任意後見人

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弁護士河原崎弘
相談
今年 87 歳の母のことでご相談します。私は長女ですが、母が長男のそばで暮らすことを望んだので、長男の自宅近くの老人ホームに住んでいます。母は6年前に亡くなった父の遺産の 1 億円をすべて銀行預金しています。ところが、3 年前に、長男が、「ペイオフが始まるから」と言ったので、全てを現金化し、それを長男名義の銀行の貸金庫に預けました。もちろん、私には相談はありません。
この時は、母は、いったん長男の指示に従ったものの、さすがに不安になったようで、私に相談してきました。
母は、長男名義の貸金庫に入っていても、自分のお金だと信じていますが、私は、「万一、長男が急死した時、その金庫は長男名義であるために、中の現金は長男のものになってしまう」と言って、説得し、もう一度、銀行預金に戻させました。
どうも長男はチャンスがあれば、母親の預金を全て現金に変え、内密で自分のものにしてしまうつもりのようです。キャッシュカードを勝手に持ち出して預金を引き降ろすおそれも十分あります。
直系親族間ではお金の窃盗や、横領は刑事事件としては成立しないと聞きました。母の生前に全ての預金を現金に変えられてしまうのを防ぐには、どのような手だてがあるのでしょうか。
母は長男の言いなりの状態で、はっきり自己主張ができません。私が長男に意見すると言っても、「やめてほしい」の一点張りです。かといって、大切な老後の資金ですから、全額を生前から長男に巻き上げられるのを望んでもいません。私(長女)の立場で母の財産を守ってやれる方法はないものでしょうか。他に、次男(弟)が居ますが、次男は、私と同じ考えです。
相談者は、法律事務所を訪れ、弁護士に相談しました。

回答
まず、ご指摘の通り、親族間での窃盗、横領は処罰されません。
そこで、公的な後見制度を使ったら良いと思います。お母さんは、認知症ではないので、1つの方法は、任意後見契約に関する法律 の任意後見制度が適しています。あなたが、お母さんの任意後見受任者(お母さんが判断能力がなくなって任意後見監督人が選任されると、任意後見人になる)になることです。そうすれば、あなたが、お母さんの財産を管理して、守ることができます。これは、公証役場で(あるいは、公証人に来てもらって)公正証書で、任意後見契約を締結すればできます。
必要書類は次の通りです。 任意後見契約には、任意後見監督人が選任されたときに委任が開始するものがあります(将来型契約)。既に軽度の精神的障害が生じてはいるが、まだ契約を締結する能力は失われていない場合、任意後見契約を締結するとともに、委任者本人または受任者が家庭裁判所に任意後見監督人の選任を申立てることもできます(即効型契約)。
あなたの場合は、任意後見契約の中で、お母さんが、判断能力あるうちでも、あなたが、代理人として、預金を管理できるように決め、お母さんの能力が衰えたときに任意後見監督人の選任を受し、従前の委任事務を継続する形態の契約をすれば、いいのです(移行型契約)。

任意後見の種類
種類内容参考事項
将来型任意後見の契約を結んで、将来に判断能力が低下したときに
後見を開始させるものです
見守り契約
即効型任意後見の契約を結んでから、ただちに後見を開始させる本人に判断能力があることが前提
移行型任意後見契約から、ご本人の判断能力が低下して、
実際に後見が開始するまでの間、
財産管理などのサポートを受ける財産管理を
委任する契約を結ぶ


しかし、お金はお母さんの財産ですので、お母さんの意思が、長男を受け入れていると、何をするにも、難しいですね。
今ある種類の成年後見制度などを、下に表にしておきます。

後見の種類
種類本人の状態援助をする人内容適用される法律
後見本人に判断能力が全くない成年後見人代理民法7条以下
保佐本人に判断能力が著しく不十分保佐人同意民法11条以下
補助本人に判断能力が不十分補助人同意民法15条以下
任意後見本人の判断能力がある
本人の判断能力が不十分
任意後見人代理任意後見契約に関する法律
登録 2006.6.9
東京都港区虎ノ門3丁目18-12-301(神谷町駅1分)弁護士河原崎法律事務所 電話 3431-7161