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トップ・クォークの発見 

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 トップページHot SpotMenu最新のアップロード           塾長 / 統括責任者 :   高杉 光一 

  

 

 プロローグ        

 

  最近の素粒子論の風景は、どのようなものか...一般人を寄せ付けぬ難解なカ

ーテンの隙間から、ちょっぴりと覗いてみたいと思います。むろん、この種の書物

は、書店へいけばドッサリとあります。また、インターネットでも、膨大な生のデータ

が公開されているのだと思います。ただし、それらは皆、その道の専門家の書いた

ものです。まず、かなりの予備知識が無ければ、取り付きにくい代物です。

 さて、そこで...何の資格もない部外者の私が、かってに素粒子論の風景を案

内し、かつ私自身も勉強してまいりたいと思います。これも、このホームページの重

要な考察の一環とお考えください。しかし、なにぶんにも素人の道案内です。その

点は、十分にご承知置き下さい。そのかわり、素人の視点、野次馬根性、素朴な疑

問等で、大雑把に歩き回ってみたいと思います。

 

  とりあえず、幾らかデータを蓄積していきます。当ホームページとしての視界を開

いていくのは、それからということになります。いずれにしても、濃密で膨大な基礎

学問の空間です。この、現在もっとも信頼されている基盤的学問によって、地球生

命圏の歴史は大きく塗り変えらてきました。

 まさに、20世紀初頭に始まった量子力学によって、人類社会は単なる生態系の

環を突き抜け、別の新たな存在として成長しているようです。しかし、これは一体ど

ういうことなのか.....その先には何があるのか.....このあたりは時間をか

け、ゆっくりとその意味を考えていきたいと思います。

 

 (   間違いがありましたら、ご指摘ください。)

 

 

 

トップ・クォークの発見            

 

 1995年3月、シカゴ近郊の国立フェルミ加速器研究所で、2つの緊急セミナ

ーが相次いで開かれ、新素粒子 「トップクォーク」の発見という歴史的な発表

が行われた。

                 (日経サイエンス /1997年12月号/“トップクォーク発見への道”より )

 

 日経サイエンス/97年12月号を開いていて、“トップクォーク発見への道”という

論文を目にし、びっくりしました。いずれ見つかるという話は聞いていましたし、あと

残るのはトップだけだという話も聞いていました。しかし、それでも、私には半信半

疑でした。が、考えてみれば、トップクォークが発見されようがされまいが、私自身

の気持ちの整理という意味では、あまり関係の無いことでした。ただ、さすがにその

素粒子論、標準モデル、クォーク力学という方法論的学問の威力たるや、すごいも

のだと感心しています。すでに、量子力学にかわって、クォーク力学の時代がやっ

てきているのでしょうか。

 

(そもそも、クォークには構造というものが無く、どのクォークの中身も同じで、均一

のはずです。つまり、これ以上分解できない、最終的な根元的粒子というわけです。

しかし、最初は原子がそれだと考えられていたのです。ところが、原子には構造が

あることが分かりました。ご存知のように、原子は陽子と中性子の核を持ち、その周

りを電子が雲のように周回していたのです。そして今度は、第二の根源的粒子のは

ずだった陽子や中性子が、アップクォークとダウンクォークから構成されているとい

う話になってきました。しかも、1/3 とか、2/3 という半端な電荷をもっているとい

います。これが、本当に根源的粒子なのでしょうか...まあ、私には何とも言えま

せんが...)

 

 アップクォーク、ダウンクォークは、ともに質量が 0.3/GeV。

(GeV=ギガ電子ボルト。1GeV=10億電子ボルト。アインシュタインの“E=mcの2

乗”の関係式により、エネルギー単位がそのまま質量単位になっています。)

 ところが、トップ・クォークの質量は、175GeVと言われ、超巨大なクォークである

ことが確認されました。上記の論文によれば、これは金の原子の質量にほぼ等し

く、たった1個のトップクォークが、アップクォーク400個とダウンクォーク200個の合

計に相当するそうです。それにしても、最後に姿をあらわしたトップクォークは、また

また大問題をはらんでいるようです。

 

