「さて、」高杉が言った。「さっそく本題に入りましょう...
うーむ...“量子重力理論”に...有力な第4の候補が登場してきたようですねえ。量子論
と、一般相対性理論/重力理論の相性の悪さは、つとに有名です。まあ長い間、物理学者を
悩ませ続けている、大問題でもあるわけですね。
そこで...門外漢の私たちが、いったい何が起こっているのかと...野次馬的にのぞいて
みることにしました。重ねて言いますが、私たちは研究者ではなく、文化的傍観者であるとい
うことを、ご承知置きください。
しかし、ある意味では、科学を超えた...より広域的な視野からの俯瞰(ふかん/高い所から見下
ろすこと)も、可能だということです。また、むしろそのことに、私たちの考察の価値があるのかも
知れません」
「はい...」関が、つばを飲み込んだ。
「現代/人類文明は、科学技術文明という側面が、非常に強く出ています...
したがって、現代社会の基盤は...科学思想の根源的位置にある、現代物理学に依拠し
ていると言っていいでしょう。しかしそこが、量子論と一般相対性理論のダブルスタンダードに
なっているというのは、非常に問題があるわけです...それが、うまく連結されていれば、問
題はないわけですが...」
「そうですね...」関が言った。
「まあ、何故、ダブルスタンダードではいけないのかを説明しましょう...
2つの理論によって、物理現象が運行しているとなると...その双方からの影響を受ける
ことになるからです。それならば、その双方の影響というものに、一定の関係式が成立するは
ずなのです。ところが、その関係式/橋が見つからないわけです...」
「はい、」
「どちらかが、“相手の理論を呑み込む”か...または、“双方を結ぶ橋/関係式が成立”す
るか...あるいは、両理論とも未熟ということで、“両理論を呑み込み超越する、統一理論”
が登場するか、ということです」
「理論物理学の大課題ですね...」
「そうですねえ...
しかも、物理学というのは、“この世の半分の領域/物の領域”しか説明していません。“残
りの半分/心の領域”は、科学的にはまだほとんど説明されてきませんでした。しかし、よう
やく今、この“残りの半分/心の領域”を説明するために、デカルトまで遡って、“物の領域”と
“心の領域”の再統合が始まろうとしてるようです」
「“文明の第3ステージ/意識・情報革命”ですか...」
「そうです...」高杉がうなづいた。「ようやく、そうした時代が到来しています...
“物”と“心”は...“私/主体性の鏡”に...表裏一体/不可分の形式で、存在していま
す。つまり、ここに、“この世の本質”が隠されているようです。ここの、解明/統合/喝破なく
して、“この世”が果たして何なのかは、語れないわけです...」
「そうですね、」
「まあ、それはともかくとして...
今回は、そうした“意識・情報革命”の前段階にある...現代物理学における、量子論と一
般相対性理論/重力理論の統合の問題を考えましょう。つまり、両理論を統合するのが、“量
子重力理論”ということになります...」
「はい...
言葉の上では...確かに“量子重力理論”として統合されていますが...部分的な成果を
のぞいては...両理論の統合には到達していませんね...つまり、この問題は、非常に相
性の悪い夫婦のようなものだということですね、」
「うーむ...」高杉が、ほくそ笑んだ。「まあ...そんな夫婦の関係というものが、どんなもの
かは私は知らないのですが...非常に良くないということですねえ...別れればいいのです
が、そうもいかないというのが、夫婦の関係のようですから...」
「そうですね。すでに子供もいて、深く社会に根をおろしている、というわけでしょう...」
「ふーむ...単純に生きてきた私などには、分からない世界ですね...
感情的な複雑さや、無数の亀裂もあるのでしょうねえ...量子論と一般相対性理論は、そ
んな風にして、現代物理学の基盤になっているわけでしょう。
ええ、このページでは...新登場の理論/・・・“量子重力理論の第4の候補”を含めて、こ
の分野の概略を望見してみます...野次馬的な俯瞰ということです...」
関が、肩を引き、うなづいた。
<パラダイムシフトの時代背景・・・>

「さてと...」高杉が、言った。「そういうわけで...くり返しますが...
