「花火」(1996年08月28日〜09月09日号)
夏はやっぱり花火である。
新潟へ行くときも、必ず花火を買っていく。

そういえば、以前友人が新潟へ遊びに来てた頃は
(田舎がない友人が遊びに来ていたのだ)、
来るときに必ず「花火を買ってこい!」といって、盛大に花火をしてた。
「花火コーディネーター」と称して、複数の花火を組み合わせて
一気にやるのはおもしろかった。
打ち上げ、地上、手持ち。海があるので、打ち上げも海に向かってなんぼでも
出来るのだ。
ああ、古き良き思いで。

今年も、手持ちの小さな花火をやったが、最近のはどうも「短い時間勢いがいい」
のが多く、余り見ていておもしろいのはない。
やはり、情緒という面では線香花火に勝るものはない。
あの小さいのに微妙な火花の散り方、最後の最後までちろちろと出る
残り火のはかなさ。日本人の心に訴えかけるものがある。
ディスカウントショップに売っている安物にはそういうものは もはや ないので、
来年は一度松屋町に花火を買いに行こう。(人形の町、松屋町では夏には
花火をたくさん売っている。)

そういう個人的な花火もいいが、盛大な大打ち上げ花火大会というものもいい。
新潟には大きな花火大会が多く、柏崎の海花火(7/26)、
長岡の川花火(8/2,3)、新潟の陸花火(8/8),小じ谷(漢字忘れた)の
四尺花火(9/22?)などがある。
そのうち、長岡の花火大会は日本一といわれている。
毎年、柏崎・長岡の花火は早いので見る事が出来ない。
が、今年は夏休みを早めにとれた(お盆の1週間前と決めている)ので、
初めて長岡の花火に行く事が出来そうだ。

某社(^_^;)新潟営業所に電話をし、花火の時間や交通に関する情報を入手し、
万全の体勢を整える。
「そうか、車は混むので列車で行くのがベストか」。
それでも、新潟帰るのが8/3なので、すぐ長岡まで行く事になる。
かなりのハードスケジュールだ。
大丈夫だろうか。

JR特急での(主な)停車駅順

至る大阪 <- 直江津 === 柏崎 === 長岡 === 新潟

        ・・・

その日、大阪を朝の6時半に出発して、柏崎に着いたのは2時半頃。
8時間ほど、まぁ普通の時間である。(自己最短記録は6時間半。
友人の記録は5時間半。これは驚異的な早さ。)

それはいいとして、家に着いて、荷物を家に運び込み、
少し休憩するともう4時。
家には何もないので、最低限、明日の朝食分だけは買い出しに行かなければならない。
そうそう、ガソリンもないので、これも補給しなければ。

駅前に行き、食料を買う。
本屋にも立ち寄って、長岡行きの列車を調べる。
片道1000円強、柏崎から長岡へ行く列車は、花火に間に合うものは2本あるが、
1本は特急なのでパス。各駅停車は後1時間ほど後。
この時間だと、いったん家に戻って荷物を置いてから戻ってくると
ぎりぎりすぎる。荷物を車の中に置いて行くしかなさそうだ。
問題は、帰りの時刻が遅いので、その時間まであいている駐車場があるかどうかだ。

ガソリンスタンドで聞くと、すぐ近くに24時間の市営駐車場があるという。
それは良い。
このあたりの駐車場はもともと安い。この駐車場でも一晩留めても
1000円もかからない。
車の中に荷物を置く、中には卵や食パンもあるので、この暑さの中
少し気になるが、しょうがない。
新潟の夜は結構涼しいので大丈夫だろう。

駅で待つ事30分、列車に乗り込む。
混んでいる。たぶんほとんどは長岡花火目当てだろう。
時間的にも、この列車はいい時間に着くから。

柏崎から長岡まで、列車に乗るのは20年ぶりだ。
20年前は逆の長岡から柏崎だったが、景色はどう変わっているだろうか。
(20年前の景色は余り覚えていないが、緑が多かったように思う。)

しかしてその実態は、余り変わっていないように思う。
今も緑が多い。ホッと一安心。
(それにしても、柏崎市内でも、内陸の方はえらい違うなぁ、と感じた。
海辺の柏崎しか知らなかったから。)

同じ各駅停車の旅といえば、以前京都から奈良へのJR奈良線の
それを15年ぶりにやったとき、余りの景色の変化に愕然としたものだ。
緑はなくなり、家が増えている。
冷暖房完備のため、列車の窓が開かなくなっているのもポイントを下げる要因だ。
が、ここ新潟ではまだそういう事はないようだ。

