「トヨタとダイハツ」(2000/06/14〜06/28号)
実は書き上げてからもう半年以上経つので古くなってしまったんだけど、
棄てるのももったいないので公開。
「古い」というのを前提に読まれるように。

    ・・・

実は・・・。

トヨタのマークとダイハツのマークと日野のマークは
その曲率が同じ。みんな丸い。

グループ会社だから、といえばそれまでだけど、
実は、マークのはめ換えが出来るという利点がある。
だから、ダイハツのストーリアがトヨタで「デュエット」として
売られているという事実があるのであった。
最近はテリオスもトヨタで売っていると思うが、名前は忘れた。

ダイハツの販売店からは「折角売れてきたところをトヨタに取られた」
という文句もあるようだが、事実上トヨタはダイハツの親会社だからしかたない。

去年トヨタがダイハツの50%株を取得した。
これが大ニュースになったが、実際には前から株を持っていたし、
社長もほとんどトヨタ出身者だったのである。
その実状を知っている人間にとっては「何を今更」であった。

今は小型車が売れる時代だから、
それを持っていないトヨタは苦戦している分けで、
そういう時にダイハツに増資するのはいろいろと意味があるわけですな。

でも、ダイハツの合併するということはないと思うけど。
いえ、本体が大きくなるということはリスクも大きいからね。

    ・・・

もう1つ、トヨタがダイハツに増資した理由は、中国市場がある。
実はトヨタは中国から嫌われている。
以前中国からトヨタへ「中国へ進出してくれないか」という打診があったとき、
それを断っていたからである。

ダイハツは中国では一応知られたメーカーである。
シャレードは中国で一番売れている車なのである(勿論現地での車名は違う)。
中国からダイハツへ技術者の研修もくる位である。
ダイハツは中国から好かれている。

中国の車市場は、今や世界中が狙うところであるが、
昔の事情があるため、トヨタはそれを表だって狙えないのである。
(中国側が許さない。)
そこで、ダイハツを通して何とかしようと思っているのである。
事実、そのシャレードに乗せるエンジンの一部をトヨタ製にしていくのである。

    ・・・逆側の話・・・

ダイハツ側もトヨタが親会社だからといって別にそれに甘んじているだけではない。
トヨタグループの会社の中では、ダイハツはかなり良い位置を占めている。

    ダイハツ
    日野自動車
    関東自動車
    アイシン精機(だったっけ?)
    自動織機
    (デンソーは車は作ってませんし、今は立派な独立会社です)
    他

これらトヨタグループの中では、トヨタの車の製造や設計などを一部またはほぼ全体を
請け負うこともあるだが、ダイハツは売れる車種を担当している。
カローラ(ワゴンかな?)やタウンエース・ノアはダイハツ担当であるし、
実際のノアなんてダイハツのデルタワイドと全く同じである。

ダイハツがこのように良い位置を占められているのには、その技術力が
トヨタに買われているからである。

実際のところ、トヨタにはそんなに先進的な技術開発力はない。
技術力で見れば、日産や本田やマツダの方がよほど優れているのであるが、
ある程度の技術をうまく組み合わせて「売れる商品」として企画していく力で見れば
トヨタがピカ一なのである。

    ・・・

エンジンにしても、実はヤマハ製やダイハツ製のものが多い。
昔のトヨタの車のツインカムというタイプのエンジンのほとんどはヤマハ製だった。
(ただし、真っ当なツインカムのみで、ハイメカ・ツインカムというのは別。)
ということは、ダイハツにしてみれば良いものを作ったらトヨタに買ってもらえる
わけで、自社の車に載せて売ろうとすると車体の設計などもかかれば営業への投資も
必要だが、部品だけの投入で済めば、それはそれで儲けになるのでいいわけである。

ここだけの話、トヨタの最近出た新車種「Vits」は同社のスターレットの
後継車種だが、これの1000ccのエンジンはダイハツ製である。
ダイハツが同じエンジンを積んだ車種を、例えばシャレード等で出したとしても
売れる数は知れているが(失礼)、トヨタの車種なら桁違いに売れるのである。

・・・が、お蔭で、多分、ダイハツはシャレードを止めなければならなくなると
思うけど。

そうそう、トヨタの技術力なしの逸話とすれば、他社が開発した先進的技術の特許に
関して、お金の力でその多くの利用権を獲得する、というのも聞いたことがある。
マツダの開発したロータリーエンジン、本田の開発した希薄燃焼エンジン(CVCC)
、三菱の開発したガソリン・ダイレクト・インジェクション(GDI)の技術も
多分お金で解決しているはずである。

    ・・・

トヨタの車づくりは堅実で、事実物は良いが(だからこそ売れる)、
中国進出で判断を誤ったり、RVブームに乗り遅れたり、
以外と先を読むのは苦手としているようである。
それでも何とかなるのは後々なんとかしてくる力、
お金と支配力を持っているからである。
ある意味すごいと言えばすごい。

支配と言えば、こういう話もある。
トヨタがダイハツの株を過半数取得したときスズキの社長が、

    「車はお金で買えても、人の心は金では買えぬ」

と暗に株取得を批判していたらしい。

欧米のメーカーはオペルはGM100%出資だしイタリアのメーカーは全て
フィアット資本となっているにもかかわらず非常に独自的な車造りをしている。
そこに監視は必要以上はない。

一方、ダイハツを始め日野自動車、関東自動車工業などトヨタグループは、
トヨタの監視がきついので、お伺いを立てなければならない。
さらに、トヨタの車の一部はグループ会社で作られているが、
その配分はトヨタの言いなりである。
(その中で、ダイハツは割といいところをもらっているらしい。)
その点でトヨタは支配的で非常に土量が狭いような気がする。
もっと、自由に作らせて良い物を吸い上げればいいのに。

    ・・・

トヨタは世界的大企業である。
しかし、きわめて支配的な体質を持った企業でもあり、
今まではその支配力で成り立ってきている。
奇しくも今世界は小会社化の方向から大会社化への方向へ向かっている。
そういう中でこのトヨタ型支配も世界相手にやって行けるかどうか見物である。

ガソリンエンジンの時代から他の物を燃料とするエンジンへの転換期を向かえる今は、
自動車業界そのものの存亡がかかっている時代だといっても良い。
その21世紀、果たしてトヨタはどのように変わっていくのか。
ダイハツの運命はいかに。
その場しのぎ的車作りの日産はどうか。
フォードに完全買収されそうなマツダの運命はいかに。
これからの自動車業界の動向にはおもしろいものがありそうである。

    ・・・

等と書いていたら、その後日産とダイムラー・クライスラーの提携するか?
の話が伝わり、それがご破算になって、その後ルノーとの提携となった。

日産の今までの車作り、宣伝などを見ているとちょっと分を越えている
と思うところが有った。そのつけが来たのであろうが、
はたしてその提携でどうなるか。
マツダと同じ運命を歩むか。

こちらの動向も目が離せない。

    ・・・終わり・・・

ということで、古いネタでした。
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