「薬付けの秘密を暴く」(1993/05/14)
最近、某所から薬品の価格にまつわるいろいろな話を聞いています。
その中には一般の人が知っておくといい話もあります。

「いい話」といいましたが、実は悪い話です。
なぜ医者が儲かる(儲かった)のかを暴いていきます。

先に薬の流通網に付いて簡単に説明します。
薬の業界ではメーカーは直接販売することはなく必ず卸におろします。
卸が医者に売り、医者は患者に売るわけです。

ご存知かも知れませんが、病院でしか処方もらえないような薬(Ethical:
エチカルという)の患者に対する販売価格は厚生省が決める薬価基準というもので
決められており値引きなどは出来ません。

この価格自体は決して安いものではありませんが、一般の人は
保険によって、その価格の1割から3割までしか負担しないため
高い薬なのか、安いものなのかという認識が出来にくくなっています。

メーカーが卸しにおろす価格はメーカーが決めるのはあたりまえです。
一方、卸から病院に入る価格は本来卸が決めるものなのですが
(今はそうなっている)、以前はこの価格もメーカーと医者が結託して
決めていました。

エチカルの薬品の選択権は患者ではなく医者にあるため医者の力が非常に強く、
メーカーも医者に自社の製品をより多く買って(選んで)もらうためには
医者のいいようにしなければならなかったのです。
(医者の言葉は絶対であるということによるMR:メーカーの薬宣伝人の
悲話は山のようにあるそうです。)

もちろんこれでは公正な取引は出来ない状態です。
このような状態では、卸からの価格を出来るだけ安くすることで
医者はその差益(薬価差)を懐に入れていたわけです。
このため卸は医者へ卸す価格からは利益が出ないのでその分をメーカーが
リベートという形で保証していたため、さらに卸の力は弱くなっていました。

さらに悪い医者は利益を得るために、高い(薬価差が大きい)薬を選んだり、
不要な薬を患者に与える、いわいる「薬付け」が起こったのです。

さて、薬の価格の9割から7割は保険=国が負担しているわけで、
こんな状態が続けば当然国の財政は切迫し、事実大きな赤字が出ていました。
そこで「何で医者ばかりもうけさせなきゃいかんのだ」ということで
公正取引委員会がこの腐った流通網にメスを入れたわけです。

改革の1つは卸しの力をあげることでした。
卸に医者への販売価格を決定させることで自分の力で利益をあげれるようにし、
結果的に医者の薬価差益を少なくしました。さらに、医薬分業によって病院は
治療はするが薬は売れない状態にしたのです(注射などは例外)。
医者は処方箋だけ書き、患者はそれを持って町の薬局に行ってそこで薬を
買うわけです。

これによりだいぶ医者の利益が減ったようです。
最近妙に病院が潰れるのは、こう行った古くて汚い体制に染まっていた
病院が潰れたと言ってもいいでしょう。
それはそれでいいことです。
それでもまだ利益は大きいようですが。

このように医薬品業界の流通と言うのは一般のそれと違ってまだまだ
自由な取引という面では立ち後れていると言えるでしょう。
かといって、薬価基準を撤廃して販売価格を自由化すれば、
安かろう悪かろうの薬が出回ってしまう可能性があり、
ことが人間の命に関わるものであり、非常に危険なわけです。

これからさらに改革されるのかどうか、もう少し見て行きたいと思います。
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