「サマータイムの話」(2000/08/04〜08/30号)
このネタを書いている今は、残暑がきびしい9月。
(で、発表がほぼ1年後の2000年8月である。)

と言うわけでもないが、「サマータイム」の話。
実は、仕事で「サマータイム」を扱う羽目になったが、
ぜんぜんそれに付いて知らないので調べてみることにした。
そうすると、いろいろとサマータイムに付いての情報が集まったので
「これはネタになるな(^_^)ニヤリ」ということで、仕事は手っとり早く終わらせて
このネタを作り始めたのであった。
あぁ、編集者の鑑(←違うだろ^^;)。

        ・・・

日本でもサマータイムを導入しよう、と言う話があるらしい。
と言うより、先の国会で討議されたが、継続審議になったんだよな。

日本では戦後直ぐ昭和23〜26年にGHQの命令で行ったが、
余りに反対意見が多かったので止めたという経緯がある。
また、それ以降何回か出ては消えている話である。

しかし、省エネルギーが叫ばれる昨今、「サマータイムは省エネルギーになる」
という意見のもとに、再び大きく取り上げられようとしているのである。
しかし、はたしてそんなに効果あるものなのか?

        ・・・

日本ではなじみの無いこのサマータイム制度。
具体的にはどうなるのか知っているだろうか。

いつから始まっている終わるかは国によって異なるが、たいがいは
開始の時は、3月末から4月中旬までの間の日曜日の深夜で、
        午前2時になったら3時まで進ませる
        (ということは2時台がないわけで、この日は23時間しかない)

終了の時は、10月末位で、
        午前3時になったら2時まで戻す
        (ということは2時台が2回あるわけで、この日は25時間ある)

となる。この時刻はほとんどの国で同じだが、オーストラリアのように
1時〜2時で行うところもある。時期は北半球でのそれだが、
南半球はもちろん半年ずれる。

いずれにしても、時計の修正は休日の夜中にあるので社会活動には余り大きな影響を
与えないと言うことのようだ。
にしても、年に2回、家中の時計を合わせ直すのは大変すぎるな。
よく、こんなこと我慢してやっている国があるもんだ、しかもたくさん。

        ・・・

さて、最近日本でもこのサマータイムに関する議論がされているようである。

この件に関してインターネットで調べてみると、いろいろな意見が出てくる。
が、まとめてみると結構少ない種類の意見にまとめられるようである。

ここから先の話を進めるには、先に私の立場を書いてからの方が良かろう。

        「反対」

そう、私は反対派である。
と言うことで、まずは反対派の意見をまとめてみよう。

いかにそれと、それに対する私の意見を一気に書いてしまおう。

「反対派意見」
        日本の国土に合わない            中緯度の国では無意味
                                        日本は縦に長い
        省エネなら他にやることがある    気温の下がる朝の時間に寝られないので
                                        かえって消費エネルギー増大
        体のリズムが狂う                病気が増え医療費増大
        時計付き機器の修正が大変        事故の増大
        昔やって失敗している
        対応のため経費増大
        朝の自由時間が減る
        労働時間が増える

以上が反対派の主な意見と見て良いだろう。
その多くはもっとも至極である。中でも重要なのが、
「日本の国土に合わない」という点である。

        ・・・

なぜ日本の国土に合わないのか。日本は中緯度の国であると言うことと
縦に長いと言うことなのだが、まずはこの表を見てもらおう。

        「サマータイム開始日と終了日での日のある時間の変化」
        
        開始日=3月終わりから4月始め
        終了日=10月最終日曜位
        
                        開始日          終了日
        ロンドン        5:44-18:29      6:40-16:50
        ワシントン      5:47-18:35      6:27-17:18
        パリ            6:35-19:17      7:24-17:44
        マドリッド      7:04-19:36      7:35-18:23
        
        納沙布岬        4:53-17:47      5:42-16:19
        東京            5:23-18:06      5:56-16:54
        長崎            6:04-18:46      6:32-17:37
        那覇            6:17-18:46      6:33-17:51

サマータイムの基本は夏は日の出が早く、夜は日が長いので、
朝1時間早く起きてその日の明るい時間を有効に使おうと言うものである。
上図にある国では、それは理にかなった行為だといえよう。
マドリッドはちょっと?だけど。

一方日本はどうかと言うと、日の長さは長くなっているが、朝の日の出は
たいして変わっていない。納沙布岬でやっと1時間近くである。
東京ではせいぜい30分。さらに、納沙布岬とは那覇での違いの方が大きい。

と言うことは、日本では朝1時間早くても全く意味がないのである。
むしろ日本でも地域別時刻を採用した方が良い位だ。
日本では、今はまだ明石時間(日本の標準時刻は兵庫県は明石にある
明石天文台の時刻が基準である)で何とか日本全国統一出来ているが、
これをずらしたら、対応しにくい地域も出てくるだろう。日本は縦に長いのだ。

