「That's和歌山」(1997/03/31〜04/15号)
と、いうわけで和歌山である。

        ・・・は?・・・

いや、結婚一周年記念で和歌山に行ったのである。
「もっと良い所へつれて行け」と和歌山を馬鹿にしたようなことを
言う人がいるかも知れないが、そこはそこ、ちゃんと理由があって
行ったわけである。

今回の目的地は和歌山は湯浅。
和歌山市からさらにJRで南下すること50分余り。
箕島よりも南、道成寺よりかは北という所の海辺の町である。
そうそう、去年行った(この話はしたっけ?)ポルト・ヨーロッパの
海南より南である。そういえば、去年行ったときはまだ工事中だった
海南駅の高架工事は下り線のみ終わっていて、今回は高架線上を走ったのである。
しかし、こんな場所、高架にする必要はあるのか?
(はっ、これは紀州新幹線のためか?)

実は、今回、この湯浅にある有田(「ありだ」と読むのだぞ)オレンジYHにて、
ジャム作りやらいろいろと催しがあるので、それへの参加のために来たのだ。
一周年でなんかないかな?と思っているところに、これを見つけて参加した
わけである。

あらかじめ断っておくが、今回の旅行記は短いぞ。
それは、いろいろなところを回ったのではなく、行事参加だからだ。

・・・

さて、湯浅の町は実は狭い。

YHに電話したら「駅に観光マップがあるから、それを手に回ればいいです。
3、4時間はつぶせます」ということだったので、そのつもりで
午前中に着くように行ったのだが、予想外に町が狭く、
あっという間に廻れてしまったのである。

その中で見ておくべきポイントをあげておこう。
1、熊野古道の道標
  現在、町の中を熊野古道が走っているのはここだけだそうだ。
  確かにでっかい道標がある。
  しかし「だからどうした?」といわれればそれまでである。
  昔道があったと言うことは、宿場町であったと言うことで、
  辺りの家並みも古いものがある。

2、醤油屋
  湯浅の町は日本で最初に(大豆で作る)醤油が作られた町である。
  道成寺を作った和尚さん(名前は忘れました)が、中国から味噌の作り方を
  伝えたのだが、この味噌の樽にたまった汁が醤油の元祖と言われる。
  (醤油にはもう1つ、魚の汁から作る魚醤がある。秋田の「しょっつる」は
  その代表格。)
  湯浅には今でも醤油屋がいくつかあるようだが、手作りをしているのは「角長」
  (かどちょう)のみである。大阪などで見られる「湯浅たまり醤油」という
  やつはたいがいまがいものなので注意。
  さて、この醤油屋では昔の倉を使って展示もしている。無料である。
  が、この展示間、実は新旧二つあるのだが、新の方はちょっと問題がある。
  ここを案内してくれるおばさんが余りよく見せてくれない。どうも、
  早く醤油を売りたい、という感じで困ったもんである。

  ここの醤油であるが、基本的には2種類しかない。火入れしているものと
  していないものである。その他は容器の違いだけである。値段は900mlで
  900円くらいと、市販の醤油と比べるとだいぶ高い。瓶なのでもって帰るのは
  たいへんと送ってもらうことにするが、これがまた6本でないと駄目という。
  6本詰め箱しかないのだ。ちょっと商売しすぎだな、と思いつつも、
  今回は列車旅なので持って歩くわけにもいかず、しょうがなく頼むことにした。
  だから、ここで送ってもらうときは、最低でも900*円6+送料が必要である。
  それがいやな人は、ちゃんとリュックなどを持って行く、持って帰れるように
  準備していく必要がある。もちろん、車なら問題ない。

  さて、肝心のお味の方だが、これはやはりうまい。そのままでなめると
  普通の醤油より辛く感じるが、普通のものとさして味の差は感じない。
  しかし、焼いたり料理に付けると大きく差が出る。特に焼いたときの差は
  歴然で、安い醤油では焦げ臭いだけでまずくなるのが、この醤油では
  実に香ばしい良い匂いでおいしい。他の料理と合わせたとき、特に刺身に
  付けるとわかるのだが、そのままでは辛かったのが、料理に付けるとその辛みが
  ほとんど表に出てこない。実に不思議だ。火入れのありなしだが、
  火入れなしのものは、樽からそのまま汲んだようなもので、少し濁っている。
  火入れしていないということは、少し日持ちが悪いということで、
  火入れ物が常温で3年もつのに対し、こちらは冷蔵で1年である。
  味の差は、残念ながら私の下では余り感じないが、火入れ物より辛さがきつい
  ような気もする。値段はちょっと高い。

