Menu危機管理センターバイオハザード感染症・対談薬剤耐性菌の現状

               薬剤耐性菌の現状   wpeA.jpg (42909 バイト)         

   抗生物質  〔ペニシリン〕・・・〔メチシリン(半合成ペニシリン)・・・〔ストレプトマイシン〕

          ・・・〔カナマイシン〕・・・〔バンコマイシン〕・・・リネゾリド/現在の最終兵器

                                          

 トップページHot SpotMenu最新のアップロード                担当 :    里中  響子/ 夏川 清一 

   INDEX                                                        index292.jpg (1590 バイト)   

プロローグ    <“地球温暖化”への警告  2007. 1.17
No.1 〔1〕 耐性菌との戦い 2007. 1.17
No.2    《抗生物質と、病原菌とのいたちごっこ》 2007. 1.17
No.3 〔2〕 ここでも、生態系との調和を 2007. 2. 1
No.4     薬剤耐性・・・を獲得する細菌》 2007. 2. 1
No.5     対面内服療法(DOTS/ドッツ) 2007. 2. 1
No.6      MRSA・市中型強毒型・・・が出現 2007. 2. 1

  

                         参考文献

                         東京新聞/2007年1月9日...耐性菌と戦う  ....他      

  

   プロローグ “地球温暖化”への警告   wpe8.jpg (3670 バイト)

 

「響子です...暖冬は歓迎しますが、“地球温暖化”が、非常に気がかりです...

  新型インフルエンザの方は...宮崎県清武町養鶏場で、1月13日、今季シー

ズン日本で初めての、【H5N1型】/高病原性・鳥インフルエンザウイルスの感染が

発生しました。1〜3月インフルエンザウイルスの活発期に入り、いよいよ到来とい

う感じです。少しでも時間を稼ぎ、人類の対応策が、間に合うことを祈っています。

  ええ...そんな状況ですが...これまでに、多少時間的余裕がありましたので、

薬剤耐性菌の現状について、準備していました。今回は、この細菌薬剤耐性につ

いて、バイオハザード・担当夏川清一さんに伺います」

 

薬剤耐性については...HIV(エイズ・ウイルス)“プロテアーゼ阻害剤”薬剤耐性

が、このホームページでも何度か取り上げています。でも、今回はウイルスではなく、

それよりも大きい細菌レベルについて、そして、抗生物質について考察します...

  抗生物質と、人体の免疫系を利用したワクチンについては、それぞれ得意とする

があります。誰もが持つ持つ免疫システムが、万能強力完璧に近い防御シ

テムなら、抗生物質ワクチンも必要ないわけし、病気ということもないわけです。

  でも...そんな強力な防御システムを持つ生物は、生態系には存在しません。そ

こで、人類文明の力で、衛生環境を整え、医療全般を充実させるという形で...

有害細菌ウイルス各種疾病に対し、文明的防御ラインを展開しているわけで

す...これが、“人類文明最大の防御システム”です...」

 

「話は少し変わりますが...

  私たちは、この“人類文明最大の防御システム”を越える、〔万能型・物理的防

御システム/・・・人間の巣/・・・極楽浄土〕を提唱し、〔次の文明のステージ〕

して推進しています...

  〔半・地下都市/・・・人間の巣〕は、細菌ウイルス“感染症”に備えるだけで

なく、“全ての自然災害を克服”し、“脱・冷暖房で地球温暖化”に対処し、“短期・長

期の気候変動”に対処し、“天体衝突や戦争・テロ等の物理的大衝撃”にも対処しま

す...また、“極楽浄土の器/パラダイスの器”をも提供できるものと考えています。

  これが、〔反・グローバル化/・・・文明の折り返し/・・・脱・経済至上主義〕

際して、〔文明の第3ステージ/世界標準スタイル〕として準備したものです。“第1

ステージ/農耕・文明の曙”“第2ステージ/エネルギー・産業革命”に次ぐ、“第3

ステージ/意識・情報革命”〔進化の座標〕考えています...」

 

〔地球温暖化/・・・気候変動/・・・飢餓〕危機は、すでに切迫しています

もう、残されている時間は、あまりないものと推測します《危機管理センター》

らの、“究極的な警告”です

 

   〔1〕 耐性菌との戦い

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「え、さて...」響子が、椅子を回転させた。「本題の、細菌薬剤耐性の話に入り

ましょう...夏川さん、おねがいします」

「はい...」夏川が、白衣のポケットから手を出した。

「夏川さん...

