「毛唐道を叩け」(1998/03/11〜03/25号)
世に毛唐道(仮名)という商売がある。

口込みで商品を売り、その額に応じてバックリベートを支払う商法。
それ自体は別に問題あるやり方ではない。

そのようなものは世にたくさん有れど、いくつかのものはその「口込み」に
拍車がかかりすぎて度を越えることがあり、それが問題になることがある。

そのような場合、悪いのは会社本体ではなくて「口込み宣伝隊」ということなのだが、
それを押し進めるようなシステムを作っている会社にも、やはり問題はある。

毛唐道も同様であるが、最近被害や副業禁止に触れる報告が相次ぎ、
とうとう国会でも取り上げられることになった。
その問題点とは何処にあるのか、それについて書いてみたい。

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先ず毛唐道の商売システムについて、解説せねばなるまい。

毛唐道本社は営業部隊を持たず、口込み宣伝隊(でぃすとりびゅーたー、などと言う)
に宣伝をまかせている。彼らが口込みで宣伝し、誰かが商品を買うと
その額に応じたバックリベートが宣伝員に支払われるのである。

普通は高い広告費に使われる分の費用をリベートとして還元しようというのである。
この場合、宣伝員は自分の働いた分だけリベートをもらえるので、働きがいがあると
いうのだ。

まあ確かに、普通の会社では自分の働いただけ給料がもらえているとは曰く言いがたい。
何もしてないような窓際上司の方が高給なんて、やってられない気分にもなろう。
それが毛唐道ではやっただけもらえるのだから、それに魅力を感じる人が多いわけだ。
(はっ、だからS社にもいたのか?言っておくが、S社の給料は世間相場からみて
「高い」のだぞ。医薬品業界の中では知らんけど。
だから、ちょっといやでもすがりつく給料泥棒が多い・・・もとい、いるわけだ。)

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でも、何事も全てが自分のやっただけ反映されるていうのもどうかと思う。
自分の行動を影で支えてくれる人の存在を知るためや、簡単に言えば、試練のためにも
全て還元というのは必ずしも良いこととは言えないような気もするが。
まあこれはまた別の話。

ここまでは何の問題もない。法律上も全く「白」である。

宣伝員が誰か別に新規に宣伝員となる人を紹介したとする。
いわゆるネズミ講ではこの時点で紹介した人に紹介料が入る。
だから、先に、多く紹介した方が得になるのだ。
だが、毛唐道ではそれはない。
だから法律上問題とはならない。

この新しい宣伝員が頑張って売り上げを出したとする。
すると、バックリベートがその宣伝員だけでなく、紹介した人にまで入る。
おや、何か怪しいぞ。

新しい人が頑張れば、自分が頑張らなくてもリベートは入ってくるわけだ。
もっとも、自分で売った時よりかは少ないようだが、
でも、たくさん紹介してその人達を焚き付けておけば、自然にお金が入る。
元に焚き付けが行われている。
ほら、臭ってきた。

結局、毛唐道の直接の問題点は、この臭いと宣伝員達の活動そのものにある。

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毛唐道の商品は、主に洗剤を始めとする台所用品だが、サプリメントと呼ばれる
健康補助食品などもある。また、その流通網を使って、一般メーカーが商品を出して
いることもある。
この商品そのものに対する苦情はないのだろうか。

例えば洗剤。
一般家庭用の洗剤に比べると、確かにその洗剤は良く落ちる。
が、ここには巧妙な嘘がある。値段と作りの違いだ。

毛唐道の洗剤は実は高い。
高さの秘密は原材料の違いと見ても良いが、その原材料を使えばその位の
洗浄力のものは国産メーカーでも作れる(価格は宣伝費の分だけ毛唐道のものより高くなろうが)。
が、その成分は実は自然環境や人体に悪かったりする、という研究報告もある。

それだけ強力なのだから、ある程度は想像出来るが。
でも、宣伝員は「安い」「環境破壊はない」と言い張る。
しょせんは会社から与えられたマニュアル通りに言うだけだから、
彼らだけを責めるわけにはいかないが、そういうところがある。

ついでに書いておくと、毛唐洗剤は「濃縮なので水で薄めて使う」と言うが、
どのような洗剤でも少し薄めた方が洗浄力が上がるという事実がある。
要するに詭弁だ。

その他の所品も、確かに悪いものはなさそうである。
価格なりの価値はありそうだが、でも実際のところ高い。

ステンレスの鍋が10万円近くするという。
「丈夫で良いものだから10年は保つから高くても価値がある」という。

でも、考えてもみよう。
10年同じ鍋を使うなら、1万円の鍋を1年毎に買い直した方が・・・とまでは
言わないが、2万円の鍋を5年毎に買い直した方が良いのではないか。
まあ、土鍋などは同じものを長く使うと味が出てくるが、
金属鍋では痛む一方だ。だからむしろ短期間で買い換えた方が良いかも知れない。
そもそも、10年保つ鍋でももっと安いものはいくらでもある。
物を大切にする、という意味では価値があるかも知れないが。

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高い物を言葉巧みに買わせる。
それが良い物であろうと、高い物は高い。
人によってはそんな高品質の物はいらない場合だってあるのだ。
これが問題である。

宣伝員に対して、こんなやり方はいかんという行動指針は一応出されている。
それから大きく逸脱すれば、宣伝員としての立場を剥奪されることもある、
とは一応書いてある。

だからと言って、それだけで全ての行動が正義に行われるかと言えば、
それは甚だ疑わしい。会社の目がそこまで行き届いているかどうかは解らない。
もし会社が直接把握出来る規模のものであれば、相当な問題のはずだ。

