官僚の無責任

弁護士河原崎法律事務所ホーム刑事事件 > 官僚の無責任
弁護士河原崎弘


官僚の利益追求体質と無責任さは、最近、始まったことではありませんよ。

1939年日本陸軍は ノモンハンでソ連軍と戦い、多数の兵隊が死亡し、完敗しました。日本陸軍の機械化の遅れだけでなく、作戦の失敗も完敗の原因でした。ところが、この作戦に責任のあった参謀は、ほんの少し左遷されただけで、参謀辻政信などは何らの処分も受けていません。
さらに恐ろしいことには、日本陸軍はこの完敗を何の教訓にもしなかったのです。 そして、太平洋戦争に突入したのです。アメリカに対し開戦するという大失敗(欧州でドイツと戦っていた英国は大喜びしました)をしました。
ちなみに、外務官僚の不手際で開戦通知が遅れ、以後日本はパールハーバーの不意打ちという不名誉な汚名を着せられました。
ミッドウエイ、インパ−ル、ガダルカナルと、太平洋戦争は作戦の失敗の連続でした。そのため、罪のない多数の兵隊が死亡しました。これはまず第1に陸軍、海軍の官僚の責任です。
しかし、日本においてはこれまで官僚は一切責任をとっていません。責任を取るどころか、大失敗をした官僚は、その後、順調に出世しているのです。これは、もう笑い話しです。日本社会の伝統の官尊民卑が根本にあります。

今、大蔵省( 財務省 )が住専問題で金融業界(金融業界は大蔵省の天下り先です。金融機関関係者の刑事責任追求には公訴時効の壁があります)と癒着した 利益追求体質を問われ、 厚生省( 厚生労働省 )がエイズでその業界と癒着した利益追求体質(官僚が 製薬会社に天下り、加熱製剤に対応できない製薬会社の利益を守るため 加熱製剤を輸入せず,危険を知りつつ非加熱製剤を使った)を問われています。しか今回もこのままでは官僚が責任をとることはないでしょう。

総理大臣 初め,政治家が官僚達 をコントロ−ルする能力を持っていないからです。政治家の能力と資質が問題なのですね。 国民は余りにも哀れです。
では、国民は何をなすべきか。 選挙の際に、官僚出身の候補者には一切投票しないことです。
、 官僚とは単なる教科書知識の記憶競争の成功者です。しかも、安住できる天下り先と有利な*年金制度があるので、ぬるま湯に浸かった状態では頭は鈍り、良い仕事ができません。生活の不安がないため時代感覚はありません。
その程度の能力ある人は日本には大勢います。官僚出身の候補者でなくも,大丈夫、日本はやっていけますよ。
厚生省の役人は、アメリカ出張の際、現地の日本の製薬会社の接待兼観光案内を受けます。
連中は、「おれたちの規制が厳しいから(外国製の薬が)日本に入れないんだ」と笑いながら、現地の薬局に行き、価格が安い(日本の2分の1以下)薬を、大量に買います。主に水虫薬です。無用な、日本の役人の実態です。
官僚が問題なのは、国民の利益ではなく、自己の利益を追求する体質が染み付いている からです。これは、封建社会である江戸時代の役人の役得を求める習性(この習性は民間人にもありますが?)に由来し、何世代もかかって形成された体質です。 だから、直すにも何世代もかかるでしょう。しかし、我々が諦めて放置したら、これは直りません。
1995年の都知事選挙の際のフィ−バ−を再現させることです。
青島知事も頼りないですが(当初は伝統的な官僚支配を打破し都市博を中止したが、その後は自分の非力を自覚し1期で辞めるとの功績はあった)、我々もその程度の選挙民だったのです。日本社会から利己的な官僚を排除しないと、モラルは荒廃し、経済も発展しません。
皆さん、どうお考えですか?
この問題についての対策(短期から長期対策へ)
  1. 公務員の不正について国民が常にクレームを出し、(アメリカのように)監視の目をゆるめないこと。官僚が好きとか嫌いとかの問題ではありません。常に批判を受けないと、官僚は堕落します。
  2. 選挙の際、官僚出身者を落選させ、官僚と政治家の間の利権追求癒着を断ち切ること。
  3. 天下り先の特殊法人、公益法人を含め、官庁の*情報公開(平成11年5月7日情報公開法成立1歩前進しました)を促進させ、 不正は結局 暴露されることを思い知らせること・・・・これが決め手。
  4. 将来は、アメリカのように、高級官僚は政権交代とともに職を去るシステムにすること。
*民間は営業努力をして売上げを獲得するのですが、官庁は営業努力をせずに税法により強制的な力で収入を得ています。それなのになぜ官庁に食料費という名の交際費が認められるのですか? この理屈は 国税庁 はよく知っているはずです。

