパンクしそうな状態であり、いずれ巨大な

飢餓の時代が来ることが予想されます。また、飢餓は疫病の大流行をも併発し、想

像を絶する大パニックとなります。そのパニックでは、人口の激減、あるいは人類を含

む多数の種の絶滅があるかもしれません。つまり、それでようやく生態系のバランス

が回復し、終息するような性質のものかもしれないのです。

 

  いずれにしても、我々人類は、それほどこの地球生態系を傷つけているということ

です。このような地球規模の危機管理の必要性を、先進国である日本の政府はどの

様に考えているのでしょうか。あるいは、東海村の臨界事故で暴露したように、この

ような人類的な危機は全く想定していないのでしょうか...それとも、いまだに、統

一的な見解というものが無いのでしょうか...

 

 

                                                       (1999.11.23)

 <V> 国際化時代の食と農

 

(1) GUR( ガット・ウルグアイ・ラウンド)以降の農産物貿易の概略

 

  GURの農産物分野における包括的関税化は、1986年の協議に始まり、1993

年に合意されました。日本もこれによって、コメの特例措置を除く全ての農産物が自

由化された形になりました。したがって、日本国内に外国の農産物が流入してくる

のをコントロールできるのは、事実上“関税”のみとなったわけです。このGURは、そ

の後WTO( 世界貿易機構)( 世界貿易機構)の体制へと移行しています。

  農産物の国際社会での自由化は、今後予想される食糧危機において、大きな威

力を発揮するものと思います。しかし、その前に、食料は身近で自給自足するのが、

生物体として当然の姿ではないでしょうか。また、この地球の生態系とはそのように

出来ているのであり、極端な分業化は基本的には好ましくないものと思います。

 

  それにしても、この間、先進国の中では日本のみが農産物の輸入量が大幅に増

大しています。ここは国家の基本政策にかかわる重大問題ですから、しっかりと舵取

りをしてもらわないと困ります。何故、日本以外の先進国が、食料の自給率を70%

以上まで引き上げて行ったのでしょうか。何故、膨大な国家予算を投入してまでも、

その水準を維持しようとするのでしょうか。

  結局、それは、食料の安全保証という概念から来ているものと思います。確かに、

食料においても国際的分業化という考え方もあります。しかし、ここはやはり食文化

においても、基本的には日本の伝統を守って行くべきだと思います。何故かと言え

ば、伝統的な食文化は、日本という国土の中で、また国内の各地域において、その

地元で自給できる食糧だからです。私は、食べ物は、基本的には身近で自給自足で

きるのが正しい姿だと考えています。

 

  最近テレビを見ていて、日本政府もようやく重い腰を上げたなと思いました。大豆や

小麦等の国内増産計画を打ち出してきたからです。むろん、これにはほとんどの国民が

大賛成のようです。そこで、こうした報道を見ていて奇妙に思ったのですが、これにコメ

ントを加えている女性がそろって、“飯の食い方まで政府に指図されたくない”というよう

なことをひとこと付け加えています。これは、何を言いたいのでしょうか?私は首を傾げ

てしまいました。

  うーむ...ま、何かの予防線なのでしょうか...しかし、そういう人に限ってキャビア

が好物だったり、フランス料理に凝っていたりして...まあ、私に言わせれば、四季に

合わせた日本料理こそが、日本人の心だと思うわけです。

  ま、いずれにしても、政府が農政を本気で改革しようというのなら、それをしっかりと見

守って行きたいと思います。

 

 

<発展途上国の農業と新大陸の農業>

 

  日本の食料自給率の異常な低下の他に、もうひとつ世界の農産物の流れで危機

的な現象が現れています。それは、多くの発展途上国が、農産物の輸入国に転落し

てきている点です。これらの国々は、かっては農産物の輸出国だったのです。しか

し、これはどうやら、急激な人口増加や、工業化の進展が影響しているようです。そ

して一方、これまで農産物を輸出していた発展上国の代わりに、特定の先進国が強

大な農産物輸出国を形成しつつあるようです。これは、具体的には、北米やオセアニ

アの新大陸の国々です。しかし、アフリカでのプランテーション農業は、かえってアフ

リカ全体の食料自給率という点ではマイナスに作用しています。

 

  それにしても、大雑把な数字になりますが、フランスの食料自給率が143%。一

方、日本は42パーセント。これは心細い限りです。北朝鮮では、膨大な軍事力を維

持しながら、国民を飢えさせているとして非難されています。しかし、最近の異常気

象から、世界的な大飢饉が来たら、日本も同じ状況に陥らないという保証はあるの

でしょうか。どの国でも、まず自国の国民を食べさせるのが第一であり、日本に輸出

する余力が無くなった時、私たちはどうしたらいいのでしょうか。

 

  日本の国力の維持という観点から、この国の人口の減少傾向が懸念されていま

す。しかし私は、この国土で自給できる以上の人口を抱え込む事に、むしろ危機感を

感じます。ともかく、日本の国土の風景が年々単調で無感動なものになって行くの

は、生態系の復元力の喪失ばかりではないと思います。そこには、精神的・文化的

な単調さ無感動が進行し、社会全体でキレるというような現象が顕在化してきている

ように思います。むろん、こうした現象には複雑な要素が絡み合っていると思います

が、国土の健全化ということも重要な要素だと思います。

 

  さて、戦後の日本の社会は農地開放によって大きく変わりました。これほどの大

改革が出来たのは、まさに敗戦による大混乱と、マッカーサーによる占領政策の成

果といったところでしょうか。ま、この農地開放と、日本国憲法の制定は、いまだにこ

の国の枠組みとして、大きな影響を残しています。

  ところで、戦前の地主小作制度からの農地開放は、零細な農地所有者を増大させ

ました。当時は画期的な大事業であり、むろん大きな成果が上がりました。そして、

それから約半世紀...農家の世代交代もあり、日本の農政の行き詰まりもあり...

うーむ、ここは何とかもう一度、新しい仕組みを組立てるべき時に来ているのでしょう

か...社会全体に閉塞感が満ちている昨今、農政や農村のあり方においても、利

権や既得権の保護を超えた自主的な再編成が求められているのではないでしょう

か。

  テキストによれば、零細な農地を集積して、大規模な耕作を行うプロ経営者が必要

だとあります。うーむ...そのためには、新しい土地利用ルールの確立等も必要な

ようです。

 

優良な農地の確保

所有者の農地としての利用義務の明確化

利用者には社会的合理的な農地利用義務の明確化

農業サービス事業体の育成     etc...

 

  この他にも、農村の都市住民への開放とか、生産地域と消費地域の一体的交

流とか、この国の基本的な枠組みも再構成していく必要があります。また、環境やエ

ネルギー問題にも配慮した、地域循環型の農業というものの確立も必要なようです。

これはつまり、一般的な消費から生じる生ゴミや、モミ殻等の事業ゴミ、畜産等の糞

尿を堆肥としてリサイクルしていくシステムです。こうしたものがしっかりと確立され、

さらに風力や太陽光発電等のクリーン・エネルギーのシステムが充実してくれば、少

しずつ未来型社会が出来あがってくるのかもしれません.....