  “地球温暖化”や、“環境破壊”は別として...人類の最大の敵というと、やはり

原菌ということになるのでしょうか?」

「そうですねえ...

  人類のライバル、あるいは天敵が...トラライオンだったという話は、聞いたこ

とが無いですねえ...」

「うーん...そうですね、」響子は、笑って口に手を当てた。

縄文時代にしても...道具を使い、言語を話し、社会性を持って発展してきた人類

文明には、その存在を脅かすようなライバルは...哺乳類にも、鳥類にも、存在しな

かったでしょう。

  文明社会を壊滅させるほどの強力な敵といえば...やはり、響子さんの言うよう

に、病原菌ということでしょうか...それも、感染症ということでしょう...」

「では...人類文明の天敵は、一応、感染症ということでいいでしょうか?」

「そうですねえ...私は、そう思います...

  交通が発達し、交易が盛んになり、世界貿易が進んでくるとともに、感染症の歴史

が始まって来たということでしょう...今、ここに資料はありませんが、かっては地域

の風土病だったものが、しだいに広域に蔓延し始めたということでしょう...

  ペストコレラ赤痢インフルエンザ...非常に大勢の人間の命を奪ってきまし

た...パンデミック(世界的大流行)が起こるようになったのは、スペイン風邪からでしょう

かね...まあ、これは、定義によると思いますがね...

  “文明と経済のグローバル化”と共に、感染症“人類文明そのものの危機”

重なってきました。インフルエンザの他にも、エイズ西ナイル熱ウイルス性出血

新型肺炎・SARSなど、非常に厄介なものが、どんどん現れてきています...」

スペイン風邪“1918年ウイルス”は、地球上から4000万人もの人命を奪いまし

た...これが、最大でしょうか?」

「そうですねえ...エイズが世界的に蔓延していますし、増加傾向にありますが、そ

れほどには達していないでしょう...

  現在問題になっている、【H5N1型】鳥インフルエンザウイルスが、ヒト型新型イ

ンフルエンザに変異したら、それを超える恐れはありますねえ...いや、“恐れがあ

る”と言うことです...強毒性/高病原性が、そのまま維持されていたら、非常に悲

惨な状況になります...

  現在、ニワトリで、致死率75%と発表されていますが、非常に高い致死率です。

ただ...“まだ、人には滅多に感染しない状況”のようです...これが、容易に感染

するように変異すると...ヒトの新型インフルエンザウイルスの誕生です。

  人口の増加都市の発達各種交通の発達等から、パンデミックを回避するのは

難しいと思います...」

ニワトリに対しては、ワクチンがあるはずですが...それでも、致死率75%なので

しょうか?」

「さて...どういうことになっているのか...詳しい状況は分りません...

  あ、それから...すでに、ヒトのワクチも製造していますが、それは完全に一致

しているワクチンではありません。“推定して創出したワクチン”であり、新型ウイルス

株から作ったワクチンではありません。ただ、それに近いものなら、ある程度の効果

はあるということです。それは、本物がどういうものかによって違ってきます。

  本物特効薬のワクチンに関しては...新型ウイルスを採取してから、製造・流

に、およそ6ヶ月かかります...したがって、次のシーズンには間に合うというワク

チンになります...したがって、その本物特効薬ワクチンが出回るまでが、パンデ

ミックの最大の脅威になると言うことです...

  いざとなったら、“2、3週間は完全に引きこもる”と言うことで、食料品医薬品

や、消毒剤備蓄をして欲しいと思います...また、準備のできていない人は、即、

準備だけはして置いて欲しいと思います...

「はい...

  “タミフル”などの抗インフルエンザ薬なども有りますわ。“タミフル”は、マイナス面

副作用が強調されていますけど、いざという時には、人類の強力な武器ですね。

  というもの、そして武器というものには、常にそうした側面があると思います。そ

れを承知して、的確に使うということですね」

「そうですね...その通りです...

  準備は怠りなく...しかし、あまり悲観的になってもしょうがないということです。相

手は、自然界のインフルエンザウイルスです...ただ、それを助長してきたのは、

明のグローバル化であり、心が痛むと言うことです」

「はい...」響子が、コクリとうなづいた。「私たちも、精一杯、“反・グローバル化”

や、“人間なの巣”の展開を主張して行きます...

  ええ...ついつい、新型インフルエンザの話になってしまいました...ええ、夏川

さん...今回は、抗生物質耐薬剤性菌の話をお願いします」

 

「そうですね...細菌に対しては、主に抗生物質で対処しますが、その抗生物質

が、限界に来ているのです」

「はい...ワクチンは、インフルエンザウイルスなどで、身近に接しているのですが、

抗生物質というのは、どのようなものなのでしょうか?」

「より身近にありますね...

