「映画紹介2003」
(2003/01/20号)
{映画紹介}

    「陽はまた昇る」

    東映系
    1時間46分

NHKのプロジェクトXでも取り上げられた「VHS開発における人間劇」
を映画化した作品。

うちに来ていたとある業者さんも出資していると言うことで、
招待券をいただいたので行くことにした。

概要はプロジェクトXで知っていたとはいえるけど、
やはり映画となると史実だけではなく若干のフィクションを加えて描いてある。

会社名はビクターをはじめ、松下、三菱、日立などのすべて実名。
登場人物も松下幸之助などの有名人はすべて実名。
基本的には史実なので、今更架空名を使ってもおかしいだけ。
でも、結局はほされるソニーなども実名だから、よく許したとはいえる。

プロジェクトXとの違いは、ただ単に時間が長いだけ話を細かく描いていると
言うよりも、人間劇に仕立て上げていると言うこと。
そのために架空の人物も設定してある。
主人公のVHS開発を指示する事業部長とその部下たち、上役たち、協力会社を含む他社、
通産省、彼の家族の話などが描かれている。
部下の中では特に直属の部課の次長、開発と営業の間で揺れ動き、
やがて松下電器へ転職する技術者(これが架空の設定)についてが中心であろうか。

とはいえ、あまり人物が多いためか、もしくはいろいろと描こうとしたためか、
個々の描き方は少々浅い気もする。

西田敏行はやはり良かったけど、その部課の次長役の渡辺謙も
よかったかな。特に真野響子が美人であることは再確認したけど。
(結構私好みである。)
そのほかの人も結構実力派が揃っていて良かった。

この開発、機器としての技術的克服も大変だったけど、
それ以上に周りの調整に労力を費やしたことがよくわかる。
VHSが完成するまでの間の時間稼ぎのために技術者に営業周りをさせるあたりは、
技術者である私にとってはある意味つらい場面であるが、
首切りよりかはましなのかも知れない。その中でユーザーの声を拾えたことが、
結局VHSの勝利につながったと言うこともあるから、そういう意味では
技術者営業マンの面目躍起か。

会社の上司に隠し通す、ある時それを正直に言って説得する。
でも土壇場で通産省の圧力。
とにかく最後の最後まで「もうだめか」と思わせる事の連続だが、
最後の捨て身の一手で大逆転する様ははらはらさせる。

そもそもビデオ事業部に異動になったことからしてある意味左遷であったのが、
その部署の人間の首を切って保身を計るのではなく新しい物を作って
全員を守るというやり方には感動を思える。今の日本の、首切りだけを行う
似非「リストラ」に終始する経営者に見せてやりたい。
おそらくそういう意味もあって今この映画が作られたのだろうけど。

また、自社の技術の集積であるVHSを、他社の共感がないと、業界標準にならないと
勝ち残れないと判断し、その技術を惜しげもなく公開した判断もまた、
今の何が何でもライセンス料でもうけようとする、ユーザー不在のメーカーの
業界への警鐘かも知れない。

会社内での場面では、時計が写っている場面が多いのでよく見ること。
夜の11過ぎというのが結構多い。徹夜場面もある。
昔の人がいかによく働いたかという証明にもなろうが、
しかし、それをそのまま現代に当てはめて「現代人は働かない」とされたら
それは考え違い。家を支える家族や社会が根本的に違うから。
昔は親父の収入だけで一家が養え(それだけ物価が安かった)、
母親が家族を支えられいたからこそ出来る話(共働きする必要がなく、
子供もおおらかであった)。

結論から言えば「泣ける」。
えぇ、泣いてしまいましたとも。

    おすすめ度  普通の人は      78%
            技術・開発系の人は  90%

でも一応苦言も呈しておかねばなるまい。

・画面の揺れが激しい場面がある
まるで素人がハンディーカメラで撮ったのではないかと思われるほど
画面が揺れる場面がいくつかある。視点が定まらないので酔いそうになる。
何画面かあるから、ひょっとすると効果をねらっているのかもしれないけど、
はっきり言ってはずれ。

・やたら喫煙シーンが多い
まあ昔の職場はそうだったのかもしれないけど、ちょっと目に汚い。
アメリカ映画のそれほどではないんだけど。

ちなみに、この映画を応援している企業名がパンフレットに書いてあるんだけど、
ビクター、松下、三菱、日立は当然あるんだけど、
そこにはやっぱりソニーはなかった。
敵役になってたからなぁ。

