同族会社の役員が会社の金を個人流用する

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Last updated 2011.3.4mf

相談:同族会社の横領

私は銀行に20年勤め、現在、同族会社で経理を担当しています。
当社の役員は明らかに会社の金で個人の被服代、家族旅行代、飲食代、さらに仕入先から架空の請求書、領収書を発行させ会社の現金を着服しています。
当社では公認会計士と監査契約しておりますが、上記のような役員の行為について全て税務上役員賞与あるいは役員報酬として処理しております。
私は銀行員時代壱円の金でさえ自分の財布に入れることは、横領と考えておりました。私には公認会計士の処理方法が理解できません。商法上、刑法上の罪はないのでしょうか。

弁護士の回答:同族会社は倒産の危険がある

会社の役員が、会社の金で役員個人の被服代、家族旅行代、飲食代を支払う行為は、横領(刑法252条)です。会社の役員が、仕入先から架空の請求書、領収書を発行させ、会社の現金を着服する行為も、この段階では横領です。
その後、これを公認会計士が、役員の行為について全て税務上役員賞与あるいは役員報酬として処理することは会社と役員の(黙示)同意を得ているのです。被害者の会社が賞与ないし報酬の支給として同意したの、横領とはなりません。横領の段階で、これを法律違反あるいは犯罪とするには、被害者の被害届けあるいは告訴が必要でしょう。 代表取締役が他の取締役を告訴するか、取締役会が代表取締役を解任し、新しい代表取締役が被害届け あるいは 告訴 することが必要です。 しかし、被害者である会社が認めた行為ですから、それは無理でしょう。
なお、このような行為は、所有(株主)と経営(取締役)が一致している同族会社では、自分の首を締めることになり、最悪のケースでは倒産に至ります。
日本で悲劇的なことは、同族でない(従って、所有と経営が一致していない)上場企業および官庁で似たような行為が隠れて行われていることです。それでも、民間企業ではなくなる傾向にあります。官庁では、なお、組織的に行われています。
登録 Sept. 11, 1999