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![]() ![]() 分子標的薬/イレッサ ・・・ 臨床試験から効果実証! < 日本の・・・約50施設が協力! > |
トップページ/Hot Spot/Menu/最新のアップロード 担当 : 厨川 アン |
プロローグ | ...世界に先駆け、日本/厚生省が輸入承認! 副作用は? | 2010. 8.21 |
No.1 | 〔1〕 臨床試験から、 イレッサ の効果実証! | 2010. 8.21 |
No.2 | <解明されている・・・ 肺ガンに効くメカニズムとは? > | 2010. 8.27 |
No.3 | <劇的に効く患者の半面・・・副作用による死者も!> | 2010. 8.27 |
No.4 | <高感度に・・・変異を検出できるシステム> | 2010. 8.27 |
参考文献 日経サイエンス /2010 - 09/ NEWS SCAN 肺がん治療薬イレッサの効果実証 |
世界に先駆け・・・日本/厚生省が・・・輸入承認・販売! ・・・ 副作用は?
「本当に、すみません...」響子が、アンに頭を下げた。「静養のために、軽井沢に来られたの に...こんな仕事を頼んでしまって、」 「かまいませんわ...」アンが、気さくに赤毛を右肩に寄せた。「マチコさんと、たっぷりと軽井沢 を歩いてきましたし...今日は、本でも読もうと思っていたところです」 「ええと...」響子が、せわしくメモに目を落とした。「では、さっそくですけど、アン... “参考文献”をご覧になったと思いますが...肺ガン治療薬/“イレッサ”の...“効果実証の ニュース”が入って来ました。コトは、肺ガン治療薬ということで、私たちとしても放置しておけま せん...」 「はい...」アンが、脚を組み上げた。その上に、“科学雑誌/日経サイエンス”を載せた。「分か りますわ...記事の方は、目を通しました...」 「ありがとうございます、」響子が、頭を下げた。 「肺ガンの治療薬が...」アンが、片肘を立てた。「日本で認可になったのは、知っています... 詳しい状況は、分かりませんでしたが、このような状況が進行していたわけですね。私も、非 常に驚いています。もっと順調に進んでいるものと思っていました。でも、この効果実証で、元の 軌道へ戻って行くのでしょうか...?...」 「はい...」響子が、うなづいた。「ええと... この...分子標的薬/“イレッサ”というのは...どのようなメカニズムで効果を発揮するの か、それが良く分かっている薬なのだそうですわ... ところが...効果を期待できる患者に、実際に投与した場合...それが本当に有効かを、明 確に示すデータというのは...実は、無かったそうなのです」 「ふーん...どうして、こんなことになっているのかしら?」 「はい...」響子が、唇に指を当てた。「ええと、その前に... “イレッサ”という薬について、少し紹介しておきましょう。私が、急きょ、インターネットで調べて みたものです」 アンが、うなづいて、“日経サイエンス”を作業テーブルの上に置いた。そして、響子のノート・ パソコンの方をのぞいた。 「ええ...」響子が、モニターをのぞきながら、ようやく落ち着いた口調で言った。「この薬は... イギリスの製薬会社/アストラゼネカが...2002年7月から...日本で販売を開始した... 肺ガン治療薬/“イレッサ”です...治験開発名/ZD1839...一般名/“ゲフィチニブ”です。 この薬は...“手術不能・・・または、再発・非小細胞性肺ガン”の患者に対する...“分子 標的薬”と言われる...ええと...“錠剤タイプの・・・抗ガン剤”...のようですね」 「はい...」アンが、口にコブシを押し当て、頭をかしげた。 「それから... “イレッサ”の適用症は...“進行性の・・・非小細胞性肺ガン”ということですね。御存じだと 思いますが、肺ガンは大きく2種類に分けられます。1つは“小細胞性肺ガン”...そして、もう1 つが、この“非小細胞性肺ガン”になります。 この“非小細胞性肺ガン”は...“他の治療法が、ほとんどない!”...ために、厚生労働 省では、この“イレッサ”を...【薬事法第14条5項】に定められた...“医薬品製造認可の・・・ 優先審査対象”に認定し...“申請から・・・わずか5カ月強”という短期間で、“世界に先駆け・・・ 日本/厚生労働省が・・・初めて輸入承認し、販売の認可を与えた”...という経緯があるようで す」 「はい...」アンが、うなづいた。「ええと... 現在、マスコミなどでも話題になっている...