朝暗い時から起きると言うことは、それだけ早くから電灯をつけると言うことである。
夏だからクーラーもつけるだろう。
夜も遅くまで日が明るいと言うことは、時計に縛られて生活している人はともかく、
日の出ている間活動する生活=農林水産業ではかえって労働時間が伸びる可能性が
ある。いや、それ以外の産業でも、日の長いことを理由に残業させられる可能性が
ある。営業ではありえん話ではない。ということは、結局エネルギーを多く使う
時間(会社が活動している時間)が長くなるわけである。
省エネで考えても意味がないことが解る。いや、かえって増エネになるだろう。
欧米の実施国でも省エネになったという報告はない。

        ・・・

夜、アフターファイブの時間は日が短くなる。
夜の時間そのものは変わらないが、アフターファイブで日が明るい時間は短くなる。
結構困るんじゃないか?
労働時間の実質上の延長もありえる。

欧米の実施国では、最初は増えた労働時間が何年かすれば普通と同じか少し減ったと
いう報告はある。が、これがサマータイムの効果か世界的な労働時間の短縮による
ものなのかははっきりしない。公開される資料と言うものは、得てして賛成側に都合が
良いようなものだけ出ているものだ。

それでも冬に比べれば朝は早くから明るい。なら、その時間を有効に使うかどうかは
個人にまかせたら良い。国が制度で縛るものではない。

        ・・・

対応のための経費増大も深刻である。
2000年対応がなぜ進まないのか。その大きな理由は経費がかかりすぎることに
ある。その危険性がこれだけ言われていても進まないものなのだ。
(これを書いてたのは1999年だから、それを考慮して読んでね。)
そんな時にサマータイム対応なんて出来るか?

2000年に比べれば影響も少ないし、相手が時間だけ+1時間だけなので
時間を正確に扱うシステムだけの問題だから範囲は少なかろうが、
身近さでは2000年問題とは比べるまでもなく大きい。

いったい家に何個の時計があるだろうか。
特に日本人は時間に正確だから、時計の持ち数は多分世界一であろう。
時計とは置き時計や腕時計だけではない。
ビデオ、炊飯器、パソコンにも時計は入っている。
ビデオ録画で1時間ずれたらどんなに影響が出るかは、
ナイターで後の番組がずれてしまい、後番組を予約していたのがちゃんと撮れなかった
時のことを思えば良く解るだろう。
だからそれで何か生命的、金銭的影響が出るとは思えないが、
精神的ショックは大きい。

朝起きたらご飯が焚けてなかったらどうする?
列車に乗り遅れたらどうする。
サマータイムを忘れてて会社に遅れても許可してくれる会社はあるか?
その前に、各機器の時計の修正仕方を覚えているか?
みんな違うぞ。
こんな修正を年に2回も出来るか?

日本の機器はサマータイム対応がされていないのである。
じゃあ、サマータイムが実施されたら対応機器を買うか?
新しい機器を買う時は対応されたものを買うだろうが、
今まで使っているものを買い換えることは無理なことも多い。

そうでなくても最近の機器は経費削減のためにやわで品疎なものが多いのだ。
昔の良いものを手放す理由にはならない。
買うとしてもその費用は全部自分持ちだぞ。
と言うことで、結局手間とショックだけが残るのである。

じゃあ実施している欧米ではこの問題はないのか?と言うことになろうが、
むこうの機器は当然最初から対応しているから大丈夫なのである。
そして、実施が昔から=時計に縛られる機器が少なかった時代からなので、
準備というか対応も楽だったのである。
そこが日本に、しかも今対応させようとすることとの違いである。

        ・・・

時間のずれによる、と言うよりも朝の起床時間を変えられることによる
体調の変化はどうする。

若い人間なら何とかなろうが、そうでなくても高齢化の進む日本。
体調を崩す人は多いだろう。
その診療はどうする?その経費は誰が持つ?
医療費を削ろうとしている今の流れに反するのではないか?

        ・・・

こんなことを書くと、「そこに経済効果がある」などと抜かす馬鹿がいるが、
そういうのは「地震があれば、後に家が立って経済効果がある」とか、
もっと極端に言えば「戦争があれば兵器は売れるし後始末があるしで経済効果がある」
というのと同じである。こういうのは経済効果とは言わない。
単なる無駄金だ。

「昔やって失敗した」というのは、昔と今は環境が大きく違うので
必ずしもその時の教訓は有意義とは言えないが、
自然学的国情というものは変わっていないのだから、
無意味でもない。そこから学ぶべき点もあるはずだ。

このように、日本におけるサマータイムの実施には実に多くの問題がある。

        ・・・

今度は逆に賛成派の意見を見て、その「意見」の問題を指摘しよう。

「賛成派意見」
        外国が採用している
        日本の先進国化のため
        アメリカで経験したが体も特に問題ない
        エネルギー節約
        明るい時間が増えるので犯罪が減る
        時間的余裕が出来る
        環境にやさしい
        対応のための経済効果有り
        生活に変化が出て良いのでは

