「刺しも刺されたり、落としも落としたり」
(1996年08月20日〜08月27日/09月10日号)

そういえば、去年はスズメバチに刺されてえらい目にあった。
まぁ、あれは私が先に攻撃を仕掛けたのだから、
1匹に刺されたくらいで済んだのは、むしろ好運なのかもしれない。

今年、その巣のあった場所を見ると、もう大丈夫のようである。
殺虫剤2本使った効果はあったようだ。
そういえば、今年はスズメバチはほとんど見ていない。
足長蜂も見ない。
そこかわり蜜蜂は一部に多かったように思う。

一部とはどこか。それはお墓なのだ。
ここ数年うちの田舎で、蜜蜂がお墓の中に巣を作っているのを見ていた。
墓石の隙間から蜂がたくさん出てくるのだ。
確かにお墓の中は安全だろう。
堅い石の中だし。
他のお墓でそうなっているのは見ていたが、それがまさか自分の家のに出来るとは。

お墓掃除をしていると、なにやらブンブンという音が聞こえる。
虻(アブ)か?と思ったが余りの音が続きすぎる。
回りを見ると、確かに何かが飛んでいる。
蝿くらいの大きさだが、多すぎる。
よく見ると、それはお墓の隙間に向かっている。

        「蜂だ」

そう、それは蜜蜂だ。
とうとううちのおはかにまで来たか。
退治すべきかどうか。

お墓掃除をしている上で、身の回りでブンブン飛ばれているのは
余り気持ち良いものではない。いつ刺されるかわからない恐怖感もある。
が、人間がどう動こうが、蜂は見事にそれを避けて飛んで行く。
目の前まできて方向転換して飛んで行くのは恐いけど、すごい。

お墓に水をかけたときにその穴に入って、そのときはたくさんの蜂が出てきたが、
それでも攻撃されることはなかった。
よほどこちらから直接攻撃しない限り、近づいても大丈夫なようである。
ということで、さわらぬ神にたたりなし、ということでほっておくことにした。

それにしても、よくよく蜂の行動を見ていると、
なかなかにおもしろい。
高速で飛んで来て、見事に小さな穴に入る。
中には穴が見つからずに回りでぐるぐる回っているのもいるが、
ほとんどは一発だ。
いったいどうやって位置がわかるのだろうか。

また、水が入るとたくさん出てくるが、
パニックをおこすというよりも、飛ばずに羽をばたつかせて
乾燥させているように見える。それは自分の羽もそうだろうし、
穴に近くでそうしているということは、穴の中に風を送り込んで
乾燥させようとしているのかも知れない。
いずれにしても、蜂は賢そうだ。

そういうことで、今年は大きな蜂の心配はないと思っていた。
まぁ、そうそう刺されたらたまらないが。

と思い気や、意外なところで刺されることとなった。
        ・・・

去年は泳いだことによってだいぶ痩せた。
今年もそれをねらって毎日泳ぐことにした。
結果的には、今年は残念だったのだが、それはともかく、
ほぼ毎日泳いだのである。

泳ぐ場合、過剰な日焼けを避けるため、午後から泳ぐようにしている。
早くても2時過ぎからだ。
この時間だと少し日差しも弱く、日焼けどめをちゃんと塗っていれば問題ない。

いつも泳ぐのは浜辺と(50メートルくらい?)沖にある防波堤の間である。
実際にはその半分くらいまでは足がつくので、正味泳ぐのは半分くらいだが、
これを10本も泳ぐと相当の運動になる。

最終日、ここを泳いでいると、突然右手に激ショックが走った。
電気ショックのような感じだった。ぴりぴり程度ではなく「ビシッ!」
というかなりきついショックだった。

ショックのため右手がけいれんに近い状態になった。
しかし、そこは足がつかない場所、焦ると危ない。
とりあえず、右手は水面上に出し、左手だけで足のつくところまで泳いだ。

岸に着いて見てみると右手腕、掌の10センチほど下が、
かなり腫れ上がっている。
見る見るうちに腫れ上がっていくので、ショックの原因を
調べるのは後回しにして、家に戻り薬を塗ることにした。

新潟に普通にいるくらげではこんな強いものはない。
せいぜい軽く「チクッ」程度だ。一度にたくさんに刺されても(そういう経験もある)
こんなふうにはならない。
いったい相手は誰だ?

幸い、去年スズメバチに刺されたときに買った薬。それを今年も持ってきていた。
「今年も蜂に刺されるかも知れない・・・」と思ってのことだが、
まさかこんなことで使おうとは。

薬を塗って海に戻る。
今度は網を持ってだ。
刺したのは一体何だ、必ず捕まえて「市中引き回しの上張り付け獄門」してやる!

        ・・・

網を持って、そしてまだ右手がしびれるため、うきわにつかまって
現場に行く。

注意深く海面を見る。
網ですくいまくる。
しかし、相手は見つからない。

まあ、すでに20分くらい経っているだろうから、
そこにいる可能性は低い。
いくらくらげだろうと、それだけあれば移動もするだろう。

何度か調べたが、結局、犯人は見つからなかった。
くくく、いったい何だったんだ!!!