“医薬品製造認可の・・・優先審査対象”、の適用 ということですね。それで...有効性を明確に示すデータが、無かったということでしょうか?」 「さあ...」響子が、頭をかしげた。「それは、分かりません...治験開発名/ZD1839はあり ますし...どういうことなのでしょうか...?」 「それにしても...?...」アンが、首をひねった。 「はい...」響子も、同意した。「ともかく... “参考文献”のニュース記事からでは、詳しいことは分かりませんわ...研究レポートならば、 もう少し、詳しい経緯が分かると思うのですが...」 「そうですね...」アンが、“日経サイエンス”の、NEWS SCAN を眺め、そこを指ではじいた。 「ええと...」響子が、モニターをスクロールした。「ちなみに... 現在、アメリカでは、“イレッサ”は“使用禁止・回収”...EUでは、“承認拒絶・却下”となっ ているようですね。こうした状況下での...“日本発/臨床試験から効果実証!”、という... 非常に微妙なニュースです... ええと...アメリカ/FDA(食品医薬品局)のコメントも紹介しておきます。 これは、2005年6月 17日(/発売後 3年 ほど)...の日付です」
******************************************************************* “アメリカ/FDA(食品医薬品局)は、延命効果が確認されなかった肺ガン治療薬/ “イレッサ(一般名:ゲフィチニブ)”を、一般臨床で新患者に使用することを禁止し...新規 患者への使用は、IND申請適用臨床試験への参加を前提にすること...一般臨 床での“イレッサ”の使用は...現在、“イレッサ”で利益が得られている患者、過 去に、“イレッサ”で利益が得られた患者に限定するという、使用規制を内容とする 添付文書の改定を行う...と発表しています。 < 日付: 2005年6月17日 > *******************************************************************
「データが少々古いのですが...」響子が言った。「いずれにしても... “他の治療法が、ほとんどない!”という状況ですから、今回のニュースは、大きな朗報だと 思います。世界中の多くの患者さんのためにも...“期待して・・・注目したい!”...と思いま す」 「はい...」アンが、眼鏡の真ん中を押した。「そうですね... 2002年7月から...“夢のような新薬・・・との・・・前評判”で...販売を開始した肺ガン治療 薬/“イレッサ”ですね。当時のことは、覚えていますわ。薬害のことも、少しは私の耳にも入って いました。 でも...薬に副作用はつきものと、承知していた程度でした。アメリカやEUでは、“非常に厳 しい対応”になっていたわけですね...“アメリカ/FDA(食品医薬品局)”の対応で、その状況という のが、良く分かりました」 「もともと...」響子が言った。「販売開始から2カ月で...副作用による被害が多発した、という ことです。 でも、リスクはあっても...患者にすれば“イレッサ”は、最後の手段とも言える存在なのだそ うです。ちなみに、2007年 6月1日現在(/およそ販売から5年後)...副作用・被害者は1797人と いうことです。そのうち死亡者は、706人を数えるそうです... ええと...それから...“イレッサ薬剤被害者の会”...というのも、結成されていますわ。 そちらの方も、ご覧ください」 「うーん...」アンが、赤毛を絞った。「それを承知で...“イレッサ”を服用している...というこ とですね...」 「はい...」響子が、アンを見つめた。「日本では... 年間5万4000人が、肺ガンで死亡しているそうですわ。そして、“イレッサ”は販売開始後、3 カ月で...約7000人の患者が使用したそうです。副作用も、多発したようですわ。 現在、世界中で...どのぐらいの人が“イレッサ”を使用しているのかは分かりませんが... リスクがありながらも、“期待が高い”ということです。この辺りの状況は、インターネットをのぞい たぐらいでは、実態というのは分かりません。 ともかく...副作用と見られる死亡件数も、“イレッサ”の使用に比例して、グングンと高まっ たものと考えられています。“アメリカ/FDA”の対応を見ても、“異常な件数の犠牲者”が出て いるのは、確かなようですわ...」 「はい...」アンが、大きくうなづいた。「大体の状況は、分かりました...ともかく、大変なことに なっているわけですね」
〔1〕
臨床試験から、 イレッサ の効果を実証!