“量子重力理論”というのは...量子論と、一般相対性理論/重力理論を統合した理論と
いうことですね...この2つの理論は、現代物理学の基盤になっているものです。また、現代
科学技術文明の基礎として、“この世”に打ち込まれている、アンカー/碇(いかり)ということで
しょうか...」
「“物の領域”に打ち込まれている、アンカーということですね」
「そうですね...
それが二種類あり、統合されていないということは、まだまだ未熟ということなのでしょう。
こんなことでは、両方ともニセモノとも言えるかも知れません。あるいは、両方とも正鵠(せいこく)
を射たものであったとしても...“この世”を説明するには、“物の領域”だけでコトが足りるわ
けではありません」
「“残りの半分/心の領域”という...」関が、真顔で言った。「“より本質的なもの”が残されて
いるわけですね、」
「そういうことです...」高杉が、天井を見た。「アインシュタインが、特殊相対性理論を提出し
たのが、1905年ですから...ちょうど世界は、日露戦争の日本海海戦(1905年5月27〜28日)
で沸騰していた年です。
それより数か月前...ヨーロッパの版図の中から...世界最強のロシア海軍が...極東
アジアの日本海へ遠征出撃しています...〔=明治維新=〕から間もない...急造/寄せ
集めの日本海軍が、それを迎え撃つべく、猛特訓を開始しています。
そしてまさに、この寄せ集めの海軍に、世界最強の大艦隊が日本海/対馬沖で、壊滅/
・・・全滅させられています。
この歴史的大事件は、当の極東アジアにおいてよりも、むしろヨーロッパにおいて大歓声が
上がったようです。それには、うなずけるものがあります。長年、ロシア海軍の重圧を受けて
きた北欧諸国では、それこそ暗雲が晴れるような思いがあったのでしょう。極東の島国とは縁
遠いヨーロッパですが、このような劇的なデビューがあったわけです。
フィンランドには、“東郷ビール”と呼ばれるビールがあって、ラベルの中央に東郷平八郎・
元帥(日本海海戦時の提督)の肖像画が描かれているそうです。まあ、日本人もその話が好きで、
今でも旅行者は必ず立ち寄り、そのビールを買うそうですね、」
「はは...」関が笑った。「塾長も、この話が好きですね、」
「まあ...武士道精神の残っていた、かつてのよき時代の話ということです。今から思えは、
バランスの取れたよき時代です...ただし、帝国主義/植民地主義や、大戦争が無ければ
ですが...」
「...『赤毛のアン』が出版されたのは...
1908年ですから、それから3年後ですね。戦争はともかくとして、最も良き時代だったの
かも知れませんねえ...」
「そうですね...
そうした時代背景の中で...特殊相対性理論が提出され...物理学のパラダイムシフト
が始まったわけです。20世紀の科学時代がスタートを切っていたわけです。実は、1905年
の特殊相対性理論に先立って、『光電効果に関する論文』というのが発表されています。色
々な歴史的な事情もあって、ノーベル賞の対象となったのは、この論文の方です」
「あ...こっちの方なんですか?」
「そうです...
そして...1916年...再びアインシュタインにより、一般相対性理論が提出されたわけ
です。さらに、1920年代には...産みの親のアインシュタインのもとを離れて...量子論が
確立しています。ええと、1925年ですか...1927年には、ハイゼンベルクにより、【不確定
性原理】が提出されています...
まさに、その時代の量子論と一般相対性理論が、現在でもダブルスタンダードとなり、物理
学者の頭を悩ませ続けているというわけですねえ...現代物理学は、20世紀という、まさに
この100年間に確立されてきたものなのです。
それ以前の世界は...いわゆるニュートン力学が、宇宙の全ての運行を記述していまし
た。そして、残った問題もほとんどなくなり...“物理学は完成の域に到達した”と宣言されて
いたほどです。
しかし、まさに、その残余の幾つかの問題から、アインシュタインが特殊相対性理論を導き
出したわけです...パラダイムシフトが起こったわけです。ニュートン力学のままでは、20世
紀の科学技術文明の躍進はなかったでしょう。
その方が良かったか、悪かったか...原子爆弾が発明されない方が、良かったか悪かっ
たか...それはまた、別の問題です。歴史は、このように記述されたのであり、分水嶺の雨
水は、その彫刻された渓谷に沿って流れて行くということです...これは、遺伝子発現の光
景と似ています...」
「はい、」
「関君...では、その特殊相対性理論について、簡単に説明してもらえますか。分かりやす
く...」
「分かりました...」関が、コクリとうなづいた。
<量子という概念の出発点・・・>

「まず...」関が言った。「特殊相対性理論というのは...
