「京都の地名」(1997/05/22、06/17〜06/23号)
某所でこんな問い合わせ(?)がありました。
・・・
誰か私に京都市市内の地名の法則を教えて下さい!!
タウンページから住所を拾い出す作業をしているのですが、タウンページの
住所記載が「〜町」「〜通」「〜筋」などを省いていることから、正確な住所
が拾い出せなくなってしまいました(涙)。
他の都市ならそれでも良かったのですよ。スーパーマップル巻末の町名索引
で補完出来ましたから(笑)。
ところが、京都市市内の地名は「東西&南北の通」の組み合わせに「上ル・
下ル・入ル」が混じってくるので、ややこしくて仕方ないんですよね(涙)。
町名索引に記載のない住所(?)はバンバン出てくるし(泣)。
例1.左京区丸太町川端東東丸太41(原文ママ)
例2.中京区寺町姉小路上下本能寺前511(原文ママ)
例1では「丸太町」と「川端」が通の名前だと判ります。
「東丸太町」も確認出来ました。
では、真ん中に挟まれた「東」はなに?(笑) 「東入ル」と補完しても構
わないのでしょうか?
「東東」で一瞬惑わされるものの、まだ判り易いような気がします(笑)。
例2では「寺町」と「姉小路」が通の名前。でも、東西と南北は、どちらを
先に書いても構わないのか? ってのが謎ですね(笑)。
んじゃ、次の「上」は「上ル」かな?
では「下本能寺前町」は・・・存在しない(泣)。「上本能寺前町」と「下
本能寺町」は確認出来たのですけど(苦笑)。
という具合です。
住所の場所は実際に尋ねてみたいと思っていますので、地図上で確認出来な
いってのはキツいのですよ(泣)。
ご助力お願いします!!
・・・
ということです。確かに京都の地名はよくわからん部分もありますな。
もしご存知の方がいればお願いします。
・・・
前回ちょっと書きました、京都の地名の付け方に付いて、
読者の方から情報をいただきましたので掲載します。
なお、掲載に際しまして若干編集してあります。
ありがとうございました。
・・・
読者の中の唯一の京都在住人として、何らかの回答を出さないわけにはいかないで
しょう。ただ、わたくしも、京都に住んでまだ長くないので、問題即解決パチパチパチ
的な、ご満足いただける回答ではないことをご了承くださいませ。しかも、以下には
私見も混ざっているので、すべてをそのまま信じないように。
そもそも、京都という町は古い。誰が何といおうと古い。特に、中京区・下京区など
は、戦前(まさか応任の乱じゃないが。)からの町並みが残っており、路地は狭いし、
町名も古い。区画整理つまり町レベルの統廃合がおこなわれていないため、昔からの、
小さい町単位がそのまま使用されている。しかも、そういう古い町名は、比較的長い
名前が多い。
わたくしが、調べた例をあげると、西は堀川通り・東は烏丸通り・北は丸太町通り・
南は御池通りの長方形区域(約800m x 約700m)の中に、約70の町が存在した。
(中京区のど真ん中で、最も町がひしめいているところの一つ)平均すると、90m
四方に1町の割合である。某社の近辺でいうところの、平野町○丁目に対してそれぞれ
ユニークな名前が付いているという具合だろう。
しかし、これはあくまでも平均であって、小さい町になると数軒で1町というところも
ある。また、町の区切りかたも、平野町○丁目のように道路できれいに区切られている
わけでなく、変に入り組んでいる町も多い。
上述した 800m x 700m のような区域は、ご存知の通り京都にはいくらでもあるから、
その町名たるや膨大な数になることは容易に想像できるだろう。
ちなみに、左京区や西京区・北区などは、戦後の区画整理地も多く、町名も前者に比べ
ると、かなり分かりやすいのだが・・・。(北大路通りから北は、ほとんど戦後開けた
ところだそうだ。)
・・・編集長補足
京都の堀川通を北上すると、途中までは京都市内の道としてはかなり広いが
その先は狭くなっている。
これは、第二次大戦末期、本土決戦が叫ばれた時に京都(=二条城、御所)を
守るために戦車を通すために道路を拡張したのである。
京都には、一部にこのような改造された部分があるが、おおよそ、昔の通りの
筋が残っているようである。
・・・
想像するに「町名が多すぎて、しかも似た名前も多く、入り組みも激しく、どこにある
のか容易に覚えられない」「幸いなことに道路は碁盤の目になっている」ことから、
万人にも容易に分かるように、交差点を基点に「上ガル・西入ル」という簡易表記が
考えられたのだろう。非常に合理的である。
(注;よって、町名が入り組んでいない、北白川等では、「上ル・西入ル」等の表記は
しないのだ。)
したがって、通りの名前と順番さえ覚えれば、住所を見ただけで、地図無しに目的地の
近くにはたどり着くことができるのだ。ここまでは、非常に便利である。(通りの名前
は、唄で覚えましょう。すなわち、「丸竹夷二押御池・・・」だ。)
しかし、その先たる実際の目的地には、時と場合によっては苦労することもある。
大きい建物など目に付きやすい目的物なら、問題ないのだが・・。でない場合には、
やはり、地図が必要だろう。または、近くの人に尋ねるか。
