My Weekly Journal 時事対談

  時 事 対 談 <緊急対談>  〔2003年〕  

                  近道 は、本格的”政権交代!

           混迷・混乱の加速今必要なのは、やはり“本格的・政権交代”

           wpe23.jpg (21694 バイト)       wpeA.jpg (42909 バイト)       

  トップページHot SpotMenu最新のアップロード                       編集長 :   津田  真

 

プロローグ   2003.04.05
No.1  モラルハザード 2003.04.05
No.2  問題は、抵抗勢力か 2003.04.05
No.3  ネジレ現象 2003.04.05
No.4  混乱収拾は、“政権交代”が近道 2003.04.05
No.5    <坊主頭> 2003.04.05
No.6    <世界中から、笑われている国> 2003.04.05
No.7  政権交代への結集 2003.04.05

  

 

プロローグ                       

                             wpe23.jpg (21694 バイト)    

  政治部の青木昌一が、ものめずらしげに談話室に入ってきた。部屋を見回し、天

井を見上げた。それから、窓ガラスの向こうの、満開の桜を眺めた...

「やあ、青木!」津田が、作業テーブルで手を上げた。「ご苦労様!」

「お久しぶりです、編集長!いよいよ、始まりましたねえ、統一地方選挙が!」

「うむ、」津田は、スチールの椅子の上で、脚を組み直した。「それに加え、イラク戦争

の情勢が、混沌としてきた。国際部の大川慶三郎にも来てもらおうと思ったが、急が

しそうだねえ、彼は、」

「大川は、今、何処に?」青木は、スチールの椅子を引き、背広の裾をはねてた。

「軍事衛星1号だ。飽きもせず、地球を周回している」

「そう言えば、編集長、日本初の偵察衛星が上がりましたねえ。確か、3月28日でし

か...10時27分...」

「うむ。ともかく、日本もいよいよ変わってきた観があるなあ。そして、相変わらず、変

わらない所もある...そこで、国民全体がイラだっているわけだ。何故か知らんが、

変わってこない」

「マスコミですか?」

「うーむ...マスコミも、その1つだ...」

     wpe57.jpg (5177 バイト) wpe56.jpg (9977 バイト)                wpeA.jpg (42909 バイト)  