光の媒質としての、それまでのエーテルの存在を否定しています。これは現在では常識と
なっています。そして、“光速度不変の原理”と、“特殊相対性原理”を基礎とした...理論と
いうことです...」
高杉がうなづき、続きを待った。
「ええ...」関が、モニターに目を落とした。「ここで仮定しているのは...
【T・・・ 光の速さは、観測者の移動の速さにかかわらず、一定である】
【U・・・ 特別な座標系は存在しない/運動は相対的である】
...ということです。また、これらの仮定から、次の3つの結論が導かれています。
“@・・・光速度が最大であり、光速度以上のものは存在しない”
“A・・・速くなると質量が増し、重くて動きにくくなり、光より速く加速させることはできない”
“B・・・エネルギーが増せば、質量が増加する”
...ということですね、」
「うむ...」高杉がうなづいた。「まあ...この理論的背景となると、難しいものがあるわけで
すね。とりあえず、このガイドラインだけでも、頭に入れておいてもらいましょう...
次に、一般相対性理論ですが、これは特殊相対性理論を一般化したものです。アインシュ
タインは、光速度に近い場合の力学として、特殊相対性理論を発表したわけですが、それか
ら、加速度運動を含めた相対性理論の構築に取り掛かりました。
これが、一般相対性理論というわけですね。そしてこれは、重力理論ということになるわけ
です...」
「はい...」関がうなづいた。「アインシュタインの重力場方程式では...万有引力は、重力
場という“時空の歪み”で説明されます。
その“重力作用は光速度”で伝えられます。そして...“重力が時空の歪み”であるという
事は...“光の軌道も重力によって曲がる”という事を意味しています...」
「うむ...」高杉がうなづいた。「難しい概念ですが、これはすでに文明社会の中に定着して
いますね。とりあえず、こういうものとして、受け入れておいてください...
次に、もう一方の量子論ですが...こっちの方は、非常に斬新な理論ですねえ。量子力学
/素粒子力学/標準理論などと、時代とともに違う名称で呼ばれ、多岐にわたっています。し
かし、要するに、全てが量子論の範疇に入るわけです...
量子論の産みの親は...やはり、アインシュタインということになるのでしょう。そもそもの
コトの起こりは、“分割できないエネルギーを持つ光”を、“光量子/光子”としたことに、その
起原があるようです。この発想が、まさに彼の言う通り、“革命的”なのです...」
「量子の概念の出発点ですね、」
「そうです...
これは、『光電効果に関する論文』の中で、“・・・光のエネルギーも、量子の整数倍の形で
交換される・・・”としていることです。現在でこそ、エネルギー/質量というものは...電子や
光子を、1個づつカウントすることは、当たり前になっています。
しかし、当時は、そもそもエネルギーというものは...“非常に滑らかで、切れ目のないもの
/無限に分割できるもの”...といった概念だったのです。そこに、電子、陽子、中間子、重
力子などという、素粒子の概念が登場して来るわけですね。つまり、量子論の立ち上げであ
り...量子力学の確立となるわけです...
この...“非常に滑らかで、切れ目のないもの/無限に分割できるもの”、からのパラダイ
ムシフトは、やがて時間や空間にまで拡大されます。一部の理論物理学者たちは、“空間”も
“連続的で滑らかなもの”ではなく、物質と同じように、“基本的に不連続なもの”ではないかと
考えているようです...
ええ...これは、《ループ量子重力理論》などで考察されているようですね。最小の空間
単位ばかりでなく...最小の時間単位なども、考えているようです」
「塾長...」関が、指を立てた。「“電磁波の量子モデル”というのは...最初は、プランクが、
自分自身も半信半疑のままに、それを発表したものですよね...?」
「その通りです...」高杉がうなずいた。「問題となっていた“電磁波の量子モデル”を...ア
インシュタインが、『光電効果に関する論文』で、“光”に対して応用したのです。アインシュタ
イン自身が、自ら“革命的”と呼んだ、最初の論文ですね」
「はい、」
「まあ、よく知られているように...
