「蝉」(1997/08/15号)
真夜中に蝉が泣いた。
普通は「鳴く」と書くところだが、ここではあえて「泣く」と書いた。

1匹ではなく、何匹か同時に泣いてけっこうやかましかったので、
夜中に目がさめてしまった。
「うるさい!」と言ってもしょうがないが、
ここでふと考えた。
「なぜこんな時間に蝉は泣いたのか。」

蝉にしても、真夜中に泣きたくはないはずだ。
本来は昼日中、太陽が出てから泣くものだ。
結局、明るすぎる街頭があるために、昼間と間違えて鳴き始めるわけである。

夜、街頭があって明るいということは治安の面からはいいかも知れないが、
かえって若者どもが夜中までたむろしたりして悪い面もあるし、
自然に与える影響も大きいであろう。

やはり夜中はそれなりに暗くあるべきなのだ。
夜には眠る。これは自然の摂理だ。
(夜行性動物にしても、明るいと動けないから、また同じことである。)

自然の摂理に反した環境に生きる、それを強要されることに対して、
蝉は「泣いた」のではなかろうか。

人間は、その短い命をかけた泣き声の意味をよく考えなければならない。
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