1つだけ、途中で怪しい建物を発見したが。
まるでおとぎ話の絵本の中の出雲の国を実際にしたような建物がたくさん。
なにかの宗教らしいが、それでしてもでかい。
そのうち調べてみようか・・・でもちょっと恐い。

途中、隣に立っていた女の子が貧血で倒れるという
ハプニングがありながらも、列車は無事長岡に着いた。
(なんか弱そうな女の子で、危なげに見ていたら、やっぱりに倒れた。
日頃、この列車はすいていて座れない事なんてないから大丈夫だろうに、
今日は満員で座れなかったので疲れたのだろう。
最近珍しい、可憐な感じの子だった。
そう、こういう臨時に人が集まるイベントは、場合によっては地元の人に大きな
影響を与えるから、行く人にも注意が必要である。)

いや、私も腰が痛くなっていたのだが・・・

        ・・・

その倒れた女の子だけでなく、私も列車の中ではずっと立ちっぱなしだった。
そうでなくても、その日は大阪からの運転で座りっぱなしで腰に負担が
かかっていたのに、この1時間近くの立ちでかなり痛んで来た。
最近腰が痛いのに、これはいかんと思っていたら、長岡に着く頃には
立っているのもつらくなってきた。

そうでなくても、眠くてふらふら状態なのに、これは危ない。
夕食がてら食堂に入り座る。
嫁さんに薬局で湿布を買ってきてもらって張る。
30分くらい座っていると何とか持ち直してきた。

そうこうしていると、店の客が(ほぼ)一斉に出始めた。
今から行けば一番良いのではないだろうか。
そう思い、私たちも出ることにした。

実は、長岡から花火のある長生橋まではちょっと距離がある。
1キロくらいか。ただ、この日は駅前から橋までの臨時シャトルバス(¥120)が
出ているのでこれに乗るといい(現場で初めてそんなものがあるのを知った)。
これで7、8分くらいだろうか。道路が混んでいるのでバスも遅いのだ。
(でも、今の腰では1キロはとても歩けない。)

「ドン」という大きな音が聞こえた。
バスの窓から見ると、花火が見える。
どうやらもう近くらしい。

バスを降りるとすごい人。
河川敷きへの登り口は非常に混んでいる。
なんだかよくわからないが、少し川の上流側に行くとすいている登り口があるそうだ。
花火の音だけを聞きながら歩き、民家の庭ではないかと思われる
細い道を通って河川敷きへ登る。
うわぁ、ここもすごい人。
でも、これは確かに花火がよく見える。

   _団体専用桟敷
        \                                              長生橋
道路    / ̄ ̄\一般客                    道路=========================
___/ 土手  \                              |土手   |
                 \_____川                |       |信濃川
                                                |       |
        「横からの図」                          「上からの図」
 
団体客には専用の桟敷が用意されており、ゆっくり座って見られるようだが、
一般客は土手に座って見るしかない。
これがすごい人で、とても座るスペースはない。
ということで、再後列で立って見るしかない。
何時まであるのかわからないが、ずっと立ちっぱなしではつらい。

何とかよく見える位置を確保。
見上げる。

        「ドン!」

大音響と同時の大火花。
大迫力とはまさにこのことである。

        ・・・

思うに、花火の大迫力を一番良く感じるには、
光が見えてから、音が聞こえるまでのタイムラグが1秒以内でなくてはならない。
それ以上だと、光が見える、音が聞こえるという順番で感じるので、
今いち乗り切れない。このタイミングは重要だ。

この点、この場所では最高だ。
光と音が完全に同期している。
ということは、逆に考えれば、花火の距離が非常に近いということだ。
(音速を考えれば、1秒で360メートルくらい。)

距離が近いということは、音の大きさもまた大音量ということだ。
体全体を揺るがすような深い音。
はっきり言って、心臓の弱い人には危険かも知れない。
それほど迫力がある。

(そういえば、先日大阪は楠葉の「くらわんか花火」大会を見に行ったが、
花火の現場から1キロほど離れた場所にいたせいか、
音と光ばらばらでいまいちに感じた。
さらに音も小さいのでパッとしない。
色や形はおもしろかったのだが、それはまた後で。)

