「よく会社を理解しよう」(2001/04/30、05/25号)
私のいる職場(「うちの会社」と書かないのは、会社の中でも私のいる場所だけ
の話しなので)が「全員車通勤OK」と言うことになった。

今までは、会社から一定距離以上離れていて、かつ最寄りの公共交通機関まで
1キロ以上ある場合のみ、という規則があった。
まあ、これは当然の規則であるが、これが撤廃されたわけである。

これにより、ほとんどの人が車通勤になったようで、
電車もしくは徒歩・自転車組はほとんどいなくなる。
(自転車でも充分来れる距離の人間まで車で来ようと言うのにはあきれかえったが。)

まあ、それだけならどうでも良いことのように思えるが、
問題は、うちの会社が「環境企業」を標榜しているところにある。

ここにおける「環境企業」というのは、ISO14001という、
環境に配慮した行動をしている企業に対して認定される規格をとっている
(ごみの分別収集をしているとか、節電しているとか)という意味
+水の透視度計などを作っているという意味と考えれば良い。

しかし、車通勤を増やしておいて何が環境企業だ?

車通勤で排出される排気ガスを増やすのは環境には影響無いのか?
まして、全員に許すために会社の横にある空き地を借りてそこにも駐車させるという。
ところが、この空き地(元ホテルが建っていただけあってけっこう広い)には
キジやイタチなどの野性動物がいる。
そこに車を停めるということは彼らの棲息場所をなくすという意味でもある。

要するにこうである。
対外的にアピール出来る部分においては環境企業を名乗り規格にそって行動するが、
それはあくまで「戦略」であり、社員個々人の環境に対する考え方に付いては
指導しない、また、会社としてもISO規格以外の部分に付いてはどうでも良い、
である。

まったくもって、「環境企業」が聞いてあきれる。
ちゃんちゃらおかしい。

真に「環境企業」を名乗るなら、その精神をもっと理解すべきだ。
規格に沿うことが重要なのではなく、そこに含まれた意図に沿うべきなのだ。

電器メーカーのサンヨーでは車通勤を全廃させた例もある。
また、別の例で言えば、残業や休日出勤を前提としないと達成出来ない
開発スケジュールも同様だ。残業や休日出勤でどれだけの電気を
使わなければならないか。

私が車通勤出来ない(車を持ってないからね)から言うわけではない。
「なぜ車通勤を全員に許すのか?」
その意味がまったく理解出来ないから言うのだ。

この件に限らず、どうも私の会社には理解不能な決まりが
急に湧いて出るきらいがある。
トップの方だけで、勝手な考えで決め、それを急に示すことがしばしば在るのだ。

それ万事、物事の根本を理解していないためのことなのだ。
表面的な事象だけを解決しようとするとか、
戦略的に利用可能な規格や物を急いで使おうとすることなど。
一体なのが根底にあって、何をなすべきかをもっと良く考えて
行動しなければならないのだ。そういう姿勢が、
今のうちの会社には大きく欠けている。
上層部にも欠けているし、社員にも欠けている。
この車通勤を、私以外誰も問題視しないのだから。

こんなことでは将来非常に危うい。

    ・・・

で、先日書いた会社の車通勤の件、
実はその後会社でそれに関する(電子)掲示があったので、
それへの質問(決して文句ではないぞ)の形式で書いた。

    「何故車を増やすのか」。

(正確には「一方で車を増やしておきながら、他方で排気ガスを減らせと言うのは
どういう了見か」と書いた。)
しばらく待ってみたが正式見解・賛成・反対とも全く反応が無かった。
数日経ってから、また上司経由で、

    「あんなこと公開で書かずに個人にメイルを送れ」

と来た。

私は公開質問状を出したのにそれに対する回答、と言うより「仕返し」がこれである。
要するに、会社に対するいかなる質問も意見も秘密裏に処分するつもりなのだ。
もはや怒るより、呆れかえってしまった。

と同時に、これが私の質問に対する回答であると明快に理解した。

    「ISO14001取得は対外的なポーズに過ぎない。」

今後どのような言い訳をされてもこの考えは絶対に改めないし、
少なくとも会社にいるときは私もそのように振る舞わせていただく。

もっとも、個人的には環境への配慮は怠らない。
これは会社とは全く違う意味である。

    ・・・

最近咸く(ことごとく)このようである。
ひょっとすると、昔からの体質かも知れないが。

組織のフラット化を標榜しているがやはりこれも表面上だけであって、
実際、いろいろな決定は秘密裏に行われ、発表されるのみである。
意見する機会は一切ない。仮に意見すると上記のごとく闇に葬られる。
まあ、それはどんな会社でもそうなのかも知れないが、
なまじ一部でポーズがあるだけに、一層実体が汚く見える。

また最近、組織の構造改革(正しい意味でのリストラ)が行われているが、
これが間違っていると思うことが多い。

詳しくは書けないが、一番大きな点は「身の程知らず」ということである。
「今会社は大企業病にある」と上層は言っているが、
その対策として行われたことが、まさに大企業の方式そのものなのだ。
(先に書いた意見をもみ消すやり方もそうである。)
会社の規模が大きればその方法は有効であろうが、
うちのような規模ではかえって効率を下げる。
その判断も出来ずに、闇雲に他社の例を取り入れようとしている。

結局、どのようにしていきたいかの方針が不明確なのだ。
あるいは、その方針が株主に対して聞こえが良いものだけであって、
実体に即していない。

今の世の中、小量多品種が必要かつその投入速度の向上が求められるが、
他社の製品を仕入れを多くしてまかなうのか
自社開発のスピードを上げるのか。

後者だとすると、現在行っている改革はそれに反するものである。
速度を上げるための戦略は何も建てられていない。
一言で言えば、分業化による作業の増大か専門化による効率の向上か。
その見極めが出来ていない。

本で読んだ知識は、単なる知識に過ぎない。
それを知恵に変換出来るかどうかは、自分の置かれている立場及び
持っている駒を良く知ることでよって出来ることだ。
それすら出来ない者が上層部に屯(たむろ)していると言うことだ。
これまでの会社の経済的経営には長けていたかも知れないが、
これからのことを考えるとはっきり言って、
「危ないのではないか」と思っている。
今までの経緯からして、危なくなったらさっさと元に戻すんだろうが。
社員の苦労も考えずに。

    ・・・

何にしても、今回の件で、大体今の会社の実態を理解出来た。
状況ではなく実態である。

今後、このような意見をすることもなかろう。
してもまったくの無駄である。

こんなことを言う、私に一般社会に対する適応性がない、
と言われれば、反論する気はないが。
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