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一方、焚き付けの方法は余りにも煽動的で、物欲的で見るに、聞くに耐えない。
「みんなで金持ちになろう」というのであるが、
「私はこうして金持ちになって、今はこんないい暮らしをしている」などと
自慢毛に言うわけだ。それも何人もが。
その内容は実に幼稚であるが、煽動するには十分である。
その程度で煽動される奴は、もともと幼稚なのだから。

ちんけな飾り付けの会場に、人が集まってそんな話を何時間も聞くのである。
会費まで払って(食べ物や飲物類なんて出ないぞ)。
それを「クリスマスパーティー」などと呼んでいるのであるから、何をか言わん。

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まあ確かに頑張ったのだろうし、それを自慢するのも構わん。
しかし、何か間違っている。

そういう集会に集まる人間の価値観が大きく狂っているのは確かだ。
奴らの乗っている車がどんなものか。多くは高級国産車か外車だ。
およそそんな年で普通のサラリーマンが乗れるはずの無い車ばかりだ。
おそらくはローンか何かで買っているのだろうが、すでに金銭感覚が
破壊されていることがわかる。

毛唐道をやっている奴らの最大の問題点は、実は売り方でもリベートでもなく、
この感覚破壊なのである。

だから他人の持っているものを平気で侮辱するようになるのだ。
高級品を使っていることを自分の人格のように勘違いしたり、
「よくこんな小さな部屋に住んでますね」とか言い出すのだ。
そう、人間として失格な奴らがいるということだ。

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そう言えばこういう問題もある。
毛唐道の宣伝員になれるのは社会人だけだ。学生は(今は)駄目なのだ。

しかし、多くの会社では副業を禁止しているはず。
とは言え、本業に全く差し支えなければ別に構わんとは思うが、
会社業務を疎かにしたり、会社で宣伝活動、勧誘活動するようになったら、
これは大きく問題にするべきで、本来は就業規則違反だから、クビにもするべき
である。なぜなら、就業規則が守れないほど感覚がおかしくなっているのだから。

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公務員は副業を堅く禁じられている(地方公務員法)。
にもかかわらず、毛唐道を行っているやからがいることも問題になっている。
しかも、職場で宣伝・勧誘活動だけでなく、教え子や父兄にまで売り込んで
いるらしい(国会で取り上げられた問題はこれ)。
先生に言われたら買ってしまうような弱い人もいるかもしれんよなぁ。
半ば立場を利用した脅迫行為に近い。

さらに先日通産省から指導されたのは、「今がんばれば5千万のボーナスが入る」
だとか、嘘の情報を書いて、「うちの浄水機を買えば安心」などと言っていた件に
対するもの。しかもこれは入りたての奴が言ったのではなく、上の方にいる奴が
言ったらしいから、全体もさして知るべし。
(病原菌は猛毒があるとか事実無根のことを書いていたらしい。事実無根と
言うより思いこみだろうか。)

こういう奴らは当然処分されている(といっても文書レベル)ようだが、
そういう可能性は毛唐道全体にあるわけだ。
結局は本人の倫理感によるのだが、毛唐道は営業倫理として
それを禁止しておく必要があったのではないか。
毛唐道曰く「倫理規則を遵守するように盛り込んだ」らしいが、
根本的な問題を見据えていない以上、「限りなく黒に近い灰色」であることには
違いない。紙に幾ら「守れ」と書いても読まない奴は読まないのだ。
しょせんは金に目が眩んだ連中だから。

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中にはそうでない真面目な人もいるかも知れない。
しかし、そうでない人の方が多いのであろう。
だから問題が大きくなっているのだ。

国会で大きく取り上げらたこの際、通産省から注意を受けたこの際、
徹底的におかしな部分を是正すべきである。
毛唐道を一応合法とするなら、それなりの改善を求めるべきなのである。
それが出来ないというなら「非合法」とするべきである。

非合法化すると、きっと毛唐が圧力を加えてくるだろう。所詮毛唐はそんなものだ。
彼らにとっての「フェア」とは「自分にとって都合の良い環境」という意味だから。
相手と対等な関係という意味での「フェア」ではない。
さらに、実は毛唐道を管轄する通産省の中にもその回しものが多数いるから、
取り締まれない、という話もある。
しょせんは金のために動く国家公務員の巣窟。
「ノーパン・ぺろぺろ」(なんじゃい、それ?)にでも連れて行ったら
取り締まってくれるかい?

        ・・・余談かも知れないけど・・・

毛唐道のポリシーは「自分のために売る」である。自己中心主義だ。
そこが一番の問題だ。
今の世の中、この自己中心主義者が多いためにおかしくなってきているともいえ、
という意味では、もっとも根本的な精神に問題がある。

同じような商品を扱っていても、ダスキン等は「社会に奉仕する」が社是である。
(詳しく知りたい人は、ダスキンの本や、場合によってはその朝礼に参加させてもらうと良い。
ただし、般若心経が読めないと困るぞ。)

この違いは、毛唐文化と仏教の精神の違いとも言えるが、
どちらがより良い社会を作るかは、考えてみればわかるはずである。
毛唐は、自らの病巣を日本にもうつそうとしているのである。

        ・・・

何にしても、私は毛唐道をやる人達とはあまりお友達になりたくない。
もちろんオタクラの読者としても歓迎しない、いや絶対に拒否する。

誤解なきよう言っておくが、私はお金をもうけることを否定しているわけではないし、
直販制を否定する気もない。
売り手と顧客の信頼関係がきちんとなっていれば、売り方はどうでもいいことであるし、
それ相応の報酬を得ることも正しいことである。

頑張って信頼を得、こつこつ貯めて、自分の手の届く範囲で生活する。
過度な背伸びはしない。足りることを知る。
それが私の信条だから。
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