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2015.2.15mf
弁護士河原崎弘

マンション管理費を18年間滞納された後売り逃げされた

相談:不動産
私は、マンション管理組合の役員をしています。当マンションに 18年間にわたり管理費と修繕積立金(以下、管理費等)を滞納を続けた区分所有者がいました。 この人は、「組合に反対」と言って、エレベータも使わなかったそうです。
管理組合は弁護士に依頼し、支払督促を申立し、時効中断させ、差押をしました。ところがこの室は競売となってしまいました。抵当権者がいましたので、管理組合に対しては配当はありませんでした。
競落人に対し、滞納金請求準備のため不動産登記簿謄本をとってみたところ、室の所有者が変わっていました。その競落人は室を第三者に転売してしまっていたのです。
ここでご相談したいことは、組合としてはこの新所有に請求できるのでしょうか。 売り逃げした、競落人への請求のため、最初の所有者に対して取得した支払い督促を使えますでしょうか。

回答

(支払い義務)
管理費等の滞納があった場合、区分所有建物を取得した人など特定承継人に対しても請求できます(建物の区分所有等に関する法律8条)。
従って、競落人も、その後買った第三者も滞納管理費等について支払い義務があります。新所有者に請求できます。

(強制執行)
既に支払い督促をとっているのですが、これを使って強制執行ができるかです。
判決などを債務名義といいますが、支払い督促も債務名義です。債務名義に基づく強制執行は、債務名義に表示された人に対して可能です。滞納を続けた区分所有者に対して強制執行ができます(民事執行法23条1項1号)。
次に、債務名義成立後の承継人に対して強制執行できます(民事執行法23条1項3号)。競落人や、その後買った第三者は、この承継人に当たります。従って、競落人に対しても、その後買った第三者に対しても強制執行できるのです。この場合は、債権者(管理組合など)は、承継執行文を得る必要があります。

(競売申立)
管理費滞納につき、建物の区分所有等に関する法律59条1項に基づき区分所有建物を競売申立をすることを認めた判決があります(東京地方裁判所平成22年1月26日判決)。

判決

建物の区分所有等に関する法律
第59条 (区分所有権の競売の請求)
第57条第1項に規定する場合において、第6条第1項に規定する行為による区分所有者の共同生活上の障害が著しく、他の方法によつてはその障害を除去して共用部分の利用の確保その他の区分所有者の共同生活の維持を図ることが困難であるときは、他の区分所有者の全員又は管理組合法人は、集会の決議に基づき、訴えをもつて、当該行為に係る区分所有者の区分所有権及び敷地利用権の競売を請求することができる。
第57条第3項の規定は前項の訴えの提起に、前条第2項及び第3項の規定は前項の決議に準用する。
第1項の規定による判決に基づく競売の申立ては、その判決が確定した日から6月を経過したときは、することができない。 
前項の競売においては、競売を申し立てられた区分所有者又はその者の計算において買い受けようとする者は、買受けの申出をすることができない。

登録 2010 5 21
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