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「【定本】シオンの議定書」四王天 延孝(原訳) (著), 天童 竺丸 (監修, 翻訳)(成甲書房、2012年2月)
→目次など
■ホロコーストを引き起こした「史上最悪の偽書」ともみなされる「シオンの議定書」。成立過程を含めて知るその内容は、信じ込んでいる価値観の相対化に役立つ。■
シオンの議定書という数年前の私なら一切興味を持たなかった本を今回取り上げます。
「シオン」とか「シオニズム」という言葉は何回か耳にしたことがありますが、どのような意味を持つのかについて考えたことはありませんでした。
その真偽は別として、本書の解説部分を読めば、なるほど、シオニズムは世界統一政府に繋がる思想であることがわかり、その危険性を指摘する声があることは理解できるようになりました。
WikiPediaで『シオン賢者の議定書』の項を見ると次のようにあります。
『シオン賢者の議定書』(シオンけんじゃのぎていしょ、英: The Protocols of the Elders of Zion)は、「秘密権力の世界征服計画書」という触れ込みで広まった会話形式の文書。1890年代の終わりから1900年代の初めにかけてロシア語版が出て以降、『ユダヤ議定書』『シオンのプロトコール』『ユダヤの長老達のプロトコル』とも呼ばれるようになった。 ユダヤ人を貶めるために作られた本であると考えられ、ドイツのナチスに影響を与え、結果的にホロコーストを引き起こしたともいえることから「史上最悪の偽書」[1]、「史上最低の偽造文書」[2]とされることもある。
このように、シオンの議定書自体は、いわくつきの本であり、現代社会においては、危険思想と見なされかねない本であるといえそうです。
ただし、私は、別の観点からこの本を取り上げてみたいと思います。
本書は、「解題」「シオンの議定書」「解説 偽書論争に終止符を打つ」の3つの部分で構成されています。
「解説」に本書の成立過程が記されており、冒頭で述べた「シオン」の危険性やロスチャイルド、イルミナティとの関係が解説されています。
「シオンの議定書」部分には第一議定から第二十四議定までが収録されています。これは、救世主を待っても現れてはくれないと断定して、自らユダヤ王の国を作ろうとするシオニストたちによる決議文とされるものです。
内容を見ていくと、大部分は、真意のはっきりとしない、わかりにくい記述になっており、いかがわしさを感じさせます。
しかしながら、現代人としてこれは知っておいたほうがよいと思われる内容もところどころに含まれています。
大衆を政治に無関心にさせること、新聞や演説会によって政治犯を侮辱させること、出版・書店・印刷業を免許制にすること、比較的独立した新聞とシオニストの息のかかった新聞の割合を一対三にすることなどです。
私は、本書が偽書であるかどうか、ユダヤ人たちによる書であるかどうかということは度外視して読んでよいと考えます。
そのうえで、誰かがこのような考えを持つことは避けられないという事実や、科学技術の発達がそのような着想を現実化するために役立っているという事実を踏まえて、現代社会の裏を探ることのできる手がかりとして本書を利用できると考えます。
偽書である、ホロコーストにつながるなどと拒否せず、本書をざっと見てみることで、ジャーナリズムだ、民主主義だ、人道主義だと共産主義だと肩ひじを張ることが馬鹿らしくなり、人類の進歩を信じることの危険性が見えてくるという価値観の相対化に役立ちそうです。
人類誕生からの人類史を踏まえて『シオンの議定書』を読み直すことを提案させていただきました。
内容の紹介
(「解題」から)
つまり、ユダヤ人の誰かが自分が書いたと告白しようと偽書であると宣言されようと、その内容が現実からおよそ懸け離れているならば焼却処分に付しても構わないが、世界の現実の動きを考える時にこの文献は大いに研究すべきである、と四天王中将は言うのである。 - 3ページ
世論は腐敗させて意のままに
いつの時代でも民衆というものは、個人も同様だが、言論と事実とを混同し、直に自己の感覚に現れてくるもので満足し、社会生活の中で約束されたことが実現したかどうかを検討する者は稀である。 ゆえに我々は人の目に立つ制度を設け、それが進歩に向ってよく活躍していることをはっきり知らしめるであろう。
我々はすべての政党の自由主義的な綱領や主張を取り入れて、これを我々陣営の弁士に教え込む。 すると弁士らは民衆が聞き飽きて逃げ出すようになるほど喋り立てるのである。 世論を支配するには、相反する幾つもの説を並べ立てて判断を当惑させ、あたかも迷宮に入り込んで困ったようにし、ついに結局、政治問題には何の意見を持たない方がよいと考えさせるようにしなければならぬ。 政治問題などは指導者だけが理解すべきもので民衆には理解させない。 これが第一の秘密である。- 45ページ
政治犯を侮辱せよ
政治犯が崇高な主義に殉ずる者として尊敬されることをなくすために、法廷では彼らを泥棒、殺人等の破廉恥罪の者と同じ席に座らせる。 すると世間は彼らを他の犯罪者と同じように考え、同じ軽侮の眼で見下げる。 我々はしなし、ゴイムが我々の暴徒に対して同じ方法を用いることを妨げようとし、恐らくそれに成功したと思う。 このために我々は新聞と演説会を使ったのである。 巧みに細工した歴史上の事実をもって、革命家は人類の安寧福祉のために殉教者となったことを見せた。 かくて自由主義者の数を増やし、ゴイムの幾千人を家畜群の仲間に引き入れたのである。 - 126ページ
(「[解説]偽書論争に終止符を打つ――天童竺丸」より)
ユダヤ教改革派=イルミナティの策謀
フランクフルトのイルミナティ本部から二つのカナン人の悪が誕生した。 爾来、この双子の悪は疫病のように世界を蝕みつづけてきた。 すなわち、シオニズムと共産主義である。
まず第一の悪、すなわち「共産主義インターナショナル」は英国ロスチャイルド商会のライオネルと詩人ハインリッヒ・ハイネ、そしてカール・マルクスというたった三人が当初の構成員だった。 - 142ページ
ユダヤ教改革派はシオニズムの外にも、エキュメニズム(全宗教間協力推進運動、他の宗教の指導者や信徒との積極的協力)やフェミニズム(男女平等運動)などの計画も実行に移している。 - 163ページ
動物や狩猟採集者の暮らしを調べてみると、その生活は理にかなっており、何の問題も生みださないことがわかってきます。
他方で私たちの暮らしは、時代が下がるほど、彼らの暮らしから遠ざかり、問題が深刻化していることもわかってきます。
つまるところ、今の世界を動かしている価値観など、自然の法則を無視した破綻した価値観であることがわかり、自由主義も共産主義もフェミニズムも宗教も、絵に描いた餅でしかないことがわかってきます。
テレフォン人生相談の加藤諦三氏が好んで用いておられるいくつかのセリフの中に次のセリフがあります。
あなたが認めたくないものは何ですか?
どんなに辛くとも、それを認めれば道はひらけます。
私は、人類全体について同じことが言えるのではないかと考え始めました。
つまり、「世界が人に属すのではなく、人が世界に属している」という認めたくない事実をどんなに辛くても認めて、狩猟採集者たちと同じように世界に属す生き方を選ぶことで道が開けてくるのではないでしょうか。
本書は、共産主義、自由主義、フェミニズムなどの考えを生みだしているのは、それを信じる人びとではなく利用しようとする人びとなのかもしれないと知ることで、価値観を相対化することに役立ち、ひいては、偽情報に惑わされないために役立つと私は考えます。