登録 2006.11.5弁護士河原崎弘刑事法の争点:事後強盗罪の問題点
事後強盗の未遂
このような判決が出た理由は、強盗傷人等の保護法益(人の身体の安全)が、財物の保護 法益より、大きくて重要と考えたからでしょう。 より大きくて重要な法益を基準にして構成要件の既遂、未遂を決めれば、そこに、小さな先行行為(窃盗)が含まれるからです。
- 事後強盗罪の既遂、未遂は、先行行為の窃盗の既遂、未遂によって決する(最高裁昭和24年7月9日判決) これが原則ですが、大きな犯罪の構成要件が重なる場合は、大きな犯罪の既遂、未遂が成立する。
- 強盗に着手した者が、被害者に暴行を加えて傷害の結果を生ぜしめたとき は、財物奪取の目的を遂げない場合でも、 強盗傷人の既遂の罪が成立します(最高裁昭和23年6月12日判決)
原則によれば、事後強盗の未遂です。- 事後強盗犯が殺人の故意をもって犯行したにもかかわらず、死亡結果が発生しなかった場合は、強盗殺人未遂罪が成立(大審院大正11年12月22日判決)。
事後強盗罪の予備
規定 身分犯 処罰可能か 処罰の必要性 最高裁昭54年11月19日決定
積極説強盗をもって論ずる 身分は誰でも取得可能 予備罪は着手前 銃砲刀剣類所持等取締法の対象とならない行為
を処罰できる消極説 予備罪の後に規定 窃盗犯との身分がない 窃盗の前段階は処罰不可
事後強盗の共犯
事後強盗罪は身分犯か
基本犯 身分犯 条文 判例 実行行為 不真正身分犯 暴行罪・脅迫罪 窃盗犯人との身分で刑が加重 65条2項 新潟地裁昭和42.12.5判決
東京地裁昭和60.3.19判決暴行、脅迫のみなら財物を取還されても既遂ではないか 真正身分犯 65条1項 大阪高等裁判62.7.17判決:傷害の限度でしか刑法60条を適用しなかった原判決を破棄 強盗致傷の共同正犯を認定 暴行、脅迫のみなら財物を取還されても既遂ではないか
承継的共同正犯説(結合犯説):窃盗は身分ではなく、実行行為の一部とする説
理由 事後強盗の共犯説 強盗の手段としての暴行であるので 暴行罪・脅迫罪説 因果的影響の不存在
承継的共同正犯説(結合犯説):一罪性、一体性(判例百選総論p108)
理由 肯定説 強盗の手段としての暴行であるので 構成要件上不可分の犯罪なら全体で共犯が成立 肯定説 強盗の手段としての暴行であるので 分割可能な包括一罪なら分割 否定説 行為共同説 加功していない先行者の行為に共犯は成立しない 否定説 因果的影響の不存在 因果性は将来に向かってのみ進行する