「箕面の滝2」レポート(2003/03/10〜03/24号)

これは昔趣味にしていたハイキングのレポートである。
このハイキング、その余りのハードさに「超ハイキング」と呼んでいたのであった。

今回のは一人で、しかも近場を歩いている。

今回の掲載にあたり、当時を思いだし・・・ても全く思い出せないので、
当時書いたレポートを再編集しただけである。
(注;の部分は今回の再編集にあたって追記した部分。)

    ・・・

昨日はわけあって箕面付近を車で走っていたのである。
ああ、ぬけるような青い空。

    「う〜ん、こんな日はどっかを歩きたいぞ!」

次の瞬間、私の単純な頭脳はこのような結果を弾き出したのであった。

    (青い空+歩きたい)*箕面=箕面の滝

ということで急遽箕面の滝へと行く事になったのであった。

    ・・・

車を親戚のうちに止め、歩いて滝道へと向かう。
このあたりには地元民のみぞ知る裏道がある。
それを通って一気にスパーガーデンより上まで行く。

こんななんでもない平日だというのに人が非常にたくさんいる。
(特に多いのがお年寄。)
今の時期にみんなが箕面の滝まで行くのは言うまでもなく紅葉がみごとだからだ。

紅葉した楓は非常にきれいな彩りを見せている。
一口に紅葉といっても「赤」色だけではない。
明るい赤や暗い赤、オレンジや黄色等も混ざっている。
それらが微妙なバランスで混ざることによってなんとも言えない色調になり、
それに秋の日差しがコントラストを加えて
まさに山が燃えているように見える。

微妙に聞こえる川のせせらぎ。
山の彩りを映す川の中には鯉やはや。
川辺で遊ぶ白い鳥。

    ・・・

しかし、こんなところにもばかはいる。
タクシーで来るやつ。
サングラスをかけているやつ。
ところかまわず煙りをはき出しているやつ。
エスカレーターがあればいいなとぬかしていたやつ。

山の彩りを見、
川のせせらぎを聞き、
少し肌寒く感じる空気を吸う。

全身でこの自然の恵を感じないでどうするのだ。
お前らにここに来る資格はない!
(「楽しみ方は人それぞれだ!」とかいう意見はここでは却下。)

    ・・・

滝は夏と変わらずその姿を現わした・・・はずだが、
滝そのものは変わらずとも周りの変わりようによって
滝まで違ってみえるのだから不思議だ。

楓は赤く、そして蔦(つた)も赤くなっている。
そうか、蔦も紅葉するんだ。

緑に囲まれた滝は豪快に、赤に囲まれた滝は雅びに思える。

滝をよく見ているとちどちのような小さな鳥が尾を振り振り滝の横を登って行く。
きっと修験鳥に違いない、そう思ったのであった。
この鳥は今の紅葉をどう眺めているのであろうか。
それを見に集まる人間をどう思うのであろうか。

    ・・・

それは帰り道で起こった。

川の対岸の山の上の方から数匹の猿が降りて来た。
ここ十数年の間に猿は山の上の方に移動していたので、
こんな滝の間近に猿を見るの久しぶりだ。

    「川辺でお弁当を食べている人が危ない!」
・・・最近の猿はあまり悪さはしないようだ。大したことはなかった。

今度は猿は川を渡りこっち側までやって来た。
    「おお〜!」

器用に川を渡ったかと思うと土手をかけ登り、一瞬足元で止まり
こちらを見てから素早く反対側の山へと登って行った。

    「ええ!?」
1匹だけかと思ったら対岸では上の方から猿がどんどん降りて来ている。
また、また、また!?、おいおい、どれだけ降りて来るんだ!?

それはもう物凄い数の猿が次々降りて来ては川をわたりこちら側の山へと
登って行く。

脇目もふらず一目散にいくやつ、ボスらしい大きなやつ、おなかに子供を
しがみつかせてるやつ。まあ、色々いるもんだ。
子供らしきものの中には川をわたるのが怖くてキーキー泣いているのもいた。
鳴くというよりまさに「泣く」感じだ。
そういうのは親が川の途中の岩の上で振り返りながら待っている。
そういう姿は猿とはいえ微笑ましいものがある。

猿の中にも目立ちたがり屋というか、変わり者というか、他の猿とは違ったことを
するものがいる。

ほとんどの猿は川を素早く渡るのに、途中で水を飲みつつのんびり渡るやつ。
途中で空き缶を拾ってくわえているやつ。なかなか渡ってこないやつ。
でもこんなのは序の口。

川の間には細い電線が2本渡っているのだが、これを綱渡りのように渡って来るやつ
がいる。電線はもちろん結構細いので、そういうことをするのはまだ小さい、いわば
やんちゃぼうずのようなやつである。