「いらっしゃいませ、青木さん!」支折が、両手で盆を運んできた。

「お久しぶりです!」青木が、半分腰を浮かした。「元気そうですね」

「はい!もう、桜も咲いたというのに、今年は暗いニュースばかりですわ」支折は、テ

ーブルに盆を置いた。二人の前に、茶を進めた。

「どうも...」青木は、茶碗に手を当てた。「そうですねえ。2003年。暗い時代の始

まりですかねえ」

「はい」支折は、ノートパソコンの横に、自分のコーヒーを置いた。「本当に、日本

もだんだんおかしくなって来ていますわ」

「北朝鮮情勢も、」津田が、片手で湯飲み茶碗をつかんだ。「いよいよ差し迫った観が

ある。まず、何と言っても、韓国と日本は、朝鮮半島での戦争は避けたい所だ。日本

も、あの敗戦から、もう半世紀以上がたつわけだが...」

「しかし、編集長、このまま行けば、北朝鮮は核爆弾を持つことになるでしょうね」

「うーむ、そこが問題だ」

「困りました...」青木は、両手で湯飲み茶碗を包み、それをゆっくりと口へ運んだ。

「韓国の方は、どうかね?」

「新大統領になり、しばらくは静観でしょう。どっちにしても、韓国は難しいでしょうね。

まあ、日韓関係は、全体的には、いい方へ向かっていると思います」

「うむ、韓国でも、反米感情が出て来ているのが心配だ。ま、ともかく、朝鮮半島問題

は、第一義的には、韓国の意向が重視されるべきだろう。民族統一問題は、日本も

バックアップすべきだからねえ」

「はい」

「日本も、北朝鮮の“ノドン・ミサイル”の射程に入るわけだが、パニックさえ起こさな

ければ、実害はたいしたことにはならない。空中給油機もあるし、日本としても、座

視するわけではないからねえ。ソウルのように、砲弾が直接届くという距離でもない。

  それよりも、長期的には、中国の核ミサイルの方が脅威になる。いずれにしても、

ミサイル迎撃システムは急務だな、」

「はい。編集長、その話をやるんですか?」

「いや、今日は、日本国内の話だ。国内問題の方で、緊急対談をセットした」

「そうですか。まあ、中国は成長期ですし、アテネの次は、北京オリンピックですから

ねえ。北京オリンピックは、2008年になりますか。当分、中国は、ゴタゴタはしない

でしょう。しかし、成長が、急すぎたという観はあります」

「うむ。中国では、経済成長のマイナス面も、急速に顕在化してくるのではないかな。

環境汚染や、酸性雨も心配だ。酸性雨は、朝鮮半島や、日本列島にも降って来るわ

けだ」

「はい」

「このあたりの交渉は、複雑になりそうだな。中国の軍事力もからんで来るし、難しい

問題になる。まあ、日本は環境技術を積極的に支援し、戦略的に対処していかない

と、後々大変なことになる。

  目先のことで損をしても、“20年先、30年先”を考えて、また、“グローバルな視

点”から、対処して欲しいね」

「はい。人口12億の中国、9億のインド、そして東南アジア...ここで、急速な消費

文明が拡大していくわけです。化石燃料からの脱却と同時に、経済と文明のグロー

バル化も、総合的な制御が必要だと思います。まず、その枠組みが必要になってき

ます」

「うーむ...香港あたりで生まれる“新種ウイルス”も、人類社会全体がグローバル

化することに、警告を発しているようだ」

「はい、例の“SARS”は、いい教訓になりそうです。世界的に拡大していますから」

「うむ」

 

  モラルハザード!      wpe23.jpg (21694 バイト)

   行政やマスコミは、この問題に、どう取り組んでいるのか? 

 

「それでは、さっそく、本題に入ろう...」津田が立ち上がり、窓の方へ歩いた。

「私は、前回の“OPINION”で、公共放送・NHKは“日本のミニチュア”だと言った。

そして、NHKという“社会工学ツール”を使い、国民的な大討論を起こすべきだとも

言った。

  公共放送であるNHKは、“社会秩序の守護神”として、やはりこの日本の大混乱

には、非常に大きな責任があったと思う。あれもこれも、面白い特集もいっぱいあり

ますよ、というのも確かに貴重です。実は、私もファンの1人なのです。しかし、NHK

本来の仕事の方は、どうなのかということです。

  このあたりを、NHK自身はどう考えているのか、今後どう取り組んでいくのか、国

民にしっかりと説明すべきだと思うわけです。このままでは、日本はモラルハザードで

沈没してしまう。ともかく、これからは情報公開の時代だし、NHK運営委員会は、ガ

ラス張りであることが必要だ...」

「当然ですね」青木が、窓辺に立っている津田を眺めて言った。「NHKが、“シランぷ

り”をしていたのでは、この国は、モラルハザードで沈没します。ともかく、社会全体か

ら、道徳心が失われつつあります。

  それが、さらに、道徳の問題から、犯罪へ流れ込んでいます。“万引き”の増加な

どですね。こうしたことがさらに進めば、法律を守っている方が、バカを見るような事

態になります」

「うむ。昔、野武士が群雄割拠していたような風景か...あるいは、無法者が支配

する、西部劇の町か...」

「はい」

 

「私は、そこで、NHKが国民的な大議論の場を作るべきだといったわけだ。政治の

問題、教育の問題、有事立法や危機管理の問題、個人情報の問題、欠陥住宅の問

題、環境の問題...農業の問題、食糧自給率の問題...医療や雇用の問題、行

政改革や政治改革の問題...マスコミによる人権侵害の問題...

  数え上げたら、切りがないほどある。仮に、こうした問題で、政治がうまく機能して

いた場合でも、国民的な大議論はするべきだ。それには、NHKの1日数時間の娯楽

番組を、全て当てても、足りないのではないかと思う。もちろん、本格的に世論が動き

出せは、全てをテレビで放映しなくてもいいがね。ともかく、国民的な議論を開始しな

いことには、国がダメになってしまう」

「分ります...具体的に、どうするかということですね」

「うむ。突き詰めれば、このまま“小泉内閣の続投でいいのか”、と言うことだ」

「はい」青木は、津田の肩越しに、窓の向こうの桜を眺めた。「まあ...編集長も私

も、小泉内閣は発足当初から支持してきました。もちろん、今でも、基本的にその路

線でいいと、私は思っています...