  興味のある方は、一度金魚ちゃんにでも入れて持ってきてもいいけどね。

湯浅の町の見るべき場所はこの2カ所だけ、といっても良い。
あっと、もう一家所金山寺味噌のお店があるか。古くて由緒があるらしい。
今回は醤油代が高くつきすぎたので買わなかったので詳細不明。
余り店らしくないたたずまいなので、見逃しそうになる。
まあ、町の雰囲気は悪くはないので、ぶらぶら歩いてみるのもよい。
醤油屋の人も親切であった。
そうそう、漁港の町だからだろうか、猫が多い。猫探しをしてみるのもいいかも。

先に道成寺や御坊に行ってから湯浅に戻ってくるとちょうどいいかも知れない。
御坊から出ている紀州鉄道では、画用紙一枚分もあるようなでっかい切符(硬券)
を売っている。これを買うのもおつだし、アメリカ村に行くのもよかろう。
いずれにしても、湯浅だけでは時間をつぶすのに困る、ということである。

湯浅の町で一番困るのは、食事の場所がないことである。
実は今回も昼に着いたのだが、食べる場所がなくて、
町中歩いてしまった。店があっても妙に高いなど納得行かない。
(どの店でもカツ丼が750円なんて、許せんぞ。)
結局、喫茶店でカレーになってしまったのだが(業務用レトルトである)、
ここに行くときには弁当を和歌山で買って行くなどの準備をした方が良さそうだ。

車で行くと例の醤油買いは楽だが、この町は道が狭く一方通行もあるので
要注意である。駅前にまっすぐ入る道がないので、歩くにも悩んだぞ。

結局、時間を持て余したので、ちょっと早いがYHへ行くことにした。
YHへは2キロくらいであろうか。しかし歩いていってもさほど距離は感じない。
途中の道に狭いところがあるので、標識を見ながら行かなければ
まず解らないであろう。

YHで荷物を預け、付近の地図を見せてもらう。
施無畏寺(せむいじ)というところが有名らしい。それと、近くには栖原(すはら)
温泉もある。

施無畏寺は山寺で、山の上の方に奥の院と開祖明恵上人が修行した修行場
(東/西白上遺跡)がある。
残念ながら本堂は工事中で見ることが出来なかったが、
途中から見た海の景色のきれいなことと、修行場からの360度の景観はすばらしい。
(後でYHで聞いた話では、西白上遺跡にある岩は、いつ誰が置いたのか、
最初からそこにあるのかわからないが、人工的な細工がして有り、
さらに、その配置には大きな意味があるらしい。)
ただ、この日は大阪でも雪の積もった日で、和歌山ではさすがに積もっては
いなかったが、雪もちらつき、非常に風が強く寒かった。

そうそう、奥の院から遺跡へ向かう途中の道には桜が植えられており、
4月には花見がすばらしいそうだ。
さすがにこの季節は枯れ木のようだが、鳥達はすでに活発に行動しており、
春が近いことを感じさせる。

もう1つ、山頂からは周りの山々が見渡せるが、さすがにこのあたりはみかんだらけ
である。冬でもみかんの葉は緑だし、実はなっており、きれいである。
このあたりでは三宝柑(さんぼうかん)という種類と伊予柑が名産である。
特にこのあたりの三宝柑は質がいいが収穫量が少ないので、殆ど出回らないらしい。
(湯浅の三宝柑といえばプレミヤが付くくらいだそうだ。)
このあたりで路地で売られているものでも、ここで出来たものものではないらしい。
よその地で取れたものにここの地名をつけると売れるからということで、
世の中にはよくある話かもしれない(明石沖で捕れた鯛でなくても明石で水揚げすれば
「明石の鯛」と名乗るのがあるとか)。

