入管法違反があった場合の在留期間更新

弁護士(ホーム) > 税・行政 >
2011.4.4mf更新
突然の違反調査
女性は(女性23歳、中国人)は、日本で私立大学の学生(留学生ビザ)でした。
生活費を稼ぐために2000年3月からクラブでホステスのアルバイトをしていました。2000年9月初旬、見知らぬ客が3、4人店に来た。これが入管の職員であることが後に判明。1月後の9月19日、午後9時、入管の調査が店に入った。
入管法違反(不法入国、不法残留(オーバーステイ)、資格外活動)の容疑で11人が拘束された。そのうち、1人は、外国人登録証提出し釈放され、3人は学生であり、資格外活動などの軽い違反事由であるため、釈放された。残り7人は、2週間から3週間後、本国に送還された。

取調べ
学生(大学2年生)の3人は、東十条の入国管理事務所に出頭を求められ、事情を聴かれた。
調査の中心は、日本での生活、特に学校に行っているかどうか、生活費をどのように賄っているかであった。入管は、大学にも連絡して出席状況、成績を調査した。入管は、本人に対しては預金通帳を持参させ、入管は、預金および払出しにつき質問した。1人の女性は預金残高が300万円の通帳を持っていたが、なぜこれほどの金額の預金を持っているのか合理的に説明できなかった。そのため、この女性は3回目に入管に出頭した際、そのまま収容された。違法行為(売春)により金を稼いだと認定されたのである。
1人の女性は、怖くなり、出頭に応ぜず、逃げ、後日、本国(中国)に帰った。
1人の女性(相談者、23歳、中国人)は、預金残高は15万円ほどしかなかったが、生活費や学費は「郵便あるいは友人に依頼して本国からお金を持ち込んだ」との説明し、入管は納得した。

違反調査の中止
3回ほどの呼び出しの後、この女性は、保証人に保証書を書いてもらい、入管に提出した。これで入管の調査は中止となった(終了ではない)。
この女性は、次の在留許可がされるか心配になり、法律事務所を訪ねた。弁護士が入管に電話にて尋ねたところ、入管は、「調査は中止する、次のビザ更新の際に違反のことは問題にはなる。許可されることはある」と回答した。

結婚:配偶者ビザ申請
しかし、この女性は、次回のビザの更新が許可されないのではないかと心配し、知人の日本人(男性、30歳)に、「結婚すれば大丈夫」と、誘われ、10月31日、結婚した。女性は、11月15日配偶者ビザの申請をした。
しかし、夫は、1か月間働いただけで、働かず、毎日飲酒をするのみであった。1か月経過後からは、夫との喧嘩が続いた。女性は我慢できず、2001年1月30日、家を出て、アパートを借りた。それでも、居住地を夫に知られるのが恐ろしくて、外国人登録は夫の住所に置いたままだった。

弁護士の処理
2001年5月9日、弁護士は、女性と供に入管(大手町)に行き、ビザ更新の可能性について相談した。入管の担当者からは、「違反事由はビザ更新の際に問題にはなる。しかし、違反事由ががあっても、ビザが更新された例はある。学校での勉学の状況が大事である。留学の目的で来日したのに、なぜ結婚したのかも問題になる」との回答であった。

配偶者ビザ申請取下と在留期間更新申請
そこで、弁護士は女性に配偶者ビザ申請を取下げるよう助言し、女性は、同日、配偶者ビザ申請を取下げた。さらに、女性は、現住所地に外国人登録を移した。
2001年9月25日、女性は留学生ビザの期間更新を申請した。この際、大学の成績証明書は必要であったが、「在留中の一切の経費の支弁能力を証する書面」は不要であった。 隣で、ビザの更新申請をしている人が質問している。職員は「2週間くらいで許可が出る」と答えていた。問題がなければ2週間で許可が下りるのだ。女性が同じ質問すると、職員は「わからない」と答えた。相談者のビザ更新には問題があるのです。
女性の在留許可期限は2001年11月24日であったが、期日を近づいても、通知はなかった。 期限が過ぎても、更新申請をしているので、在留はできる。 しかし、このままでは在留許可が出ない心配がある。

上申書の提出
そこで、弁護士は次の2つの書類を用意することを考えた。 弁護士は大学の学生課に依頼し、学生課長に、「学生の在留期間更新の許可を願う」旨の入管宛の上申書を書いてもらいたいと、頼んだ。
女子学生の成績は中の上であった、病気をしたりして若干欠席があった。現在、3年生なので、大学は、主に2年次の成績、出席をみた。大学は、事実をありのまま書き、最後に、在留期間更新を希望すると書いた。

弁護士は、自らも、女性の話を聴きながら、上申書を作った。
この上申書では「女性が大学で学ぶ目的、将来の仕事の目標。結婚の経過」を説明した。女性は離婚を望んでいたが、夫は離婚に応じないので、証拠として「離婚したくない」旨の夫の手紙の写しも添付した。幸いなことに夫から女性に対し、「離婚したくない。戻ってくれ」との手紙があった。 結婚の事情を詳しく説明したのは、入管が偽装結婚を疑っていると想像できたからである。
11月25日、弁護士は入管に出向き、学生課長の上申書および自ら書いた上申書を入管職員に渡しながら、内容を説明した。
同時に、外国人登録を実際居住しているアパートに移し、外国人登録証をコピーし、その旨入管にも届出た。事実と異なる申請は障害になるからである。「届出が遅れたのは、夫に居住地を知られたら、訪ねてくる可能性があり、それが怖かったからです」と、説明した。実際その通りであった。外国人登録法では居住地を変更した場合は2週間以内に居住地変更の届出をしなければならない(8条1項)。
入管職員は、「まもなく結果が出ます」と答えた。それでも入管からの通知がないまま年が明けた。相談者は、半分、諦めかけていた。

許可
そして2002年1月12日、入管から、「2週間以内においで下さい」とのはがきが来た。ようやく在留期間更新の許可がおりそうだ。1月16日入管に行き、1年の在留期間更新の許可を受けた(以前は2年であった)。申請から3か月半が経過していた。

東京都港区虎ノ門3丁目18-12-301(神谷町駅1分)河原崎法律事務所 弁護士河原崎弘 電話 3431-7161