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東北大学/貫和敏博・教授を中心とする研究班の行った、臨床試験から...“イレッサの効 果が実証された!”...というものですね。ともかく、期待して、今後の推移を、見て行きたいと 思います」 「そうですね...」響子が、モニターに目を流した。「ええと、正確には... “特定の遺伝子に・・・特定の変異のある進行性の肺ガンに対しては・・・最初から分子 標的薬/イレッサを使うことで・・・ガンが大きくなるまでの期間が・・・2倍に伸びる・・・”、と いうことですわ、」 「はい...」アンが、うなづいた。「まず、この研究では... “肺ガン”の8割を占める...“非小細胞性肺ガン”の中でも...細胞表面にある“EG FR (上皮成長因子・受容体)”という...“膜タンパク質に変異のある患者・・・230人”を...対象にし たもの、ということですね」 「はい...」響子が言った。「ええと...日本の約50施設が協力した、ということですわ」 「はい...」アンが、“参考文献”の方に目を移した。「ともかく、ニュース記事からは、詳しいこと は分かりませんが、内容としては... この臨床試験は...“全員が、転移などがあり・・・手術ができないほど進行した・・・非小 細胞性肺ガンの患者である”...ということですね。 そして...全体の半数は“イレッサ”で治療をし...もう半数は、“従来の抗ガン剤(/パラプ ラチンなどと、タキソールなど)”で治療を行ない...それを比較したもののようですね」 「はい...」響子が、うなづいた。 アンが...“参考文献”を取り上げ...ジッと眺めていた。 「ええ...と...」アンが、顎に手を当てた。「...治療を始めると... “肺ガン/腫瘍”は...“いったんは・・・小さくなったり・・・成長が止まったり”...するよう ですね。そしてそれが、“再び大きくなり始めた患者が・・・全体の半数に達するまでの期間” は...“従来の抗ガン剤”のグループでは、“5.4カ月”だったのに対し...“イレッサ”のグル ープでは...ええと...“10.8カ月と・・・2倍に伸びた”...ということですね... さらに、“全体的な延命効果”でも...最初から“イレッサ”を使ったグループの方が...先 に、“従来の抗ガン剤”で治療し、効果がなくなった時点で、“イレッサ”を使い始めたグループよ りも...“成績が良かった”ということですね。 ただし...“従来の抗ガン剤”の治療から、“イレッサ”に“変更を希望する患者”がいるなどし て、 数が少なくなったために...“統計的に有意な差・・・とはならなかった”、ようですね」 「うーん...」響子が、両方の肘を抱いた。「患者さんたちにとっては... “最後の望みを託した治療”ということですね...気持ちは、良く分かりますわ...」 「そうですね... ええと、それから...治療中...患者が日常生活を、どのくらいこなせる状態にあったかは、 現在、結果を集計している段階だそうです。それにしても、明らかに“イレッサ”で治療したグル ープの方が、成績は良かった、ということですね」 「はい、」響子が、固く唇を引き結び、うなづいた。 「ええ...研究班の1人... 埼玉医科大学/国際医療センター/小林国彦・教授は...“ イレッサ ならば・・・仕事を続 けることも可能だろう”...と...話しておられるようですね、」 「はい...」響子が、両手を固く握った。「生活環境が、格段に向上するということですね、」
「そういうことです...」アンが、うなづいた。 <解明されている・・・
肺ガンに効くメカニズムとは? >
悪質度が増した細胞では...様々な遺伝子変異が起こっていることが知られています。こう した変異のほとんどは、“生まれつきの変異/・・・生殖細胞・変異”ではなく、“後天的な変異/ ・・・体細胞・変異”だということです。 そして、一口に、“肺ガン”と言っても...どの遺伝子のどの部位に変異があるかは...患者 によって、それぞれ異なるわけです。さらに、遺伝子の中には...“この遺伝子の・・・ここが損 なわれると・・・ガン化につながる”...と思われるモノもあるのです。 その1つが、先ほど言った...肺の細胞表面にある、“EG FR(上皮成長因子・受容体)”なので す。全ての“肺ガン”に、“EG FR”の変異が見られるわけではないのですが...比較的多くの “肺ガン”で...“EG FRの・・・特定の個所に・・・変異が起きている”...ということですわ」 「うーん...」響子が、顎に手を当てた。「肺の表面細胞にある“EG FR”...つまり、“上皮成 長因子・受容体”...ということですね。“肺ガン”ではそのタンパク質に、変異が起きやすいとい うことですか、」 「そうです... この、“EG FR”というタンパク質の変異にも...幾つかのタイプ/型があるようですね。この うちの、“エクソン19・・・という場所で・・・15塩基が欠損” しているタイプと...