「星野支折です!
〔新年のご挨拶〕は、茜さんの方で済ましていただいたのですね!どうぞ、今年もよろ
しくお願いします!
ええ...いよいよ人類文明は、“第1ステージ/農耕・文明の曙”から、“第2ステージ
/エネルギー・産業革命”を経て、“第3ステージ/意識・情報革命”の時代に突入した
様相です。2008年は、そうした“文明の折り返し”という意味でも、人類文明史ストーリ
イの節目の年になるようです。
津田・編集長...人類の文明史は...“第2ステージ”//経済発展/技術開発/
熱エネルギー・コントロール/スピード追求型から、いよいよ“第3ステージ/意識・情報
革命”という新しいステージへシフトしていくわけですね。
“第2ステージ”//熱運搬・エネルギーの形態から、“第3ステージ”//情報運搬・
エネルギーへ変遷していくわけですね。“意識・情報革命”という意味では、この世の本
質である、“意識/心の領域”の統合に踏み込んで行くわけですね...」
「そうですねえ...あ、津田です!今年も、よろしくお願いします!
さて、そうですねえ...急激に、新しい価値観へシフトして行くわけではありません。
しかし、全体として、大きなカーブを描き始めています。すでに〔世界市民〕は、“スローフ
ード/スローライフ”を求め始めています。それは、物欲ではなく、人間回復の流れです。
古くて新しい課題ですが、人類の英知/・・・文明のステージが、さらにステージ・アップ
して行く過程にしたいものです。
今、世界は、グローバル化・リスクで混乱を深めています...“エコ/地球温暖化対
策/文明の存続”という、不可避の要素が加わって来ました。世界のリーダーたちは、
明確にその必要性を認めています。やがて、既得権や利害対立や紛争を越えるでしょ
う。新しい価値観が、世界に受け入れられる準備が始まっています。いよいよ“文明の
折り返し”が開始されるという事です」
「はい!
〔人間の巣〕が、世界各地に展開されて行けば、いよいよそれがビジュアル(視覚的に)
に、目に見える形で、私たちの目の前に提示されて来るわけですね...大いに期待し
たいと思います。
CO2(二酸化炭素)排出権取引制度(/キャップ・アンド・トレード方式/ベースライン・アンド・クレジット方式)と
いうような、経済活動の枠内にあるものではなく、ビジュアルで絶対的な風景として出現
して来るわけですね。〔世界市民〕が直接タッチする形で、時代の激変の様相になると
思います。
現在、経済活動の枠内で行われている技術的対応策も、結局は、〔人間の巣のパラ
ダイム〕になってくるということですね...もちろん、可能性の1つとしてですが...」
「そうですねえ...
高杉・塾長が、《極楽浄土のインフラ建設/宗教の第4の道》という構想を提唱され
ましたが...“文明の折り返し”というものに、具体的な肉付けの方向性が出て来たと
思います。ええ、高杉・塾長、ご苦労様でした...」
高杉が、頭を下げた。
「2008年からと思っていたのですが...《軽井沢基地》に立ち寄った際、響子さんに、
上手に乗せられてしまいました...考察途上での、アップロードになってしまいました」
「はは...響子さんに、うまく乗せられましたか、」
「そうです...」高杉が笑った。「したがって、まだ未完成のものですので、今後さらに考
察が必要でしょう。まあ、全てがそうですが、」
「はい!」支折が、うなづいた。「でも、ずいぶん前進しましたわ!」
「うーむ...」高杉が、顎に手をかけた。「今後...各方面から、様々な試案が出てくる
ことを期待しています。ま、いずれにしても、私たちの両手にあまる課題です。衆知を集
め、総合的に研究を進める中で、しだいに洗練されたものになって行くでしょう...」
「はい!
“宗教の第4の道”ということですね。その方面の関連組織も、本格的な研究を進め
て行くと思います。ともかく、現在は、〔人間の巣〕が展開されて行くことが急務となりま
すね!」
「そうですねえ...」高杉が言った。「〔人間の巣〕を展開することが、緊急の課題でしょ
う。〔極楽浄土のインフラ建設〕は、その次の段階の話ですね」
「はい!でも、それも必要なことですわ」
「そういうことです...
まあ、頑張りましょう。よりよい提案があるのなら、私たちは〔人間の巣〕にこだわるも
のではありません」
「はい!」
「ええと...」支折が言った。「塾長...
