相続開始前の遺留分の放棄
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2024.11.2 mf相談
私は、息子と娘には、それぞれ、家を買い与え、息子と娘は裕福に暮らしています。
現在、妻と一緒に住んでいる家は全部妻に相続させたいと考え、遺言を書きました。
友人に聞きますと、子供たちには、遺留分があり、遺言どおりにならないと聞きました。そこで、娘と息子に遺留分を放棄させようと考えています。遺留分放棄は有効ですか。
回答
特定の遺産を特定の相続人に相続させるには、遺言が必要です。しかし、他の相続人には遺留分がありますので、完全に遺言通りになるとは限りません。そこで、遺留分放棄の制度を利用することになります。
遺留分放棄は、被相続人が生きている間と死後では手続きが違います。
- 被相続人が生きている間(相続開始前)
遺留分は放棄できるのですが、相続開始前は、家庭裁判所の許可がないと効力がありません(民法1043条1項)。
家庭裁判所は、次のような要件があるときに、許可をしています。
結局、遺留分放棄をしてもらうには、事前に遺留分相当の財産を与えておく必要があるのです(代償性)。しかし、例外として、疎遠であった父子の間で、相互に遺留分放棄をする場合、代償は不要とする判決もあります。
- 遺留分放棄をする者の自由な意思に基づくこと
- 遺留分放棄をした者が、遺留分相当の対価を得ていて、放棄しても公平であること
- 遺留分放棄に合理性(必要性・妥当性)があること
- 被相続人の死後(相続開始後)
被相続人の死後(相続開始後)は、家裁の許可は不要です。遺留分権利者が、遺留分権利者に、遺留分を放棄する意思表示をすればよいです。
判例
- 東京高等裁判所平成15年7月2日決定
両親の離婚後交流のなかった父を被相続人とする相続につき遺留分を放棄することの許可を求めた申立てを,申立人が遺留分放棄を相当とする合理的代償を受けていないことを理由に却下した原審判に対する即時抗告審において,本件申立ては,申立人の真意に出たものであると認められ,また,本件遺留分の放棄を許可することによって法定相続分制度の趣旨に反する不相当な結果をもたらす特段の事情も存在せず、かえって、申立人と父とは、父子としての交流がないことから互いに他方の相続について遺留分を放棄することとしたものである上,申立人が父に係る相続の遺留分を放棄することが,申立人の母と父との間の株式等の帰属の問題について調停による迅速な解決を導く一因となったのであるから,実質的な利益の観点からみても,申立人の遺留分放棄は不合理なものとはいえないとして,原審判を取り消し,申立てを許可した
登録 2010.9.21
東京都港区虎ノ門3丁目18-12-301(神谷町駅1分)弁護士河原崎法律事務所 03-3431-7161