マSTATE`95の企画書  今回の企画はいわゆる一般的な意味での「グループ展」とは異なっているの ではないかと思います。  まず、これは「ひとつの空間における三つの個展」ではありません。  つまり、ひとつの空間(ギャラリー)を三つに区切ってそれぞれの作家のキ ャリアに基づく作品を発表する、そういった形の企画ではありません。  また、「ひとつのテーマによる三つの表現」でもありません。  個々の作品を統括するテーマはありません。 三人が三人共、いま追求してい るモティーフによる作品を発表します。  私たちは「関係性」に視座を置きます。  異なった価値観/テーマ/モティーフがひとつの場に存在することによって 生まれる関係性を体験してほしいのです。  様々な価値観が混在する現代社会においてはすべてが相対的なものであると 感じられます。 「あなたはそう考えるが私はこう思う」  誰もが異なった価値観を持っています。  過去、日本の社会においてはこうした価値観の差異に目をつむり、何らかの 形で「妥協案」を見いだし、ひとつの価値観にすべてを統合する、というプロ セスが繰り返し行われてきた様に思います。  こうした現象は現在でも日本の企業、行政、教育現場などの社会活動におい てみられるだけではなく、いわゆる総合芸術─映画、演劇─の製作過程におい ても顕著です。  また、こうした画一的に制度化/システム化された社会の枠組みに対して何 となく反発し、その反動のように相対性─もしくは個人の枠に閉じこもり、他 者との関係において非常に消極的な姿勢しか持ちえない・・・  そうした人々も数多く存在します。  こうして現代を生きる我々は、常にコミュニケーションの不自由さに直面し、 それをディスコミュニケーションと呼びます。  ディスコミュニケーションは、コミュニケーションの多様性におけるもっと も貧しい形態のひとつでしかない、そう仮定することから私たちは始めようと 思います。  そして、そうした「関係の多様性」を模索するための第一歩が、今回の企画 です。  異なった価値観/テーマ/モティーフによって思いのままに作品を創造し、 それがひとつの開かれた場所を創りあげ、そこで何らかの画一的なメッセージ を提示するのではなく、その場を訪れた人々の個々の解釈に基づいて何かを読 み/感じ取ってほしいのです。  私たち創作者の扱うモティーフやテーマはすべての人々の精神活動の中にも 当たり前に存在しています。人が五感、六感で何かを感じるとき、それは生ま れます。  そして現実に対して働きかけることによって何らかの「関係」が生じます。  そうした関係の様々な形を生み出す場を創造する、それが今回の私たちの企 画に含まれたもっとも大きな要素であり、可能性であると考えています。