この映画を見るなら、細かいところでは、時代背景の再現も見るべし。
テレビとその番組(「わったしの、わったしの彼は〜、左利き〜〜!!」)、
炊飯器、新聞、車、松下社内(当然Nationalマーク)など。
こういう細かい設定を見るのはおもしろい。

そうそう、主題歌は「地上の星」(中島みゆき)じゃないからね。
もしろんナレーションもない。
    「これはプロジェクトXではありません。」

「陽はまた昇る」というタイトルは、このVHSの大逆転劇へ、と言うことより
今の日本の企業への言葉として受け止めた方がよさそう。
社員を切り捨てず彼らを信じ、世に受け入れられるはずのものを、
がんばって良いものを作れば必ずどん底からはい上がれるということ。
アメリカと同じ企業スタイルを取ることが一種のステータスとなってしまった
今のおかしな日本企業、その経営者にこそ見せるべき映画なのかもしれない。

ちょっと前の映画なのでもう公開はされていないが、
近日DVDも出るようなので、レンタルででも見ると良いだろう。
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(本誌未公開新ネタ)
{映画紹介}

    「クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ アッパレ戦国大合戦」

以前に紹介した「大人帝国の逆襲」に続く、クレヨンしんちゃんの
劇場用作品である。2003年3月29日にテレビで放映されたので、
見た人も多かろう。

戦国自体にタイムスリップした野原一家の物語というか、
戦国時代の悲愛(誤字じゃないぞ)に野原一家が絡む物語と言うべきか。

今回の主人公はしんちゃんでも野原一家でもなく、ある戦国武士のような気がする。
そういう意味では、今回は野原一家の影がちょっと薄い。

クレヨンしんちゃん映画と言えば、先の「大人帝国」が非常に優秀作品であった
だけに、次回作には大きな期待がかかるわけだが、
残念ながらその前作は超えられていない。
が、くだらないお子様向けアニメとは違う。それなりに見させてくれる。
最後は泣けてしまう。

そう、この映画はクレヨンしんちゃんの舞台を借りた反戦映画なのだ。
戦争の後に残る悲しさを主題にしている。
だから、しんちゃんの映画としてみると少々物足りないが、
切なさを伝える事としては十分であったと言えよう。

    お勧め度    78%

もはやクレヨンしんちゃんの映画は、安心して見に行ける作品に成長した
と言えるだろう。4月には最新作「栄光の焼き肉ロード」も公開される。
機会があれば見に行きたいものである。
(行けなかった。残念。)
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(2003/06/23号)
{映画紹介}

    「THE MATRIX RELOADED」

    AOL タイムワーナー
    138分

今更これがなんの映画か説明するまでもないが、あの1999年公開のMATRIXの
続編である。

話の内容についてはあえて書かないが、前作で救世主として目覚めたネオの
試練、ネオとトリニティーの愛から始まって、ザイオンとは何か、
予言者とは何か、MATRIXと救世主の関係は何か、そして最後に
モーフィアスの信念を揺るがす事実。
いろいろな謎が解けると同時に新しい謎が生まれ、そして新しい真実
(少なくともこの映画の終わりにおける、だけど)にそれぞれがどう
立ち向かっていくか、そういう流れである。
最後は正義の側が敗退するところで終わる。
はっきり言って意外な展開であり、おもしろい。

一方、アクションや特撮は前作を遙かに超えて激しくなっている。
ただ、少々技に懲りすぎている嫌いがないわけではない。
まあ、こういう映画なのであろうが。
アクションや画面変化が早い場面があるので、動体視力が良くないと
見づらいかもしれない。私には追い切れなかった。
音もかなり凝っているので、注意して聞くと良いだろう。

作品的には3部作の第2作目ということで、少々中途半端な終わり方ではある。
そう、STARWARSの帝国の逆襲のような感じとも言える。
(おりしも6/19にNHK BS2でそれが放映されたが、)
あの映画でも2作目は正義の側が負けたところで終わる。
いや、MATRIX3部作そのものが全てSTARWARSの影響を
色濃く受けていると言えるであろう。もっとも、
最近の特撮映画でその影響を受けてない物はないとも言えるが。

この映画を「アクションはすごいが内容はない」という人もいるけど、
私はそうは思わない。
「アクションもすごいが内容もそれなりにある。ただ、ど派手なアクションばかりに
目を奪われると肝心の話を理解できない可能性が大いにある」ということだ。
(内容は現代に対する警鐘だぞ。)
少なくとも2作目まではうまくいっている。
完結編の第3作目、11月公開予定の「MATRIX REVOLUTION」で
どうまとめられるかに期待しよう。
(スタッフロールの後に、ほんの少しだけそれの予告映像が流れる。)