“858番目 のアミノ酸が・・・ロイシンからアルギニンに置換” しているタイプでは、“イレッサは効く!” ということが、分かっているようですわ」 「はい...」響子が、大きく息をした。「“エクソン19”と...“858番目のアミノ酸”の変異ですね。 何か、マーカー(目印)はあるのかしら?」 「さあ、そこまでは分かりません... ともかく、これら2つのタイプの変異が生じると...“EG FR”のタンパク質の立体構造が変わ り、細胞に対して...“死ぬな・・・というシグナルが・・・オン/入り続けた状態”...になるよ うです」 「つまり...“ガン細胞に対して・・・死ぬな・・・という状態”...になる、ということかしら?」 「そうですね...おそらくは... そして、“イレッサ”は...この立体構造の変わった状態の“EG FR”に結合して...“このス イッチを・・・オフにする働き”...があると言います...」 「うーん...つまり...どういうことに、なるのかしら?」 「つまり... “死ぬな・シグナルが・・・オフになり・・・届かなくなった細胞”は...アポトーシス(制御され た細胞死)を起こして...“自ら・・・死んで行く”、ということでしょうか。 つまり、結果的に...“肺ガン/腫瘍は・・・アポトーシスで・・・小さくなって行く”...とい うことのようですわ...」 「うーん...そういうことですかあ... ともかく...“エクソン19”と、“858番目のアミノ酸”に変異のあるタイプは...“イレッサ”が、 効くということですね?」 「そうですね...」アンが、眼鏡の縁を押さえた。「それから... 理由は、はっきりとは分かっていないようですが...この、“EG FR・変異タイプの肺ガン”は、 アジア人と女性に多い...ということが明らかになっているそうです。 ちなみに...日本人の肺ガン患者の場合...全体の3割程度、50歳以下の女性患者に限 ると半数程度に...“EG FR”の変異が見られると言います」 「はい...」 「アジア人と女性に... “イレッサ”が比較的効きやすい、ということでは...誰かさんたちは、この両方の条件に該当 しそうですね、」 「それは...」響子が、口に手を当てた。「私たちには...朗報なのかしら?」 「うーん...」アンが、ため息をついた。「私たちは、アジア系の女性には該当しますわ... でも、あくまでも...“進行性の・・・非小細胞性肺ガン”が、発症したらということです。その 場合に限って...“イレッサ”が効く可能性が、高まるということでしょう」 「うーん...嬉しくないような...嬉しいような...」 「そうですね...」アンも、額に手を当て、苦笑した。 <劇的に効く患者の半面・・・副作用による死者も!>
“手術ができないほど・・・進行した患者・・・または、再発性の患者”に対して、2002年に、 他国に先駆け、日本/厚生労働省が承認しました。その後、アメリカなどでも、使用されるよう になったようですね。 ところが、使用直後から...“肺が酸素を取り込めなくなる・・・間質性肺炎”という、深刻な 肺炎を起こし、死亡する患者が相次いだわけです。 ちなみに、“今回の日本の臨床試験”でも...1人が、“間質性肺炎”で亡くなっているというこ とです...“・・・御冥福を、お祈りいたします・・・”...」 響子も、目を閉じ、両手を合わせた。 「ええ...」アンが、続けた。「...実は... 2003年から、2004年にかけて...“多数の国が参加した臨床試験”...が実施されたわ けですが...“明らかな延命効果は・・・実は・・・認められなかった”...ようです。この様子 については、もっと知りたいと思うのですが...今ここには、そのデータがありません」 「はい...」響子が、頭を下げた。「すみません。用意ができませんでした」 「いえ...急のことですから、仕方ありませんわ... ともかく...そういうわけで、先ほども言ったように...製造元は、“ヨーロッパへの・・・認可 申請を取り消し”...アメリカでも、“新たな使用は・・・認めない措置”...が取られたという ことですね、」 「はい...そのようです」 「うーん...」アンが、頭をかしげた。「...ただしです... この...“2003年〜2004年にかけての・・・臨床試験”でも...“アジア人のグループ”と、 “非喫煙者のグループ”に限ると...“明らかな効果が・・・見られていた”...ということの ようですね...」 「はい...」響子が、重くうなづき、頭をかしげた。 「それから...」アンが続けた。「...ええと... 医療現場では...“薬の効果の見られる人”のことを、“レスポンダー”と呼んでいますが、“イ レッサ”では...“スーパー・レスポンダー”と呼ばれるような患者も、いたようですわ。 “今回の日本の臨床試験”を主導した、東北大学/貫和敏博・教授によると...“これまでの 臨床試験の常識からすると・・・びっくりするような効果”...なのだそうですわ」 「...」響子が、片肘を抱いた。 「ええと...いいですか... “ほとんど寝たきりの状態で・・・あと数カ月の命・・・と宣告!”...されていながら... “歩いて家に帰れるようになった症例も・・・少なくはない”...ということです。 つまり...“効果のある患者と・・・効果のない患者/間質性肺炎を起こしてしまう患者に ・・・大きく分かれる”...ということのようですね」 「それを...」響子が言った。「どう区別するのか...ということですね?」 「そうです...」 <高感度に・・・