手と足をうまく使い4つんばいの状態でうまく渡るもんだ。
中にはバランスをくずして逆さまになるものもいるが、落ちはしないのはさすがは
猿といったところか。

でも、下で見ていると冷や汗もので、渡り切った時にはおもわず「ブラボー!」と
いって拍手してしまった。

                         ;;;;;;;楓1;;;;;;;;;;;;                             
          ;;;;;;;;楓2;;;;;;;;;;;;       ;;;;;;;;              :             
こっちに ;;;                                   ;;;            : ここから猿が 
登って  ;;;                                     ;;;          :    降りて来た 
行った ;;;   |                             |     ;;;        :                
    : ;;;    |-----------------------------|      ;;;      :                 
     :;;     |                 電線        |       ;;;    :                  
      :      |                             |       :-----:                   
       :     |                             |      :                          
        : 人 |                             | 人  :                           
         -----:                           :------:                           
               :                         :                                   
                :                       :                                    
                 := = = = = = 川 == = =:                                     
                 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~                                      

さらに上にある楓の木を飛び移って移動しているものもいる。
子猿が飛び移る時など、なんか危なかしくってひやひやしてしまう。

かれこれ30分近くも見ていただろうか、猿の大移動は無事に終わったようだ。
何度も箕面の滝には来ているが、こんなのを見るのは初めてだ。
毎日の事なのか、今日だけの事なのか。
いずれにしても珍しいものを見てなんか得した気分になった。

    ・・・

猿の大移動を見た後、再び歩みを進めて滝道を降りていく。

日は少し傾き、紅葉は行きとはまた違った彩りを見せる。
朝日が出る時から夕方日が沈むまで見ていたらさぞかし色々な色を見せるのであろう。
今の感じからしてこれから1週間位が一番美しいのではないだろうか。

歩いていると、前の方では上から楓の葉が降って来ている。
なにかな?と思い上を見ると猿の親子が移動しているではないか。

先程大移動にあった場所からは1キロ以上離れている。
はぐれ猿といものだろうか。
それとも社会の喧噪を嫌い家族でひっそり暮らす世捨て猿だろうか。
猿の世界にもこういうものはやはりいるのだ。
さすが人に近いだけのことはある。
いや、人間が猿に近いのか。

更に坂を下っていくと、下方に見える川のそばでふと視界に飛んでいる白い
大きなものが入った。
真っ白で大きな羽、細い足、長いくちばし。
よく見るとそれは小さな鷺(さぎ)のような鳥だった。

その鳥は川の中に入りゆっくり歩いている。
そしてその行く先にもう1つ白い物が。
    「仲間かな?」
いや違う。よく見るとそれはスーパーなどでもらう白いポリエチレンの袋だった。

こんなところにそんなものがあると興醒めしてしまう。
そして、もし本当にその鳥がそれを仲間と間違ったのなら、可哀相なことだ。
人間が、それが故意であれ、そうでなかったであれ、しでかした行為によって、
自然がおかしくなっている。

袋を仲間と間違って近づいた鳥を笑う人間がいたとするなら、
それは結局は自らの行為を笑っていることになる。
そしていつかは自分も同じ目に会う。
今、自然界で起こっていることは、全て、やがていつかは自らの身に振り掛かる
ことなのだ。
それを忘れてはならない。

    ・・・

滝道からそれ、再び抜け道へと入る。
入ったところすぐのところに大黒天 西江寺(さいこうじ)というお寺がある。
実はここは私が毎年初詣に行く所であるが、これ以外の季節にここに来ることは
滅多にない。

だから今まで気付かなかったのだろう、この見事な紅葉を。
境内にある楓が、それはもうこれでもかというほどに真っ赤に紅葉している。
そしてまた暮れかかった日差しに映えてすばらしい。

日本語では「美しい」ということを現わすのに「とても」とかいう修飾詞を
付けたりして現わすしかないが(私が知らないだけという意見もある)、
英語なら、
    Pretty
    Beautiful
    Fantastic
など色々ある。
ここの風景を現わすならさしずめ、
    Oh! My God...
といったところだろうか。
それほどに美しい。

こういうものを見ると「四季のある日本に生まれてよかった」と本当に思う。
春に生まれ、夏に育ち、秋に輝き、冬に死す。そして再び春に生まれる。
この季節の中での生から死へ、死から生への巡りが仏教の「輪廻転生」の思想と
合うから、日本に仏教が広がったのだろう。
もっとも、四季のない国にも仏教はあるし、四季があっても仏教でない国もあるし
いちがいにそうであるとは言えないが、そんな気がする。

秋の日はつるべ落とし。
やがて日は暮れ暗くなった。
こうして秋の紅葉を満喫した私は、明日からまた頑張ろうと思ったのであった。
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