最近、民間ベースでの新幹線の建設計画が発表されましたね...詳しい事は分らな
いのですが、JR東海だったでしょうか...」
「うむ...そんな話がありましたね」
「それから...いまだに、高速道路や整備新幹線の建設計画が進行していますね。こう
したものは、どうのでしょうか。もはや、全面廃止するべきなのではないでしょうか。スピ
ード追求に、メリットのある時代ではないと思うのですが...
そのことに、意味のある時代ではありませんわ。環境を破壊するだけです。これは、二
酸化炭素/CO2の問題だけではありませんわ」
「そうですねえ...」高杉が言った。「日本は、急激な人口減少社会に突入しています。
輸送量そのものが、急激に減少しているということです。それを、“少子化対策”で人口を
増やせと言い、高速道路や新幹線は、惰性的に充実させようとしています。壮大な無駄
でしょう」
「はい...建設工事そのものに、経済効果を求めている観がありますわ。その先、破綻
することは、誰の目にも明白です...」
「〔人間の巣のパラダイム〕から言えば...
大局的な視点から、こうしたサービスも、“人間サイズのスピード”に“折り返す”という
ことでしょう。これも、“文明の折り返し”の範疇の中に入ります。新幹線を作っても、もう
豊かさは取り戻せないでしょう...価値観が、大きくシフトしつつあります...」
「うーん...そうですよね...」支折が、髪を揺らした。
「まず、典型的なのは、航空輸送の縮小でしょう...次に、高速道路や新幹線の縮小で
す。もちろん、全てが、即、無くなっていいというものではありません。徐々に、交通手段
のスピードを、ダウンさせて行くということです。
航空輸送に代わるものとしては、船舶輸送がありますね。陸上でも、河川による船舶
輸送の方がいいのです。日本では、高速道路や新幹線も、急速に需要が減少して行く
でしょう。中国やインドなどでは、これから自動車や新幹線の時代になるようですが、地
球環境という器が持ち答えられなくなりますね。
これは、経済原理の話ではなく、“文明の折り返し”が始まっているという話です。し
たがって、選択の余地のないものです。早晩、頭打ちになるでしょう。それを織り込んで、
〔人間の巣〕を展開して行って欲しいですね」
「はい...」支折が、うなづいた。「でも...日本には、現実に高速道路や新幹線はあり
ますし、そういう転換は、進んで行くのでしょうか?」
「そうですねえ...
若者の“車離れ”というものは...まさに、そうした“新時代の空気”を、先取りしてい
るのかも知れませんね...車に夢を求めなくなれば、それはただの道具です。むやみに
車を乗り回すという文化は、無くなりつつあるということでしょう」
「はい、」
「若者は、“新時代の空気/新時代の文化”として、本能的にそれを感じ取っているので
はないでしょうか...日本では急速に少子化が進行していますが、そうしたものと同じ
類の、本能的とも言うべき自然な流れかも知れません。
まあ、理由をつければ、いくらでもあるのでしょう。しかし、自動車業界としては、いか
んともしがたい、若者の動向でしょうねえ。トヨタやホンダでは、ロボットの開発を進めて
いますが、これも一定以上の需要は望めないでしょう。
何故なら、こうしたものは、“文明の第2ステージ/エネルギー・産業革命”のパラダイ
ムの中にあるからです。むろん、需要がないとは言いませんが、“文明の第3ステージ/
意識・情報革命”のパラダイムでは、文明のスタイルが異なって来るからです」
「日本の人口減少も、車離れも...そうした、目には見えない大きな流れの中にあると
いうことかしら...」
「そうですねえ...
ともかく人類文明が、“有限空間で行き詰まった!”という状況でしょう。そこで、若者
は、バーチャル空間へシフトして行こうとしているのかも知れません。バーチャル空間は
無限ですからねえ...」
「はい、」
「夢と有限空間のギャップを、とりあえず、バーチャル空間で埋めているのかも知れませ
ん...
