「一番安全な食べ物?」(1996/09/18号)
おぉ!157のおかげで、世間では衛生管理が注目されている。

店頭では消毒液とかが飛ぶように売れているようで、
ちょっと間違っていると言うか、行き過ぎのような気もするが、
まあ、その意識を持つということはいいことだ。

行き過ぎというのは、薬品を使えば即OKというのは、「薬品絶対信仰」で
よろしくない。さらに、逆に行き過ぎで消毒液を料理に入れてしまって死亡事故まで
起きているにいたっては、本末転倒である。
世の中、何かあると、自分で判断せずにすぐ世間に云われるままに突っ走るやからが
いる。困ったもんである。

ところで、何から感染したか、感染源が特定されないので、
いろいろな食品が「感染源ではないか」とやりだまにあげられた。
牛のレバーであったり、かいわれ大根であったり。

レバーに関しては、本当に検出されることがあるらしく、
やはり生では危ないようだが、かいわれ大根は「ぬれぎぬ」のようだ。

かいわれ大根は例の騒ぎの後、売れなくなったらしい。
最近はスーパーなど売る、一般消費の部分は快復傾向らしいが、
大口である食品製造からの注文が復活しないらしい。

幾ら公官庁やテレビで「大丈夫」と言ってみても、世間のおばちゃんたちが
それを信用しない限り、売れないだろう。
幾ら店主がいいと思っても、「客の嫌がるものは出せない」というのは
しょうがない。これが戻るにはだいぶ時間がかかるだろう。

一方かいわれ大根生産業者の方でも、いままで確かに衛生面での管理をして
いなかった、ということは反省しており、今は厳重な管理が行われているらしい。
そして、その中ですら、一度も菌は検出されていない。

考えてみれば、かいわれ大根は、今全ての食材の中で一番衛生管理が
行き届いているともいえ、そういう意味ではもっとも「安全」な食べ物でもある。

食材ばかり問題にされながら、それを調理する側の衛生管理が徹底されているかと
言えば、必ずしもそうではあるまい。

汚い食堂、ええかげんな調理で料理を出す店は多い。
(公式に)営業しているお店には、一応管轄の保健所の認定書があるが、
あれだって、いつも検査しているわけではなく、何年かに一回なんだろうから
(年1回かも)、消費者に直接関わりのある、そういうところの安全監視も
徹底してほしいものだ。

そういうわけで、今本当に衛生を考えるなら、その辺の食堂で食べるより、
家でかいわれ大根を食べた方がいいのではないか、と思う今日この頃である。
いや、そういうことではなく、衛生に気をつけるのはいいが、
総合的かつ冷静に物事を判断して、良いものを選ぼうというのである。
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