  しかし、いずれにしても、一向に“成果”が上がってきませんね」

「そう、そこだ...ま、これも、稀有(けう/めったにないこと)な話だが、むしろ、社会の混乱

に拍車がかかっている...つまり、“抵抗勢力”に骨抜きにされ、好き勝手なことを

やられているわけだ。それが、つまり、これほどの大混乱を生み出している“元凶”

だと思う。そこに、尋常ではない“悪”が存在しているようだ。そうでなければ、これほ

どのモラルハザードは考えられない」

「はい」

「いずれにしても、“抵抗勢力”は、明らかにやりすぎだと思う」高杉は、窓枠に寄り

かかった。「ここまでやっては、国がもたない。日本は、法治国家なんだからねえ。そ

して、立法府は、まさにその法律を作っている所だ。そこが、法律を踏みにじってい

るというのでは、一般国民がついていかない」

 

「はい...」青木は、談話室の天井を見上げた。「私は...“新聞”など、有力メディ

アは、何をやっているのかと思っています...

  テレビはまあ、娯楽番組をやってますが、私は新聞はずっと信じてきました。新聞

だけは、しっかりと社会をウォッチしてきたと思っていました。しかし、どうも違ってい

たようですねえ...

  この現状を見ると、新聞は、案外、力がなかったわけです。まあ、新聞関係の人

が聞いたら反論するでしょう。しかし、この国のモラルハザードの現状は、否定しよう

がない。何故、新聞は、ここまで放置してきたのでしょうか。むろん、気付かなかった

と言ったら、それも、怠慢でしょう」

「うむ。新聞も、案外だった」津田は、作業テーブルに戻り、茶を取り上げた。

「編集長は、テレビの方を、高く評価しているようですが、」

「いや、影響力の問題だね...」津田は、椅子に掛けた。「私も、テレビには、不満が

多い。特に、NHKは、聴視料で運営されている、国民の公共放送だ。民間放送と同

じような、ドラマ娯楽番組などは、どうかと思う」

「そうですねえ」

「いずれにしても、マスコミ全体は、日本の現状に、もっと責任を感じるべきだと思う。

政治家官僚も、社会的信頼はすでに地に落ちた観があるが、このままで行けば、

次はマスコミが国民から信頼されなくなる」

「このままだと、そういうことになりますか...パチンコ屋と同じように、サービスのい

い日と悪い日があるのでは、困りますねえ」

「パチンコ屋は、サービスのいい台と、悪い台もある」

「ああ、なるほど、」青木は笑った。「マスコミは、チャンコ鍋ですからねえ」

 

  問題 は、抵抗勢力 ...        

 

  薄日が射して来たので、支折が立って行って窓を開けた。すると、部屋の中に、サ

ーッと春の風が入ってきた。桜の梢を揺らした風が、彼等の作業テーブルにも吹き寄

せてきた。

「私は...」青木は、顔に春の風を受けながら、湯飲み茶碗を握りしめた。「この日本

モラルハザードの拡大は、根は官僚の“天下り”にあったと思っています...」

「うむ」津田も、冷めた茶を飲んだ。

「それから...いわゆる既得権に対する“抵抗勢力”が、ルールを公然と破り始めた

ということです。今までは、官僚らしく、陰で税金を喰いかじっていたのを、政治家が

大っぴらにそれをやり始めた観があります。すでに、100兆円ぐらいになりますか」

「うむ、」

「それから、道路公団などの、構造改革のゴタゴタも、本質的にはそうです。大企業

の数百億円、数千億円という“棒引き”も、政治の力でやったことでしょう

  どんな事情があるにせよ、社会的に筋の通らないことを、強引にやり始めたわけ

です。私たち国民が見ていても、そんなことをしたら社会が壊れるだろうと思いまし

た。そして、やっぱり壊れ始めた。しかし、誰も責任を取らないわけです。いったい、

どうしてくれるんだということですね」

「うむ!経済対策だといって、総計すれば、100兆円もの税金が注ぎ込まれたとい

う。しかし、国民には、それがどこへ消えたのか分らない。多少でも、返ってくるのか

どうかも、どうも分らない。何となく、いつの間にか、国民の借金として計上され、赤字

国債だけが増えているようだ。恐ろしい話だねえ、」

  支折が、空になった急須を持って、立って行った。

 