 6個あると予想されたクォークのうち、5個目のボトムクォーク(4.5/GeV)が発

見されたのが1977年。それから18年あまりもトップクォークが見つからなかったの

は、この超巨大質量のためだったようです。つまり、それ以前の加速器では、生成

が不可能だったのです。

 

 若い頃、同じ日経サイエンス( 当時は、“サイエンス”だったと思います。)でウイークボソ

(たしか、W粒子だったと思います。これは、プラスとマイナスの2種類があります。)の論文を

幾つか読んだ記憶があります。それから、電気的に中性のZ粒子確認の論文を読

みました。それが、いつのまにかトップクォークが発見され、クォーク力学はこれで

新たな段階に突入したようです。

 

 <とりあえず、これぐらいは記憶しておいて下さい >  No.1 

ウイークボソン.....W、W、Z  

(−、+、0 は、電荷を表しています。電荷の記号は、W・Zの右上の方につくのですが、ワープロの表記が

うまくいきません。未熟者と、お笑い下さい...)

    ( 日経サイエンス/12月号の論文では、ベクトルボソンとなっています...)

 ウイークボソンは、この3つのみです。これらの素粒子は、原子核の放射性崩壊を

起こす“弱い力”(弱い相互作用の力)を伝えます。要するに、原子爆弾の核エネル

ギーを、相互作用で記述するものとお考えて下さい。

 

( これらは、後ほど繰り返し説明します。理論的なニュアンスも、そのうちに分かってくると思いま

す。おそらく、私自身にも....)

 

 ところで、クォークという名前は、アメリカ人のマレー・ゲルマンが命名したものです

が、経緯が実にユニークです。彼は最初、クォークは三種類と考えていました。それで、

ある小説の中で、海鳥が“クォーク、クォーク、クォーク”と三回鳴くところがあり、そこか

ら取ったといいます。また、ここで用いられている他の名称も、きわめてユニークなもの

が多くあります。これも、やはり時代の文化的背景というものなのでしょうか.....

 

 さて、もう少しデータが溜まっていかないことには、理論的説明にも入れません。

そこで、ここでは標準モデルにおける粒子というもの全体像を俯瞰し、それがどのよ

うに分類されているかを見てみましょう。細かなことはとりあえず脇に置き、まずは

ガイドラインを見ていきます。

 

<とりあえず、これぐらいは記憶しておいて下さい > No.2

  まず、素粒子は、次の二つに分類することができます。

 

    (1) 物質を構成する粒子...フェルミ粒子( fermion )  

    (2) 力を伝達する粒子 ....ボーズ粒子  ( boson )

 

 物質を構成する粒子は、さらに“クォーク”と“レプトン”という二種類に大別されま

す。あらゆる物質は、この二種類の素粒子グループから出来ています。さて、問題

のクォークですが、六種類あります。レプトンも、六種類です。

 

 

(1) 物質を構成する粒子 ( フェルミ粒子)

 

       ( 質量は、粒子を比較するための個性とお考えください。ここでは、詳しい数字を覚え

      る必要はありません。)

      ( GeV = ギガ電子ボルト  1GeV = 10億電子ボルト)

  < クォーク > / 6種類

    アップ (0.3/GeV)     チャーム (1.5/GeV)      トップ   (175/GeV) 

    ダウン (0.3/GeV)   ストレンジ (0.5/GeV)    ボトム  (4.5/GeV)

  < レプトン >   / 6種類

    電子                            ミュー                             タウ

      (0.0005/GeV)      (0.106/GeV)       (1.7/GeV)

    電子・ニュートリノ              ミュー・ニュートリノ          タウ・ニュートリノ

      (0...?)           (0...?)           (0...?)

