相談
不動産業者に一戸建てを紹介され、買い受ける契約を締結しました。代金4000万円のうち、3000万円を金融機関からの借り入れをすることにしました。頭金は1000万円(手付けは800万円)です。契約書にはローン条項を入れ、「契約日から2月以内にローンの全部または一部の証人が得られない場合は、本件売買契約は自動的に解除となる」と書いてあり、さらに、「融資申込み先:都市銀行他」と書いてあります。
都市銀行に融資申込みをしたところ、融資の承認は得られませんでした。そこで、仲介業者は、ノンバンクを紹介してくれました。ノンバンクは、金利が高いので、私が嫌がったところ、仲介業者は、「ノンバンクなら融資してくれる。ノンバンクに申込みをしないと、ローン条項が効かなくなる」と言うのです。私は、仕方なく、申込みをしましたが、やはり、嫌なので、必要書類を提出しませんでした。
売主も、不動産業者も、「ローンの申込みをしながら、必要な書類を提出しなかったために、融資が承認されなかったのだから、契約は生きており、ローン条項による解除にはならない。従って、頭金は返せない」と言うのです。
この場合ローン条項に基づいて、売買契約解除とならないでしょうか。
相談者は、弁護士事務所を訪れました。
弁護士の回答
不動産売買 契約書にローン条項
が入っていれば、融資がされない場合には、契約は自動的に解除されるか、買主は契約を解除できます。その場合、解除をした当事者が債務不履行責任(賠償責任)を負うことはありません。
しかし、これはローンの申込者が借入できるように誠実に努力した結果、借入ができなかった場合です。融資申込み書類を提出しなかったり、源泉徴収票など必要な書類を提出しなかったりして、融資が実行されないようにしたり、あなたの側の人間が融資の実行を妨害した場合は、それは買主の責任です。
あなたの場合は、ローン条項の中に書いてある「都市銀行他」とは、「都市銀行、あるいは、それに類する銀行」の意味で、ノンバンクは含まれていません。都市銀行からの融資が承認されない場合は、契約は自動的に解除されます。
ノンバンクは、都市銀行より金利も高く、融資条件は銀行より厳しいです。従って、ノンバンクは、都市銀行とは違うと言えます。あなたの場合、ノンバンクなどの融資申込み手続きを完了しなかったことは問題にならないでしょう。そのような趣旨の判例を下に掲げます。あなたは、契約が自動的に終了したと主張し、従って、頭金を返してくれと要求できます。
ローン条項中にこのような金融機関の指定がなくとも、結論は同じでしょう。
判例
- 東京地裁平成16年7月30日判決(出典:判例時報1887号55頁)
本件売買契約第18条によれば、平成13年5月31日までに「都市銀行他」から4000万円の融資の全部又は一部について承
認が得られない場合には本件売買契約は自動的に解除になり(同条第2項)、被告らは、受領済みの金員を無利息で遅滞なく返還しなければならない(同条第3項)とこ
ろ、原告らは、同日までに東京三菱銀行、富士銀行、三和銀行、芝信用金庫等の「都市銀行他」に対して融資の打診を行ったが、4000万円の融資希望額の一部につき
承認が得られなかった。
<<中略>>
以上の点を総合すると、都市銀行からの4000万円の融資は無理であり、都市銀行に比べ金利の高いノンバンクであるライフ住宅ローンから融資を受けるほかないこ
とを本件売買契約締結以前に原告らに説明したとする藤野の上記供述等は信用できず、これ以外に、原告らが、本件売買契約の締結に当たり、都市銀行に比べ金利の高い
ノンバンクから融資を受けるほかないことを了承していたと認めるに足りる証拠はない。
以上に認定判断したところに加え、「都市銀行他」という文言は、都市銀行及び
それに類する金融機関を意味するものと解するのが自然であることを併せ考慮すると、ノンバンクであるライフ住宅ローンは、本件売買契約第18条の「都市銀行他」に
含まれないと認めるのが相当である。
したがって、原告らがライフ住宅ローンからの融資の申込みのための必要書類を提出せず、また、ライフ住宅ローンに提出した書類
の返却を受けたことは、何ら本件売買契約第18条第4項に違反するものではないというべきである。
*この判決は、ローン条項による契約の自動解除を認めました。
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