「mimio」(2004/07/12号)
{商品紹介}

        「mimio」

        コクヨ
        定価不明(うちの会社にあるのはたぶん定価¥88000のBasic)

メーカー曰く、「バーチャルインク」、
簡単に言えば、ホワイトボード上に書いた文字をパソコンに取り込む装置である。

コピーが出来るホワイトボードというものが存在するが、
mimioはコピーを取るのではなく書かれた文字を直接PCに取り込む。
あっいやこれは不正確。文字を入力するのではなく図形データを入力する。
ボード上のペンの位置やペン先が押された情報を読み取るのである。
(一応オプションソフトで文字として読み取るものもあるようだが、
使ったことがないので不明)。
だから当然、文字だけでなく描いた図形は何でも取り込める。
コピー付きホワイトボードは、私の知る限り印刷はモノクロのみだが、
こちらはペンの色も識別するので、複数色使える(フルカラーではない)。

2003年7月、うちの会社の新製品のソフト設計で3週間部屋にこもって、
ひたすらホワイトボードに書きつづり、これを使って取り込んだ。
(その製品のソフトの一部だけ作ってくれという依頼が来たのだが、
ふたを開けてみれば設計が全く出来てなくて、結局一から作り直す羽目になったのだ。)
少なくとも、この7月中に日本で、いや世界で一番mimioを使った
人間(の一人)であることは間違いなかろう。
だからこそ、せっかくなので紹介してしまうのである。
手を痛めてまで使い込んだこの機械、果たして使い物になるのであろうか。

        ・・・

まずは基本。

ホワイトボードはごく一般的な普通の市販のものを使う。
その端っこにmimio本体を吸盤でくっつけて使う。
PCとの接続はRS−232CかUSB(ただしUSB-232Cアダプタが必要)。
USBの場合はそこから電源が供給されるのでACアダプタも不要となる。

一般的に、コピー付きボードより普通のボードの方が面積が1.5倍ほどあるので、
面積的にもこちらの方が有利である。
一端PCに入れ込めば印刷はなんぼでも出来るので、
コピー付きホワイトボードより融通は利く。

ペンは通常のホワイトボード用ペンではあるが、
これを機械に検知させるため専用ケースに入れる。
色は黒、赤、緑、青が標準で用意されている。
このケースの大きさの都合上、ペンもコクヨの特定のものに限定される。

ボード消しも専用のものである。
(普通のを使うとボード上は消えるがPC上で消えない。
これはこれで使い手があるのだが。)

PC上には専用ソフトを入れる。
ソフトの使い勝手は良くも悪くも普通。
これに関しては余り使い込んでいないが、ファイルの読み書き、
内容の消去(マウスでトレースした部分が消える)、印刷などが出来る。

WindowsXPとWindows2000で動作確認したが、
どういう原因か、Win2000では時々音声が出なくなった。
このソフトでは一部操作時に音声が出るのだが、これが出ない。
まあ、致命的な問題ではないが後述の通りmimio上のボタンで操作した時に
音声が出ないとそれが受け付けられたかどうかが解らないので、
この音声が重要であり、それが出ないのは結構困る。

mimio上にはいくつかの種類の「ボード」が存在する。
これらのボード作成は、mimio上のボタンからも操作できる。

新規ボード
  真っ白な新しいページを作成する。要するに一番最初の状態。
  当然のことならが、これを押したからと言って実際のホワイトボード上の文字が
  消えるわけではないので、それは人力で消す。
  ただ、先にこれをしておけば普通の消しで消しても良い。

タグ付きボード
  現在の内容を一端保存し、そこから修正を加える場合に使う。
  ちなみに、一端別ページに移った場合も(mimioを終了した場合も含む)、
  最終ページになら戻って追加が可能である(それ以前のページに対しては不可)。
  まあ、PC上でページが戻っても実際のボード上では戻らないから仕方ない。

印刷もmimio上のボタンでかけることが出来る。

実際に使っていくと解るが、これらのキーは非常によく使うことになる。
いちいちPC上で操作しなくて済むのはよい。

ということで、一般的な紹介は終わり。
これからはいきなり「感想」である。
かなり使い込んだ人間の書くことであるから、そこには重い真実味があるのである。

        ・・・

一般にコピー付きホワイトボードはボードが狭いが、
先にも書いたとおり、通常のボードは広く、それを全面使えるのは良いとことだ。
じゃあ、2枚のボードを並べたらもっと広くなるかとと思ったが、それは無理だった。
試しにやってみたが、ボードをうまく並べても2枚目の半分位までが限界で、
それも2枚目ではかなり書いた位置と取り込まれた図形にずれが生じるので
実用的ではない。
ちなみに2台のボードにそれぞれmimioを接続して
並べて同時に使っても問題はない。
超音波・赤外線はお互いには緩衝しないようである。

コピー付きホワイトボードはたいがい裏表2面使えるが、mimioではそうはいかない。
なので、広いボードを使っても結局狭く感じる。
どうしても2面必要な時は、ボードを裏返していちいち外して付け直すか、
2台用意するかである。
(このとき私は会社にあった2台を同時利用;当然PCも2台用意、時々裏返し利用した。)