  抗生物質というのは、医薬品以外にも、農薬や、食品保存薬などとしても使われ

ています。そのために、耐性菌跋扈(ばっこ)するというような事情もあるわけです」

「はい、」

   《抗生物質と、病原菌のいたちごっこ》wpeA5.jpg (38029 バイト) 

「ええ...」夏川が、パソコンのキーボードをクリックした。「抗生物質(antibiotics)

というのは、カビ放線菌細菌によって作られます...つまり、微生物が作り出

し、他の微生物の増殖を抑制する物質総称です。

  中には、人が産生するような例外的なもの(/ディフェンシン/?)もありますし、人

為的な半合成や、完全合成抗生物質もあります...

  ええ...抗生物質によって...微生物を抑制したり、ガンを抑制したりするわけで

すね...いちばん有名な抗生物質といえば、ペニシリンでしょう...」

「はい、」響子が、うなづいた。

ペニシリンは、1928年に、フレミング青カビ(/ペニシリウム・ノターツム)から発

見したのは、有名な話です...1941年に、フローリーが分離に成功...臨床的有

効性が証明されました...

  このペニシリンは、ブドウ球菌連鎖球菌などの発育を阻止する作用を持っていま

す。したがって...肺炎淋病敗血症など、多くの細菌性疾患著しい効果を示し

ます。

  “ペニシリン類”“セファロスポリンC群”抗生物質は、総称して、β・ラクタム抗

生物質”と言います...これは、“細菌壁の合成を阻害”し、細菌を殺します...他

に、“核酸合成を阻害”したり、“タンパク質合成を阻害”したり、色々な種類が存在し

ます」

「夏川さん...“ペニシリン・ショック”ということを聞きますけど、あれはどういうことか

しら?」

“ペニシリン・ショック”というのは、ペニシリン・アレルギーによって起こる、アナフィラ

キシーです。アナフィラキシーというのは、アレルギーの1種ですね...抗原抗体反

によって、急激なショック症状を起こし、著しい場合にはに至ります...

  この場合、ペニシリン分子が、ハプテンとしてアレルギーを起こします...」

ハプテンというのは?」

「うーむ...

  担体となるタンパク質と結合すると、“抗原”として、活性を発揮する物質です。ま

あ、そうした、低分子物質の総称です...糖類芳香族化合物核酸ペプチドなど

もそうですね...」

「はい...」

「ええ...」夏川が、マウスを動かした。「そうですねえ...

  1950年ごろになりますか...ペニシリンが出現して、およそ10年ほどで、“ペニ

シリン耐性・黄色ブドウ球菌”が出現しました。耐性菌の出現です。ペニシリンを不活

性化する酵素/ペニシリナーゼ”を産生する、黄色ブドウ球菌株が出現したので

す...」

「はい...10年ほどですか、」

「そうです。驚きですねえ...

  この耐性菌に対し、ペニシリナーゼに安定な、新しい“半合成ペニシリン”の開

発が試みられました。そして、1960年メチシリンオキサシリンクロキサシリン

どの抗生物質が開発され、この耐性菌に対する治療上の問題は、一応解決しまし

た」

「よく言われる、メチシリンですね?」響子が言った。

「そうです...

  メチシリンは、“半合成ペニシリン”です。ペニシリン系抗生物質・メチシリンです

ところが、翌年1961年には、イギリスにおいて、早くもメチシリン耐性を示すブド

球菌株が発見されてしまいます...1960〜1970年代の初めにかけて、欧米の

病院内で、MRSA(メチシリン耐性・黄色ブドウ球菌)急速に拡大しました...」

欧米の病院内というと...日本の病院ではどうだったのでしょうか?」

「日本では...その頃は、セフェム系抗生物質を使用していたので、MRSAの出現

は、1982以降になりますね...それからは、ご存知のように、院内感染が深刻な

問題となっています...

  何故、セフェム系抗生物質を継続して使わなかったのかと言うと、まあ、抗生物質

も、一長一短があるわけですね、」

「はい...MRSAには、バンコマイシンを使うわけですね?」

「そうです...

  ところが、このバンコマイシンにも、耐性菌が出てきます。1986年に、“バンコマ

ン耐性・腸球菌”が...そして2002年には、“バンコマイシン耐性・黄色ブドウ球

菌”が出現しています...」

「はい...そのニュースは覚えていますわ...」

「そこで...」夏川が、響子にコクリとうなづいた。「まあ...