       

  例えば、 陽子や中性子は、アップとダウンという2種類のクォークから構成されて

います。したがって、これにレプトンの電子を加えれば、周期律表にあるすべての原

子が記述できます。

 

  アップとダウンは、最小質量のクォークです。これらが、現在の宇宙の 物質のほ

とんど全てを占めています。それ以外の4つのクォーク、そして電子以外の5つのレ

プトンは、ビッグ・バン直後の宇宙にのみ存在していました。ビッグ・バン直後の超

高エネルギー状態を再現できるのは、巨大加速器のみです。

 

 

(2) 力を伝達する粒子  ( ボーズ粒子 )

             (これには、以下の4種類があります。)

 

   <ウイークボソン>         弱い力 ( 弱い相互作用の力)

                         W、W、Z  

   < 光子 >           電磁力 ( 電磁相互作用の力)

   < グルーオン >       強い力 (   核力/強い相互作用の力 )

   < グラビトン>           重力=引力 

 

  素粒子論では、すべてを粒子の相互作用とみなし、力の伝達も、これらの粒子で

記述されます。そう言えば、何処かで“時間子”などという言葉も見たことがありまし

た。これは、時間までも粒子として扱うということなのでしょうか。しかし、これを粒子

として扱うとなると、オモチャ箱をもう一度ひっくり返すようなことになりそうです

が.....

 

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             参考文献: 日経サイエンス1997年12月号

             “トップクォーク発見への道”

                        / T.M.リス(イリノイ大学)、P.L.ティプトン(ロチェスター大学) 

                  ( 最新のデータは、上記論文より抜粋しました。 )

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統一理論    超統一理論    

 

  上記の話を別の角度から眺めてみます。この宇宙には、以下の四つの基本的な

力が観測されています。

(素粒子の間に働く力を、“相互作用”といい、以下の4種類に大別されます。)

                            4つともボーズ粒子   (boson)です

 

     (1) 重力...................<重力子=グラヴィトン>

                    引力は素粒子論で表現すると、重力子の相互作用。

                                           (未確認ですが、間接的に確認)

     (2) 電磁気力................<光子=フォトン>

                    電力と磁力は、マックスウェルの方程式で統一。

     (3) 強い力  ( 強い相互作用の力 )...<グルーオン>

                    原子核の中に、粒子を閉じ込めておく核力。

     (4) 弱い力  ( 弱い相互作用の力 )...<ウイークボソン>

                    原子の崩壊に関与する力。 W粒子 (+−)、Z粒子。

 

  これらの力の強さの比較は、

        強い力  〜  電磁気力   〜  弱い力  〜  重力  の順です。

        ( 重力は非常に弱い力ですが、まとまると、膨大なものになります。)

 

 力は粒子の介在による相互作用であると提唱したのは、湯川秀樹博士( ノーベル

賞を受賞)の“中間子論”が最初だと聞きます。以来、上記の様な、4種類の力を介在

する粒子が見つかっています。また、宇宙開闢のビッグバン直後には、これら4つ

の力は、1つであったようです。

 

 この、4つの力を一つに統一する理論を、“超大統一理論”と言います。

 

  1960年代の終わり、“電磁気力”と“弱い相互作用の力”の理論的統合に成功

したのが、ワインバーグとサラムでした。彼等はZ粒子という架空の粒子を設定した

のです。そして後に、スイスのCERN(ヨーロッパ原子核研究所)の加速器でこれを

確認し、二人ともノーベル賞を受賞しています。

 この“電磁気力”と“弱い相互作用の力”を統合した理論を、<統一理論>と言い

ます。これに、“強い相互作用の力”を介するグルーオンを統合するのが、< 大統

一理論>です。そして、さらにこれに重力を加え、全ての力を統合しようというのが、

<超大統一理論>です。

     これらの理論を、実験的に証明するのは非常に困難と言われています。特に、

<超大統一理論>では、四つの力を結び付ける粒子を作り出すのに、まさにビッ

グ・バンに匹敵する超高エネルギーが必要だということです。

 

 

 

 

  ついに、トップクォークが発見されました。時代は大きく前進し、素粒子の探求も新

たな段階に突入しつつあります。加速器もMeV (メガ電子ボルト=100万電子ボルト)か

ら TeV (テラ電子ボルト=1兆電子ボルト)の時代のようです。しかし、これら一連の前進は、

いかにも還元主義的で、内容的には単純な流れの様な感じがします。

 あの黎明期の量子力学時代にあった、人間存在のパラダイムをも揺り動かした大

変動の波は、一体何処へいったのでしょうか。私自身は、今もその波を追いかけて

いるのですが.....

 

 

                                                                                         house5.114.2.jpg (1340 バイト)