「編集長、文化の空洞化について、私にもひとこと言わせて下さい」

「ああ、いいとも」

「編集長は、NHKは文化の方に傾倒し、本来の任務を忘れていると言ってました」

「うむ」

「しかし、私は、本当の意味で、NHKは“日本の文化を守る”ということはしていなか

ったと思っています。ただ、“好きなこと”をやって来ただけなのではないでしょうか」

「まあ、そうも言える」

「古い、歴史的なものはいいのです。しかし、現在の日本文化が悪いですねえ。現在

が荒廃しています。何故、ここまで荒廃したかといえば、日本の文化の中でも、モラ

ルハザードが起こっていたからだと思います。

  NHKは、現在の文化で、真に公平公正に、日本文化を育むという大戦略を考え

てこなかったと思います。NHKが、何かの賞を与えても、国民はそんなものはインチ

だと思っています。あるいは、本当だとしても、身内の話だと思って、白けて見てい

ます。まあ、日本文化全体がそうですが、全てでインチキをやるから、全体に権威

なくなってしまったわけです。

  NHKは、テレビ・メディアの発展の過程で得た、巨大な力を、公共放送本来の目

的のためには使わなかったのです。社会の啓蒙、民主主義の発展、社会正義のた

めには使わず、自分達で“好きなこと”をやり始めたわけです。ドラマを作ったり、のど

自慢をやったり、高校野球を放映したり。まあ、膨大な予算と人材を注ぎ込むわけで

すから、何をやっても相当なことが出来ます。相当なファンも獲得できます。しかし、公

共放送として、肝心なことは、何故か、ほとんどやらなかったわけです。

  政治が政治なら、公共放送も公共放送、新聞も新聞...国民は、何を信じたらい

いのでしょうか」

「まあ、政治も、公共放送も、新聞も、立ち直ってもらわんことには、どうにもならん」

「そうですね」

「まあ、だからこそ、各界の有識者は、日本の現状を、有史以来の未曾有の大混乱

だというわけだ。“勇気”“正義”“努力”などは、本来“慣習法”として、人間の社

に深く根ざしてきたものだが、今の日本では、それさえも虚(むな)しいものになっ

ている...

  それよりは、万引きであり、引ったくりであり、詐欺、偽装...その頂点に、青木

が言ったように、“官僚の天下り”があったわけだ」

「はい、」

    ネジレ現象     wpe23.jpg (21694 バイト) wpe7.jpg (10890 バイト)  wpe8.jpg (26336 バイト)     

 

「ええと、話を進めたいと思います」支折が、新しく茶を注いでから言った。「それで、

青木さん...何故、小泉内閣の続投では、問題なのでしょうか?」

「はい。時代は、今まさに、大変革を要求しています。つまり、明治維新のような、革

命を要求しているわけです。小泉首相も、“新紀維新”と宣言し、その推進を旗印に

掲げてきました。したがって、ここまでは、良かったのです。

  ところが、肝心の既得権を主張する“抵抗勢力”とは戦わなかった。勝海舟の行っ

た、江戸城の“無血開城”のみを求めて来たわけです。敵勢力の状況によっては、雌

雄を決する天王山の戦い(羽柴秀吉と明智光秀の決戦)や、関が原の戦い(石田三成と徳川家康の決

戦)が必要だったのです」

「つまり、」津田が言った。「決戦の、山がなかったわけだ」

「はい...それがいわゆる、例の“自民党をぶっ潰してでも”というヤツだったわけで

す。ところが、小泉内閣はやらなかった。いや、出来なかった。何故か?それは、本

来、政策的にも近く、国民もまたそれを期待していた民主党や自由党などの野党勢

力が、小泉政権に力を貸さなかったからです。

 

  そこが、日本をここまで混乱させた、最大の分岐点だったと思います。

 

  当初、国民の8割以上が、小泉内閣を支持していたわけです。それには、民主党

と自由党の票も入っていたはずです。ところが政治の側が、その真意を理解しなかっ

た。いや、甘く見ていたと言うべきでしょうか...国家・国民の切なる思いに、野党は

配慮しなかったわけです。

  そこで、与党・野党とも、“ネジレ現象”とかで、我侭(わがまま)を押し通し、国会の場

で、小泉政権を裸に近い状態になってしまった...これは、“民意”に対する、大い

なる裏切り行為だったわけです」

「そう、」津田は、茶をすすった。「...自民党内では抵抗勢力が優勢であり、野党は

全て反自民・反小泉になってしまった。これでは、小泉内閣は、与党の抵抗勢力と妥

協をせざるを得なかった...これでは、苦しかったでしょう...

