「MKタクシーの怪」(2002/10/14号)
京都と言えばMKタクシーが有名である。
元々は南桂タクシーと言ったらしいが、今や京都だけでなく
名古屋、大阪、神戸、東京でも営業し、タクシーの価格破壊の
旗手とされている。

実際、京都ではMKの料金(10%安い)より高いタクシーの稼働率は低く、
ごく最近には今まで値下げしてなかった会社までもとうとう下げ始めてきた。
MK効果が出てきているといえるだろう。

MKの料金は、初乗りが安いだけでなく、
それまで必要とされてきた呼んだときの割増料金もなしにしたことが
目新しかった。
(未だ大阪のタクシーはこれがあるので、非常に高くなる。)
このおかげでMKは呼び出しのリピートが多く、
町中の流しの率が低いのだそうだ。
(事実私もよく使っている。)
これについては多くの会社がそうしてきている。

そのほか、禁煙タクシー、一定以上の接客態度など
MKタクシーの起こした改革は大きい。
(乗り合いではあるが、伊丹や関空まで3000円程度で行けるものを
設定したのもMKが最初かも。乗ったことがないので詳細は不明だが。)

特に接客については特筆すべきで、それまでの
タクシーの運転手=強面+ぶっきらぼうというイメージを一新した。
そのおかげで京都のタクシーの全体の質が上がったと言っても過言ではない。
会社の好印象調査で、1位JR、2位阪急に続いて3位MKが入っていること
でもわかる。今までならタクシー会社がこう言うので好印象に入るなど
考えられなかったことだ。
こと京都のタクシーにおいては「安かろう良かろう」なのである。

・・・と、以前なら手放してMKのことをほめたのであるが、
最近は事情が変わってきた。いや、MKの態度が変わったのではない。
MKの真実を知ってしまったので、MKに対する私の考え方が変わったのである。

    ・・・

2002年5月は3週連続出張であった。
このときの荷物がかなり多いため、うちから駅までの間はいつも
タクシーを呼んでいた。行きはMK、帰りは駅前で拾うわけである。

ある週の帰り、とある個人タクシーに乗ったら、この運ちゃんが
まあとてもMKの悪口を言うので、それとはなしに聞いていた。
いくつかの点では同意できないが、いくつかの面では
確かにそうである、という証拠も得た。

***「MK、アオイ、都グループの運転手は素人である」***

「インスタントラーメン運転手」=即席であると。
(後でよく考えたら、「ラーメン」は不要だわな。インスタントだけで「即席」だから。)
MKの運転手には大学卒すぐとか出稼ぎの人が多い。
だから、運転がへたくそで怖いという。
車線をまたいで走ることがしょっちゅうだそうな。

このときのタクシーの運ちゃんはこの道何十年のプロ
(個人タクシーに成れる人はこういう人だけだけど)であったが、
MKの運転手は大学卒業すぐとか、地方からの出稼ぎの人も多いらしい。
このため、運転が下手でかつ道を知らないので、よく事故を起こしたり
遠回りをしたりするとのことであった。

運転がうまい下手の基準は、「大阪人は運転は荒いがうまい」というのも
あって、端で見ているのと実際に乗ってみて与えられるプレッシャーの
量は違うのだが、私に言わせればこのときの運ちゃんの運転の方が
怖かった。技量的には確かにうまい。でも客に恐怖を与えてまでの
うまさは、自己満足にすぎない。
(だからといって下手でいいというわけではないけど。)

でも道を知らないに関しては確かにそうだと思う節はある。
MKに乗ってどこそこに行ってくれと言うと、
どの道から行こうか、と聞かれることがたまにある。
そんなのは客に聞くことじゃない。客の望むのは、一番安く早く着く道に
決まっている。こういう点では確かに素人であるといえる。

この人曰く、最低でもトラックで10万キロ以上走って、大阪・京都あたりの
道はすべて暗記してもらわんと、タクシー運転手やってもらっては困る、
ということであったが、
そんなこと言ってたらほとんどの運ちゃんがだめじゃないすか。