    お勧め度    90%

久々に映画館で見るに値する映画であった。

そういえばこの映画、平日、雨の日の朝早い回の上映を見に行ったのだが、
女性が非常に多かった。若いところが多かったが、中年以上の人もそこそこいた。
後は学生か。まあ、こういう日時ならさもあらんという感じである。
私は、別件のために年休を取っていたから行けたのである。
でも、こんな回でもほぼ満席だったのはさすがであった。
この次の回はもっと混んでいたが。

映画を見終わってとあるどんぶり屋に入って食べていると、
同じくこの映画を見たらしい、学生らしき3人組が入ってきた。
その中の1人が「相手の意図した映像にはまるのが嫌だ」と言っていたが、
「それなら映画なんか見るな」である。
映画ははまれなければおもしろくない、である。
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(2003/07/28号)
「映画紹介」

    「トゥルーマン ショウ」

生まれたときからその全ての行動をTV番組(それが「トゥルーマン ショウ」
として放映されてきた男が、自分のいる世界の虚構(全て作られていること)
に気づき、現実の世界に抜け出そうとする姿を写した作品。

ちょっと前にNHK BS2の映画でやっていたのを今頃になって見たのだが、
何気なく見始めたら最後まで一気に見てしまった。

彼の周りの世界全てを作り上げ、時にはその性格付けまでしてしまう
プロデューサー。ある意味彼にとっての神をすらも退けて
外、真実の世界へ向かう彼の姿が感動的であった。

作られた、でもそこにいれば安全は保証される世界から、
未知の、安全の保証されない世界への旅立ち。
この話は今の我々の世界そのままにも当てはまる。
今の世の中は一部の人間・国によって動かされているともいえる。
ブッシュの思い1つでイラクの人民は殺され、日本はアメリカの番犬に
成り下がるのだ。
それに従っていれば一定の生活は保障されるのであろう。
でもそういう世の中にいていいのか。
神に逆らってでも外の世界に出てみる必要はないのか。
そういうことを感じさせる。

それにしても、この世界ではこの「トゥルーマン ショウ」は
世界中の老若男女に、24時間連続で、1万日以上も放映されている
大人気番組という設定だが、人の生活をのぞき見するのが好きというのも、
困ったもんじゃないか、という気もしたのだが。
見ている方にも問題があると。
まあ、みんな最後には彼が抜け出したことに拍手を送ったのではあるが。

    お勧め度    95%

主人公のTHRUMAN(トゥルーマン)役はジム・キャリー、
いつもはコメディー役だが、こういう役も出来るのだと感心した。
今までさして好きな役者じゃなかったが、少し好感度アップ。

「トゥルーマン」というから、正直者の話かと思ったが、
そうではなかった。
(ちょうどジム・キャリーが嘘つきの弁護士から嘘が付けなくなった映画が
あったから。)
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(2003/11/24号)
{映画紹介}

    「ブラボー火星人2000」

    ディズニー
    1:35位

地球に不時着した火星人が、それを見つけた地球人と一緒に
起こすどたばたを描いたコメディー映画。
実写・・・CGも多いけど。

先日(これを書いたとき当時)NHK BSでやっていたのをそれとはなしに録画して
見たのだが、結構おもしろかった。

設定的にはETがかなり入っているように見受けられた。
というより、もろETのパクリでは?と思う。
これ以上何を書けと。

あと宇宙船が大きくなったり小さくなったりする音はスターウォーズ6
でR2−D2が倒れるときの音であったり、
あとMIB(メン・イン・ブラック)じゃなくて
インディペンデンスデイも少しだけ入っているような
(なぜあの映画がID4と略されるのかわからん)。
要するに、その手のSF映画のいろいろな場面をパロっているのである。

私はディズニーの映画は基本的に好きではないが(言うほど良作はないし、
あの商業主義が好きになれない)が、これは例外的に良いと言えよう。
コメディーとして良質に笑えた。
時間が短いのもテンポを保てた良かった一因であろう。

    お勧め度    80%

まあ、見る機会があればどうぞ、というくらいだけど。
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(2003/12/01号)
{映画紹介}

