スキー場での衝突事故の損害、責任

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2015.6.8mf
質問
先日、私はスキー場にて事故に遭いました。
滑っている最中に他のスキーヤーに後方から追突され、背骨を骨折、全治1ヵ月の怪我を負いました。
幸い加害者は保険に加入していました。現在、加害者と保険会社のほうで話を進めている段階で、私自身に詳細は知らされていません。一度保険会社に、電話で、「過去に事例でどれくらいの請求があったかを知りたい」と尋ねましたが、回答はもらえませんでした。
この場合、交通事故の事例をそのまま適用できるのでしょうか。この場合、加害者に対して、慰謝料や休業補償の請求はできるのでしょうか。
加害者に対してどれくらいの額を請求できるのかがわかりません。
相談者は、法律事務所を尋ね、弁護士の意見を聴きました。

回答
スキー等スポーツに当然伴う危険については正当行為として、違法性はなく、損害賠償責任もないと考えられてきました。しかし、それを越えて具体的に危険を予見、回避できたのに回避しなかった場合は加害者に損害賠償責任があります。
スキー場のゲレンデにおけるスキーヤー同士の事故(スキー事故)についての判例を見ると、加害者の過失責任を認めたものと、否定したものがありました。現在では危険が予想できる場合、危険を回避できる立場にあるスキーヤーに責任を認めています。

平成7年3月10日最高裁判決は、スキー場で発生したスキーヤー同士の接触事故につき「上方から滑降してきた者」に過失があると指摘しています。
ここでは、 「スキー場において上方から滑降する者は、前方を注視し、下方を滑降している者の動静に注意して、その者との接触ないし衝突を回避することができるように速度及び進路を選択して滑走すべき注意義務を負うものというべきところ、前記事実によれば、本件事故現場は急斜面ではなく、本件事故当時、下方を見通すことができたというのであるから」と、上方から衝突した人に責任を認めました。

平成7年3月3日東京地裁は、滑降コースの見通しの悪い段差の下で停止していたスキーヤーに、後続のスキーヤーが段差部分でジャンプして衝突した事故につき、後続の加害者スキーヤーに減速しなかつた過失を認めました。
しかし、被害者は幅員約10mのコース上で上方を向いてサングラスを拭いていたので3割の過失を認め、損害額から3割を相殺しました。
この判決では「加害者は、斜度約20度の斜面から幅員が狭くなる前記コルゲートに進入するにあたり、その手前のコース脇にはゆつくり滑るよう指示する黄色の標識も立てられており、十分に減速すべきであつたにもかかわらず、右標識の存在に気づかずそのまま滑り降り、しかも、コルゲート先端の斜面の変わり目があることをその手前約30mで気づき、その下を見通すことができなかつたのであるから、より早い段階で減速すべきであつたのに、斜面の変わり目の手前約5mになつてようやく減速したため、十分減速することができずにそのままジャンプすることになり、原告に衝突したもので、十分に減速措置をとらなかつた被告には過失があるというべきである」と指摘しています。

あなたの場合、滑降している同士の事故ですが、加害者が後方から衝突していますので、衝突回避義務は加害者にあり、加害者に過失があります。 加害スキーヤーの責任が認められた場合、損害額としては交通事故の場合と同じように、休業損害、治療費、慰謝料(入通院、後遺症)を算定できます。全治1か月なら損害額も大きくなるので、代理人として弁護士を頼むとよいでしょう。

スノーボードの場合
スノーボードの事故も同じ考えでいいでしょう。
神戸地裁平成11年2月26日の判決(判例時報1696-126)では、上方からスノーボ−ドで滑降してきた者が滑降中のスキーヤーに衝突し、左下腿骨骨折の障害を負わせた事故につき、被害者には、後遺障害別等級表14級10号に該当する後遺障害が5年間継続すると認定し、470万円余の損害賠償を認めました。
登録 Feb 25, 1999
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