タクシー運転手を大学卒の人間の職業にしたい、というのがMKの
方針の1つにあるそうだが、まあ、少しは研修してほしいと思うが、
そういう方針自体は悪くないと思う。

接客に関しては、MKは抜群に良い。
これに比べて高い(といっても本来は普通料金)のタクシーの運転手には
高飛車というか威圧的な人も多い。

客がタクシーの善し悪しを決めるポイントは、料金ではなく接客態度だ。
(選ぶポイントは料金かもしれないけど。)
料金は走ってみなければ結果がわからないが、態度は一目でわかるからだ。
接客態度だけは素人でもある程度教えればできる。
逆に素人だからできるのかもしれない。
プロの運転手は、客が求めているのが己の運転技術ではなく
安心して気持ちよく目的地まで行けることだと言うことを忘れてはならない。

***「MKの料金は実は安くない」***

このときの運ちゃん曰く、「MKタクシーはタイヤの空気抜いているから
同じ距離走っても回転数が多く値段が高くなる」ということであった。

今までなかなか料金の履歴などはとれなかったが、今回の出張では
後で会社に請求するためにすべて領収書をとっていたので、
この裏付けがとれた。
結果は「確かに高い」である。

空気圧を抜いているかどうかは定かではないが、料金が高いことだけは
間違いない事実である。私の家から駅までは、
MKでおおかた1220円(最大で1310円)なのだが、
実はこのときのタクシーでは実に1050円(このタクシーも
12%安であった)、通常料金のタクシーでも1150円、
10時過ぎの2割増料金時でも1220円となった。
そう、MKは初乗りは安いが、それ以降の上がり方が早いのだ。

本来、タクシーのメーターの上がり方は法律で決められているはずなので
勝手に変えてはならない。事実、メーターの上がり方は検量所で
調べられている。
にもかかわらず、上がりが早いと言うことは、検量後に何かしらの
細工をしているとしか考えられない。
一番手っ取り早くわかりにくいのはメーターへの細工ではなく
タイヤの空気圧減らしである。

また、信号の癖を知らないから不要に飛ばして信号を赤にさせ、
結果止まる時間が増えて料金が上がるというのもあるようだ。
京都市内の幹線道路の信号は速度検知付きの連動式だ。
だから、1台が異常に飛ばすと全部赤になってしまう。
事実、MKではよく引っかかる。
このときの運ちゃんのスピードは、MKに比べると確かにゆっくりにも感じたが、l
信号での止まりは少なかった。

そのほか、「MKの運転手は何万円もする制服をまず買わされる」とか
「値段の安さは給料の安さにつながっている」とか
MKの公言するきれい事の裏に汚いもうけ方針があるとか、
まあいろいろと言っていたが、一番は
「マスコミはMKのきれい事ばかり取り上げて、汚い部分を見ようとしない
(事実に対して耳を傾けない」と言うことに対する不満のようであった。

・・・2003/08/25補足

ここ最近、数回乗ったMKは軒並み料金が上記料金より安かった。
(まあ、それで他と同じ程度なのだが。)
不正がばれたのだろうか。


    ・・・

***「京都人の運転が日本で一番荒い」***

これはMKに対する話ではないが、
京都は都だったので、住んでいる人間も自己中心的な人間が多いのだそうだ。
いや「周りがやるのが当たり前」と言う感じか。
確かに路上駐車はむちゃくちゃだし、運転も下手に思う。

大阪人は運転は荒いが技量はある。
京都人は運転も荒いが技量もない。
狭い道の交差点で一旦停止しない連中も確かに多い。
それなのに車は多い。

京都に住んでからは車に乗ってないが、自分で運転したくない町ではある。

    ・・・

MKは確かにタクシー業界の革命児的扱いを受けているが、
どうも裏の顔というかしたたかさもありそうである。

安いから盲目的に選ぶいうのではなく、他のタクシーも乗り比べ、
1メーターではなくある程度の距離を走る場合には、どこが一番なのかを
知る必要がありそうである。
私の調べた限りでは、ある程度走るときにおいて、一番安いのは
「市個人(12%安)」のタクシーのようで、全体的には

    市個人(12%安)>普通料金タクシー>MKグループ

という感じである。

とはいえ、料金的に倍も差が出るわけではないので、
やはりイメージで選んでしまうことは多いのではなかろうか、
などと思うわけである。
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