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2015.6.4mf更新
弁護士河原崎弘

妊娠し、中絶した愛人から慰藉料請求

相談
私は、27歳、妻子ある男性(35歳)に口説かれ、交際しました。彼から、「将来は家を出る(離婚する)から一緒に暮らそう」と、言われました。
私は、最初は、「奥さんや子供を不幸にして自分が幸せになるなんて」と思っていました。しかし、彼が「もし、子供ができたら、生んで欲しい」と言うのです。私は、彼の積極的で覚悟ある言葉や私への熱意に心を奪われ、何時の間にか自分が幸せになることを夢見ていました。
先月、奥さんへ私達のことが発覚し、そして私は妊娠しました。
ところが、彼の子供がまだ、5歳と2歳でした。奥さんから、子供への養育費などの責任を問われ、「もし家を出るのであれば、子供には会わせない」と、言われたようです。それから急に彼の態度が変わってしまいました。
私は、一方的に別れを告げられてしまいました。子どもを産もうと考えましたが、結局、中絶し、私は精神的にも肉体的にもダメージを受け、泣き寝入りしているだけの自分がみじめでなりません。
しかし、立場上、他の愛人たち同様、慰謝料は請求できないのでしょうか。
相談者は、電話で予約をして、弁護士会で法律相談を受けました。

助言
彼のように、「将来は離婚するから一緒に暮らそう」などと言う男性は、通常、駄目な男です。
あなたと彼との婚約は公序良俗に反して無効です( 民法90条 )。従って、原則として慰藉料は認められないでしょう。
妊娠、中絶も慰謝料発生理由になりません。

但し、このような場合、男性が慰藉料を支払うことはよくあります。男性に社会的地位があったり、有名人だったり、情が深かったり、責任感が強かった場合です。
裁判をすると負けますから、裁判をせずに女性側から積極的に男性を攻めて請求し、慰謝料を取った例も多くあります。
不倫後の男性の精神面を加えますと、この場合、男性の立場からは、2つの選択肢があります。妻を取るか、愛人を取るかかです(近松門左衛門流に言えばもう 1 つありますが)。どちらを選んでも不幸な人が出ますので、どれを選択をしても(不倫をしたことは別として)非難できません。しかし、心ある人なら、裏切られた人に対して償いはするでしょう。カチューシャやテスなど同様な目にあった女性はたくさいます。
人間誰にも、過ちはあります。あなたの場合、初めは、「奥さんや子供を不幸にして自分が幸せになるなんて」と、思ったのです。とても素直で、優しい気持ちです。この当初の気持ちに戻れば、世の中に誠実な男性はたくさんいることがわかるはずです。
あなたのダメージは時が解決してくれるでしょう。

例外的に慰謝料請求できる場合
例外的に100万円以下ですが、貞操侵害として慰謝料が認められたケースがあります。女性が未成年など若く、異性に接した体験がなく、思慮不十分であるのにつけこみ、上司の男性が積極的に嘘を言い、「離婚して女性と結婚する」と誤信させ、女性が妊娠し出産したケースです(昭和44年9月26日最高裁第判決、女性は19歳のでした)。
詳しくは 貞操侵害による慰謝料請求 へ

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