変異を検出できるシステム>
今説明したような...“イレッサの・・・効果のあるメカニズム”...は、詳しく分かっていた ようです。また、“EG FR(上皮成長因子・受容体)”に変異のないタイプの“肺ガン”には...“効 果が・・・期待できない”...ということも、明らかになっていたようですね、」 「うーん...」響子が、肩をかしげた。「2004年の時点で、もう分かっていたのですね... その上で...アメリカ/FDA(食品医薬品局)のコメントが...2005年6月17日に、発表されて いたわけですから...事態は、急激で、非常に深刻だったということですね。日本/厚生労働省 の...世界に先駆けての導入の判断は...時期尚早(じきしょうそう)だったのでしょうか...?」 「そうですね。考えるべき課題かも知れません... でも、このページは...現在、どのような事態が起こっているかを考察するのが目的です。生 半可な知識での批判は、するつもりはありませんわ。皆それぞれ、頑張っているということです」 「はい、」響子が、うなづいた。
「ともかく...」アンが言った。「そういうわけで... 当時から、“EG FR”の変異が、1つの焦点になっていたようですね。ところが、“EG FR”の変 異は、腫瘍細胞そのものを調べる必要がありました。しかも、“手術で採取するような・・・腫瘍の 塊”でないと、検査が難しかったようです。 ところが...“イレッサ”の治療対象となる...“手術できないほど・・・進行した肺ガン”では、 そもそも、“手術そのものが・・・困難”...ということになるわけですね、」 「つまり...そうした患者では...実際には、検査が不可能だと?」 「そうだと思います... 臨床に立ち会ったわけではないので、詳しいことは分かりませんが、難しいということですわ」 響子が、うなづいた。 「そして...」アンが、“参考文献”を眺めた。「ええ...こうした状況を変えたのが... 埼玉医科大学/萩原弘一・教授たちが開発した...“高感度に・・・変異を検出できるシス テム”のようですわ。“今回の日本の臨床試験”でも、このシステムが使われているということで す... この方法では...“手術で摘出した腫瘍だけでなく・・・胸水や気管支の検査で得た・・・サ ンプル”も...使うことができる、ということですね。 つまり...肺ガンを疑われる患者が...“診断のために受ける・・・検査サンプル”の段階 から...“イレッサが効くタイプの変異・・・があるかどうかを・・・調べることが可能だ”... ということのようです」 「うーん...」響子が、大きくうなづいた。「ずいぶんと...“イレッサ”の使い勝手が、良くなりそ うですね?」 「そうですね... ええと...萩原弘一・教授によれば...“ガン細胞が1%でも含まれていれば・・・99%が 正常細胞でも・・・検出が可能”...ということです」 「はい...」響子が、唇をすぼめ、微笑した。
日本肺癌学会が...2005年にまとめた...現行の、【肺ガン治療ガイドライン】では... “手術のできない患者に対しては・・・まず、抗ガン剤による化学療法を推奨していて・・・最 初から、イレッサを使うようにはなっていない”...ということです。 “ガイドラインは・・・現在改定中”ですが...貫和敏博・教授をはじめとする、研究班では、 “まず...EG FR の遺伝子を調べ・・・該当する変異のある肺ガンであれば・・・間質性肺 炎を十分に警戒しながら・・・最初からイレッサによる治療を・・・考えるべき!”...と話して いる、ということです」 「はい...」響子が、うなづいた。「確実に... “イレッサで・・・救える命がある”...ということですね。私たちも、今後とも、注目して行きた いと思います」 「ええと...最後に、一言、訂正します... 日本では...年間5万4000人が、肺ガンで死亡していると言いましたが...このデータは、 2002年当時の古いものですね。8年後の現在は、さらに増えています。これも、ここにデータが ないので、ニュースやインターネット等で、確認をお願いします」 「あ、これも、私の責任ですわ...」響子が、頭を下げた。「申し訳ございませんでした」
今回は、急なことでしたが、ご静聴ありがとうございました。今後とも、 肺ガン治療薬には、注目して行きたいと思っています。 まだまだ、残暑が続きそうですね...体調面には、どうぞ、お気をつ けてください。そして、何とか...2010年夏を...乗り切りましょう、」 ![]() ![]() ![]() |