「愚かなアメリカン」(1995/04/20執筆)
円高である。
輸出に頼ることの多い日本の多くの企業は深刻な影響を受けている。
今や、日本の物生産能力と言うのは、国内だけでさばききれないほどの量である。
従って、輸出はかかせない。

このような輸出国家にとって、適正なドルのレートというのは、1ドル100円、
まあいって90円までだと言う。多くの輸出入会社はこの辺りにレートを置いて
社内計画を立てている。ということは今のレートは完全に異常なわけだ。
(しかし、である。石油系会社は軒並み1ドル110円で計算しているというのは
納得いかないところである。円高の割には石油価格は下落していない。
かなり稼いでいるはずだ。高くなった時のための危険予備費だと言う会社もあるが、
どうせ高くなったら価格を上げるのは早いのである。全く言い訳がうまいというか、
きたない。)

この円高の大きな原因にアメリカの対日貿易赤字があると言う。
そして、その解消までは円高を容認、さらにいろいろな形で
政治的圧力を掛けてきている。

そのやり方は実に汚く、威圧的で、「お前らのどこが自由(競争)を尊ぶ国なのだ?」
と言いたくなる。その姿は、日本の言葉で言えば、「子供の喧嘩に親が出てくる」
である。輸入量に公約を持たすなどとは、なんたることか。

それが自由貿易か。アメリカは自らの正当性を言う時は、アメリカ国内への輸入は
自由であると言い、輸出国に対しては自由貿易(輸入)をさせないのである。
これほどまでに首尾一貫していない国も珍しい。
(この点、ヨーロッパの方が大人である。)

アメリカに対する文句はひとまずおいて、ではなぜアメリカ製品が日本で売れない
のか、そして、アメリカの対日貿易赤字の根源的原因はどこにあるのかを探ってみる。
はたして日本の市場は、アメリカンが言うように閉鎖的なのだろうか。

結論から言えば、確かに日本の市場では制約も多い。
それは制約と言うより習慣と言った方がいい。
その中には過去の慣習により、現代では理不尽なものもあろう。
が、それは日本と言う島国の中でうまくやっていくために産まれた
システムであり、環境である。
従って、それを一朝一夕に解決するのは難しい。

しかし、日本人はその中で物を売っている。
多くの外国メーカーもその中で商売をし、日本国内で非常に多く売れている物もある。
外国製品が全て売れないなら、日本国内の閉鎖性はもはや自明であり、
絶対的に解消しなければなるまい。しかしそうではない。
ということは、売れていないメーカーにはそれなりの原因があるのだ。

    ・・・

外国企業でも日本を良く研究し、努力したところは売れている。
事実、日本でもすでに売れているアメリカ発祥のものは多い。
コカコーラ、コンピューター(CPUやOS)など。
アメリカのものだから売れないと言うのはまったくの言いがかりなのだ。

今、アメリカ政府をつついて日本を攻撃している企業は軒並み売るための
努力をしていない。相手=日本の文化を理解していない。
実際にある障壁が何であるかおそらく言えない。
アメリカ人が問題にしているのはおろらく「そういうものがある」
というイメージだけであり、聞いた話によるだけで言っているのだ。

日本の製品がなぜアメリカで売れたか。
安いからか。アメリカンが言うようにダンピングぎりぎりの安さからか。

それは一因に過ぎない。
売れた真の勝因は、日本人の勤勉さにある。
日本人は英語を勉強し、アメリカ文化を勉強し、現地に法人を作った。
アメリカ人にあうものを売った。
この努力こそが成功の全てだ。
それに加えて高品質である。「つぶれない」という信頼があるのだ。
これで売れないはずがない。

日本語を勉強しない、日本文化の勉強しない、日本に法人を持たない、
日本人にあうものを作らない。
これで売れるはずがない。
さらに言うなら、アメリカ製の製品は性能が悪い。
いや、悪かった。一部の物を除いて。
「よくつぶれる」=結局買い換えでお金がかかる。
そしてそもそも安くもなかった。
これで売れるはずがない。
(安くないに関しては、高い関税を掛けた日本が悪いが。)