    「マトリックス レボリューションズ」

    2:09
    ワーナーブラザーズ

今日12月1日は映画の日である。ということで、京都の映画館も
1000円で鑑賞できる。
それならばということで、見に行ったのがこの映画である。

・・・というのは、半分本当、半分嘘。
本当は、うちの会社は毎月初日に朝礼があるのだが、これが
8:30出社という、今の私には耐え難い苦痛で、
これがいやなので休んだわけである。
先月も休んだ(これは体調がすぐれなかったのもある)。
先々月はあえて遅れていった。その前の月も休んだ気がする。
そんなもんである。
で、今回は毎月1日が映画の日だと初めて知ったので、
それならば、マトリックスはまだ見てないので行ったのである。

話題のこの映画、果たしてどういう結末を迎えるのか。

    ・・・この先ネタバレあり・・・

私は映画紹介の中で、その物語を書くのは出来るだけ避けている。
それは、オタクラはその映画を見ようかどうかの判断の手助けであり、
物語は実際にそれを見て知って欲しいからである。

しかし、今回はあえてその禁を破って物語を書いてしまおう。
それも1行で。

    「バグ スミスを退治するワクチン ネオの物語」

本当にもう、これだけである。
そもそも映画館に入るときから何となく予測は出来た。
師走1日なので社会人が来ることはあまりないだろう。
でも、1000円の日だ、暇な学生は大量に来ているかも知れない、
そう予測していたが、実際に行ってみた映画館はがらがらであった。

前作リローディッドの時と同じ朝一番の時間で、
前回は一応館内が満員になった。
しかし、今回は前回より狭いホールであるにもかかわらずがらがら。
私の座った列が一番いい(前に通路があり、スクリーンが真正面に来る)
所であったのでこの列はさすがに全部詰まったが、
他はまばら。
で、実際の映画の内容も、「あぁ、なるほどこの入りは納得できる」という
ものだったのである。

ここで、いきなり3部作の内容の優劣を付けてみよう。
    アクション  2>1>3
    CG        3>2>1
    物語        1>2>3
今回はCGはすごい。でもそれだけ。
せっかく前作で見せた伏線はその多くが無意味であった。
アクションは前作の方がずっとは見栄えがある。
物語に関しては圧倒的に1がよい。

2公開から半年で3の公開。その意味がここでわかる。
話題があるうちに公開してしまおうということである。
人の興味が薄れた後に公開したら受ける、いや人に見てもらえる自信がないのだ。
STARWARS旧3部作のような。

ついでに言えば、マトリックスは映像革命の点ではSTARWARSに匹敵するが、
それのようにいろんな意味で伝説的映画になるかと言えば、成らない。
いや、成れなかった。この3作目さえちゃんと作っておけば
伝説にも成れたものを、非常に残念である。

おっと、書いてしまった。そう、はっきり言ってこの3作目は駄作だ。
その最大の理由は物語をまとめきれなかったことにある。
いいように解釈すれば、観客が予測していた結末ではない、
意外な結末であると言えるが、それが良しとされる映画とされない映画があろう。
この映画の場合後者だ。この結末は意外と言うよりあまりに陳腐だ。
結局の所、ネオはマトリックスシステムに発生したバグ スミスを倒すだけ
なのだから。今までの話の結末がそれ?
そのためにトリニティーまで退場させる?
じゃあマシン世界との戦争ってそもそもなんだったのよ?
ザイオンはどうなったかって?どうなったんでしょう?いや、まじで。

だから一体何が言いたかったの?そういう感じ。

    お勧め度    50%

試写会も一切行わずに全世界一斉同時公開したらしいけど、
まあ、これの試写会やってたら本公開では人が入らんだろうから
そうしたんじゃないか?と疑いたくなるような内容。
今日が1000円の日で良かった。通常料金日だとちょっと怒ってたかも。

誰かが「実写版ドラゴンボール」とか言ってたけど、言い得て妙。
本当に、かの漫画の世界を忠実に実写映画にした感じ。
ドラゴンボールは内容のない漫画の筆頭だったけど、
マトリックスは石灰今まで物語があったのに、最後でなくしてしまった
というか台無しにしてしまった感じ。

音はすごかった。特に重低音。うちでもあれくらい鳴らせれば
迫力満点なんだろうけど。でも、音の効果的利用度で言えば2の方が上。
なんか、いろんな意味で3はいまいち。

しかしなんでんな。結局マトリックスの話って、システムに発生した
致命的バグを命がけで採った人の話なわけでんな。
しかも、それを作ったのは他人。
他人のプログラムの問題をそこまでして解決せんといかんなんて
災難以外の何者でもない。
いや、プログラムのバグだけでなくスケジュールのバグにも言える。
今、まさにそういう状況にいるから、マトリックスの終わり方は
笑うに笑えん。全く、困ったもんよ。
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