さて、地図である。例のスーパーマップルでは駄目である。これは、そもそもドライヴ
用に編集されているため、上記のような細かい町名記載はない。索引を見ても当然無視
されている。
一番良いのは、不動産屋で使っている住居地図だが、値段が非常に高く一般向けでは
ない(マニアにはおすすめっ!)。購入するとすれば、京都市のみの区分地図がよい。
細かい町名も載っている。しかしっ・・・町名索引については、地図によって対応が
バラバラである。
例えば、北白川地区には、追分町のほか伊織町・小倉町・別当町などなどたくさんの
町名がある。では、ある地図帳の町名索引で北白川別当町を調べてみよう。北白川は
見つけられるはずである。しかし、その先がない。つまり、大きな親分・北白川は索引
に載っているが、その子分・別当町は省略されているのである。限られた紙面に、膨大
な量の町名を載せることができないのであろう。区分地図でさえ、この状況である。
いわんやスーパーマップルをや。購入の際は、書店でのチェックが不可欠だ。
・・・編集長追記
こういう時、市役所(京都なら区役所か)のそれらしい部署に行って「この地域の地図
をください」と言えば売ってくれる、はずである。土建関係の友人がそういう風に入手
していた。どこの部署かは聞き忘れたが(土木課だろうか?)。
また、大阪旭屋の上の方の階の地図売り場には、主要都市の1/25000等の白地図
が売れている。それほど高くないのでお勧めである。大きいので、持って帰るのが
難しいが。(買ったことがあるのだ!なぜ買ったかは忘れたけど。)
・・・
タウンページは住所記載欄が限られているので、どうしても短く表現せざるを得ない。
不動産広告の「洋10・6和6・6日良駅近買便」みたいなもんだ。よって、タウン
ページから住所を探し出すのは、二重の手間である。従って、まず類推して住所を省略
のない形にもどす。そして、京都市の詳細区分地図で見つける。
こんなことをするより、タウンページに記載されている電話番号に電話して、道順を
聞くほうがはやい。実際、そうしている。地図で分かったとしても、前の道が一方通行
で、大回りをしなければならなかったり、最悪、自動車の通行不可だったり。あるい
は、車でなかったとしても、地図に載っていないような狭い路地を入らねばならなかっ
たり、大きい建物の陰になっていて、なかなか発見できなかったり・・・。
事前に、電話で聞いておけば、その辺の細かい状況も分かるし、迷うことも少ない。
ちなみに南北と東西の通りを、どちらを先に言うか、という問題であるが、「東入ル・
西入ルを使うときは、東西の通りを」、「上ル・下ルを使うときは、南北の通りを」先
にいうことになっている。
烏丸(からすま)通り(南北)と今出川通り(東西)を例に取ろう。
1、烏丸通今出川上ル
2、今出川通烏丸西入ル
となる。
つまり、1のパターンであれば、目標物件は烏丸に面しているが、南北に長い烏丸の
どこなのか?それは、烏丸のうち、今出川が交差している所の上(つまり北)なのです
よ。と、言っている訳だ。
同様に、2のパターンであれば、目的地は今出川沿いにある。では、東西に伸びる
今出川のどこなのか・・・。烏丸通りとの交差点の西側なのだ。というわけです。
さらに細かいことをいうと、通りの組み合わせのうち最初に表示する通り名には、
「通」をつけることが多いようだ(例、1・2参照)。両方に「通」をつけたのは、
見たことがない。両方につけていない場合は多々あるが。
・・・
さてさて、お待たせいたしました。最後に、最初の質問の例1/2に対する解答を
載せておきましょう。
まず、例1。ご推察の通り、左京区丸太町通川端東入る東丸太町41(原文・左京区
丸太町川端東東丸太41)で、正解です。「東入る」と補完して下さい。
次に、例2。中京区寺町通姉小路上がる下本能寺前町511(原文・中京区寺町姉小路
上下本能寺前511)が、正解です。
下本能寺前町は存在しない、と言って泣いておられますが、わたくしが地図で確認した
ところ、立派に存在しておりました。おそらく、質問された方の地図がまちがっていた
のでしょう。町名がややこしすぎて、地図作成会社さえも間違ったのでしょうか。
あるいは、地図作成会社が、単にどんくさいだけなのか・・・。
ちなみに、これらの例も、上述した「どちらの通りを先に言うか」の法則に
あてはまっているでしょう。
というわけで、以上くどくどと書きましたが、ご理解の一助となれば幸いです。
さようなら。
・・・
いやいや、実にわかりやすい解釈を送っていただきましたありがとうございます。
このお礼は、感謝の気持ちでかえさせていただきます(それだけかい!)。
ところで、例の源氏物語にも京都の地名が出てきます。
先に書いた通り、人名が地名で呼ばれている部分も多いので、
京都の地名を覚えておくのは、それを読むためにも重要です。
ちなみに主人公光源氏は後に準太上天皇というものに推挙されて、
当時六条に屋敷を持っていたので六条院と呼ばれるようになっています。
京都ではないですが、明石の上とかいうのも地名です。
他、二条の館、三条の館というのもでてきます。
一度、この知識をもとに京都を散策するのも良いでしょう。