  私は、かねがね、このことで、民主党は戦略を間違えていると言ってきた。しかし、

まさにそのことが、予想以上に、国家を大混乱に陥れてしまったわけです。政治が

凍りついて、動かなくなってしまった」

「はい、」支折が、うなづいた。

  混乱収集は、“政権交代”が近道 

 

「さて、」青木が言った。「“小泉首相は、悪くはなかった”、“民主党の戦略が悪かっ

た”、と言ってみても、これは後の祭りです。そして、さっきも言ったように、構造改革

ということでは、それに抵抗する“抵抗勢力”が最も悪いわけです。責任を擦(なす)

合っても、埒(らち)が開きません」

「うむ」

「そこで...この閉塞状況は、私たち国民も含め、全員の合作だったという一面も、

確かにあるわけです。したがって、教訓は教訓として残し、一連のゴタゴタは、きれい

さっぱり、忘れるしかないでしょう。そして、次のステップへ進むことです」

「そういうことだな」津田は、茶を口へ運んだ。

「うーん...」支折が、細い腕を組んだ。「大きな、戦略の転換でしょうか?」

「うむ、」津田は、茶碗を置いた。「小泉政権の続投で、この国が維新革命を起こせる

かどうか。新しい芽が、出て来るかどうか。それは、大いに疑問だということだ」

「はい。今、この閉塞状況を一気に転換できるのは、やはり“本格的な政権交代”

かないでしょう。古い自民党的体質を一掃し、国家の大改革を推進するには、小泉内

閣の現状では無理だと思います。

  また、ポスト小泉の自民党内閣でも、“抵抗勢力”を一掃するのは無理でしょう。国

民が、実にうんざりしているのは、いわゆる“旧来型の自民党政治”なのですから。こ

のまま行って、自民党のポスト小泉では、構造的に“維新革命”は不可能です」

「うむ...」津田は、サーッと部屋に入ってきた風に、目を細めた。それから、風に揺

れている、桜の老木に目を投げた。

「当面、」青木も、桜の方を見ながら言った。「請け皿としては、民主党と自由党の

合勢力しかないわけです...」

「...」

「編集長の意見は?」青木が聞いた。

「うーむ...本格的な政権交代が必要だと言うことでは、同じだ。しかし、私は、ずっ

“新党結成”に期待をかけてきた。つまり、政界再編成だな。与野党を巻き込んだ、

本格的な政界再編成だ。まあ、望めるなら、旧・日本新党が言っていた、“政治家・

総とっかえ”が理想だ」

  青木が、ニッコリと顔を崩し、うなづいた。そして、青空を見上げて言った。

「それが出来るなら、もうとっくに出来ていたでしょう。民主党は、去年の党首選挙の

ゴタゴタの時、割れるかと思いました。しかし、結局割れなかった。数人が与党の保

守党に流れて、保守新党を作っただけです。しかし、これは、割れたわけではなかっ

た」

「うむ。それで、どうなるものでもない」

「そうです」

「あの、」と、支折が言った。「かつて、細川首相が旗揚げしたような、日本新党のよう

な新しい党は作れないのでしょうか?」

「そう...」津田は、支折にうなづいた。「それだが、そんな人が、誰か、いればな」

「細川...元首相は、どうしているかしら?」

「さあ...どうかな、」

「...ボスが言ってました。細川さんが旗揚げした直後に、ボスは朝日新聞に電話し

て、電話番号を聞いて、すぐに入党したんですって」

「ああ。その話は聞いている...まあ、あの当時は、まだ夢があったな」

「さて、そこでです...」青木が、2人の方に、片手を立てた。「この未曾有の大混乱

を、放置しても置けないわけです...となると...

  とりあえず、民主党と自由党の連合で政権を奪取し、まずこの国の不可解な既得

権勢力を一掃していくと言うことでしょう。そして、そうした運動の中で、政界の再編成

も進めていくと言うことです...