  2000年に...完全合成による新・抗生物質...リネゾリドが登場して来ていま

す...商品名は、“ザイボックス(ZYVOX)”です...

  これが、今の所...バンコマイシ耐性・腸球菌に効果を発揮する、“唯一の抗生物

質”ということになります...MRSAに対しても、抗菌力を示します...」

「うーん...背水の陣ということに、なりますね、」

「まさに、その通りです...

  このリネゾリド(商品名:ザイボックス)は、バンコマイシ等の、全ての抗生物質

無効な場合に限り...最後の切り札として、限定的に使用することになります。し

たがって、可能な限り...リネゾリドに対する耐性菌を抑制して行くということです」

「ふーん...

  “バンコマイシン耐性菌”にも、最後の切札はあるということですね?」

「今の所は...そうです...

  この、リネゾリド(商品名:ザイボックス)について、少し説明しましょう...」

「はい、」

            wpeA.jpg (42909 バイト)        

「ええ...

  2000年に登場したリネゾリド(linezolid)/〔商品名:ザイボックスは、先ほども

言いましたが、完全合成による新・抗生物質です。参考文献によれば、今までの抗生

物質とは、まったく異なった化学構造を有しているとの事です...

  ま...従来の抗生物質は、β・ラクタム系(/ペニシリン類等)アミノグリコシド系

/ストレプトマイシン、カナマイシン等)など、10数種類になりますが、このリネゾリド

は、オキサゾリジノン系となるということです...」

抗生物質というのは、名前がややこしいですわ」

「はっはっ...そうですね...

  ええ...このリネゾリドですが...“新規の作用メカニズム”を有する抗生物質

は、35年ぶりとなるようですね。日本では、2001年輸入が認可されています」

「あ...日本にも、入っているわけですね、」

「もちろん、入っています...しかし、抑制的に使用して行くということです...

  現在、耐性菌は、医療上の大きな脅威になっています。MRSA(メチシリン耐性・黄色ブド

ウ球菌)VRE(バンコマイシン耐性菌)がその代表例ですが、リネゾリドVRE対する、まさ

に、最後の切り札となるわけです」

「はい、」

「しかし...です...

  この最後の切り札/リネゾリドにも...早くも2000年のうちに、リネゾリド耐

性・腸球菌”が出現して来ています...したがって、適性利用が強く望まれます」

                      index292.jpg (1590 バイト) 

「うーん...」響子が、コブシを強く口に押し当てた。「最後の切り札が、突破されてし

まったら、どうなるのでしょうか?」

「例えば...そうですね...

  結核に、薬が効かない状態になります...それは、江戸時代の労咳(肺結核の漢方

名)の状況と、同じになるということです...

  つまり...患者の約3割は、自分が本来持っている、免疫系防御システムによっ

て、治癒します...そして、約2割は慢性化して、長期入院をするようになります。も

う、死語になってしまいましたが...サナトリウム(療養所)に入って、療養することにな

りますね。しかし、その内の、5割は死亡するという事になります...」

「うーん...

  免疫系防御システムが機能し、3割は治癒するわけですか...抗生物質と、人体

の持つ免疫力の関係が、よく分ります...免疫力も、機能しているわけですね。ガン

などは、免疫力発生を抑制していますし、抗生物質制ガン作用もあるわけです

ね」

抗生物質の種類によっては、です」

「はい...

  それにしても、最後の切り札が突破されたら、本当にそんな状況になるのでしょう

か?後は、対処療法だけなのでしょうか?これほど、医学の発達した時代に、ちょっ

と想像ができませんわ...」

「響子さん...

  薬の効かない...“結核の超多剤・耐性菌”というのは...もう、実際に存在して

いるのです...感染した当事者にとっては、“きわめて重大事態”です。ただ、事例

がごくまれなので、社会的大問題には至っていないだけなのです...」

「うーん...どうして、こんな事態になったのでしょうか?」

「そう...」夏川が、首をかしげた。「まさに、そこが...今後の事態として、大問題

のです...」

「はい、」

   〔2〕 ここでも、生態系との調和を  

          wpeA.jpg (42909 バイト) 

「ええ、夏川さん...」響子が、唇に手を当てた。「どうして...“多剤耐性菌”という

のは、生まれてくるのでしょうか?」

「まあ...細菌の中には、耐性を持つものが、わずかに存在するのです...適応

るものが、やがて存在してしまうのです...どうして、適応するものが存在して来る

のかは、非常に深くて難しい問題です...

