「相続させる」と書いた遺言の法的効果/弁護士の事件簿

河原崎法律事務所ホーム弁護士による遺言、相続法律相談
2015.7.14mf

相談

遺言状の書き方ですが、「相続させる」と書く例と、「与える」とか、「遺贈する」などと書く例があります。これは違いがあると聞きましたが、どのような違いがあるのでしょうか。

回答

相続人に対して、 「相続させる」と書かれた遺言は、遺産分割方法の指定であり、その指定は遺産分割の効果があります。相続開始と同時に対象の遺産は、当然に(何らの手続き対抗要件も要せず)、受益相続人の単独所有となります。
具体的には、次のような違いが出ます。

相続と遺贈の比較表
遺言状の記載登録税 登記の手続き農地の場合法的効力
相続させる4/1000
安い
相続人の単独申請
遺言執行者は不要
農地法の許可不要相続分、分割方法の指定、遺産分割の効果がある
遺贈20/1000
高い
遺言執行者(いないときは相続人)と受遺者の共同申請農地法の許可を要する遺贈

現在では、法務局の扱いは緩やかになり、相続人に対して、「与える」、「やる」との文言の場合、遺贈ではなく、相続として扱っています(相続させると同じ)。要するに、「遺贈」と言う専門用語を使わなければいいのです。ただし、相続人全員に対して「包括遺贈する」旨の遺言については、登記原因は「相続」とする扱いです(1963年11月20日民甲3119号電報回答)。
なお、相続人以外の者に対する場合は、全て(相続させると書いてあっても)、遺贈になります。

登録免許税は、受遺者が相続人でない場合は不動産の価額の20/1000です。受遺者が相続人である場合は不動産の価額の4/1000です。この税率の適用を受けるには申請書に受遺者が相続人であることを証する書面(戸籍謄本)の添付が必要です(2003年4月1日民二1032号通達第1-2)。

判例

2009.1.12
東京都港区虎ノ門3丁目18-12-301(神谷町駅1分)河原崎法律事務所 弁護士河原崎弘 03-3431-7161