  とくに、新しい戦略というわけではないですが、これしかないでしょう。しかし、別な

言い方をすれば、国民にはまだ、この有力な戦略が残っているわけです。ここは、も

う一度、ここに力を結集すべきでしょう。決断すべきです、編集長!」

「うーむ...」津田は、目を閉じた。「...国民に、頭を下げ、もう一度、“国民との

絆”を取り戻すか...民主党の菅・代表には、坊主頭になってもらって、」

「うーん...それがいいかも知れませんわ!」支折が、軽い口調で言った。「あの人

が坊主頭になれば、国民も許すかもね!床屋さんで、5分もあれば、坊主になれる

んだし、」

「簡単に言うねえ」青木が言った。

「そんなのは、菅・代表が考えることでしょ。ただ、民主党の中で、いつものような路

線の混乱が起こるんじゃないかしら、」

「いや、そんなものこそ、勝手にやらせておけばいいんです。ともかく、政権交代の

方が大事です。この国の大混乱を静める方が先決です。政治が大きく動き出せば、雨

水が溝を作って流れて行くように、おのずと道は決まってくるものです。それ程、心配

する必要は、ないと思います」

「うーん...はい、」

「しかし、何とも、夢がないねえ、」津田が言った。「大山鳴動で、坊主頭ひとつ、か」

「夢がないのは、今のこの国です。まあ、いずれ、歴史が評価を下すでしょう...」

「うむ」津田は、腕組みをした。「とりあえずは、政権交代だな」

「編集長、判断を下すのは、国民です」

「確かにそうだ」

    <坊主頭>      wpe8.jpg (26336 バイト)          

 

「あの、例の“マニュフェスト”というのはどうかしら?どうなっていくのでしょうか?」

「ああ、あれは当然でしょう」青木が言った。「いまさら、という感じもします。しかし、

効果の方は、どうでしょうか。それと、法的な関係で、定着が問題ですね」

「つまり、時間がかかるということでしょうか?」

「政治は育てていくものですから、それはいいのです。しかし、国会から辞職勧告決

が出ても、ほとんどは無視されています。この現状が、国民には我慢ならんわけ

です。国会の各委員会は、学級崩壊のような風景だといいますし、やりたい放題のよ

うですから」

「はい、」

「ともかく、現在の日本は、“抵抗勢力”の横暴がまかり通っています。こういう時代

は、テクニックではダメです。本格的な政権交代で、土台をそっくりひっくり返すことが

必須条件です」

「そうすれば、動くかしら...時代が、」

「動くでしょう。それで、夢のような政治が始まるとは思いません。しかし、この閉塞

的な時代からは、抜け出すことが出来るでしょう。国家が、まさに衰亡しつつある現

在、ともかくここを抜け出すことが肝心です」

「それで、リーダーは、誰かしら?」

「まあ、ともかく動くことです。動けば、それなりに、リーダーは出てきます。現在眺め

ている風景では、民主党は党首選挙のゴタゴタで、“鳩山”も“菅”も、名前が傷つい

てしまいました。それなら、自由党の“小沢・党首”でもいいわけです。

  こうした混乱を一刀両断していくには、小沢一郎の“刀”がいいかも知れません。

直人の“血刀”は、党内問題でも、あまり切れ味が良くないですねえ。スパッ、と切れ

るものがない」

「競馬で言えば、ナリタブライアンのようなキレか?」

「うーん、懐かしい名前ね」支折が言った。

「シンザンのような、“鉈の切れ味”か?」

「シンザン?」

「まあ...“刀”は本来、身内を切るものではないし、外に向かっては、“舌刀”も鋭

いんですがね。いずれにしても、3人が、もう一度力を合わせることですね」

「それなら、3人が、坊主になればいい!それなら、時代が動くんじゃないか?」

「うーん...」支折が、髪に手をやった。「民主党の、岡田・幹事長はどうかしら?」

「坊主頭になることか?」津田が聞いた。

「いえ、リーダーとして、」

「いいですねえ」青木が言った。「若手がいい。そういう人を何人も、神輿に載せ、戦

略的に育てておくことが大事ですね」

 

       <世界中から笑われている国>     wpe23.jpg (21694 バイト) 

 