ペンはケースに入れるが、このケースは電池も入る関係上かなり重くなる。
ペンだけの3倍位だろうか。
さらにケースが太いので持ちにくい。
このため長く書いていると結構手に負担がかかる。
事実、私は1週間で手首が腱鞘炎になってしまった。
1日朝の9時から夜の10時まで昼休み以外書きっぱなしと言う
スペシャルハードタスクだった事もあるが、この重さも一因ではある。
労災である。

ホワイトボード上の文字を消すだけでなくPCに取り込まれたデータも消すので
消しは専用になるのだが、結構そのことを忘れて普通の消しで消したり、
手でちょっと消したりしてPC上のデータとの不整合が起こったりする。
(これが改善できればすごいのだが。)
これらはソフトの上で消すことも出来るが結構面倒である。
逆に、普通のマーカーで書いてしまったりもある。
この時は専用ペンで上書きである。

このマーカーもかなり問題ありで、すぐにペン先がだめになる。
特にmimioでは(超音波を出すためのスイッチを入れるために)少し押さえ込んで
書く必要があるため余計である。
3週間で一体何本のペンをだめにしたか。

また、このペンはアルコールインクのため、キャップをきっちりしないと
すぐに蒸発して書けなくなってしまうが(しばらくふたをしておくと
復活することもある)、特にmimio用のケースに入れた状態だと
きっちりとふたが閉まらないことが多く、だめになりやすい。
これは、ケースに入れたままふたをするとスイッチが入りっぱなしになるので、
少しゆるめに閉めなければならないという構造的欠陥によるものである。
ペン周りは是非とも改善して頂きたい。
(マーカーペンとしては、ぺんてるの方が優秀であると書いておこう。)

図形情報はドットではなくベクター情報として入っている。
従って、基本的には細かい字を書いても、後で拡大しても破綻がない。
が、問題はそれ以前にあった。
それは、「情報の欠落がかなり多い」ということである。

図形の情報は、赤外線と超音波で検知される。
赤外線はペンの色と押下情報を、超音波は位置情報である。

この読み取りの方式がくせ者で、ボード上に紙を貼ったり手を置いて書くと、
赤外線もしくは超音波が届かないため書いたつもりの文字が
欠けてしまうのである。
紙はともかく、手はボードを押さえるために置くことが多いので、
これで文字が欠けるのは非常に困る。

ボードは書いている途中に揺れたり傾いたりすることがあるが、
これによって位置情報がずれてしまい、図形がおかしくなることもある。
余り力を入れて書いてはいけないのである。

これらの欠けは、ボードではちゃんと書かれているのでなかなか気が付かないが、
後でPCで見ると文字が書けていることで発覚する。
ボード消した後で見て「あぁ、文字が読めない!!」と言うことが何度あったことか。
だから、一端入力したらボードを消す前に印刷し、
欠落がないか確認する必要がある。
これが結構手間なのである。
(ということはプリンターも必須である。)

コピー付きホワイトボードでも印刷が必要なので同じと言えば同じだが、
あちらは文字が欠けることは余り無いが、こちらはありすぎる。

また、ペンケースへのペンの入れ方が悪いとスイッチが押されたままになってしまい、
ボードからペンを話しても書き続けられているようになってしまうことがある。
一方で欠落が多いのに、一方で変な図形が入ってしまうのである。

綺麗にゆっくり、大きく書けばいいと言われるかも知れないが、
会議や設計の時にそんなことに気を遣っている余裕はないのである。
だから、これらの欠点は、ある意味致命的であると言えるのである。
これだけでも「使えない」と評価を下してしまうに値する。

結局、最初は書いた文字がPCの画面上にも出るのでおもしろがって使うが、
これらの問題に気が付き愕然とするわけである。
最終的にはいらいらが募って使わなくなると。

後細かい問題点としては、USBケーブル抜けやすい。
PCをボードの手前=人が書く側に置いた場合、
mimioからPC間のコネクタケーブルを人が踏んで使うことになるが、
この時に抜けてしまうことがあるのだ。

ケーブルが抜けるとソフトが音声で警告を出すのだが、
これがケーブルを再度差し込むまでづっと出続けるので結構うるさい。
また、差し込まれても「接続されました」とは言わない。
あくまで「接続が解除されました」が出なくなるだけである。
もう少しメッセージを考えてくれ。

        おすすめ度      60%

基本的コンセプトは良いと思うが、詰めが甘いため使いづらくなっている。
非常に残念。
取り込みミスをなくすこと、ペンを丈夫にすることが絶対的に求められる。
現在は上位機種なども出ているようだが、果たしてそのあたりが改善されているかどうか。

結局、今のところこの手の作業で一番使えるのはデジカメである。
300万画素以上あれば(200万でもいけるかも)ホワイトボード全体を
写せる位に離れても十分文字は読める。

タブレットもだめだったし、これもだめだし、
何か手書き入力で決め手になるようなものはないかね。
出来れば特許、になるだろうにね。

http://www.kokuyomimio.com/
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