「市電復活」(1996/05/21号)
ヨーロッパでは市電が復活しているらしい。

元々は自動車による環境破壊を防ぐために始まったことだが、
今では渋滞無しに目的地に着ける利便性も見直されている。

勿論、旧態以前のままではだめで、現状にあった改良がされている。
新型車両が入るのは勿論、道路にも専用レーンをもうけるなどして優遇している。
新型車両ではステップ低くしたり、電動にしたりしてお年寄りや身障者でも
乗り易くなり、窓を大きくして見やすく、色もきれいで町の風景に合うよう
に工夫されている。

どこへでも行ける車というものは、そのまま考えれば便利であるが、
現在の交通事情を考慮すれば必ずしもそうではない。
慢性的な渋滞。いっこうに良くならない騒音、排気ガスによる大気汚染。
実は車は時間とエネルギーを消耗するだけの「愚作」であるといっても過言ではない。

かといって、電車では駅まで遠く、行ける場所も限られる。
そこで、そのあいだを取り持つ「市電」が見直されるわけだ。

専用レーンさえ用意されれば遅れることはない。
騒音も低い、大気汚染はない。
車より大量の人を確実に目的地に運べるのだ。
とはいえ、車の利便性も無視できない。
結局は相互の利点を生かした共生が必要となるのだ。

21世紀において人がもう一度、留まることを知らない利便生の追求が故に
起こった地球環境の破壊を考え、どこまでは利便生を追求し、どこからは我慢する、
ということを考え、「選択」しなければならない。
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