裁判で、メールにはどの程度の証明力がありますか
弁護士ホーム > ネット・著作権 > 裁判で、メールにどの程度の証明力がありますか
2024.10.13mf更新
弁護士河原崎弘
相談
メールを証拠として裁判所に提出することを考えています。
裁判で、メールは、どの程度証明力があるのですか。
弁護士からの回答
裁判で、メールが証拠として提出されることが多くなりました。
民事裁判に限ってお答えします。
通常、メールはプリントして書証として提出します。携帯メールは写真に撮り写真として提出したり、パソコンに転送してプリントして提出することもあります。
民事裁判では、証拠を提出した場合、相手は、その証拠について、成立が真正であるかを認否します。すなわち、証拠が偽造されたかどうかです。相手は、多くの場合、メールが真正であると認めます。メールの場合も、相手がメールの存在が真正なもの(偽造されていない)と認めた場合は、問題がありません。メールには証明力があります。
相手が、メールは偽造されたものであるとして、メールの存在自体を争った場合は、メールを証拠として提出した側は、メールが真正なものであることを証明しないと、メールの証拠価値はないでしょう。証明方法としては、当事者尋問、メールの作成者(送信者)の証人尋問があります。
でも、一番確実な証明方法は、プロバイダーや、携帯電話会社に対する調査嘱託で、メールを取り寄せる方法です。ところが、時間が経過すると、プロバイダーや、電話会社は、メールを消してしまっていることが多いです。プロバイダーは6か月、携帯電話会社は、もっと早いです(どのくらいの期間経過で消すかは企業秘密で教えてくれません)。
後述の判例のように、メールの存在が争われ、その存在について確実な証拠がないと、メールの証拠価値は、裁判所が判断することになります。メールは、デジタル性があるので、全く同じものが作成可能だからです。パソコンの時間設定を変えれば、同じメールは作成できるのです。
その場合は、法廷にパソコンを持ち込むとよいですね。
コメント
最近、次のような新聞記事を読みました。これが事実なら、メールが証拠として使えます。
「XP以降のOSは自動的に内部時計を調整して正確な日時になるような機能を有しています。・・・素人がいじった位じゃプロの目はごまかせません」
実際、パソコンの日付を変えるのではなく、特殊のソフトを使って、ファイルの日付を変えることができます。その場合は、やはり特殊のソフトを使って、変更した日付がわかるようです。
そうなると、メールは、原則として証拠として使えそうです。
判決
-
東京地方裁判所令和3年9月10日判決
ウ Eのメールについて
また,Eのメールは,JからFに対するもののようであるが,メールの作成日付も不明であり,実際にこのメールがF宛に送信されたのかも不明である。その内容も,いくつかの「請求」に対する「入金明細」を求めるものであり(甲12),本件債権との関係が明らかでなく,本件債権の存在を推認するに足りない。
エ Cのメールについて
Cのメールからは,令和元年6月15日,GがCに対して◇◇の地下2階の解体撤去工事にかかる請求書に対する積算議案の進捗状況を尋ねたところ,同月18日に,CからGに対して問題がない旨の返信メールがあったかのように見える(甲10)。しかし,当時のCの所属は「環境創造事業部CM部第二担当」であるにもかかわらず(乙13〔枝番含む。〕,14),上記CからG宛の返信メールの署名欄には「株式会社Y1 ◇◇店 内装監理室 工事担当」とあり,明らかに事実と異なっているのであって,このメールの信用性について疑義を差し挟む余地がある。また,仮に信用性が認められるとしても,このメールは◇◇の地下2階の解体撤去工事に関するものであり,これだけでは本件債権の存在を推認するに足りない。
オ D及びAのメール並びに@の本件請求書について
(ア)Dのメールによれば,令和元年6月18日に,AからHに対し,「新館各階フロア解体撤去工事」の見積書が提出され,これを被告が検収し,着工日が決定したように見える(甲11)。また,Aのメールにおいて引用されたFとIと間でやりとりされたメールによれば,同年9月21日から同月26日までの間にかけて,Aが被告に対し,「新館フロア解体撤去工事」について9297万1553円を請求し,被告がこれに対する支払予定日を12月27日と決定したように見える(甲8)。そして,これに沿う請求書として,@の本件請求書が存在するように見える(甲7)。これらを総合すれば,Aと被告との間に,△△新館の各フロアの解体撤去工事の請負契約があり,本件債権が存在するようにも見える。