ところで、このバーチャル空間というのは、どこまで伸びて行くのか、ちょっと想像がつ
きません...実は、人類が共通に見ている世界観というものも、“言語的・亜空間”とい
うバーチャル空間なのです。眼前するリアリティーとは別のものです。
リアリティーの風景には、日本という抽象概念はありません。大量破壊兵器の恐怖
も、国連などという概念もないのです。あるのは、切れ目のない大自然の風景だけです。
それに、“言語的・亜空間”というバーチャル世界を重ね合わせた、【人間原理空間】を私
たちは見ているのです。
これは、人類の共通意識が、相互主体的に作り出している、種の持つバーチャル空間
/共同意識体です。赤ん坊の時から、教育によって適応している、【人間原理空間】なの
です。眼前するリアリティーとは別の所にある、意識的・亜空間なのです。
ここに、21世紀に突入した現在、電子的・バーチャル空間が重なって来ています。ま
だ、きわめて粗雑なものですが、インターネット空間は地球を覆い尽くす規模になってい
ます。まあ、これが“文明の第3ステージ/意識・情報革命”になっているわけです。
現在の、幼稚なバーチャル空間は、今後、有機的に進化していくでしょう...その方
向に生命潮流があるようです。したがって、それがどのように展開して行くのかは、想像
を絶するものがあります...
今は、その入り口にいるということですね...“意識・情報革命”の本格化は、まだし
ばらく先のことでしょう...真の意味での、“物の領域”と“心の領域”の...その統合
の先に見えて来るのが、“文明の第3ステージ”の本格的な変容でしょう...」
「うーん...それには...無意識も...“36億年の彼”も、関係してくるのかしら...」
「そうですねえ...この話は、ちょっと別の方向へ行ってしまいますね...
ともかく...“若者の車離れ”は、方向としては、まさに正鵠(せいこく/弓の的の中央の黒ぼし)
を射ているものだという事です。日本の急速な人口減少と、同一の軌道上にあるもので
す。様々な抵抗の中で、まさにその方向が進行しているようです。
日本国家/日本社会を、正しい方向へ導いている力です...何故か、そうした力を
感じますねえ...そうでなければ、こうも都合よく、“急激な人口減少社会”になり、“若
者の車離れ”が起こらないように思います...まあ、神様に感謝ですね...」
「うーん...」支折がうなづいた。「そうですね...」
「ともかく...“人間サイズのスピード”になることは、いいことです...
それだけで、世界や日本の国土が、時間的に広くなります。もともと、時間的に空間を
狭めてしまったものですからね...これは、人間性の回復につながります。“地球温暖
化対策”の面でも、それは正しい方向だということです。目に見えない、上位システムの
何者かが、私たちを導いているのでしょうか...」
「うーん...」支折が、口元を崩した。「それって...ロマンが、ありますよね...」
高杉も、顔を崩してうなづいた。
「ともかく...
〔人間の巣〕が、本格に展開されて行くようになれば...人々はその範囲の中で、十
分に楽しく、落ち着いて、暮らしていけます...生態系の他の生物種は、みなそうしてい
るわけです。ホモサピエンスだけが、“文明の第2ステージ”で莫大なエネルギーを獲得
し、暴走してしまったわけです。うまくコントロールができなかったわけですね。
“エネルギー・産業革命”の莫大なエネルギーは、決して〔極楽浄土〕をもたらすもの
ではなかったのです...まさに、現在のような、経済原理によってマラソン人生を強いら
れ...バカらしい核爆弾の恐怖にさらされ...外国の都市を、当てもなく、落着き無くウ
ロつくというような、文明を作り出してしまったのです」
「はい、」
「そこで...“文明の第3ステージ/意識・情報革命”へシフトして行くという、ストーリイ
のバイアス(偏向)がかかって来たのかも知れませんねえ...
むろん、そこはまだ、人類文明では解明されていない領域の話です。しかし、こうした
概念が出現してきたという事は、やがてそういう領域に踏み込んで行くのでしょう...こ
の先に、“文明の第3ステージ”が出現してきます...」
「はい...
ともかく私たちは、素直に、すべて“人間サイズ”に返るということですね?“文明の折
り返し”を実現していくということですね?」
「そうです...
これでもかと、グルメに走り...世界中を飛び歩いても...あまり満たされるものは
ないと思います。もちろん、それが必要という人もいるでしょうが、文化としてはどうでしょ
うかね...そろそろ、舵を切る時が来たということです...
何処へでも行き、何でも食べ、何度も結婚し、全て好き勝手、気ままにして...それ
で充実した人生でしょうか...私たちは、大量生産・大量消費/経済発展/市場原理
/スピード追求で...結局、そんなものを求めていたわけですねえ...