「ともかく...」青木が言った。「現在の日本の混乱が、何処から来たか、私たち国民

一人一人が、じっくりと考えることが肝心です。何故、こんなことになったのか。何故、

改善されないのか。我々は、今、何をしたらいいのか...」

「はい」支折がうなづいた。

「今、日本の社会全体が、非常にイライラしています...たまに、それが暴発し、テ

レビのニュースなどで、狂気を垣間見ることがあります...しかも、最近は、そうした

事件の頻度が高まってきています」

「そう...」津田が言った。「日本は今、歴史上かってなかったほどの大混乱に陥っ

ている。しかし、その真っ只中にいる我々には、なかなか全体が見えない。しかし、世

界中が、この日本の現状を笑っているそうだ...

  まあ、こうした世界史的にも希なバカをやっていれば、世界中の人々が、日本

人というのは、全くいいヤツ等だとか、アホ丸出しの楽しいヤツ等だとかで、大い

に親しみを感じてくれる...あるいは、ああいう国があるから、おれ達の国はまだ

ましだし、世界は楽しいんだと、思っているらしい...」

「うーん...そうなんですか?」支折が、青木の方に聞いた。

  青木は、眼鏡に手をかけ、静かにうなづいた。

「もう、いいかげんにして欲しいわねえ、」

  青木は、黙ってうなづいた。

 

「...あの、戦後の混乱...」津田は、桜の老木を眺め、つぶやいた。「...高度経

済成長まっしぐらの時代...そして、やがて経済大国・技術大国を達成した栄光の

時代...それから、バブルの時代があり、失われた10年があり、モラルハザードの

時代が出現...国家衰亡の、地獄の縁を巡っていた時代があったわけだ...

 

  すべては、“この世”を覗き見た思い出...

  空が青く高く...緑が深かった...

  風の心地よい島国だった...

  春には、満開の桜が、美しい国だった...

 

  そうした、みんなの国だから、全員が楽しく暮らせる、いい思い出の社会にしたい

ものだ...」

「はい...」青木も、静かに肩を回し、庭の桜の木を眺めた。「...いずれ、全てが

過ぎ去っていきます...どうせなら、ただひたすら...この桜の木のように生きたい

ものです...」

                                    

 

                    政権交代への結集         

 

「青木さん」支折が言った。「...最後に、政治部・担当として、一言お願いします」

「はい...現在、日本は、政治ばかりでなく、社会全体が大混乱の渦中にあります。

そこで、今、劇的に日本を変えられるのは、“本格的な政権交代”だけだと思います

す。そして、それが“改革の一番近道”です。政治の力で、この国の形を変え、あら

ゆる問題を打ち破って行くことです。

  小泉政権ではもう、“維新”の夢は持てないと思います。多少の改革は進んでも、

“革命”は起こせないでしょう。したがって、ここは、私たち国民自身の手で、“本格的

な政権交代”を準備しなければなりません。政治が本格的に動き出せば、人も動きま

す。社会も変わります。

  そうなれば、編集長の言うように、与野党を巻き込んだ本格的な政界再編成の流

れも加速します。しかし、今はとりあえず、民主党と自由党の“受け皿”を動かしてい

くことでしょう。

  そしてここは、先ほども言ったように、国民の側も、教訓は教訓として残し、一切の

(しがらみ)を水に流すべきです。そして、力を再結集することが必要です。必ず、そこ

から、道が開けてくるはずです」

「そうだね」津田が言った。「確かに、“新世紀維新”は、一頓挫した。しかし、我々に

はまだ、民主党や自由党という、強力な政治勢力が、そのまま残っているわけで

す。自民党の中にも、“維新”に賛成する、かなりの勢力があります。“新世紀維新”

は、必ず実現できます。

 

  国民が“その気”になり、力を結集すれば、展望は非常に明るいはずです!

 

  ...」

 

「はい!」支折が言った。

                                            

 

「星野支折です...ええ、お疲れ様でした...

  私たちも、ここしばらくは、地方統一選挙に注目していきます。それから、軍事衛星

1号からは、大川慶三郎が、イラク戦争と北朝鮮情勢を監視しています。そちらの方

からも、近々レポートが入る予定です。また、イラク戦争後の、世界秩序の構成に注

目です。どうぞ、ご期待ください!」