量子論に、【不確定性原理】や“確率論の概念”が導入されてくると...大論争の末、アイ
ンシュタインは、しだいに量子力学の主流から外れて行くわけです。彼は、あくまでも、“未知
の変数(ヒドゥン・パラメーター)”の存在を、信じて疑わなかったのです...
アインシュタインは、ニュートン力学からのパラダイムシフトを成し遂げたのですが、自ら生
み出した量子力学に、ついていけなかったようです。そういう意味では、皮肉なことに、最後
の古典派の牙城となっていたのかも知れません...」
「塾長...結局、アインシュタインのそれは...量子論とは...基本的にどのように違って
いるのですか?」
「うーむ...
アインシュタインの相対性理論は、最後の古典物理学の理論と言われます...それは、
実在世界の全ての要素/現象が、それぞれ1対1で対応するものが理論の中になければ、
物理学理論として不完全だと考えていたようです...
アインシュタインは...確率論を、あくまでも排除したいと考えていたのでしょう...」
「...」関が、ポカンと口をあけた。「“神は、サイコロを振り給わず”、ということですか...し
かしこれは、先ほど言われた遺伝子の発現のあり方と似ていますね。いや、現象ではなく、歴
史的経緯がです...
遺伝子も、当初は1対1の関係で、同数のタンパク質に対応していると考えていましたね。
ところが、遺伝子の数は意外に少なかってきたわけです。それで、1対1の対応ではなく、まさ
にオーケストラのような、エピジェネティックな光景/後成学的風景が分かってきたわけです」
「うーむ...そうですねえ...この世界の構成の一端が、垣間見えて来るようですねえ...」
「はい...これは、まさに、“神のなせる業”なのかもしれませんね...」
「ええ...ともかく...
【不確定性原理】が発表された、1927年の秋...ベルギー/ブリュッセルで“ソルベー会
議(アーネスト・ソルベーにちなむ会議/・・・炭酸ソーダの製造技術を確立/化学技術者)”が開催されています。そこ
で、アインシュタインとボーアとの間で、激しい議論が行われたと言われます。まあ、それ以
前にも、ベルリン大学で、ハイゼンベルクと激しくやり合っているわけですが...」
「そうですね、」
「ええと...
ニールス・ボーアや、ハイゼンベルクなどが、デンマーク/コペンハーゲンを拠点に活動し
ていたことから...この学派を、“コペンハーゲン学派/量子力学のコペンハーゲン解釈”な
どと呼んでいるわけです」
「塾長...
要するに、“コペンハーゲン解釈”では...リアリティーというものは、記述はできないという
ことになってしまうのでしょうか...私たちの、“言語的・亜空間座標”においては...」
「“コペンハーゲン解釈”では...
世界というのは...私たちが見ている通りのものではないということでしょう。つまり、私た
ちが見ている“この世”とは、主体の認識構造だということになるのかも知れません...いわ
ゆる、リアリティーとは...それを観測している...“主体の内側に存在する”...という解
釈になるようです」
「...」
「言いかえれば...
デカルトが分離した、“思惟するものの領域/心の領域”と、“延長されたものの領域/物
の領域”が、不可分であることを示しているわけです...」
「はい...」関が、両手で骨ばった自分の肩を抱いた。「話が、抽象的になって来ましたね」
「そうですねえ...」高杉が、苦笑した。「ま、私はその解釈を受け入れています...」
「はい」
「さて...」高杉が、モニターに目を当てた。「“物の領域”と“心の領域”をつなぐものは、“主
体”であり、“命”だと、私は思っています。つまり、“主体こそ全ての超媒体”なのでしょう。
私は専門家ではないので、詳しく考察したことはないのですが、これは難しい問題になりそ
うです。こうした問題も含めて、“命”というものの実態もまた、実はまだ、何も分かってはいな
いのかも知れません...」
「はは...」関が、軽く笑った。「学問的にも、あまり手が付けられなかったわけですね?」
「うーむ...その通りでしょう...
しかしいよいよ、“物の領域”と“心の領域”の統合が始まる時代が来たということです。
“文明の第3ステージ/意識・情報革命”の中で、新しい時代が開花して行くはずです...」
「はい...それには、意識の変容が必要ですね」
「うーむ...今後、想像を絶する世界が展開されて行くでしょう...そうした方向へ、生命潮
流のベクトルが作用しているということでしょうか...」
「やはり、“神”は存在しているのかも知れませんね」
「ふーむ...」
「さて...」高杉が、モニターを眺め、口に指を当てた。「本題に入りましょう...