  先ほども言いましたが...ペニシリンが出現して、およそ10年ほどで耐性菌が出

現しています。“ペニシリン耐性・黄色ブドウ球菌”の出現ですね。これに対処したの

が、“半合成ペニシリン”メチシリンです。

  そのメチシリン耐性を持ったのが、MRSA(メチシリン耐性・黄色ブドウ球菌)です。そして

MRSAには、バンコマイシンが対処しました。しかし、この最強のバンコマイシン

耐性を持ったのが、VRE(バンコマイシン耐性菌)というわけです...どんどん耐性菌の方

が追いついてくるわけです」

「はい、それで、どうなるのでしょうか?」

「ええ...まず...なぜ、耐性菌が生まれて来るか、です...

         ...【耐性菌が生まれる】...

  これは、生命現象の奥深い領域にある、“恒常性(ホメオスタシス)に関係していること

かも知れません...つまり、“生命のしなやかさ”/“生命の強靭さ”さらに、“バラ

ンス性/安定性/復元力”の問題にまで踏み込む、深淵な現象になるでしょう...

とても、一言では説明できません...」

「つまり、これは...“生き残る力/存続する力”なのでしょうか?」

「そうです...生命進化/生命潮流という、ベクトル(力と方向)とも関係する特徴かも知

れません...

  生物体は、みなそうなのですが...“撃退することは容易”でも、絶滅させるという

のは、実は“容易ではない”のです。そしてまた、種を絶滅させるということは、生態系

全体にも、非常に大きな影響を与えます...また、めったなことでは、やるべきでは

ありません。

  人類文明は今、その思いに反し、非常に多くの種を、急速に絶滅させています。つ

まり...薬剤耐性菌の出現とは、そういうレベルの問題だということです...」

「はい...」

「そこで、話を戻しますが...

  そもそも...細菌の中には、耐性を持つものが、元々ごくわずかに存在するという

ことです...耐性を持ち、適応するものが出現し...その“環境を乗り越える方向”

に、ベクが働くということです...」

「うーん...」響子は、コブシを口に当てた。

「そもそも、私たちの“意識”と言うものが...

  胎児における母体と未分化の、“プレローマ的自己(ウィルバー心理学/母親と未分化の意識

で、時間・空間・対象がなく楽園の状態)の段階から...“生きる”“存続しつづける”方向へ、

膨大な“動因”がかけられています...その、環境に適応し、存続していくのと同質

の、根源的な、“生きる力”でしょう...その“存続/構造化/進化”ベクトルです」

「うーん...はい...」

「例えば...もう少し具体的にいうと...

  結核菌の中で...ある種類の抗生物質耐性を持つ菌は、10億に1個の割合で

存在したとします...しかし、患者の肺の中には、100億の結核菌がいるわけです

...したがって、この場合は、10個の耐性菌が存在しているということです...

  この、10個の耐性菌が、生き残ってしまうのです...生命体には、こうした仕掛

けが、巧妙に組み込まれているということです...」

全滅させるのは、難しいということですね...」

「元々、そういう“システムが存在している”ということです...まあ、人体にも耐性

ありますが、細菌はそれとは別の形で、耐性を持っているということです...

  しかし...生態系の、積み上げられた秩序というものは...一度かき回される

と、再び同じ姿には戻らないとも言います。地球生態系の地質年代史が、そのことを

如実に物語っているでしょう...複雑ですねえ...

  まあ、こうした複雑性多様性こそが、生物体や生態系の、安定性にもなっている

ようなのですが...」

「そうですね...」

「まあ...“医療”というものの、難しさが分ると思います」

「でも...それを突き崩していくのが、“医療”ということですね?」

「まあ...そうですね...

  そしてそれが、“文明社会の防波堤”になります...人類文明の最前線になりま

す...街にある保健衛生機関や、医療機関がそれに当ります...最大の敵は、

染症であり、パンデミック(世界的大流行)ということになります...

  まあ、パンデミックは、文明のグローバル化が引き起こした“人災”でもありますが

ね...」

「はい...」響子が、深くうなづいた。「“経済のグローバル化”...“文明のグローバ

ル化”は...急速に、その“限界の壁”が差し迫って来ましたわ。“文明の折り返し

/反・グローバル化”が急務ですわ」

「そうですね...それは、間違いありません...

  ともかく、その文明の最前線で、薬剤耐性菌大問題になっているということです」

   wpeA.jpg (42909 バイト)         

「夏川さん...」響子が、チャッピーの頭を撫でながら言った。「具体的に私たちは、

耐性菌に対して、どう対処したらいいのでしょうか?」

「まず...なすべきことは...

