「お役所仕事」(2002/10/21号)
「お役所仕事」と呼ばれるものがある。

一般的には融通が利かない(縦割りなので、ちょっとでも管轄が違うと動かない)、
遅いというイメージがある。また、マニュアル通りにしか動かないので
前例がないことをしたがらない、というのもある。
いずれにしても「悪い」意味でしか使われない。

また、弱いものいじめをするようなイメージもある。
イメージじゃなくて事実か。

たとえば、警察は税金で動いているが、一方で罰金も大きな収入源である
(と思っている)。
また、警察官の評価はどれだけ検挙したかに依っている(と思っている)
従って、金がなくなったり評価があがってない時は、違反チェックが
厳しくなったりする。
年度末には交通違反チェックが厳しいので気を付けて走らなくてはならない
(いや、年中気を付けろ!)。

税務署は、売り上げがあがっているような会社を見つけては査察に入り、
細かい帳簿のミスを見つけては税金を絞り上げる。
特に今のようにそうでなくても税収が落ちている時には躍起になっている。
一度目を付けた会社に対しては、そこへ行って問題が発見されなかったら、
何が何でも見つけるまで帰ろうとしない。
なぜなら、彼らはミスを見つけて絞り上げた件数で評価されるから。
(何件あげるかがノルマになっている。)
だからどんどん査察の期間が伸びて、
会社の方もその対応に追われてまともな業務が出来なくなる。
(必ず対応する人が要るし、資料も持ち出されるから。)
そのくせ、期間を伸ばすことに対して、一切わびも何もない。
はっきり言って合法的業務妨害である。

本当に税金逃れや所得隠しをしている連中をなんぼでもあげるのはかまわないが、
ちょっとした考え違いで申告されてなかった分にまで追徴課税するのは
ある種の強請たかりとも思える。
(一方で、経理操作で売り上げを隠して赤字にして税金逃れをしている
外資系企業には甘いような気がする。外形標準課税しろよ。)

    ・・・

お役所の仕事がマニュアル通りなのは、多くの場合、
ある人がその仕事に就いている期間が短いためだと思われる。
課長とかのクラスは知らないが、一般職の場合は
1つの仕事に長く就いていると特定業者との癒着が出来るからか、
数年に一度は必ず異動がある。しかも全く関係ない部署への異動も多い。

それでもその前後で仕事が滞らないようにするためには、引き継ぎのための
仕事のマニュアル化が必須であって、逆に言えばマニュアル以外のことを
覚える時間がないといえる。

こういった構造を変えないとお役所仕事の質は向上しない。

    ・・・

この「お役所仕事」にはイメージだけでなくもっと困った問題もある。
それは「現実を無視している」ということである。

最近は規制緩和が言われている。新規参入とかがやりやすくなったという。
書類審査から届け出制になって・・・と言われるが、
実際には新規参入が大幅に楽になったという話は聞かない。
まあ、これはいわゆる既得権益を持つ古参企業や団体がじゃまをしているという
があるが、これをあえて無視しているお役所にも問題がある。

また、緩和と言われる一方である種の規制はどんどん厳しく、
また非常に現実を無視した形できつくなってきている。

私の仕事の電気関係で言えば、毎年と言うより毎月のように規制が厳しくなっている。
電気関係なので、1つ間違えば人体に危険もあるのである程度規格が厳しいのは
やむを得ない面もあるが、その決まりが理不尽だったりする。

たとえば、電源コード1つとってもいろいろな規格がある上に、
海外から輸入する場合には輸入事業者申請をして
ケーブル全体にメーカー名の刻印を入れろだとか、無茶を言う。
(刻印を入れるにはそのための金型と設備が必要で、そんなことしてたら
時間がない、高い=わざわざ安い海外製を使う意味が無くなる。)
これに関してはあまりに非現実的なので、メーカー側が文句を言っている状況
ではあるが。

OME(相手先ブランド製品)についても難しくなる方向である。
製品には規格適合試験を受けた(合格した)メーカーの名前を
入れる必要が出てきたため、元の名前を出さないのであれば、
受け入れ側メーカーで行う必要があるようになった。
逆に、受け入れ側で出来ないなら供給元メーカー名を出さなくてはいけなくなって、
供給元メーカー名を絶対に隠さなくてはいけない場合もあるのに、それが出来ない
ことになってしまうのだ。
そもそもその適合試験自体が時間がかかる&高い。

また電気製品でもどの機器はどの規格に適合させるべきかという判断も
「おいおい!」と思うような場合もあって、後から変更になると大きな負担を
強いられる。規格への合致のための試験というのは多くの時間と費用が
かかるのだ。また、何か言うことが前と今度で違ってたりすることもあったり、
変にお伺いを立てたら逆に細かいツッコミをしてきて他の問題も
指摘してきて、あっという間に大問題になって発売できなくなるとか
いろいろある。
だから、変に問い合わせはしないようにする、という風潮さえ出来てしまう。
(逆にしてしまった企業は、要らんことしやがってという目で見られることになる。
企業名は公告には出ないけど、商品や適応範囲からわかったりする。)

何かと今の経済産業省はうるさい。

    ・・・

結局、お役所は現実を見ていないのだ。
決まりを決めることには熱心だが、それが現実の生産活動がどういうものか、
規格の変更がそれにどういう影響を与えるかを全く考慮していない。
一方で違反者をあげるのには熱心なので、無駄に人件費を使って
あら探しをしているのである。
こんな仕事するのがが「お役所」なら、お役所なんぞ要らん。
業界団体の自主規制だけで良い。

はっきり言って、こんなことしていたら(されていたら)生産活動なんて
自然収縮せざるを得ない。規格適合には本当に多くの時間と費用がかかるのだ。
広い範囲の製品を作っている大企業なら対応も出来るかも知れないが、
特に中小企業にとっては致命的になる場合さえある。

それがどういう結果をもたらすかは今の日本の状況を見ればわかるだろう。
公的資金導入とか、公共投資(だけ)では今の日本の状態は脱せない。
現実に即したお役所仕事をしてもらうことも重要なのだ。

弱いものいじめはやめろ。
いや、もっと地を見て規格を決めろ。
建物中にこもり、海外の企画書だけを読んで、自分たちだけで勝手に物事を決めるな。
民間企業に関係する役所の人間は、全員民間企業での現場研修を義務づけよ。
(天下り役員じゃなくて、平社員として。)

今の日本で一番必要なのはこういう馬鹿お役所の解体ではないか、
等と真剣に思ってしまう今日この頃である。
小泉も、郵政省の解体なんぞ下らんが目立つことはやめて
こういうところを何とかしろ。
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