このあたりが主な賛成派意見である。
今までに書いた私の反対意見を読めばその問題は明らかな部分もあるが、
一応指摘していこう。

「外国が採用している」とか「日本の先進国化のため」というのは、
実に右に習え的な極めて全体主義的、安易な意見であると言わざるを得ない。
「外国が採用している」?そういうのは、「局長君が持っているから
僕も欲しい!」とねだる子供のようである。

「先進国化のため」とか言い出すに当たっては、サマータイムがあるから
先進国だと思う、そう、それは「高級車に乗っているから金持ち」と言う考えと
全く変わらない、こちらも幼稚な考えである。
ブランド嗜好と言っても良いかも知れない。「先進国」と言うブランドが欲しいのだ。

こういうことを言う連中の中には「自称」国際派というやつもいる。
恥ずかしいことこの上ない。
こういう奴とは絶対にお友達になりたくない。

また、自称「先進国」が抱えている問題を考えない。
それらの国はひょっとすると「先深刻」かもしれないのに。

「アメリカで経験したが体も特に問題ない」ならアメリカで暮らしなさい。
こういうことを言う連中に限って、アメリカで暮らしたことをひけらかしている場合が
多い。
いや、そういう点は無しにしても、日本と他国の地理的条件を無視している。
日本では早起きしても日は明るくない。

・エネルギー節約
        その実績がない上に、かえって増エネが懸念される。
        因みに、アメリカではサマータイムではなくDaylight Saving Timeと
        呼ぶらしいが、はたしてそれだけ省エネ出来ていることやら。
・明るい時間が増えるので犯罪が減る
        夜に犯罪を起こす奴は時間で起こすのではなく、日の暗さで起こすのだ。
        だから、犯罪は減らない。
・時間的余裕が出来る
        社会人にとっては明るい時間はかえって減る。
        大嘘である。
・環境にやさしい
        省エネが出来ればそうかも知れないが、省エネ効果がないのに環境に
        やさしくなるわけはなかろう。
        逆に、人の行動時間が増えるのだから、車に乗る時間も増えるだろうから
        環境には悪い。
・対応のための経済効果有り
        こういうのは経済効果とは言わない。
        2000年問題とある意味同じで、無駄金である。
・生活に変化が出て良いのでは
        それに対応出来ない人を切り捨てて良いのか。

結局、賛成派の意見にはまともな意見がないことが解る。
日本の国情を無視しているか、夢だけを語っているわけだ。

        ・・・

欧米と書いたが、実際にはそこに含まれる国や州でも実施していないところもある。
アメリカでも全州が行っているわけではない。
(困るのは、行っている州もその期間が異なること。対応機器を作る時に面倒。)

行っていないところにはそれぞれ事情があるようだが、
大きな意見として「農作業への影響」が言われている。
もっとも、そういうところでは時計時間より日の出日の入り時間に左右されている
のかもしれないが。

韓国はソウルオリンピックの時に1年だけ実施したが、直ぐ翌年に廃止された。
その理由は私の言うところと同じであろう。
日本や韓国等の中緯度の国では無理をおしてまでやる効果はないのだ。

すでに行っている国の中にも、実は止めたいと言う国があるとかないとか。

        ・・・

実は、省エネや労働時間短縮=余暇を増やすのに良い「サマータイム」がある。
逆に1時間遅らせるのである。

そうすれば、朝は完全に明るい時間に起きるから電気をつける時間も減る。
クーラーは変わらないだろうが、少しは省エネになろう。
夜は日本でも日が長いので大丈夫だし、
仕事が終わった頃には暗いのであれば、残業も減るかもしれない。

まあ、そういう効果もあるが、時計の問題や体調の問題はクリア出来ない。
でも、どうしてもやると言うならこの「1時間遅らせ型」を採用して欲しい。
これこそ、先に行った国で発覚した欠点を解決するべく日本が考えた
「新型サマータイム」であり、そういう新しいものを率先して出来る国だからこそ
「先進国」である。

そうそう、「サマータイム」期間が全部夏休みなら良いな。
それなら文句は言わないぞ。

        ・・・

それでも文句を言うなら1年限定でやってみるか?
国民投票でもするか?
それで自民党が倒れるなら、将来を考えるならそれも安いことかも知れないような
気もする。

2001年実施をめざしているとか書いてあるが、
こんな問題をほっておいてやると言うなら、
それこそ世界の笑いものとなろう。

以上である。

そうそう、以下のホームぺージに今回参考にした資料や意見があるので、
時間のある人は見てみるのも良かろう。

        http://www.kokuminkaigi.gr.jp/
        http://kobe.cool.ne.jp/momijipafe/stopst.htm

        ・・・おわり・・・
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