  “不適切な抗生物質の投与”は、“耐性菌を選別/増殖させてしまう”ということを、

しっかりと認識すべきだということです。こうして増殖した耐性菌は、次の機会に

の薬剤への耐性を獲得してしまいます。そして、やがて、“多剤耐性菌”が出現してし

まうというわけです」

「うーん...すると、“超・多剤耐性・結核菌”というのは、そうやって、スーパーパワ

をつけた結核菌というわけですね」

「そうです。きわめて危険で、厄介な結核菌を、“医療機関”が育ててしまったというこ

とでしょう。

  何故、こんなことになったのかと言うと...基本的に、人類文明も、“医療”も、

態系システムを越える事ができないからです。越えることができない以上、細菌も、

人体も、“生きる力”としては、“同一のステージ”にあるということです。

  どちらが勝っているものでもなく、優れているものでもなく、...そもそも比べるべく

もない、“一体のもの”だということです...同じ、地球生命圏の1部/生態系の1部

/身体の1部のようなものだということです...まあ、これは高杉・塾長の考え方で

すがね、」

「はい...そうですね、」

「我々が、細菌よりも勝っているのは、“文明の力”だけです...生命力ではありませ

ん...広い意味では、“医療”もまた、生態系システムとは“協調”していくしか方法

がないということです...決して、“相反するものではない”ということです...」

 

     薬剤耐性を獲得する細菌 》   


「ええと、夏川さん...

  くり返しになりますが...こうした、耐性菌の出現を防ぐためには、どうすればいい

のでしょうか?」

「ともかく、何度も言いますが...

  むやみに、抗生物質/抗生剤を、多用しないことが大事になります。こうした薬剤

は、家畜の飼料や、食品保存などにも使われているわけですが、こうしたことも改善

していく必要があります」

医療現場で、耐性菌が生き残らないようにするには、どうしたらいいのでしょうか?」

「そうですね...

  最初から、複数の抗生剤を使い...適切に治療する事が大事になります...

性菌残さない注意が必要です...大病院などでは専門のスタッフがいるわけです

が、開業医などでどうするかは、今後の課題だと思います...」

「ともかく...抗生剤は、使い過ぎないということですね?」

「そうです...

  また、“医師の側が間違った処方”をしたり、“患者の側が服用指示に従わなかっ

た場合”...耐性菌が出現しやすくなると言われます...情報化の時代ですから、

その方面からの管理も、しっかりとするべきでしょう。情報管理が、大きな武器になる

かも知れません」

 

「夏川さん...

  不思議なんですけど...そもそも細菌は、どうやって薬剤耐性を獲得するのでし

ょうか?それを、妨害できないのでしょうか?」

「まあ、分っている所では...

  細菌は、“薬を体外へ排出するポンプ”のような仕組みを作り出しているようです。

また、酵素を使って、“薬を構造変化させる”という手段も持っているようですねえ。

るべき適応性...防御能力と言えます...脊椎動物で発達した、免疫システムなど

とは違った防御システムです...」

細菌たちも、生き残るためには必死ということですね」

「まあ...必死というよりは...

  生命の神秘...生態系システムの奥深さ...“恒常性”の凄まじいパワーという

ものを感じさせますねえ...」

「それは...細菌独自の力ではないという事でしょうか...生態系システムのパワ

ということでしょうか?」

「確かなことは言えませんが...

  1個の細菌1種類の細菌の持つ、種の総合的生命力だけとは思えません...

個の生物体の意識種の共同意識体というものは、確かに観測されています。しか

し、それだけで説明できるわけではありません...」

「はい...イワシの群れなどには、共同意識体というものが観測されますよね、」

イワシイカというのは、大量に食べられるから、種として“大量の卵を産む”という

戦略をとっています...あるいは、高山植物などは種として、あえて苛酷な環境の中

に、“自らの生存に適応する場所”を確保しています。

  そうしたことは、種としての戦略種の共同意識体によるものですが、そうしたこと

も全て、生態系ネットワークの中で行われていることです。総合調整の中で、非常に

脆く複雑に芸術的に、積み上げられているわけです...

  高杉・塾長は、とくに“芸術的に”と言うことを協調していましたねえ...」

「うーん...」響子が、白い歯をこぼした。「そこに、何らかの“意識”が介在すると言う

のが、高杉さんの意見ですわ...“膨大な人体の細胞組織”総合管理しているの

は、並列処理のデジタル・コンピューターではなく、“意識(/無意識を含む)だと、しばし

ば言っています...」

“生きる/存続する”という、強力な動因のかけられた“意識”ですか...」

「はい...