海も非常に近い。太平洋だけあって、冬でも波は穏やかだ。
海岸も綺麗だ。
YHも夏には海水浴客で混雑するそうである。
本来なら閑散とするこの時期を、イベントで盛り上げているのであろう。

温泉は、YHから施無畏寺へ向かう道を脇にそれたところ、小学校の裏手にある。
実は、温泉といっても見た目は銭湯みたいなので、よく見ないと分からない。
中には行っても銭湯より狭いのではないか?と思うくらいで、
3人も入ればいっぱいになるのだが、さすがに湯は温泉である。
値段も安い(¥250、髪を洗う場合は+¥20)ので、
入ってみるとよいであろう。
貸しタオルなどはないので、入りたい時は持っていくように。

帰ってみるともう6時を回っていた。YHを出たのが3時過ぎだったので、
湯浅の町を回っているより長くお寺と温泉にいたことになる。
そう、湯浅に飽きたらこちらで回るのもいいかもしれない。
(海岸も非常に近いので、夏には泳ぎも出来る。)

YHでは、早くも夕食が始まっている。
普通はもっと遅いのに、この早さはなんだ?
・・・夜にジャムを作るので早めの食事にしているのだそうだ。

ここは久々にお皿を洗わせるYHであった。
そういえば、大部屋相部屋も久しぶりだ。
昔ながらのYHという感じがする。最近はこういうYHは少ない。
少なくとも、ここ数年こういうYHには泊まったことがない。
ホテルと見まちがうような外見、内装、個人やグループで1部屋がとれるなど、
最近のYHは良くなった。YHの利用者が増えているのもそのおかげであろう。
私もそういうも好きだが、こういうのも嫌いではない。

しかし、ここは雰囲気が妙である。
それは、常連が多いからであった。
アットホームな雰囲気もあるが、常連が多いとそこに世界が出来てしまい、
新しい人が入りにくいのが難点である。
また、常連は常連だけで固まっているのも問題である。
私の他にもそういうことを言っている人がいた。
最初、いやこれは困ったなぁ、と思ったのであるが、
常連以外の人と話をすると、いい人が多くて安心した。

しかし、1人変なのがいる。その常連の一人であるが、
これがまたパソコンオタクであり、しかもかなり悪性とおぼしき人物である。

いきなり、夕食後の机の上にコンピューターフルセットを組み立てはじめるのだ。
本体とディスプレイだけじゃないぞ。モデム+スキャナー+デジタルカメラ
+カラープリンター+HDD+光磁気ディスクまでときている。
さらに、デスクトップ型だけでなくノート型も別に持ってきているのだ。
「たまたま持ってきた」などと言っているが、絶対にうそだ。
インターネットにつなぎ、幼女のあやしい画像を出して喜んでいるなぞは
「悪性」以外の何者でもない。
この後夜の2時まで一部の連中がやっていたというのだから、「うーん」である。
コンピューターから完全に離れたくて旅行に来ているのに、
こんな所で、こういうやつには会いたくないぞ。
(翌日も、朝から一人で触っていたのは言うまでもない。)
しかも、こういう奴が学校の教師だというから、日本の将来はおもいっきりあぶない。

夜はジャムとマーマレード作りである。
このYHの持っているミカン山でとれた全て無農薬の伊予柑と三宝柑である。
見た目は悪いが、味は良い。(ここではそうも思わなかったが、大阪に帰ってから
市販の同じミカンを食べてそう思った。ここのは味が濃くて本当においしい。)
伊予柑は皮を剥いて身だけをジャムに、三宝柑は皮も使ってマーマレードにする。
こんなことが出来るのも、無農薬だからこそである。
(マーマレードやジャムは煮詰めるからなおさらである。)

みんなで手分けしての作業はおもしろい。
パソコンおたくは砂糖の取り出し(固まっている砂糖を崩している)のと
やれ「デジタルカメラで撮って録るて、パソコンに入れてカラープリンターで
打ち出せばいい」などといっている。やめんかい。

