刑事事件の被害者の意見陳述

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Last updated 2011.4.4mf

相談:犯罪被害者です

私の弟は、駅で、酔っ払いに殴り倒され、腕を骨折し、全治2ヶ月の重症を負いました。加害者は傷害罪で起訴されました。 加害者は、謝罪もせず、弁償もしておりません。
加害者を重く罰して、2度とこのような犯罪を行わないようにして戴きたいと思っています。この被害者の気持ちを裁判所に訴えることはできますか。
被害者の姉は弁護士事務所を訪ねました。

回答

日本の刑事事件では、警察や検察庁で被害者が述べた内容を聞いて書面にします(供述録取書)。被害者は、警察や検察庁で取調べを受けた際に、被害感情について尋ねられますから、「厳重に処罰して下さい」と述べればよいのです。 これは、伝聞証拠ですが、被告人が証拠にすることに同意する(刑訴法326条1項)と証拠能力が与えられます。被告人の同意がなくても、一定の信用できる状況があると、証拠に採用されます(刑訴法321条)。それ以外の場合、書面は証拠になりません(刑訴法320条)。被害者は、証人として法廷で犯罪の模様を証言することになります。
従って、被告人が、書面に同意すると、かっては、被害者は、法廷で証言する機会が与えられませんでした。

そこで、平成12年の刑事訴訟法改正により、被害者の意思を尊重する趣旨で、被害者が望めば、被害者は、法廷で意見陳述ができるようになりました。 被害者は、まず、検察官に対して意見陳述したい旨申し出ます。検察官は、その旨裁判所に伝えます。
検察官に意見陳述したい旨申出し、損害賠償も諦めずに、内容証明郵便 で請求をしておくとよいでしょう。

弁護人の立場

弁護人は、法廷で、被告人のために、尋問をし、弁論をします。最近は、被害者が、弁護人の尋問、弁論を聞いていて怒り、裁判が終わると、弁護人に食って掛かることが、時々、あります。
参考
犯罪被害者の権利

参考条文

刑事訴訟法第292条の2〔被害者等の意見の陳述〕
@ 裁判所は、被害者又はその法定代理人(被害者が死亡した場合においては、その配偶者、直系の親族又は兄弟姉妹。以下この条において「被害者等」という。)から、被害に関する心情その他の被告事件に関する意見の陳述の申出があるときは、公判期日において、その意見を陳述させるものとする。
A前項の規定による意見の陳述の申出は、あらかじめ、検察官にしなければならない。この場合において、検察官は、意見を付して、これを裁判所に通知するものとする。
B裁判長又は陪席の裁判官は、被害者等が意見を陳述した後、その趣旨を明確にするため、当該被害者等に質問することができる。
C訴訟関係人は、被害者等が意見を陳述した後、その趣旨を明確にするため、裁判長に告げて、当該被害者等に質問することができる。
D裁判長は、被害者等の意見の陳述又は訴訟関係人の被害者等に対する質問が既にした陳述若しくは質問と重複するとき、又は事件に関係のない事項にわたるときその他相当でないときは、これを制限することができる。
E第百五十七条の二、第百五十七条の三及び第百五十七条の四第一項の規定は、第一項の規定による意見の陳述について準用する。
F裁判所は、審理の状況その他の事情を考慮して、相当でないと認めるときは、意見の陳述に代え意見を記載した書面を提出させ、又は意見の陳述をさせないことができる。
G前項の規定により書面が提出された場合には、裁判長は、公判期日において、その旨を明らかにしなければならない。この場合において、裁判長は、相当と認めるときは、その書面を朗読し、又はその要旨を告げることができる。
H第一項の規定による陳述又は第七項の規定による書面は、犯罪事実の認定のための証拠とすることができない。
登録 2005.8.5