腕に残った跡をじっくり見ると、頭が広く尻尾が細いものに見える。
くらげか、それとも何かの魚か。
ショックから考えると、刺されたというよりも電気ショックだったのかもしれない。
それにしても、余りにもはっきり跡が残っている。

腫れが引くのに1週間、その後一度ひどくかゆみが出て再び腫れた。
そういえば、去年のスズメバチの時もそうだった。
一度引いたかと思ったら再度出てくる。
完全に直るまでは薬を塗るのを止めてはいけないようだ。
2週間以上経った今もまだ残っている。

去年といい今年といい、本当にきつく刺されついてるわ。
まったくうれしくないけど。

そうそう、海でのハプニングといえば、これだけでなくもう1つある。
これはいわば「波に刺された」ようなものであった。

        ・・・

その日は海が少し荒れていた。
前日、台風並の風が吹き、非常に海が荒れ、この日もその余韻が残っていたのだ。

そういえば、海というものは、気候の変化に非常に敏感だ。
1日目は非常にいい海で、日中は鏡のような水面であった。
このような穏やかな海はここ数年なかったかも知れない。

それでも、夕方には少し波が出てきた。
まあ、この時期、いつでも夕方には昼間より若干波は出てくるのだが、
若干ではなく、かなりの波であった。

すると、翌日には大荒れである。
いや、1日目の夜までは非常にいい天気だったのが、
急に荒れたのだ。考えてみれば、波が出てきたのはこの前兆だったのだろう。
こういうことは、今までにも経験がある。
翌日の天気を知るには、猫を見るより、下駄を飛ばすより、海を見た方がいい。

しかし、3日目昼間は前日とうって変わって波はおさまっていた。
それで、4時ごろから泳ぎに行ったのだ。

このときは、いつもの防波堤との間を泳ぐのではなく、
別の場所の、沖にある岩礁との間を泳いでいた。
こちらの方が距離は長い。従って、1日にそう何往復もできない。
この日も最初の日だし、少し波も出てきたので、1往復のみで終わりにし、
後は海の中を歩いて帰ることにした。

岩礁
================防波堤
+++++++++++++防波堤
_ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _港
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -海岸 - - - - - - - - - - - -

海の中を歩く・・・このあたりの海岸は、海岸から5メートルくらいのところに
防波堤があり、その向こう側は砂がたまって浅くなっている。
ここを歩いて帰ろうと思った。

水の中は、泳がずとも歩くだけでけっこうな運動になる。
プールでもそういう人を見かけることがある。
実は泳ぐよりいいという話もある。

それはともかく、歩いていた。
が、予想以上に波が荒くなってきた。
そこの防波堤はけっこう長く、浜に上がるには先に進か戻るかしかない。
どうしようか。

        ・・・

結局、戻りより先に進んだ方が早い、ということで進むことにした。

防波堤の向こう側は浅くなっていると言った。
それは間違いではない。が、それでも肩ぐらいまでの深さになるところもある。
膝まで位のところから肩ぐらいまでと、大きく変わるのだ。
(浅いところは防波堤より内側より浅く、そうでないところはそれなりである。)

肩ぐらいの深さになると、波の大きさの違いというものが
大きく感じられる。顔にかかるかどうかという違いは、
おへその上か下かなどという違いに比べ、非常に大きく感じるのだ。

「波はあるが、これならなんとか越えられる」と思った次の瞬間、
頭からすっぽりかぶるような高さの波がきた。
「どっぱーん!」

その瞬間、いったい何が起こったのかわからなかった。
気がついた時には水中にいるような感じがしたが、
体勢は崩れなかったので、すぐに水面に出られた。
(波をかぶったとき一番恐いのは、足をすべらせてしまい、尻餅をつくような
状態になることだ。こうなると、下は滑り易い砂、上には流れの強い波、
という状態になり、立ち上がるのが難しい。)

「びっくりした!」
本当にびっくりした。不意をつかれたとはまさにこのことだ。
「波がきつくなってきている。これは急がねば。」
そう思い、先に進もうとしたとき、なにかおかしいことに気がついた。
視界が効かない。

眼鏡だ。眼鏡がない。
それまで眼鏡をしていたのがないのだ。
眼鏡が波にさらわれた。
(海ではコンタクトは使えないので、たいてい眼鏡をしている。
もっとも、泳ぐときははずしているが、このときは歩いていたので眼鏡だった。)

急いで水中眼鏡をして砂の上を探すが見つからない。
この波ではもうだいぶ離れたところまで運ばれたか、
砂に埋もれたかどちらかだろう。

探しているうちにも波は荒くなる。
このまま探しても見つかる可能性は低い上に、また大きな波がこないとこは
限らない。
眼鏡は見つかっても命を落としたら何にもならない。
そう判断し、思いきってその場を去ることにした。
さらに、先には進まずに戻ることにした。

「あんなルートを選んだばっかりに・・・」という思いもあったが、
本当に「眼鏡なくさず、命なくす」ではしゃれにならない。
出費は大きいが、眼鏡は買い直すことができる。
そう思いきりることにした。

(翌日、波が静かなうちにもう一度そこに行ったが、やはり見つからなかった。)

なんにしても、海を侮ると恐いことになる。
刺されるだけ、眼鏡をなくすだけならまだましと思わねば。

なんとも教訓めいた今年の海であった。

        ・・・追記・・・

そういえば、書き忘れ。

今年はもう一箇所、刺されたというか、かぶれた場所があった。
足のこうに湿疹が出来ていた。
かゆくもなく、気がつかなかったのだが。

そういえば、今年も山の中をだいぶ歩いた。
観音堂から不動尊までの山道だが、そのあいだの道は草がかなり繁っている。
もっと後の時期、お盆直前になると草刈されるようだが、
それまでは人がときどき通ることで、ようやくと道らしくなっている状態で、
獣道とは紙一重状態である。

そんな場所に、半ズボンで行くのは無謀な行為である。
蚊には刺されるし、草もすれる。
私は少し肌が弱いので、かぶれやすいのだが、
草木の中にはうるしもあって、それにかぶれたのではないか?
と思っている。

今度は長ズボンで来よう、と何度も思いながら、
結局毎回半ズボンで行ってしまうのである。
だって、暑いんだもん。

ということで、自然をなめたらあかん、自然と接するにも礼儀がある、
というお話であった。

        ・・・終わり・・・
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