ジャムの方だが、結局4〜5時間かかったのだろうか。
12時前に何とか出来上がった。
おいしいが、あの砂糖の量を見るとちょっとぞっとするかも。

後日談)
このジャムは、ヨーグルトに入れてもおいしい。
1月位は持ったが、やはり防腐剤など入っていないので、それ以上はもたなかった。
2人で4つ(ジャム2つにマーマレード2つ)は多い。
砂糖が多いので、1日にそんなに食べられない。
ジャム1つはあげたが、マーマレード1つを腐らせてしまったのは惜しかった。

翌朝、私が最初に見たのは猫である。しかもねずみをくわえた猫。
ここのYHにはマイケルという図体のでかい看板猫がいるのだが、
これが何かを噛んでいる。よく見るとネズミなのだ。
「猫がネズミを捕る」というのはよく言われるが、実際目にしたのは初めてだ。
ふだんはとろそうなこの猫が、よくも捕れたもんだと関心する。
猫は獲物を見せに来るというは本当である。
しかし、頭からガジガジと音をたてて食べるのは見ていて気持ちのいいもんではない。
YHのおばさんも、猫の気をハムで釣っておいた隙に、ネズミを拾って
捨ててしまった。手慣れているということは、よくあることなのだろうか。
(そういえば、ここ湯浅の町は猫が多い。魚屋も多い。やはり漁港の町
だからだろうか。)

今日の活動は、リースづくりとみかん山でのお弁当である。
リースは、山に葛の蔦を求めて行くところから始まる。
蔦を切り出し、丸めたり、うまく編んで篭にするのだ。
丸める方は簡単に出来るが、篭は難しい。
うまい人の手順を見て、一応作り方を頭ではマスターしたつもりだが、
実際には出来るだろうか。
円形のリースは、何か飾り付けをしないとそれだけでは只の輪っかに過ぎない。
ドライフラワーなどと合わせるといいであろう。
しかし、こういう経験もなかなか出来ないものだ。

その後は例のYHのミカン山でのお弁当である。
バーベキューかと思っていたのだが、そうではなかった。
焚火にパンを入れて焼いて食べたり、うるめいわしの焼いたり(おいしい!)、
ここで採れた大根でお味噌汁を作ったり、それに市販のお弁当である。
蕗の何か苦いのもあった。
空気の良いところで食べるお弁当は、おいしいものである。

そういえば、ここで初めてレモンの木というものを見た。
三宝柑や伊予柑があるのは昨日使ったのだから当然だし、
ミカンが木になっているのはよくある風景であるが、
レモンの木、木になっているレモンというものを見たのは初めてであった。
木そのものはミカンと変わりないが、実があの黄色いレモンである
何か妙な感じでおもしろい。
そういえば、でかい「ボンタン」というものもあった。
小さな木に、それにまったく見合わないほどのでかいボンタンがなっている様は
異様である。例えるなら「たんたんたぬきの(以下検閲により削除)」。

食事の後は山登り。これがまた探検みたいである。
ここのミカン山は一般の出荷用ではないので、道が整備されているわけではないので、
道を探しながら進むのだ。
あっちでもない、こっちでもないといいながら、山頂をめざす。(実は、私が先頭に立っていたのだ。)

山頂付近からの眺めはなかなかに良い。湯浅の町が一望出来る。

ところで、山の尾根から向こう側は別の人のものだが、このとなりの畑は農薬
がある。なぜわかるのかというと、地面に白い農薬の後が残っているからだ。
もちろんYH側にはまったくない。
残るほどのあんなにたくさんの農薬がかかっていると思うと、
ミカンも何か恐ろしい。皮ごと使うなんてもっての他だ。
(レモンを皮ごと入れているレモンティーなんて・・・)

というところで、今回のYHでの催しは終わりである。

このまま帰る人と、駅までてくてくと歩いていく。
列車の中でも大阪方面の人間と一緒にいろいろと話をしながらの
たのしい帰りであった。

まあ、ちょっと「何」な部分もあったが、いろいろとおもしろい経験が出来た
面白い2日間であった。
またどこかのYHに行事に参加してみようかな。

それにつけても、パソコンおたくよ・・・

・・・終わり・・・
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