*現在の共済年金制後は、高額所得者ほど税金による補填が多額になり、累進的な税金とは逆の効果を持ち、不公平な制度です。

*責任と言えば、ドイツは、ニュルンベルク裁判 で指導者が責任を取らされただけでなく、独立後、ドイツ自ら戦争の際に犯された犯罪の 時効を停止 し、約7000人を起訴し、今でも犯罪者の責任を追及しています。
日本は、東京裁判など連合国側の裁判を受けましたが、日本自身では、トップから下まで戦時下での犯罪者の責任については放置しました。この辺にも、無責任日本官僚の原点があるのなら、私たち自身も反省しなければならないのですね。

コメント
1999年2月19日「公務員は好きではないが、公務員がすべて悪いとの印象を受けた。これは過激だ」とのコメントがありました。

回答
これは好き嫌いの問題ではありません。民主主義社会においては公務員に対しては不断の監視と批判が必要です。開発途上国と同様、日本では官僚の弊害が大きいので、批判によりこれを改善する必要があります。
(公務員と異なり報酬の保証はないので)公務員ほどには国家から特別な地位を与えられてはいないが、国家から免許を受けている業種(例えば弁護士)に対しても公務員の次に不断の監視、批判が必要です。

I T 革命について/コピー防止のためPDFファイル
日本の官庁は、官報などを、わざわざ、PDF ファイルにしてインターネットに載せています。どうやら、その理由はコピーを防ぐためのようです。天下り法人を通して自分たちで色々な「〇〇〇六法」を発行し、解説書を発行しています。テキストファイルだと簡単にコピーされ、これらの書物が売れなくなるからです。この利益および原稿料確保のために わざわざ手間をかけて、PDF ファイルにしています。
しかし、官報などは国民に法令を知らせる新聞ですからコピーを防止する必要はありません。著作権法 13 条は、国などの発行するものは著作権の目的とならないと規定し、同法 32 条は広報資料などの転載を許しています。
日本の官僚は、「国益」との言葉を口にします。しかし、この例が示すように、日本の官僚は、自己の利益にしがみついている、まさに、「法匪」です。
鹿児島大学の指宿信さんも、同様に、「各官庁が・・・法律情報を食いものにしている」と指摘をしている( 2000 年 11 月 11 日朝日新聞)。
PDFファイルのため視覚障害者が使う音声変換ソフトが使えません( 2000 年 11 月 18 日朝日新聞夕刊)。

I T 革命について/登記情報システム
2000 年 9 月 25 日からオンラインで一部の登記所の登記簿が閲覧できるようになりました。しかし、閲覧料が1 件 980 円 と極端に高いのです。法務省は、財団法人民事法務協会 との天下り法人を作って極めて高い料金を取っているのです。インターネットは人手を省き料金を安くするためにあるのです。官僚の天下りのためにあるのではありません。

著作権法
(権利の目的とならない著作物)
13条 次の各号のいずれかに該当する著作物は、この章の規定による権利の目的となることができない。
憲法その他の法令
国又は地方公共団体の機関が発する告示、訓令、通達その他これらに類するもの
裁判所の判決、決定、命令及び審判並びに行政庁の裁決及び決定で裁判に準ずる手続により行なわれるもの
前三号に掲げるものの翻訳物及び編集物で、国又は地方公共団体の機関が作成するもの
・・・・
・・・・
(引用)
32条 公表された著作物は、引用して利用することができる。
この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究、その他引用の目的上正当な範囲内で行われるものでなくてはならない。
国又は地方公共団体の機関が一般に周知させることを目的として作成し、その著作の名義の下に公表する広報資料、調査統計資料、報告書その他これらに類する著作物は、説明の材料として新聞紙、雑誌その他刊行物に転載することができる。ただし、これを禁止する旨の表示がある場合は、この限りでない。
1997.9.27登録