黄金バット オープニング・テーマ

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 曲名:黄金バットの歌
 作詞:第一動画
 作曲:田中正史
 唄 :ヴォーカル・ショップ

 黄金バットの主題歌は、1966年12月公開の東映映画『黄金バット』用に作成された。そのまま翌1967年のアニメ版でもスライドして使用されており、耳に残る高笑いから始まるメロディーには誰しも聴き覚えがあるだろう。ではその秀逸な歌詞をテキストにして、バットの世界観を推察して見よう。


〈1番〉

 

「わはははははははは(高笑い)」

冒頭から飛ばしに飛ばす黄金バット。

黄金バット
どこ、どこ どこからくるのか
黄金バット

 歌い手は黄金バットがどこに住み、どんな暮らしをしているのかを知らない。しかし取り立てて深く追求したいわけでもないのは、続くフレーズで話題がころっと変わることから察せられる。

かがやくドクロは正義の味方

 輝く髑髏はあくまでもバットを例えて呼んだもので、髑髏が輝いてさえいれば誰でも正義というわけではない。無論、古い骸の頭部が深夜に燐光を発していたとしても、それをもって正義の味方と断定するのは避けたいものだ。

ヒューッと風切るシルバーバトン

 颯爽としたバットの勇姿を髣髴とさせながら、彼が劇中でしばしば「威力を見よ!」と自慢するシルバーバトンの存在を明らかにした、解説的な歌詞である。

うちゅうの かいぶつ やっつけろ

 早くも歌い手は応援モードに入った。宇宙の怪物にバットをけしかける。「宇宙の怪物」が科学者ナゾーを指すのかどうかには言及されていないところから、ここでは広く一般に宇宙からの脅威に対してバットけしかけているのだろう。

どこ、どこ どこからくるのか
黄金バット

 けしかけるだけけしかけておいて、歌い手はまたも話題を転換する。本当にどこから来るのかを知りたいのだろうか。

こうもり だけが 知っている

 こうもりだけが知っていることを知っているなら、こうもりに聞け。


〈2番〉
黄金バット
どこ、どこ どこからくるのか
黄金バット

 どうやら本気で知りたいわけでもないのにとりあえず繰り返してみせる歌い手だ。

ひみつのマントは正義のしるし

 秘密のマントというものはよくわからない存在だ。マントそのものは白日の下に晒されているため、今更秘密でもないだろう。しかも正義のしるしなのだから、人々に対して秘密にしていては、正義だと認識してもらえずに、バットが辛い思いをすることになろう。とすると、その性能に秘密があると見るのが妥当だ。どのような秘密があるのかは、秘密なので明らかにされていない。

サーッと空とぶマッハのちから

 マッハで飛ぶ乗り物を造り上げるために、何名の尊い人命が失われたことだろう。しかしバットは、サーッと飛ぶ。まるで苦労の感じられない飛び方だ。とはいえここで真に重要なのはバットの飛び方ではない。バットはマッハの速度で空を飛んでいるのではなく、マッハの力に頼って空を飛んでいる、ということだ。どうやらバットが飛翔する力の源になる未知のエネルギーは、現地語(どこだよ)でマッハと呼ばれているのであろうことに気付かされるのだ。

地球の平和をたのんだぞ

 正義のしるしだ、マッハの力だとおだてておいて、自分の住む星の平和を全面的に頼んでしまう歌い手。任せたぞ、と。後はよろしく、と。ではお先に失礼、と。バットに地球の平和を頼んだ歌い手は、太陽もまだ高いうちから酒でも飲みに行って、今頃はすっかりご機嫌さんに違いない。

どこ、どこ どこからくるのか
黄金バット

 頼むだけ頼んだ歌い手は、さっと身を引くのだ。

こうもり だけが 知っている

 自分も知ろうという気など、毛ほどもない。

「わはははははははは(高笑い)」

 どんな気持ちで歌を聴いていたのか、ただひたすら笑い続けるバットだ。

 

 以上が主題歌の歌詞のすべてだ。黄金バットの世界をわずかでも垣間見ていただけただろうか。アニメ『黄金バット』という作品の基本的な図式は、漏らさずこれらの歌詞のなかに現わされている。全52話もかけて語る必要もないくらいだ。最後に簡単にまとめておこう。

まとめ

「宇宙の怪物から地球の平和を守るため、うちの組には強〜いお兄いさんが付いてくださってるんでぇ。さ、バットさん、よろしくおねげえしやすぜ。じゃ、あっしたちはこれで。ずずいっと現われた大男は輝く髑髏の代紋をちらつかせながら、鉄パイプ片手に大暴れ。しかもスピードだかマッハだか知らないが、ちょっとラリった感じで陽気に笑いながら凶器を振り回す。恐い。絶対に恐い。正義の味方、黄金バット。」(以下自粛)