(イ)Aのメールは,本件債権に譲渡担保を設定するに当たり,原告から本件債権の存在を示す資料の提出を求められたDが,本件を仲介したEに対して送信したものであって,FとIとの間の「新館フロア解体撤去工事請求書の件」と題するメールのやり取りを引用する体裁のものである。しかしながら,DがE宛のメールを作成するに当たり,IとFとの間のメールを加工せずに正確に引用しているかは不明であるし,そもそも,IとFとの間のみでやりとりされたメールをいかにしてDが入手したのか,IとFとの間のみでやりとりされたメールを,なぜDが返信機能(E宛のDのメールの標題は,IとFとの間のメールの標題である「Re:Re:新館フロア解体撤去工事請求書の件」の冒頭に「Re:」が付されているものである。)を利用してEに送信できるのかも不明である。Aと同様に本件債権の存在を示すものとしてAから提示されたCのメールの信用性について,前記のとおり疑義を差し挟む余地があることや(上記エ),Aが,後日,代理人弁護士を介して,本件債権は存在しない旨を述べていること(乙6)も踏まえると,Aのメールについても,DがFとIとの間のやり取りを正確に引用したものとして信用できるか,疑義を差し挟む余地がある。なお,原告は,Aのメールの解析結果を甲14,15号証として提出するが,これによっても,改ざんがなされたかどうかは不明というにとどまり,Aのメールが信用できるというものではない。
そして,@の本件請求書も,Aが被告の関与なしに作成することが可能なものであり,Aのメールの作成経緯に上記のとおり疑義があることからすれば,これを被告が受領していたかどうかも不明である。
そうすると,Dのメールもただちに採用し難いし,Aが,被告の主張するとおりBの孫請けとして什器撤去を担っていたというのであれば,Dのメールは被告がそのような立場にあるAとの間で情報提供ないし情報交換をしたメールと解する余地もあって,Dのメールから本件債権の存在を推認することも困難である。
(ウ)よって,D及びAのメール並びに@の本件請求書から,本件債権が存在していると推認することはできない。
- 東京地方裁判所令和1年12月3日判決
ア 被告のAに対する送信メールについて
被告は,平成27年11月30日及び同年12月6日,Aに対し,深夜に二人で会っていたことを前提とする内容のメールを送信している(前記認定事実(5)イ及びウ)。
しかし,証拠として提出された被告のAに対する全ての送信メールの文面(甲7の11ないし19)を検討しても,二人が不貞関係にまで至っていたことを直接窺わせる内容のものは存在せず,上記両日の深夜や明け方まで具体的に何をしていたのかは不明というほかないから,これをもって不貞行為を推認するには不十分というべきである。
また,被告は,同年11月以降,Aに対し,妻である原告との話合いの状況を気にしたり,離婚をするという話がどうなるのかを気にかけたりする内容のメールを送信している(同(5)ア及びエ)。これらのメールの文面には,Aの離婚の話に進展がない煮え切らない態度について,被告が焦燥感を表明しつつ,Aに決断を迫るような内容が記載されており,文字どおりに読めば,Aに好意を抱いていた被告がAの離婚の実現を期待していた心境が表現されたものと解釈できる余地がある。
しかし,仮に被告がAの離婚の願望を有していたものとしても,そのことから直ちに二人の間に不貞関係が存在していたことまでの推認が及ぶものではなく,これらのメールが送信される前の本件不貞行為の存在を推認するにはやはり不十分というべきである。被告がAに同年12月6日に送信したメールには,明け方まで話をした日の感想に続けて,「何故か,どうしても,ひとつになれない二人で」との表現があるものの(同(5)ウ),文章はそこで途切れてしまっており,これだけでは文意が不明というほかなく,こうした中途半端で曖昧な内容のメールを本件不貞行為の存在を推認させる有力な証拠として位置付けるのは困難である。
- 大阪高等裁判所平成21年5月15日判決
ところで,電子記録はその性質上改ざんしやすいものであるから,これを証拠資料として採用するためには,その記録が作成者本人によって作成され,かつ,
作成後に改ざんされていないことを確認する必要がある。しかるに,上記メールについては,I1教授の陳述書に添付されたもので,独立の文書(書証)として提出さ
れたものでなく,その作成については認否の対象ともなっていないし,その作成についてF1自身の陳述は得られていない。そして,その内容には,氏名部分を「○○」
等に変更し,また注釈を入れたような部分もあり,明らかに,事後に変更が加えられている。一審被告らは,当審において,E2の陳述書(乙53)を提出し,これに
は,E2が平成14年10月26日に上記メールと同内容のメールをF1から受け取ったこと,そのメールでは上記メールの「○○」の部分は「E2」となっていたこ
となどを記載しているが,同陳述書によれば,E2もI1教授の指導を受けた関係にあり,同教授の支持者として行動していることが認められるところ,これからすれ
ば,これをもって,上記メールについて,作成者がF1であり,何らの改ざんもされていないと断定することは困難である。また,一審被告らは,当審に至って,同訴
訟代理人作成の報告書にF1氏名の抹消されていないものを添付して提出したが,これによっても,上記メールについて,作成者がF1であり,何らの改ざんもされて
いないと断定することは困難である。
登録 2010.7. 1
東京都港区虎ノ門3丁目18-12-301(神谷町駅1分)弁護士河原崎法律事務所 電話 3431-7161