  高杉・塾長が提唱しているように、“36億年の彼”というような、統一的・超意識体

は存在するのでしょうか...少なくとも、そういう“意識体”が、進化の発達段階にあ

るということなのでしょうか?」

「ふーむ...

  塾長たちは、まさに、〔文明の第3ステージ/意識・情報革命の時代〕を提唱し

ています。恐らく、そうした時代背景の中で、そうしたことも解明されていくのではない

でしょうか...

  まあ、容易ではないでしょうが...実際に、“脳”“情報”“意識”というものの

解明が、展開していくものと思います...」

「そう言えば...高杉・塾長が、面白いことを言っていましたわ...

  “言語的亜空間”の、“相互主体性世界”に関して...最近、ミラー・ニューロンとい

うものが見つかったそうですわ...相互主体性/対人関係は、複雑な社会的行動

の基本になるものです。その対人関係神経回路基盤というものが、初めて見つか

ったのだそうです...10年ほど前に、」

「それが、ミラー・ニューロンなのですか?」

「そうらしいですわ...それを基盤とした、ミラー・ニューロン・システムというものが

注目されていると言うのです。そうした“対人関係が形成する空間”というものが、実

際に解明されて行くのでしょうか」

「そうですねえ...わたしは、ミラー・ニューロンというものが、どういうものかは知りま

せんが、自閉症の問題で、耳にしたことはあります...ふーむ...ミラー・ニューロ

というのは、そういう神経回路の基盤なのですか...」

「そうらしいですわ、」

「それが、確かなものなら...“対人関係が形成する空間”も...間違いなく解明さ

れていくでしょう...人類文明が衰退し行かなければ、ですが...」

「はい...ええと、夏川さん...」響子は、自分のモニターをチラリと見た。「話を戻し

ますが...

  細菌の持っている“薬剤耐性のシステム”を、妨害したり、それを応用したりするこ

とはできないのでしょうか?」

「そうですねえ...

  当然考えられることですが、まだしばらくは無理なようです。しかし、“医療”生態

系システムと、“どのあたりで折り合うか”ということも、そろそろ真剣に考えなければ

なりません。

  “ES(胚性)幹細胞”がいい例ですが...いわゆる、“神の領域”を侵すことになるか

も知れないと言うことです...それは、結局は、“人類自身に跳ね返ってくる”という

ことになります...自然界全体と、人類文明の姿全体を、もう一度振り返ってみると

言うことです」

「はい、」

自然界に対しては、“謙虚”であることを、忘れてはいけないということです」

「はい」

  《対面内服療法(DOTS/ドッツ)    


「さて、話を進めましょうか、」

「はい...」響子が、左右の脚を組み変えた。

結核の場合...

  耐性菌を作り出し、病気をこじらせてしまわないためには、“最初から薬をキチンと

飲んで完治”してしまうことが肝要です。そのためにWHO(世界保健機関)は、“対面内服

療法(DOTS/ドッツ)という方法を推進しています。これは、“2〜6ヶ月間、監視のもとに

薬を飲ませる”というものです」

「うーん...それだけなんですか、」

「そうです...

  アメリカなどでは、貧困層の治療徹底のために、食事券交通費などを支給して、

この方法を推進しています...多少の出費はあっても、早期に確実に治療した方

が、結局は安くつくと見るからです。

  それに、耐性菌が蔓延する、リスクを減らすということもあります。こちらの方が、よ

り重要かも知れません」

「うーん...携帯電話などで“予告”し、“確認の電話”を入れるというのもいいんじゃ

ないかしら?最近は、色々と薬を飲むことも多いわけだし、」

「そうですね。最近では、そうした文明の利器もあるわけです」

「こうしたサービスなら、気軽に受けられますね。ビジネスにもなるし、」

「まあ...日本においても、貧困層ホームレスの治療となると、文明の利器だけ

には頼れないと言うことでしょう」

「はい、」

 

      MRSA市中型/強毒型 ・・・が出現

                   wpe8.jpg (3670 バイト)

「ええと、夏川さん...

  MRSA(メチシリン耐性・黄色ブドウ球菌)強毒型が出現したと聞いていますが、それは、

どのようなものなのでしょうか?」

「そうですね...