しかし、そこに〔極楽浄土〕はなかったのです...〔極楽浄土〕は、その足元の、す
ぐ裏側にあったのです...それが、〔人間の巣〕です...」
「はい!」支折がうなづいた。
「今年は、大きな転換点の年になるでしょう...まあ、簡単ではないと思いますがね、」
「そうですね、」
「ええ、青木さん...」支折が、青木の方を見た。「政治についてお伺います...今後の
政治の大局的は、どのようになって行くのが良いのでしょうか?」
「そうですねえ...」青木が、顎に手を当てた。「大局的な展望ですか...」
「はい...政局の話ではなく...」
「うーむ...
まず...〔人間の巣〕が展開して行けば、日本の政治も大きく変質して行くと思いま
す。〔人間の巣〕が、“独自の運営”を開始するようになれば、それを大局的に管理する
だけになますね...したがって、行政の仕事も、大幅に減少することになります。
その上で、外交、防衛、危機管理、調整、国家的サービスが、仕事になります。現在
のような、利益代表といったような色彩はなくなります。それぞれが、自給自足で独立し
ていますから、富と権力が集中するという事もないでしょう...そんなことに、あまり意味
がないということです」
「はい、」
「それから、“世界政府/地球政府”が創設されるのがいいでしょう...
世界レベルでの、危機管理や、調整、サービスが提供されることになります。紛争や、
大災害や、生態系管理などがありますね...まあ、そのあたりは、その時代の人々の
仕事でしょう」
「そうですね、」支折がうなづいた。
「当面は...
〔人間の巣〕が、どのように展開して行くかということが、焦点になります。まず、ここ
がカギになるでしょう...〔人間の巣〕では、様々な政治形態、様々な社会形態が許容
されます。
ただ、大局的なことを言えば、ここでは間接・民主主義ではなく、直接・民主主義にな
るのではないでしょうか...それから、何もかもが許されるということではないでしょう。
ガン細胞となる〔人間の巣〕が生まれないような、情報開示と管理が必要です。
塾長が、《極楽浄土のインフラ建設》で言われていましたが、ガン細胞の発生に対処
する、アポトーシス(プログラム細胞死)や、新陳代謝のシステムを組み込むことが必要だと思
います。それから、マクロファージ(貪食細胞)の機能などですね...これは、今後、さらに
研究が必要でしょう...まあ、こんな所ですかね...」
「はい...」支折がうなづいた。「ええ、最後に...塾長、ひとことお願いします」
「うーむ、そうですねえ...
やはり、〔人間の巣〕が、重要なポイントになると思います。〔人間の巣〕は、人類文
明全体でいえば、細胞に相当します。細胞は生命の最小単位ですね。それが、うまく機
能して、様々な臓器となり、総合的な1つの人体を形成しているわけです。細胞がうまく
機能することが、非常に重要になるわけです」
「はい...」
「私たちは、眼前の世界に、こうした精妙なシステムが、脈々と息づいていることを、もっ
と謙虚に観察するべきです。そして、それを、社会システムの中に取り入れて行く視点
が、重要になります。それが、“文明の第3ステージ/意識・情報革命”のスタンスです」
「はい、」
「“文明の第3ステージ”は、生態系と強調して行くものでなければなりません。これまで
の“第1ステージ/農耕・文明の曙”や、“第2ステージ/エネルギー・産業革命”は、自
然をコントロールし、征服するものでした。
しかし、“第3ステージ/意識・情報革命”では...大自然の“内的世界の深淵”に、1
歩、2歩と、踏み込んで行くものになるでしょう...そこで、私たちは再び、“神”を見るこ
とになるのかも知れません。かつてとは違う、“より深遠な神”を、再発見することになる
のかも知れません」
「はい!」支折が、大きくうなづいた。

「ええ、支折です...
新春対談は、これで終わります。いよいよ、2008年が始まりました。世界
標準は経済発展/市場主義から、“エコ/文明の存続”へ大きくシフトして
行く様相です。
でも、日本の政治・行政は、まさに大混乱を深めています。企業でも偽装
が続発しています。こうしたものを一掃して行くには、“日本版・ニューディー
ル政策”が不可欠なのかも知れません。
ともかく、行動の年が始動しました。この2008年が、良い年になることを
祈っています...」