東京家庭裁判所立川支部令和4年2月4日審判
1 認定事実
本件記録によれば,以下の事実が認められる。
(1)申立人と相手方は,平成19年4月22日に婚姻し,未成年者ら(3人)をもうけた(生年月日は当事者欄記載のとおり。)が,令和元年9月2日に未成年者らの親権者を母である相手方として離婚した。以後,相手方が未成年者らを監護養育している。
(2)申立人と相手方は,上記(1)の離婚に先立ち,同年8月27日に本件公正証書を作成した。(乙1)
本件公正証書中,養育費に関連する定めの概要は次のとおりである。
ア 養育費等(第2条)
(ア)申立人は,相手方に対し,未成年者らの養育費として,令和元年9月から未成年者C(以下「長男」という。)については令和13年3月まで,未成年者D(以下「長女」という。)については令和16年3月まで,未成年者E(以下「二男」という。)については令和19年3月まで,それぞれにつき月額5万円を,毎月末日(金融機関の休業日にあたるときは翌営業日)限り,主文1項記載の預金口座に振り込む方法で支払う。振込手続費用は申立人の負担とする。(1項)
(イ)申立人と相手方は,上記(ア)にかかわらず,未成年者らが満20歳に達した時点で学業を終了している時は,上記(ア)の養育費の支払は,学業が終了した日の属する月をもって終了することを合意する。(2項)
(ウ)申立人は,相手方に対し,相手方が未成年者らの病気,事故又は進学・入学等により,特別の費用を負担するときは,相互に誠実に協議して申立人の負担額を定めた上,速やかに当該負担額を上記(ア)の方法により支払うことを確約する。ただし,当該協議に際しては,後記イの学資保険の存在も考慮するものとする。(3項)
(エ)申立人及び相手方は,それぞれの転・退職,再婚,養子縁組等の養育費の金額の算定に影響を及ぼすおそれのある事由が生じた場合には,速やかに他方当事者に通知するものとし,必要に応じて,養育費の金額の改定等について誠実に協議することを合意する。(4項)
イ 学資保険等(第3条)
(ア)申立人及び相手方は,それぞれ申立人が契約者となっている各学資保険契約等の掛け金の支払を,所定の解約日まで申立人が継続することを確認する(1項。前記学資保険は3口であり,掛け金は月額合計3万5240円である。)。
(イ)申立人は,相手方に対し,申立人が上記(ア)の各保険契約所定の解約日に学資保険等を解約し,その解約返戻金の支払を受けたときは,解約返戻金の支払日から1か月以内に,解約返戻金相当額から課税予定額を差し引いた金額を,上記アの養育費とは別の養育費として,上記ア(ア)に記載の金融機関口座に振り込んで支払う。振込手続費用は申立人の負担とする。(2項)
(ウ)相手方は,申立人に対し,上記(イ)により申立人から支払を受けた金銭を,未成年者らの学費として使用することを誓約する。(3項)
(3)申立人は,株式会社Fから,平成30年2月から平成31年1月まで年額1040万円,同年2月から令和2年1月まで年額680万円の役員報酬を得ていた(甲22,23)。申立人は,株式会社Gから,平成30年10月から令和元年9月まで年額240万円の役員報酬を得ていたが,その前後は無給であった(甲25〜27)。(以下両社につき,「株式会社」の表記を省略する。)
(4)申立人は,令和3年1月1日,H(以下「再婚相手」という。)と再婚し,I(平成22年■■月■日生)及びJ(平成25年■月■■日生。以下併せて「養子ら」という。)2人を
養子とする養子縁組をした。
(5)減額後の養育費の額について
ア 申立人(支払い義務者)の年間収入及び基礎収入について
申立人の給与収入は600万円であり,不動産収入は,不動産所得36万9968円に青色申告特別控除額10万円を加算した46万9968円となる(上記1(5))。前記不動産収入を給与収入に換算すると54万円程度になる。そうすると,申立人の年間収入は給与収入として654万円程度であり,基礎収入はその41%の268万1400円となる。
イ 相手方の年間収入及び基礎収入について
相手方の年間給与収入は233万0519円である(上記1(6))。基礎収入はその43%の100万2123円(1円未満四捨五入。以下同じ。)となる。
ウ (申立人の2人の)養子らの生活費指数について
(申立人の)再婚相手の年間給与収入は744万円(甲4〜11。62万円×12か月)である。基礎収入はその40%の297万6000円となる。
養子らは,その生活費指数各62を申立人と再婚相手で基礎収入の割合により分担することになるから,申立人の分担する生活指数は次の計算式により各29となる。
62×268万1400円÷(268万1400円+297万6000円)=29
エ 養育費月額について
上記ア及びウによれば,未成年者らが申立人と同居している場合に(3人の)未成年者らに分配される生活費は次の計算により144万9827円となる。
268万1400円×(62+62+62)÷(100+62×3+29×2)=144万9827円
これを申立人と相手方との間で基礎収入の割合で分担すると,申立人の分担する養育費は次の計算により105万5393円となる。
144万9827円×268万1400円÷(268万1400円+100万2123円)=105万5393円
上記養育費を1人月額に換算した額を目安に,申立人がFの費用負担で家電製品を購入したり(甲20),通信契約をする(乙8)など,役員報酬以外の実質的な収入があることが推認されること等本件における一切の事情を考慮すれば,本件の養育費は1人月額3万5000円とするのが相当である。
登録 20248.11
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