売掛金を貸金にする準消費貸借契約の場合の消滅時効

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2024.4.6mf
弁護士河原崎弘

相談:貸金に切替えた準消費貸借の場合の時効

当社は、衣料品販売の仕事(婦人服の卸)をしています。当社が、顧客の会社(衣料品の小売業)に販売した代金が、滞り、260万円にもなってしまいました。当社は、新規の販売を止め、顧客の要望で、売掛金は貸金に切替え、月額10万円の分割で支払ってもらうことになりました。
ところが、最近、この分割金の支払いが滞りだしました。この2年間ほど支払いがありません。
商品の売買代金は2年間で消滅時効にかかると聞きましたが、当社の債権も時効消滅しているのでしょうか。

弁護士の回答:貸金として時効期間を計算する

滞納している売掛金を、債務者が一括して支払えず、分割払いにするには、債務弁済契約書 にする場合と 準消費貸借契約書にする場合があります。前者は、単に分割払いにする場合、後者は、貸金に切り替える場合です。

債務弁済契約にする場合は、新債権(債務)と旧債権(債務)の法的性質は、同じですので、消滅時効期間に変化はありません。ただし、時効の進行時期は変わります。
他方、準消費貸借契約書にした場合は、売買代金債権が貸金債権に変化します。
債務弁済契約と準消費貸借契約の違いの表
旧債権分割払い契約新債権債権の性質
売買代金債権
2年
債務弁済契約 売買代金債権
2年
変らず
準消費貸借契約 貸金債権
5年
変化する

準消費貸借契約の場合

契約を変えた時期がいつであるかによって、適用する法律が新法か、旧法かの違いがあります。                                      

改正民法施行前(2020年3月31日以前)
売買代金債権で消滅時効期間が2年であったのに、貸金債権になったので、消滅時効期間は5年となります(事業者=商人の場合、旧商法522条)
相談者の場合は、準消費貸借にしたのですから、債権の時効は5年に延びています。

改正民法施行後(2020年4月1日以後)
売買代金債権で消滅時効期間が2年であったのに、貸金債権になったので、消滅時効期間は5年となります(民法166条1項)。商事債務の規定は廃止されたので、債務弁済契約にした場合と貸金にした場合に違いはありません。

判決

登録 2009.12.27
(虎ノ門 弁護士河原崎弘)