    ・・・

アメリカンの言い分はこうだ。
「輸入が促進され、安いアメリカ商品が入れば、日本の消費者の得になる。」

これは嘘である。

確かに価格破壊は起こった。
それは一定の効果であった。
しかし、輸入されたものは本当に売れているか。

ビール 安いだけでうまくない。
林檎  それほど安くない上に味が日本人好みでなく、なおかつむきにくい。
    某カビ剤も付いている。
牛肉  堅い、日本牛の方がおいしい
米   けっこういけるが、こしひかりなどと対抗出来るものではない
車   ブランド指向や珍しい物好きの人には売れるが、
    故障が多い、故障した時の費用がかかる、時間もかかるで
    メンテナンスがたいへん。

これである。
鳴り物入で輸入されたもので、本当に爆発的に売れたものは無いのだ。
日本人にあうものがないからだ。
これでなぜ売れると思うのか。

鳴り物入で輸入された物がこれであれば、「これから来る物も同じだ」と思っても
不思議ではない。
本当に売る気があるのなら、アメリカで売るのと同じではなく、新規市場をモノにするために、
フルパワーであたるべきだったのだ。
あうものを作る=文化を知る努力、をしなければ決して売れない。
人はお金だけでものを買うわけではないのだ。

    ・・・

日本製の方が高品質で、アメリカや東南アジア製は低品質と言うのは間違いである。
今は日本製品だといわれている物の多くが外国製部品を使っているのだ。
ただ、日本の技術導入で出来たものは確かに精度が高く、
それは高性能、高品質、高信頼につながっている。

しかし、やはりアメリカンの製品はアバウトでいい加減な物も多い。
ネジ1つまともに閉まらない製品が日本で売れると思うか。
そのあたり国民性の違いだが、自国の国民性にあったものをそのまま日本に
持って来てどうする。
アメリカ人は日本人はアメリカ人と同じだと思っているのだろうか。
(事実、アメリカ人が日本はアメリカの属国だと思っているらしいふうがある。)
バかにするのもいい加減にしろである。
もっとも、バかにされるほど個性もなく、意見も言わない日本人も日本人だが。

アメリカ人の全員がバカで威圧的なわけではない。
中には非常に賢く、日本にどうやれば売れるのかを考え、
さらに、なぜアメリカ国内でアメリカ製品が売れなかったのかを
冷静に判断した者もいる。

「日本製品がアメリカで売れ、アメリカ製品が売れなかったお蔭で
   アメリカの工業製品の性能があがった。」

という論評もあるのだ。
これは実に正しい。
1つの出来事を、悪い面からばかり見ていては前進しない。
別の側面から見る時、成長するための要素が現れてくるものだ。
それを実例で現したようなすばらしい論評である。

そして、日本国内でアメリカ製品他の外国製品が余り売れない原因がここにあるのだ。
消費者が求めているのは「性能がいいもの」なのだ。
これに低価格が付けばなお言い訳であって、まず安さ有りきではない。

外国製品の中にはもちろん良い物もある。
だから、良い物は選び、悪い物は排除する。
真に正当な競争により、売れる物が決まるように、
消費者は賢い選択をしなければならない。

    ・・・

アメリカンは世界中に対して「嘘」をつき続けている。
自由であるとか、正義であるとか。
日本への輸入拡大押し付けは、そのアメリカンの「嘘」の一例なのだ。

アメリカンは常に誰かを悪に仕立てて自分の正義を強調する。
その役は、以前はソビエト、そして今は日本かイラク/イランというわけだ。
実はアメリカは世界で一番威圧的で、相手の文化も認めず自国の文化を押し付け、
それを拒否するものを「悪」としてたたき潰すのだ。
真に「悪」なのはどちらか、冷静に考えれば明らかだ。
日本人は騙されている。

アメリカが自分の悪を認めない以上、とことんアメリカンは避けようではないか。
同じ買うなら、ちゃんとした自由を尊ぶ国のものを買おう。
アメリカ車よりヨーロッパ車、アメリカ牛よりオーストラリア牛。
大型冷蔵庫はドイツ製。(いいぞこれは。無茶な使い方をしても本当に壊れない。)
カルフォルニア米なんていらない。
カリフォルニアオレンジよりもポンジュース。

アメリカが自分の有りようを冷静に見つめなおし、その行動を真に正義とする時、
アメリカ製品を購入し、その文化を認め、真に有効関係が築かれると思う。

ただし、アメリカンの研究は怠るな。
日本人が第2のアメリカンにはならないように。
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