弁護士ホーム > 商取引/会社関係 > 裁判で貸金を回収し、その後、借金を断る秘訣を実行している
2013.11.8mf更新

裁判で貸金を回収し、その後、借金を断る秘訣を実行している

弁護士河原崎弘

借金の申込

鈴木さんは雑貨を輸入し卸売りをしています。少人数の会社ですが、信用ある堅い取引先が多く、安定した経営をしています。その取引先に佐藤さんがいました。佐藤さんは明るい性格で知人が多く、鈴木さんは何人かの顧客を紹介してもらい、売上増加に協力してもらいました。また、個人的にも家族ぐるみの交際をしてきました。
ある日、佐藤さんは鈴木さんに対して、「1千万円ほど貸してくれないか」と申し込んできました。鈴木さんは、佐藤さんから顧客を紹介されるたびに若干のお礼を払ってきましたが、「少なかったかな」との気持ちがあり、また、「やはりお世話になった」との気持ちがありました。鈴木さんは仕事も順調にいっており、1千万円位の金を貸す余裕もありました。「ここで借金を断れば人情に反するのではないか」との考えが頭をよぎり、鈴木さんは、つい、「じゃ、5百万円なら」と言って、会社振出の5百万円の小切手を渡し、5百万円を貸してしまいました。利息は佐藤さんの提案で、月1%、返済は1か月後と決めました。

債務者の倒産、逃亡

ところが1週間ほどで佐藤さんの店は倒産し、佐藤さんは逃げてしまいました。鈴木さんは5百万円をだまし取られたこととともに、親しい友人に裏切られたとの気持ちからその後1ヶ月ほどは、仕事をするのも嫌になり、憂鬱な気持ちで過ごしました。
1年ほどして鈴木さんの前に現れた佐藤さんは、人が変わっていました。仕事が忙しい間は鈴木さんは貸金のことはそのままにし、損失を取り戻すため、一生懸命働きました。

裁判

3年ほどして鈴木さんは、仕事も伸び悩み、不良債権も発生しましたので、佐藤さんに対する貸金の取立ての件も含め法律事務所に取立を依頼しました。
商取引上の貸金債権の時効は5年ですので、弁護士は早速時効を中断するため佐藤さんに対して訴えを提起しました。佐藤さんは裁判所へ出頭しませんでしたので、この判決は3ヶ月ほどでとれました。判決をとると時効はその時から、さらに、10年間延長されるのです。問題は、今度は佐藤さんの財産を捜して差押えをすることです。佐藤さんは郊外のマンションに住んでおり、預金などの財産を隠し持っていることは確かなのです。そうこうするうちに、6年経過しましたが、依然として財産は見つかりませんでした。そこで弁護士は佐藤さんのテレビなど家財道具を差押え競売しました(平成15年現在では、家財道具の差押さえは難しいです。しかし、執行不能でも時効中断の効力はあります)。これで鈴木さんには12万円の入金がありましたが、これではとても足りません。この差押えにより、さらに時効は中断され、10年延長されました(民法147条2号)。
その後、佐藤さんは引越しをしました。こんどは都心の立派なマンションに住みました。弁護士は佐藤さんに隠し預金があるとの確信をさらに強めました。しかし銀行へ行って、「お宅の銀行に佐藤さんの口座がありますか」と尋ねても、銀行は絶対に教えてくれません。銀行に尋ねるには自分の取引銀行を通すしかありません。

預金の差押え

鈴木さんは、佐藤さんの住んでいる近くの銀行名をすべて調べました。さらに、自分の取引銀行を通して、預金取引があるかどうか調べてもらいました(現在は、個人情報保護を理由に銀行は断りますので、この方法は使えません)。
その結果、A銀行B支店に佐藤さんの預金があることがわかりました。
弁護士は、預金額が1番多くなりそうな月の6日に預金の差押えをしました。その結果、元金5百万円と遅延損害金3百万円余が回収できました。初めの約束の弁済期より12年の月日が経過しましたので、インフレを考えると、鈴木さんは決して得をしておりませんが、自分の貸した金は取り返せたのです。
鈴木さんは、佐藤さんに対する貸金の取立てでは、執念で12年間のねばり勝ちをしたのです。民事上の争いは、結局、諦めずに相手を追求することが、相手に勝つ根本原則なのです。鈴木さんはこの事を肝に銘じ信条としています。

借りをつくらないこと

親しい人からの借金の申し込みを断るのは難しいものです。世話になった人からの申し込みは特にそうです。そこで鈴木さんは、商売上お世話になった時は、必ず、そのときに、金銭で十分なお礼をすることを実行しています。そして、借金の申し込みを堂々と断っています。借りを作ってはいけないのです。鈴木さんはこの借金を断る秘訣を実行し、事業は順調です。
神谷町駅1分 弁護士河原崎法律事務所 03−3431−7161