【一般相対性理論】というのは...大きなスケールで...時空がどのように、様々な形状
をとるのかを記述します。この様々な形状によって...私たちが、重力として感じるものが生
まれるということです...ま、一般人の我々には、ややこしい言い方ですがね...
それに対し、【量子論】というのは...小さなスケールを記述します。通常は、重力を考慮
に入れず...原子以下のスケールにおいて、その法則性を記述しています...」
「はい...」関がうなづいた。
「さらに、これらを統合する【量子重力理論】というのは...
非常に小さなスケール/知られている最も小さな基本粒子間の、何もない所の時空の本質
を...いくつかの基本的な構成要素を想定し、量子論を用いて説明しようとするもの...と
説明されています...」
高杉は、参考文献を眺めながら、ため息をついた。
「はは...」関が、額に手を当てた。「なかなか、現実離れしたな説明ですね...」
「ふーむ...」高杉が、口元を崩した。「参考文献によれば、ともかく、こう説明されています。
まあ、一応は、このような説明ということで、承知してもらいましょう」
「はい...」関がうなづいた。「つまり...
単なる、大きなスケールと小さなスケールの、幾何学的な合体/統合というのではなく...
非常に小さなスケールの時空を、量子論を持って説明しようというわけでしょうか。もちろん、
重力理論も導入して...」
「ふーむ...」
「相対性理論は、理論的パラダイムとしては古典的と言われますから、そういうことになるの
でしょうか...?」
「さて...
このあたりの説明が、どうも十分になされていないようですね。まあ、我々の未熟さもありま
すが...いずれにしても、もともとが、相当に浮世離れした話です...」
「はい...」関が、真顔でうなづいた。「そういうことですね...
ええと、話を進めますが...“超弦理論/超ひも理論”は...“量子重力理論”の代表候補
/王道とみられていますね...しかも、この分野は、非常に多くの理論モデルがあるようです
が、」
「まさに、その通りです...
どれが正しいのか分からないほど...多くの可能性を示していると言われています。素人
の我々が、首を突っ込めるような状態にはないようですね。しかし、そうした中でも、“超弦理
論/超ひも理論”と対抗するような、別系統の理論も出現して来ているようです。
今回、ここで紹介するのも、そうした別系統の新理論です。後で、その概略を紹介しましょ
う。私たちの理解力/知識不足という問題もありますが、あまり複雑な迷路に入り込むという
のも本意ではありません。ともかく、切り口を変えれば、“目から鱗(うろこ)が落ちる”ということも
ありますからねえ...」
「はい、」関がうなづいた。「そろそろ、そういう段階なのかも知れませんね、」
「さて...まず、現在...4種類の“量子重力理論”があると言われます。それがどのような
系統の理論なのかを、簡単にスケッチしてみましょう」
****************************************************/**
〔量子重力理論の候補〕
≪超弦理論/超ひも理論≫ “M理論の窓”はこちらへ・・・
「多くの理論物理学者が支持するアプローチ...
“量子重力理論”というよりも、全ての物質と力を統一的に記述する、“素粒子統
一理論”の最有力候補。重力を媒介する粒子である“重力子(グラビトン)”を含め、粒
子は全て、“弦/ひもの振動”で記述されます」
≪ループ量子重力理論≫ 詳しくは、こちらへ・・・
「“超弦理論/超ひも理論”に対抗する、“量子重力理論”の代表格...
量子論の法則を、アインシュタインの一般相対性理論に適用するために、新し
い手法を用いている。空間は、離散的な有限体積を持つ“原子”に分割されます」
≪ユークリッド量子重力理論≫
「ホーキングによって有名になったアプローチ...
可能なあらゆる時空の形状を、量子的重みをつけて、重ね合わせることで、私
たちの宇宙が現われると考える。この理論では、時間と空間は同じように扱われ
る」
≪因果的動的単体分割≫ <・・・
第4の候補 ・・・>
「第4の候補...現代版/ユークリッド量子重力理論...
あらかじめ、時間と空間を区別するように仕組まれた三角形の寄せ集めで、時
空を近似する。時空は非常に小さなスケールで、フラクタル構造を持つ...」
****************************************************/**