  院内感染菌として知られているMRSAですが、最近になって病院外でも増殖する

“市中型”MRSAが出現しています...病院で駆逐することができず、とうとう

院外でも適応し、増殖できるようになったMRSAです...」

「うーん...病原性は強くなくても、適応能力がすごいですね、」

「いや、そうとばかりも言えないのです。このMRSA・市中型は、数%の割合深刻な

全身症状を引き起こすことが分っています。それゆえに、“強毒型”とも言われている

のです」

「そうなんですか、」

「そもそも、このMRSAというのは、他の細菌が生きていけない、病院という過酷な

環境しか存在していません。したがって、病院という環境が創り出した細菌なので

す。

  例えて言えば、高山植物のようなものですね。苛酷な環境で生き延びている高山

植物は、強い植物ではないのです。生存競争に負けて、そんな苛酷な環境に、自ら

の生き残る術(すべ)を見つけた種なのです...」

「はい。MRSAも、過酷な衛生環境病院内で、ようやく生き残る術を見つけた細菌

というわけですね、」

「そうです...

  ところが、こいつが、病院外でも増殖できるようになったわけです。これは、人類に

とっては、なかなか手強い相手になります。というのも、“抗生物質の効かない細菌”

が、病院外を闊歩し始めたわけです。しかも、“強毒型”に変異し始めたというわけで

す...非常に厄介な問題になりそうです」

「うーん...つまり、これは、どういうことになるんでしょうか?」

“超・多剤耐性・結核菌”と同様に、まさに厄介な問題だということです。アメリカでは

すでに、MRSA3割以上が、この“たくましいタイプ”になっているようです」

「うーん...でも...もともと、たいした細菌ではないですよね?」

「ええと...そうですね...詳しいことは分らないのですが...

  このMRSA・市中型は、子供若い人が感染するのが特徴のようです...とびひ

(小児によく見られる水泡性皮膚炎)等の皮膚症状で、治りにくい場合は、このを疑ってみる必

要があるそうです...まあ、治りにくい場合は、細菌検査をしてみるべきだ、というこ

とでしょう...それなりの対処をしなければいけないと言うことです」

「日本でも、そうした事が必要になって来るということですね、」

「そうです...

  そもそも、耐性菌が出現したのは、開業医抗生物質を多用した結果とも言われ

ています。また、家畜に与える抗生物質が、耐性菌を増やしていると言う指摘もあり

ます。

  医療現場では、治療“抗生剤を乱用しない”ことや、“病原菌を絞り込み・適正な

抗生剤を使う”ことなどが、今後ますます重要な課題になってきます...最後の手段

リネゾリド(/現在の最終的抗生物質)は、耐性菌が出現するのを、可能な限り抑制して行

かなければなりません」

「はい...

  ここでも、〔生態系との調和〕ということが、非常に大きな問題になってきますね」

「そうです...

  “医療”とは、“人体が本来持っている恒常性(ホメオスタシス)を引き出し、それを補う

ものです。結局それは、生態系システムの恒常性”や、“地球生命圏の恒常性”とも

一体不可分のものなのでしょう...」

地球生命圏が崩壊して行けば...当然、私たちの命も、文明も崩壊していくわけで

すね、」

「そういうことです...

  傲慢な人類文明を、謙虚な姿に、“早急に折り返すこと”が必要になって来ていま

す。それが、高杉・塾長はじめ、皆さんのやっている、“文明の折り返し”なのではな

いですか、」

「その通りですわ...私たちは、その“文明の折り返し”を、具体的に、現実的に、

推し進めています」

「つまり...〔人間の巣〕の展開ですね、」

「そうです!」

「そこでは、“医療”はどのような位置付けになっているのでしょうか?」

“医療”は、非常に大きな、基本的な位置にあると思いますわ...文明を形成し、

弱者を救済して行く“医療”は、その土台となるものです...

  医術算術などとも揶揄(やゆ)されますが、私たちは“医療”を、もっと純粋なものと

して位置付けています」

「そうですか...

  最近の日本は、経済至上主義とも、市場原理主義とも、弱肉強食と言われます

が...“医療”の本質は、〔弱者救済、文明の防波堤〕にあるということですね」

「はい。そう思っていますわ...

  そして、“文明形成の目的”を、“淘汰圧力/弱肉強食/食物連鎖”を離れ、〔極

楽浄土〕を創出することにあるという、私たち“独自の座標”も設定しているようです

わ」

「そうですか...〔極楽浄土〕ですか、」

「はい...」

                     

「ええ、響子です...今回はこれで終ります...

  耐性菌は、今後、益々大きな問題になって行くと思われます。私たちも、引き続き、

注目して行きたいと思います」

 

 

 

 

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