長岡の花火は打ち上げられる数もその大きさも半端ではない。
大きなグループが40あるが、それぞれがかなりの数をまとめるので
全体でみれば1万発以上は上がるのだろう。
1尺以下のもの、1尺2尺3尺、さらに正3尺玉という特大のものまで上がる。
正3尺玉をあげる花火大会は全国でも数えるほどしかない。
それだけ広い場所を必要とするのだ。

正3尺玉では800メートル以上上がり、花の広さも800メートルほどあるそうだ。
市民90連発というのもあり、1尺玉を90個連続であげる。
これだけでも並の花火大会1つ丸ごと入るような豪華さだ。
それぞれのグループで趣向が凝らしてあり、いろいろな形や色を見せてくれる。

一番のクライマックスは、正3尺玉と長生橋全体を使った大ナイアガラの同時点火
である。ファンファーレ(というか交響楽)の後、長生橋の端から端まで
約700メートルもある大ナイアガラに点火される。これが大きな輝く白い滝を
作り出す中、正3尺玉がうち上がる。その絵は非常に見事である。

見事な花火が上がると盛んな拍手が送られる。
この歓声こそ花火師の一番の喜びだと言う。
確かに、思わず拍手したくなる花火がある。
そういうものには単なる迫力やきれいさを越えた感動がある。
花火とはまさに一瞬の芸術である。

        ・・・

このようなどでかい花火大会に行くのはまったくのはじめてで、
余りのスケールのでかさにびっくりした。
大きさだけではなく、その迫力、種類の多さも見る者を圧倒する。
日本一の花火とはよく言ったものである。

花火は7時頃から上がり始めているようだが、
一番いいのは7時に駅前を出て、河原に着く頃のようだ。

各花火はスポンサーがいる。
大きなスポンサーが40、小さなのが無数。
大きなものの前には放送が流れ、どこがスポンサーか、どういう種類の花火かを
紹介する。まぁ、それ自体はどうでもいいことだが、
大きなものもいいが、大きなものの間に打ち上げられる単発ものの中にも
比較的大玉が上がることがあるので、よそ見は禁物である。
小さなスポンサーだからと言って、小玉とは限らないのである。

花火には実にいろいろな種類があることが、ここに来るとわかる。
細かい説明はしないが、大きさ、色、動き、音、光、形。
さまざまな変化がある。光玉の中には、余りに眩しくて直視できないようなものも
あった。
楠葉の花火でも非常に珍しい動きのものがあったが
(そのタイプは長岡にはなかった)、一瞬のものにこれだけのアイディアを
入れられるというのは、すごいことだ。
このあたりが日本の花火が外国の花火(単に派手なだけ)とは違うところと聞く。

正3尺花火は2回うち上がる。
一回目は例の大ナイアガラとの組み合わせ、もう一回は一番最後である。
気の早い人は最初の打ち上げで帰ってしまう。
でも、その後も良いものがあるので、そこで帰ってはもったいない。

正3尺玉は特別大きいので、長生橋の下流、少し離れた場所から打ち上げられる。
普通の花火は長生橋の上流、観客席の近い場所。
このため、実は正3尺玉より普通のものの方が迫力がある。
光の残り時間の差から、正3尺の方が大きいというのはわかるが、
ちょっと肩透かしな感じもする。
でも、光の少し後に来る衝撃波はやっぱりすごいが。

最後の正3尺で一応終わりだが、実はその後にも何発か上がる。
(だから、最後の正3尺が上がったからといって、すぐに帰ってはいけない。)
それは、全国の花火師がその技にかけて作ったものである。
実は、その多くがよく似た形なのだが、中にはすばらしいものがある。
そういうものが上がると、拍手が上がる。

そうこうしているうちに、10:30位にすべてが終わる。
すばらしい花火の余韻を残しながら、
人混みをかき分け、駅まで向かうことになる。

後細かいことをいくつか。
・トイレは臨時のものが作られるが、余りに人が多いので行くことができないと
 思った方が良い。
・帰りは長生橋から駅までバスがない。歩いて帰る必要がある。
 1キロちょっとあるので、長く立っていた後には少しこたえる。
・当日は新潟、柏崎方面へ臨時列車が出るが、これがまた時間がちょっと早いので、
 早めに帰りたい人は、最後まで見ることはできない。
 最後まで見ても間に合う列車があるが(柏崎方面行きは11:20くらい)、
 これが最終なので、余韻にひたって長居をしていると帰れなくなる。

である。
本当にすばらしいので、一度は見に行くことを勧める。
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